第304回桃李5月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:幟、薔薇、ワクチン(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 幟
兼題U 薔薇
兼題V ワクチン(不言題) 

5月15日(土) 投句開始
5月22日(土) 投句締切 翌日選句開始
5月31日 (月)  選句締切・披講

投句: 素蘭、寿美子、やんま、春愁、しゐ、素人、万歩、秋童子、実生、英治、翔河川、風子、明子、丹仙
選句: 英治、春愁、風子、しゐ、万歩、実生、秋童子、素蘭、翔河川、寿美子、明子、鈴居、丹仙

披講

・13点句

薔薇にほふ棺の蓋をとづる刻  寿美子
<風子(人)>
最後の別れを告げるかに薔薇が匂った。まさしく絶唱の一瞬。

<しゐ(天)>
その瞬間の、あの世とこの世が音をたてて隔絶されていくような切なさが、薔薇の香りからいっそう強く伝わります。

<万歩(天)>
薔薇の香りが永遠のわかれを告げる、一瞬を詠んだ句

<素蘭(天)>
かの人の在りし香のように。。。

<明子(天)>
辛い刻。薔薇の匂いが辛さをほんの少し和らげてくれる。


・10点句

ベランダも我が空として鯉幟  明子
<英治(天)>
その鯉幟さへもはや。

<秋童子(天)>
ベランダだって堂々と。

<翔河川(天)>
大きな空が

<寿美子(人)>
子供の幸せを祈る気持ちに変わりはありません


・7点句

谷戸の天競ふものなき幟かな  春愁
<しゐ(人)>
ただゆったりと。

<万歩(地)>
静かな景のなかの鮮やかな幟が鮮明

<素蘭(地)>
天晴、皐月晴!

<丹仙(地)>
情景がはっきりと浮かびました。


・4点句

朝晴れてコップに一輪バラ挿して  翔河川
<実生(天)>
朝、新聞を取りに行って薔薇の開花を。一輪切り花にしても、ためらって。キッチンテーブルに。ごめん。

<鈴居(人)>
飾り気なくでもきれい。それが一番うつくしかったりして。

鯉のぼり子の命日の近づけり  しゐ
<実生(地)>
親より先に逝くな。子供達に申し伝え。

<明子(地)>
口には出さないけれど、重い胸の内です。

コロナ禍も大口開けて鯉幟  秋童子
<英治(人)>
マスクもせずに。

<風子(天)>
人間はマスクしてソーシャルディスタンスを守り続けているのに、鯉のぼりは大口を開けて
泳いでいる。コロナ禍の心情が滲んでいる一句。

潮騒の能登の陣屋に幟立つ  寿美子
<英治(地)>
風格が在る。

<鈴居(地)>
響きがよい

梅雨寒やデジタル難民てふ存在  明子
<風子(地)>
「デジタル難民」 今年の流行語になりそうな言葉です。ワクチン予約の混乱は国の配慮が行き届いていない。夫は掛り付けの医者から薬を毎月出されるからOK、妻は健康で医者の薬を飲んでいないので予約は取れないなどと詰まらない理由で断られ、困っている人がいた。

<万歩(人)>
梅雨寒にふさわしいフレーズ

<素蘭(人)>
ローテクに切り替えた自治体もあるやに…


・3点句

青空をひたすら泳ぐ鯉のぼり  素人
<鈴居(天)>
ただひたすら泳いでいる姿がよい

華厳寺の左右の柱や聖五月  素蘭
<丹仙(天)>
コロナ禍という予測困難な状況で、人心の不安の募る時期を背景とします。この句は、そういう未来の見えない時に、観音菩薩による衆生救済の願の実現を願う巡礼の寺を詠んだものでしょうか。
「聖五月」は聖母マリアを祝うキリスト教に由来する季語ですが、ラッチンガー枢機卿のように、イエスは万人の救済のために自らを捧げた「究極の菩薩」であると解釈した聖書学者もいますから、この句は宗派を超えて、危機の時代を生きる人の希望を詠んだものともいえるでしょう。

定まらぬままの接種日梅雨に倦む  春愁
<秋童子(地)>
この調子では、本当にいつになるやら。

<丹仙(人)>
ワクチンの不言題として技ありの句でしょう。

ワクチンに関はりなしと蟻走る  寿美子
<春愁(天)>
蟻は蟻の生活がある。面白い

ワクチンのかくも迷走五月闇  秋童子
<寿美子(天)>
今の人類をずばり、五月闇に納得


・2点句

天草の古城の跡や幟立つ  丹仙
<しゐ(地)>
舟越保武さんの作品「原の城」の像が、風に向かってむっくりと立ち上がるさまが胸に浮かんできました。

丼池は糸へんの街鯉幟  素蘭
<春愁(地)>
糸へんの街、栄えていますか

薔薇アーチ潜りて十字切る童女  丹仙
<寿美子(地)>
ヨーロッパの映画にありそうなシーン、素敵です

人嫌ひサクラも嫌ひ白薔薇  素蘭
<翔河川(地)>
薔薇もひとも


・1点句

薫風の丘に村あり幟立つ  やんま
<春愁(人)>
さわやか

三代の女花摘む薔薇の家  秋童子
<翔河川(人)>
祖母娘孫が

接種後の卯の花腐たし蟄居かな  やんま
<明子(人)>
ワクチンを打った後はやはり蟄居した方が良さそうです。
季語がうまいと思いました。

庭の薔薇剪り届けたし母生きよ  明子
<実生(人)>
遠く離れても、母生きよ。

薔薇一輪大人食堂卓上に  しゐ
<秋童子(人)>
この一輪で、会場の雰囲気もガラリと変わったことでしょう。