第33回句会桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:年惜しむ、椿、サンタクロース(不言題)

冬の句 雑詠または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)は「年惜しむ」または「椿」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、「サンタクロース」です。

12月15日(水)投句受付開始
12月22日(水)投句締切、選句開始
12月29日(水)選句締切、披講

投句: 碁仇、楽人、葉子、旅遊、省吾、香世、木菟、英梨子、千依、智志、真、上智、剛、純奈、渓美、悠久子、重陽、池之端、ひとし、雲外
選句: 葉子、旅遊、雲外、楽人、松、碁仇、省吾、重陽、香世、木菟、暁生、悠久子、上智

披講

・9点句

馴鹿の橇の飛び越す冬銀河  葉子
<旅遊(天)>
発想がすばらしい。ただし、やや硬い感じはするが。

<雲外(天)>
まず句の柄が大きくて、メルヘン風なのがいいですね。
当今、冬空に大きく横たわる天の川なんて何処へゆけば
見られるのでしょうか。
「馴鹿と橇跳びこせり冬銀河」とやった方が
動きがあってよかったか、どうか。

<碁仇(地)>
景の大きさが気に入りました。夢のある句ですね。

<暁生(人)>
きれいですね


・8点句

書を読まぬ乙女ら多し一葉忌  旅遊
<葉子(人)>
本当に近頃の乙女たちは顔黒、白口紅(?)厚底ブーツでおしゃれしているつもりでも、心を飾ることを知らない。常々嘆いている教師は大いに共感。

<楽人(地)>
いや、全く、嘆かわしいですね。

<木菟(地)>
 確かにそんな感じを受けますね。いくら美人でも頭が空っぽでは
興ざめですね。

<悠久子(天)>
一葉が小説を書いた頃に、書を読む乙女が今よりも多かったとも思えないのだが、
それにしても、現代を言い表しているような気がして。


・7点句

日溜まりの猫のあくびや落ち椿  葉子
<楽人(人)>


<碁仇(天)>
なんとも不思議なとりあわせ。椿の句としては異色です。
それでいてなんとなく納得させられる一句でした。

<省吾(天)>
わが家の老猫は、最近狭い庭の日当りの良い場所で丸まって過ごす
ことが多くなりました。のんびりとして穏やかなようですが、猫の
体は傷だらけになっています。


・6点句

年惜しむ気持ちもゆとりも無い今年  省吾
<松(天)>
しっかり生きてはりますな!

<暁生(天)>
生きている毎日って 本当に忙しいですよね

年惜しむ波紋の亀はゆるやかに  池之端
<楽人(天)>
静かな雰囲気に惹かれます。
年末だからと忙しがっているのが、なんだか馬鹿みたいになってきますね。

<重陽(天)>
「波紋の亀」の修辞が良い。気品のある句。


・4点句

つらきこと続き続きて冬至かな  ひとし
<松(地)>
ホンマ、人生大変だっせ。

<省吾(地)>
無抵抗の弱者に平気で危害を加える今の世の中、聴くにつけ
思うにつけ、悲しさつらさをつのらせます。

脳に咲くオルゴールの音氷点下  池之端
<雲外(地)>
シュールレアリズムというのか、新感覚派というのかしらん。
この句会にとっては、実に新鮮です。
そういえば川崎展宏とかいう俳人いますよね。

<重陽(地)>
「脳に咲く」の不思議な表現が、氷点下の感じを強くしている。

冬耕に従ふ鷺の四五羽かな  雲外
<碁仇(人)>
トラクターが耕した土の中から冬眠中の蛙とかがでてくる。
それをもとめて鷺がついていっているのでしょう。
最初一羽の方がいいと思いましたが、四五羽とすることで
トラクターを連想させる仕組みになっているのですね。

<重陽(人)>
「冬耕に従ふ」が情景を想像させる。

<香世(地)>
絵のように、浮かびます。
従うとはどのような雰囲気をさすのでしょうか。
並びかたでしょうか。

かのひとを椿のもとに立たせたや  木菟
<香世(天)>
しっとりした日本美人。桜より椿が似合うかも。
桜とは違うはかなさがあります。

<悠久子(人)>
よほど美しい椿を見ての句なのでしょうか。「椿」からの創作でしょうか。
いずれにしても、「かのひと」の平仮名が美しいです。


・3点句

蟻一匹櫨の落葉に動かざる  重陽
<葉子(天)>
小さな命の終焉をいとおしむ気持ちが良く出ている。

枯れてなお形とどめる赤の花  千依
<上智(天)>
花は枯れる。枯れた花に目を向けることは少ない。目に入っていても意識されない。かと思うと咲いている花もどの程度よくみているかといわれると自信がなくなってくる。「山路きて何やらゆかしすみれかな」(?)というようにはいかない。しかし作者は枯れた花に目を向け、心をなにかがとらえたのである。それは赤なのか?それとも「枯れた」「美しくない」姿なのか?いや、そのいづれでもあろう。枯れると死ぬは通じる。赤、それは生命に通じる。死して尚生きるものへのあこがれ、それが無意識のうちに心に枯れた赤い花としてあらわれたのだろうか。

通されてほんのり紅の斑の椿  悠久子
<木菟(天)>
 きれいな句ですね。通された座敷のたたずまいが目に浮かぶようです。

焼き菓子の香る厨で毛糸編む  楽人
<香世(人)>
オーブンのそばで、クリスマスケーキが焼き上がるのを待つ母親。
でも、なぜか遠い日のように感じます。
なつかしい母親像です。

<悠久子(地)>
しあわせな若妻、と想像したいけれど、案外違うのかもしれない。
現に私も久しぶりに編物をしているし。


・2点句

からっかぜうねる木立と我の影  上智
<旅遊(地)>
身を切るような冬の風に、人も自然も震えているさまが見事描かれています。

重ねあう唇椿になりにけり  池之端
<暁生(地)>
ああ、そういえば・・・・遠くなりにけり

裏路地の椿に宿る薄日かな  楽人
<葉子(地)>
裏路地と薄日とがうまくマッチしている。きっと咲いている椿もそれほど沢山ではないのではあるまいか。

冬の日や虚空に消えし悲しみも  ひとし
<旅遊(人)>
重苦しい冬の空にふと感じること。共感を呼ぶ句と思います。

<木菟(人)>
 少し甘えたような感じがとてもいい。

鈴の音にひたりと止まる街の音  智志
<上智(地)>
言葉ではうまく表現するのが難しい「音」をとてもうまく表現している。「鈴の音」というとても微細な音のなかに、詠み人も含めた「街ゆく人々」の姿が吸いこまれていく様子がよく伝わってくる。また「ひたり」という言葉による効果も大きい。詠み人が抱いていたのは"静"のイメージではないだろうか。「ひたり」という言葉はそうしたイメージを換起させるような手触りをもっている。


・1点句

木枯らしに離れゆく子の背と影と  ひとし
<省吾(人)>
子供は成長するにつれあっさりと親離れするのに、精神的に
いつまでも子離れしていない自分に気がついて、唖然。

韓信の生まれ変はりて虎落笛  碁仇
<雲外(人)>
人物中国志を読んでいたのか。
股くぐりの恥辱に堪えたのに誅殺されてしまったので
怨霊となって叫んででもいるように
窓外の木枯らしを聴いたのかしらん。
句としては韓信より「知盛」とか「義仲」の方が素直に読めますが。

飼いねこの寝る位置変わる気がつけば冬  英梨子
<上智(人)>
猫が主題となっているのですが、この句は寒がりの猫が寝る場所を季節によって変えるということによって、その時期を感じるという内容がとてもかわいらしくも、また生活の中での小さな発見として、とても面白いなと思いました。人間よりも猫の視点で季節を感じるということ、とても楽しい俳句です。

2000年なったところでなにもなし  剛
<松(人)>
なんもないのが一番よろし。