第307回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:終戦日、朝顔、気候変動(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 終戦日
兼題U 朝顔
兼題V 気候変動(不言題)

8月17日(火) 投句開始
8月24日(火) 投句締切 翌日選句開始
8月31日 (火)  選句締切・翌日披講

投句: 春愁、寿美子、やんま、素人、実生、風子、丹仙、秋童子、翔河川、しゐ、英治、明子、素蘭
選句: 鈴居、風子、しゐ、春愁、やんま、秋童子、実生、英治、寿美子、明子、翔河川、素蘭、丹仙

披講

・9点句

終戦日神宮球場無観客  英治
<春愁(天)>
今は無観客の球場、嗚呼、ここから学徒出陣・・・別の感慨が!

<実生(天)>
学徒出陣、戦後生まれだけど残像あり。

<寿美子(地)>
一読学徒出陣の昔と,コロナ禍の高校野球が重なりました
何とか平和を維持してほしいと思いました

<素蘭(人)>
学徒動員の今昔、、、


・7点句

朝顔の明日咲くつぼみ数へをり  素人
<しゐ(地)>
朝も明日も「あした」。翌朝、間違いなく花開くであろうそのつぼみに、あしたの平穏を重ねて祈る姿が見える気がする。

<春愁(人)>
凡々たる生活の一齣を、上手く切り取った・・・

<やんま(人)>
毎朝の楽しみ。

<英治(天)>
観察日記か。

問われても語れぬ父よ敗戦忌  秋童子
<しゐ(天)>
語りたくても語れない何かを胸に秘めたまま逝ってしまった。

<やんま(地)>
それぞれの胸にある敗北感又罪悪感。

<英治(地)>
もうどうでもよい。


・5点句

秋出水地球の壊れゆく兆し  素人
<鈴居(地)>
不安の一言

<やんま(天)>
確実に進行する地球の温暖化。荒れ狂う気象。

アフガンのゆくえを祈る終戦日  風子
<鈴居(天)>
世界情勢は複雑を極めるばかり、そのなかに必ず必ず弱者が生まれる構図は何も変わっていないのでは。

<明子(地)>
地球上にまた命を脅かされる人々が・・・祈ることしかできないのだろうか

降りやうに怯えてゐたり秋の雨  明子
<秋童子(天)>
線状降水帯はもちろんのこと、最近の雨の降り方はただごとではありません。

<実生(地)>
災害を体験しないと怖さは分からない。怯え、いつも長雨には怯えている。


・4点句

あさがほ白下町気質受け継ぎて  春愁
<寿美子(人)>
下町気質の下駄の音が聞こえます

<翔河川(天)>
路地に咲く白い朝顔

朝顔の昇り行く手の深き空  しゐ
<鈴居(人)>
空に登って行く様がよい

<丹仙(天)>
「昇り行く」で読者の視線は朝顔にそって上方に動き。「行く手の」でその届かぬ先の方向に向けられ、「深き空」で無限に遠く底知れず深き蒼穹の実在に入っていくーそのような宇宙的な深淵を背景とする可憐なる朝顔の佇まいを実感させます。

かなかなや顔に眼のみの黙示録  英治
<寿美子(天)>
蝉と黙示録の取り合わせすごいと感銘

<丹仙(人)>
黙示録はさまざまな象徴に託して終末を語ります。かなかなは、記憶の中に沈んでいる敗戦の日を彷彿とさせますが「顔に眼のみ」とありますから、その聲は沈黙のうちに沈み込み、預言者は視ること以外のすべての感覚を奪われ、来るべき未来の破局の幻視者として、沈黙のことばをかたるのみ。俳句に黙示録を語らせる可能性を垣間見ることができました。

少女らの預言どおりや氷河消ゆ  丹仙
<秋童子(人)>
スウェーデン人の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんですね。彼女が始めた「気候のための学校ストライキ」は、いま日本の若者たちにも広がり始めていて、とても心強く思っています。

<明子(天)>
グレタさんの呼びかけを、今こそ全ての人が自分の事としなければ!


・3点句

痛いほど蒼すぎる空敗戦忌  春愁
<風子(天)>
湾岸戦争が始まった日も、ワールドトレードセンターが爆破された日も、真っ青の空でした。
終戦の日も真っ青だったと聞きます。蒼い空が怖いです。

唐箱に恩賜の煙草終戦日  寿美子
<素蘭(天)>
多くを語らずにきた人の眼差し…「8月15日」に象徴される日本への

土塊に鳥の骸や処暑の雨  風子
<英治(人)>
感じるものが。

<丹仙(地)>
気候変動による異常気象のせいか、処暑の雨のなかにも通常とは異なる不穏なものを予感させます。それを象徴するものが「鳥の骸」。何か、日本固有のアニミズム的な感性に映った終末意識を感じました。

畑より戻る朝顔萎む頃  明子
<しゐ(人)>
農にかかわる人の、自然に即した営みの心地よさが伝わる。

<翔河川(地)>
朝はきれいに咲いていたのに


・2点句

朝顔に傘さしかける雨三日  寿美子
<素蘭(地)>
天晴下町気質!

スパイの妻と呼ばれし祖母や敗戦忌  しゐ
<秋童子(地)>
戦前、治安維持法で逮捕された人の家族は、周囲からひどい言葉を浴びせられ村八分になりました。つい最近は元首相が、五輪開催に反対する人たちに「反日」という言葉を浴びせています。再び、危ない時代になりました。

そそくさと来て朝顔のごみ置場  英治
<風子(地)>
朝顔の情緒にも触れず、素っ気ない読みっぷりが魅力的です。

空仰ぐばかり八月十五日  明子
<春愁(地)>
碧すぎる空、ただ虚しく見あげ・・・


・1点句

朝顔や思い通りに生きるひと  翔河川
<風子(人)>
朝顔の蔓が自由奔放に伸びてあらゆる物に絡みつく様を、人の生き様と重ね合わせた。

朝顔や千代尼の見たる神のわざ  丹仙
<実生(人)>
つるべとられしもらい水、優しい花。孫の蒔いた朝顔とひまわり、ひまわりの茎に朝顔が。ひまわり優しく耐えていた。

ひび割れの地球の吐息荒南風  春愁
<翔河川(人)>
人間の所業

星飛ぶや白亜の地球明日の地球  素蘭
<明子(人)>
明日のテラに人類は存在するのだろうか