第31回句会桃李定例句会(11月)披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:夜寒、小春、再会(不言題)

(晩)秋または(初)冬の句
 雑詠または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)
は「夜寒」または「小春」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「再会」です。
11月15日(月)投句受付開始
11月22日(月)投句締切、選句開始
11月29日(月)選句締切、披講

投句: 涙笑、渓美、重陽、旅遊、楽人、葉子、木菟、省吾、悠久子、香世、碁仇、暁生、池之端、雲外、富章
選句: 旅遊、碁仇、香世、安康、葉子、雲外、涙笑、楽人、悠久子、暁生、重陽、木菟、池之端、富章、松

披講

・12点句

わが恋の行方や百舌鳥は贄を刺す  葉子
<旅遊(地)>
若さはうらやましい限り。私にはこのような句は詠めません。

<楽人(地)>
なんか切実ですねえ。

<重陽(天)>
深奥の期待と不安の交錯する心の動きが不気味
にさえ伝わってくる。

<木菟(地)>
 百舌鳥の贅刺しは、悲恋に似つかわしい。

<松(天)>
あまりにも俳句的すぎるものの多い中、ちょっとは変わっているかなと思いました。もっとも百舌の生け贄なるものを見たことはないからこれも文学上のざれごとか。


・10点句

小春日や鮒釣る浮子の揺れもせず  碁仇
<旅遊(天)>
のどかです。動かざること浮木のごとしとはいいですね。小春の句がたくさんあり
ましたが、この句が最上です。

<葉子(地)>
いかにも小春日らしいのんびりした風景。その後釣果はあったのであろうか。

<涙笑(人)>
幽玄な閑けさと季語が上手くマッチしてます。

<楽人(人)>
まさに天下太平、人にとっても鮒にとっても。

<暁生(人)>
太公望の心意気と心の広さを感じます

<松(地)>
なんもないとこがいいんだわ。ふと気がつく、水面の上に幽霊など。


・7点句

交渉の相手は2代目鮟鱇鍋  香世
<雲外(地)>
何の交渉なのか、いくら考えてもピタッとくるものがない。
二代目とは高校の同級生だったのかしらん。
それで、一緒に鍋を突っつくことになったのかしらん。
どうもよく判らない。
でも、この句の魅力に勝てないで。

<悠久子(地)>
「鮟鱇鍋」で、なんとなくユーモラスな雰囲気もある再会。
おそらく二代目の幼い日をご存知の作者のあたたかさも伝わります。

<富章(天)>
鍋の湯気の向こうがわに若い頃の先代そっくりの2代目。
そんな情景を感じてとても心があたたまりました。


・6点句

夕日の落ちても赤し烏瓜  雲外
<安康(天)>
消えてしまった赤(夕陽)が残っている赤(烏瓜)を引き立てる、面白い効果です。夕陽の赤と瓜の赤をともに現にあるものとして描けば、それは単なる描写に終わるのですが、消えていったものと現にあるものが共存するところに人間の記憶、意識が介在し、景中情ありとなるのでしょう。
曄歌にしてみたい作です:落赤鴉。豊頬猶留、紅熟瓜。:拙き訳、お許しを

<葉子(天)>
初冬の風景のなかで人の目を引く烏瓜の赤さがよくとらえられている。木守りの柿の句は割に目にすることが多いが。

小春日やふとんふくふくふくらんで  葉子
<安康(地)>
言葉の遊び、秀逸だと思います。語呂あわせが頭韻の効果を生み出していて調子がよいと思いました。
曄歌にしてみたい作です:小春陽。負暄馥馥,舗蓋芳。:拙き訳、お許しを

<雲外(人)>
日中の温もりが残っている蒲団に入ったときの
あのささやかな至福への期待感が一層、
「ふとん」を「ふくふく」と「ふくら」ませてる。

<楽人(天)>
どこまでふくらむんでしょうね。ほとんど万年床と化している私の寝床とはえらい違いのようで…。今度、布団干そう。


・5点句

 置き水の中ですみたる枯紅葉  涙笑
<旅遊(人)>
秋を身にしみて感じます。清澄ということばで評すべきでしょうか。

<碁仇(天)>
置き水の底に沈んだ枯紅葉。だがそこには、落ち葉の元となった木もあるはず。
また、すばらしい庭を思い浮かべることもできる。
たった一枚の枯紅葉から、空間の広さと時間の流れを感じ取ることができた。

<安康(人)>
澄んでいるのは水であって枯紅葉ではありません。つまり、この句では言葉の秩序が断層のようにヅレを起こしています。しかし、このズレにこそ紅葉を澄んでいると見る作者の驚きがこめられていて、そのはっと目を見はる感動が伝わってきます。つまり自然は秩序を乱しませんが、人間の意識にはそれが起こるということでしょうか。一吟一驚の佳句だと思います。

人恋ひて恋ひて届かぬ夜寒かな  木菟
<香世(天)>
すぐに決まりました。天!
素直で、胸にすっと入ってきます。
いい句です。

<悠久子(人)>
好きな句でした、のひとこと、なのですが、「届かぬ」がいいのでしょうね。

<松(人)>
先生、さびしいの、下宿って。ほら、親もいないでしょ、弟とかも。わかる、わかる。とつい相づちをつってしまう。でも、それって当たり前なのよね。


・4点句

時雨るるや納戸の隅の抱き人形  葉子
<重陽(人)>
詠み手の幼い頃の追憶の句であろうが、読み方によっては
母親の追憶の句にも読める曖昧さが残るが・・。

<木菟(天)>
 再会したのが抱き人形では、艶めいたところが無くて物足りないが、この
情景はいかにも余情があって心に来ます。


・3点句

木枯らしやホームの端で人を待つ  楽人
<暁生(天)>
不安と期待の心がよく分かります

海暮れて浜菊ほどの明かりかな  旅遊
<碁仇(人)>
詩情を感じた。情景も浮かんでくる。
句の形もよく整っていると思う。

<香世(地)>
たぶん、イメージだと思います。
でも、「浜菊」がおしゃれで可憐で効果的。

太古より刻みつづけし波高し  涙笑
<悠久子(天)>
2000年を目前にしての感慨もあるような、深遠さと雄大さ。

いつの日か肥やしとならむ落葉風  碁仇
<涙笑(天)>
いいですね。輪廻を想起させます。再会ですよね。(^.^)v

 鵙日和ズック三足洗ひけり  渓美
<雲外(天)>
洗った子供さんのズックが三足仲良く
小春日和の軟らかな陽射をあびて、
竹の垣根に刺さっている光景が目に浮かびます。
まだ餌が豊富なのか鵙の声も穏やかです。


・2点句

夜は寒しされば紅茶はいかがです  悠久子
<碁仇(地)>
発想が新しい。口語体にしたのもうなずける。
「はい、ください。」と思わず言いたくなった。

いさかいの虚ろにすぎし夜寒かな  重陽
<暁生(地)>
いさかいは寂しくまた心寂しいものですね

咳ひとつ響きて家は寝静まる  香世
<涙笑(地)>
深夜の静かさがよく出ています。

使ひの児空缶蹴り蹴り小春かな  渓美
<富章(地)>
小春ののんびりした日に遊びながら帰るお使いの男の子を
思い浮かべました。
おもわず、ぼーっとしてしまうような感じ。

ひたすらに慕情閉ざして暮るゝ秋  木菟
<重陽(地)>
閉ざそうとするから慕情がなおつのる、という
切ない感じが伝わってくる。「暮るる秋」との
呼応が良い。

うどん屋の提灯の赤夜寒し  碁仇
<池之端(地)>
「夜」の暗さに「提灯の赤」がよく映えていた。さらに
居酒屋とかラーメン屋とかではなく、うどん屋という言葉にしたのも
何か柔らかくて温かいイメージを、 この色のコントラストに
加えていてよかった。しかし技術的な上手さが先立ちすぎると滑稽に
なることがあると思うので、私ならば夜寒しを別な言い方にして
出来すぎたバランスを崩すと思います。


・1点句

小春日に誘われ庭で爪を切る  富章
<香世(人)>
まさに、実感です。
今年は小春日が多く、わざと庭に出て、欠伸や背伸びもしました。

返り花その人らしき年輪の  悠久子
<木菟(人)>
 倒置法で余情があって、返り花に似た年輪の、ほのぼのとした人柄がしの
ばれるようです。

バイバイって帰れば急に夜寒なり  池之端
<富章(人)>
特に一人暮らしの人間にはとても分かる心情です。
友達と別れて急に風がつめたくなる一瞬。

後ろ手に蒲団ひき上ぐ夜寒かな  雲外
<葉子(人)>
誰でも一度は経験のあること。思わずにやりとするむきもあらん。