第313回桃李2月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:春寒、紅梅、絵踏

題詠または当季雑詠

兼題T 春寒
兼題U 紅梅
兼題V 絵踏

2月15日(火)投句開始
2月22日(火)投句締切 翌日選句開始
3月01日(火)選句締切 翌日披講

投句: 素蘭、寿美子、しゐ、春愁、やんま、風子、鈴居、実生、白馬、万歩、翔河川、明子、秋童子、丹仙
選句: やんま、白馬、春愁、風子、しゐ、万歩、寿美子、鈴居、実生、素蘭、秋童子、翔河川、明子、丹仙

披講

・15点句

春寒し錻力の匣のがらんどう  素蘭
<やんま(地)>
そんな雰囲気をとらえて妙なり。

<春愁(天)>
日本の戦車の歴史を、思い出しました

<風子(天)>
「春寒し」は今、ここにを表し、それに比べてブリキの箱は、古き良き時代の昭和を思い起こして懐かしむ。「がらんどう」から、過ぎ去ってしまった寂しさを感じる。

<実生(天)>
捨てられません。

<翔河川(地)>
お米でしょうか

<丹仙(地)>
「錻力の匣」という古めかしい表現から文明開化の明治と戦乱の昭和の間に挟まったつかの間の大正時代にタイムシフトしたような、どこか鬼気迫る印象を受けました。


・11点句

井戸一つ残る山城春寒し  寿美子
<やんま(天)>
立てこもるには水が命。

<万歩(地)>
取り残された山城の井戸に刻まれた歴史を思う句。感慨が伝わります

<鈴居(天)>
寒いなかの暖かみがある

<丹仙(天)>
山城に立てこもった敗者達の記憶をかすかに遺す井戸に注目したところ、春寒の季語が生きています。


・8点句

絵踏して生きよと語る受難像  丹仙
<白馬(天)>
許します。しっかり生きて下さい。

<素蘭(天)>
While there's life there's hope.
命あっての物種と、、、

<明子(地)>
信仰の懐の深さに思いをはせて・・・

紅梅や母にまだある頬の艶  寿美子
<白馬(地)>
懐かしい母眼裏に。

<万歩(天)>
紅梅の咲く頃になって、余命少ない母親の頬に赤みがさしてきたという感慨がよく出ています

<実生(地)>
つや。亡くなった母を思い出しました。

<翔河川(人)>
ままだまだ


・6点句

権太坂投げ込み塚の薄紅梅  春愁
<寿美子(天)>
薄紅梅が投げ込み塚の哀史を思わせて、心惹かれます

<明子(天)>
紅梅の色の薄さが投げ込み塚を巡る哀しさを物語っているようです


・5点句

春寒しキエフに迫る戦車列  丹仙
<鈴居(人)>
戦禍は繰り返される

<秋童子(天)>
行く手阻むは素手の老若
大勢のキエフ市民が丸腰で抵抗を続け、戦車の前方に立ちはだかっています。

<明子(人)>
心の底から寒さが募ります


・4点句

絵踏めどもなお近づけるみくにあり  しゐ
<翔河川(天)>
許したまう

<丹仙(人)>
毎年繰り返される「踏み絵」の後に、かならず「信心戻し」の儀式をして、なによりも生き延びて宣教師の再来の約束を待ち受けていた隠れキリシタンの記録があります。この句は、そのような隠れたるキリスト者に捧げたいと思いました。

春寒や名札の目立つ植物園  明子
<しゐ(地)>
積もった枯れ葉の下には幾千もの芽が、名札を覆い隠すほどの繁茂を夢見て息づいていることでしょう。

<秋童子(地)>
花々もまださびしい植物園。名札ばかりが目について。


・3点句

紅梅や女三代タカラヅカ  素蘭
<風子(人)>
紅梅は華やか。女三代タカラジェンヌとは。

<鈴居(地)>
どういう句なのか教えて欲しい。

平らかや踏絵拒みし果ての果て  秋童子
<しゐ(天)>
今もどこかで、必死に何かを拒もうとしている者への、静かなエールのようにも思えてきます。

パソコンの機嫌不きげん春寒し  春愁
<風子(地)>
全く、パソコンの制御不能な振る舞いを感じる時がある。

<素蘭(人)>
というより今日も「不安定」.


・2点句

絵踏なりパンデミックの街模様  実生
<寿美子(地)>
コロナ禍は人類への神の絵踏でしょうか
世の中の変転の激しさに恐れさえかんじます
本当はもっと明るい世界を歌いたいのに残念です

改憲へ軋む歯車春寒し  秋童子
<万歩(人)>
国の内外がざわつくに便乗して、改憲の声が声高になる世相に対して春寒の思い。

<寿美子(人)>
平和憲法を順守する日本は非核化も風前の灯
世界中軍備拡張 乗り遅れまいとする報道ばかりです
誰か歯車にオイルを差してくれないか!

 

紅梅やあやせば笑いう赤ん坊  風子
<やんま(人)>
人は笑顔に癒やされる。

<しゐ(人)>
平易な表現の向こうに、どこまでも広がっていく明るさを感じます。

静かなる建築現場春寒し  白馬
<春愁(地)>
浅き春の朝の景・・・

料峭の空伐採の音高く  明子
<素蘭(地)>
諏訪大社式年造営御柱大祭の日程も粛々と…


・1点句

禁書をば踏絵のごとく読みふける  万歩
<春愁(人)>
発禁本???

紅梅のキャラメル甘くランドセル  翔河川
<秋童子(人)>
あまりの懐かしさに紅梅キャラメルに一票。
幼いころこのキャラメルを何度も買ってもらい、箱の中の巨人軍選手のカードを集めました。川上、千葉、与那嶺、樋笠、内藤・・・。調べてみると発売は昭和26〜29年。なんと約70年も前のことだったとは!

心中に踏絵なるもの抱え込む  風子
<実生(人)>
心の中にはたくさんあります。

春寒を理由に肩を引き寄せて  翔河川
<白馬(人)>
若き頃の甘酸っぱい記憶。