第321回桃李10月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:秋の雨、鳥渡る、無花果

題詠または当季雑詠

兼題T 秋の雨
兼題U 鳥渡る
兼題V 無花果

10月15日(土)投句開始
10月22日(土)投句締切 翌日選句開始
10月29日(土)選句締切 
10月30日(日)披講   

投句: 鈴居、実生、寿美子、しゐ、白馬、翔河川、素蘭、秋童子、英治、春愁、明子、風子、丹仙
選句: 寿美子、風子、鈴居、しゐ、秋童子、翔河川、明子、素蘭、英治、実生、春愁、白馬、丹仙

披講

・9点句

鳥渡る気配に仰ぐ今朝の空  しゐ
<秋童子(人)>
ふと見上げると・・・。

<翔河川(地)>
ふと見上げると

<明子(天)>
季節が移り変わり行く、ほんのわずかな変化を感じて空を見上げている作者の
繊細な感性が素敵です。鳥たちの生き生きとした姿が見られることへの期待も
感じられます。

<英治(天)>



・8点句

緋袴の巫女の小走り秋の雨  寿美子
<明子(人)>
雨に滲む緋色が美しい。抑えた色調の日本画のようです。

<素蘭(人)>
狐雨かも?

<春愁(地)>
景が見える

<白馬(天)>
急な雨に。色っぽい。

<丹仙(人)>
非袴の巫女と秋の雨の配合がなんとも鮮やかな印象を与えます。


・6点句

半券は胸のポケット秋時雨  素蘭
<寿美子(天)>
素晴らしかった催しの余韻の充足感が 秋時雨にうかがえて素敵

<風子(人)>
何だろう。この半券は、映画館の入場券?それとも何か賭け事でもした時の証明?想像は膨らむ。劇場を出れば秋時雨。余情を楽しんでいる節がある。

<実生(地)>
半券誰と。いいなぁ。

夢かなう居場所もとめて鳥渡る  風子
<秋童子(天)>
それが理由だったとは!

<実生(天)>
必ずあります。どんな齢でも。


・5点句

娘の訃報告げる葉書に秋の雨  実生
<しゐ(天)>
亡き人の魂が、どうか、秋の雨のように静かで穏やかでありますように。

<秋童子(地)>
つらい知らせに涙雨が。


・4点句

鳥と分け合ふ採りきれぬ無花果は  明子
<翔河川(天)>
全部は採らずに

<実生(人)>
無花果苗買います。

二の腕の延びて無花果もがれをり  英治
<鈴居(地)>
二の腕の白さと無花果の白さ柔らかさの句でしょうか。こういう句は句会で会話して情景を聞きたくなります。

<素蘭(地)>
中学生の頃までは無花果や柿の樹に登ったものですが、今や見上げる側になって、ハラハラ…


・3点句

秋の雨犬は散歩を待ちきれず  翔河川
<鈴居(天)>
秋の一コマでしょうか。

無花果熟るチグリス川の風揺れて   春愁
<風子(天)>
イチジクから「チグリス」を見つけた。飛躍がすごい。中7、下五に何となくそうだと思わせる力がある。ヨーロッパの片田舎のある印象深い景を思い出す。古い教会の庭に無花果が鈴なりに実っていた。

無花果の秘め持つ花を独り喰む  しゐ
<丹仙(天)>
実の中に秘められている無花果の花のみずみずしい味が思い出されます。「独り」が「秘め」と呼応していますね。

銭湯の煙ぼかして秋の雨  翔河川
<春愁(天)>
秋の氷雨がしとしとと

夕映えの国境稜線鳥渡る  明子
<素蘭(天)>
翼持たざる背悲しゑ

シドッチの祈り忍べば鳥渡る  丹仙
<しゐ(地)>
長い幽閉の身に、渡り鳥の群れはどのように見えていたでしょうか。

<春愁(人)>
シドッチの望郷の祈り


・2点句

秋の雨地底に浸みるレクイエム  丹仙
<英治(地)>


無花果のちぎれば白い血をながす  風子
<鈴居(人)>
これだけ世の中で悲惨な情勢、事件、事故があると何でもないしぐさに心が動いてしまいます。

<英治(人)>


浮舟の里曲のあたり鳥渡る  寿美子
<丹仙(地)>
鳥渡る情景に、浮舟の故事ないし物語の情念が巧みに配合されています。

小鳥来るいつもの路地の紙芝居  春愁
<明子(地)>
紙芝居を楽しみに集まって来る子供たちが小鳥たちの姿に重なります。

袖で拭く車窓の曇り秋の雨  明子
<寿美子(地)>
なにげなく読み込まれて、こんな体験あります。

鳥渡る歴史の裁きなど待たぬ  素蘭
<風子(地)>
鳥が渡って行く時間の流れ。そして謎めいた現実を白黒はっっきりさせるには、何年も時を経た後のこと。
ウクライナにおけるプーチンの諸行に『歴史の裁きなど待てない』と激しい思いを吐露されているようにも読み取れます。

イスラムの乙女の祈り無花果の夢  丹仙
<白馬(地)>
ミルク流れ無花果熟す


・1点句

薄毛布昼寝の外は秋の雨  鈴居
<しゐ(人)>
浅い眠りから目覚めても、まだ雨は降り続いている。

逆算の余生に拍車秋黴雨  春愁
<寿美子(人)>
重ね重ねの逆算というか誤算 同感です

鳥渡る今宵のねぐらは何処ならん  白馬
<翔河川(人)>
どの辺りまで

鳥渡るまた帰り来る日のために  翔河川
<白馬(人)>
必ず戻ってきてね。