第315回桃李4月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:鳥雲に、復活祭、避難民(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 鳥雲に
兼題U 復活祭
兼題V 避難民(不言題)

4月22日(金)投句開始
4月29日(金)投句締切 翌日選句開始
5月06日(金)選句締切
5月07日(土)披講

句会開催時期が遅れましたことをお詫びします。

投句: 万歩、素蘭、やんま、春愁、風子、白馬、鈴居、明子、実生、秋童子、寿美子、しゐ、翔河川、丹仙
選句: 寿美子、春愁、風子、鈴居、万歩、しゐ、秋童子、翔河川、実生、白馬、明子、丹仙

披講

・13点句

鳥雲に湖面の黙の深まりぬ  やんま
<風子(天)>
鳥たちは去り湖に静けさが深まっていく。静謐な空気感が漂う。
賑やかだった家族が去っていき、老夫婦だけが取り残された悲哀感と共に、静けさの中に平和感を取り戻す現実と重ね合わせた上質の風景画を想う。

<鈴居(天)>
静けさに動きがあってよい。

<しゐ(人)>
その静けさを感じる人の、深い思い。

<秋童子(天)>
飛び去ったあとの、何と静かなことか。

<丹仙(天)>
叙景の句が同時に内面に深く沈潜するところ、群を抜いて素晴らしい俳句と思いました。


・8点句

足弱き一羽も混じり雀の子  しゐ
<寿美子(地)>
雀の子にもうくらいなの悲劇を重ねられる作者に共鳴します

<翔河川(地)>
ハラハラと

<実生(天)>
早く早く避難して。若いころ雀の子をくわえて妻に見せに来ていた猫も年取って鼻先に来ても無関心。長生きしてと祈るばかり。

<丹仙(人)>
「避難の列に車椅子の子供を見て」という穂難民の状況に一茶の俳句のような弱者への共感を重ねている点に惹かれました。


・7点句

願はくば戦無き地へ鳥雲に  明子
<万歩(地)>
飛び立つ鳥たちに幸あれと願う気持ちが現れています

<秋童子(人)>
旅の無事を祈るのみ。

<翔河川(天)>
安住の地へ

<実生(人)>
危ない国には行かないで。


・6点句

身ひとつの流浪の民よ春寒し  秋童子
<白馬(人)>


<明子(天)>
突然生活の全てを奪われた人々の怒り、悲しみは言葉で言い尽くせないと思います。胸の中が凍り付きそうです。

<丹仙(地)>
ウクライナからの避難民の状況をよく表していると思いました。


・5点句

春嵐けふは流浪の民となる  やんま
<寿美子(人)>
流浪の民の歌曲好きで良く歌いました
しかし今 朝毎のニュ‐スを追っていると避けては通れない
民族の悲しみの様々が思われます。

<しゐ(地)>
爆音の中に立ちすくむ姿におのれを重ね、身を震わせている。

<秋童子(地)>
あまりに突然の人生の変転。

望郷のショパンの像や鳥雲に  寿美子
<春愁(天)>
ウクライナにあるショパン像のことでしょうか。確かに・・・

<明子(地)>
ついに故郷に帰れなっかたショパン。さぞ鳥たちが羨ましかったことでしょう。


・3点句

朝焼けの湖はなれ鳥雲に  翔河川
<万歩(天)>
希望を抱いて飛び立つ鳥ではあるが、前途には不確かな不安が潜んでいる、という句意と理解しました

飢えし日の記憶さだかに大根飯  寿美子
<白馬(天)>


国超えて平和を祈るイースター  鈴居
<寿美子(天)>
何もできないもどかしさ
神様にも仏様にもお願いしたい❣一日も早くウクライナに平和が戻ります様に

射干玉の夢より黄金染卵  素蘭
<翔河川(人)>
花より団子

<実生(地)>
ヒオウギは庭に、鳥の所為かあちこちに自生する。実は美しい黒だけど餌のない時期の鳥にとって黄金かな。イースターにお返しに卵を産んだりして。

復活祭主よ死に給うことなかれ  白馬
<しゐ(天)>
「人道」というものが死にかけているように見える今、「主よ、誰の中にも、どうか生きていてください」という叫びのように思えます。


・2点句

石楠花に小さき巣あと鳥雲に  実生
<鈴居(地)>
小鳥も活動の時期に

鳥曇気水域の模糊として  万歩
<春愁(地)>
ぼんやりとした花曇りの景

ひと気なき人道回路リラの雨  春愁
<風子(地)>
人道回廊は実際どうなんだろうか?  リラの雨が心に沁みる。「ひと気なき」に心細さを感じる。国際社会は嘘つきプーチンに人道回廊を確約させることは出来るのか。

コサックの唄声ひびけ月朧  風子
<白馬(地)>



・1点句

戦没者無数の遺影復活祭  丹仙
<万歩(人)>
繰り返される戦いの傷痕が絶えることがない

染卵ドールハウスに隠さるる  明子
<風子(人)>
大きな手が小さなドールハウスにぬっと入って染め卵を置いた。シュールなイメージ。
子供たちは真剣な眼差しで卵を探す。まさかドールハウスの隠れているとはつゆ知らず。

復活祭尼僧に道を問はれたる  やんま
<春愁(人)>


砲弾に瓦礫の教会復活祭  秋童子
<鈴居(人)>
終わりの見えない戦い季節だけが巡ってゆく。

パンドゥーラ奏きて歌ふは母の國  丹仙
<明子(人)>
無季の句ですが、あの歌声は本当に美しく母国への思いが溢れていましたね。