第319回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:立秋、花火、終戦(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 立秋
兼題U 花火
兼題V 終戦(不言題)

8月15日(月)投句開始
8月22日(月)投句締切 翌日選句開始
8月29日(月)選句締切
8月30日(火)披講

投句: 寿美子、素人、しゐ、素蘭、風子、春愁、鈴居、白馬、秋童子、翔河川、英治、明子、丹仙、実生
選句: 寿美子、英治、春愁、素人、しゐ、実生、翔河川、秋童子、白馬、明子、素蘭、風子、丹仙

披講

・15点句

人の愚の果て八月の空の黙  明子
<寿美子(天)>
八月の空の黙は恐ろしい
連日の、天変地異が神様の怒りではありませんように

<春愁(人)>
八月の空に向かって、不戦を誓いたい

<素人(天)>
八月十五日は人の愚をじっくりと考えるべき日です。

<秋童子(天)>
「人の愚の果て」。日本の八月は、まさしくその通りですね。

<白馬(天)>
神よ許し給え

<丹仙(地)>
「人の愚」と「空の黙」と言い切ったところ、言葉にならぬ作者の憤りを感じさせます。


・9点句

秋立つやはたりはたりと象の耳  寿美子
<英治(地)>


<しゐ(天)>
象の耳が作ってくれた風がゆったりと、静かに、ここまで届いてきそうな気がします。

<素蘭(天)>
残暑ながら何気に爽やか

<丹仙(人)>
立秋の季節感を象の耳の動きで表したところに配合の妙を感じました。

手花火に闇壊されて造られて  しゐ
<英治(天)>


<翔河川(天)>
闇を殴りつけ飲み込まれて

<風子(天)>
「闇壊されて造られて」なかなか出てこない言葉をいともすんなり言って見せた秀句。


・8点句

ラヂオから「茶色の小瓶」浮いてこい  春愁
<寿美子(地)>
私たちの青春の入口、貧しかったが前を向いて、心豊かだったようなあの頃
グレンミラーに浮いてこい!!

<明子(人)>
あの軽快なリズムは戦後の象徴。

<風子(地)>
「茶色の小瓶」のメロディーを聴いて、蘇る感覚がある。スタンダードジャズをこよなく愛する者の一句。

<丹仙(天)>
敵性音楽として禁止されたグレンミラーのジャズのメロディーが、ラヂオから聞こえてくるという設定が終戦の不言題として面白い。「浮いてこい」という季語も、隠れていたものが浮かれでてくるような印象があり、ジャズのメロディーとよく合っています。


・6点句

蝉時雨侵略の過去は我らにも  しゐ
<素人(地)>
思いを馳せるべきです。

<実生(地)>
子供のころはミンミンゼミを捕ったらエリート。アブラゼミの天下だったけど、今はミンミンゼミもクマゼミに乗っ取られそう。暑いから。つくつく法師が鳴いている。

<秋童子(地)>
勝手な理屈で侵略戦争を続けるプーチン大統領。私たちも、まるでかつての軍国日本を疑似体験しているようで、日々胸が痛みます。


・5点句

かなかなや児童に軍歌禁止令  英治
<明子(天)>
事実だけを述べているが、百八十度価値観がひっくり返った当時の混乱をくっきりと見せてくれる。これこそ終戦。微かな安堵感も伝わってくる。

<素蘭(人)>
加えて教科書に墨で黒塗り 已矣乎デモシカ処世術、、、

<風子(人)>
戦争を鼓舞する様な歌は子供たちに聞かせたくないですね。かなかなやーから先人の嘆きや悔恨の念が聞こえて来る。二度と愚行を繰り返すなーと。「軍歌禁止令」は、逆転の発想と受け取りました。なかなかな句です。

父帰るそして我あり葛の花  風子
<しゐ(地)>
どんな戦場から帰ってこられたのか、、、帰れなかった多くの命を重く背負って、、、。
そして今ある「我」の命の尊さを思います。

<白馬(人)>
この命大切にしたい

<明子(地)>
中七のそして我あり、が重い。戦争は命をつないでゆくという
一番大切な営みを無残に踏みにじってしまう。


・3点句

悪戯の鼠花火に拳固かな  秋童子
<実生(天)>
神田の祖父母の家を思い出した。鼠花火で祖父に叱られたこと。

浦上のマリア哭して今朝の秋  丹仙
<寿美子(人)>
朝夕のウクライナのニュースに心が痛みます
母が好きだった長崎の鐘の歌を口ずさみ正に今朝の秋に
符合すること、改めて感銘しました

<素蘭(地)>
御意

鉾船の舳先に残る花火屑  寿美子
<春愁(天)>
視点が面白い

立秋の季感はずれてゆくばかり  素人
<しゐ(人)>
それぞれの季節らしさをほとんど味わえないまま過ぎて行く一年に、寂しさと不安を覚えます。

<白馬(地)>
今年だけであってほしい


・2点句

手花火に家族の絆確かめる  素人
<春愁(地)>
確かに、家族の絆確かめるいい手段

振り向けば夢のごとあり遠花火  明子
<翔河川(地)>
時間が巻き戻って


・1点句

朝雨の木々に光りて秋立ちぬ  明子
<翔河川(人)>
葉や枝に輝いている

かにかくに憂き世乱れて秋に入る  秋童子
<素人(人)>
その通りですね。何とかならんものでしょうか。

来る秋にくり抜かれしは埴輪の眼  翔河川
<英治(人)>


何もかも終わったのだと空高し  素人
<実生(人)>
空高し、きっと見上げたろうな終戦日の父。

立秋やまたもいくさを思ふ日々  英治
<秋童子(人)>
国内外、また一段ときな臭くなってきて。