第341回桃李6月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:蛍、短夜、紫陽花

題詠または当季雑詠

兼題T 蛍
兼題U 短夜
兼題V 紫陽花

6月15日(土)投句開始
6月22日(土)投句締切 翌日選句開始
6月29日(土)選句締切 
6月30日(日)披講   

投句: 寿美子、春愁、白馬、風子、素蘭、素人、しゐ、実生、秋童子、明子、翔河川、ヨアヒム、丹仙
選句: 白馬、しゐ、素蘭、素人、風子、ヨアヒム、翔河川、実生、秋童子、明子、丹仙

披講

・11点句

一身に闇引き寄せて蛍飛ぶ  しゐ
<素人(地)>
おいてゆくなよこの世に未練

<ヨアヒム(天)>
「闇」と蛍の対比が上手い。

<翔河川(天)>
自分の光が際立つよう

<実生(天)>
平家蛍だろうなぁ。闇引き寄せてに惹かれる。

地球とふ天河の貴石濃紫陽花  素蘭
<白馬(天)>
濃紫陽花の最大限の激賞。同感です。

<しゐ(天)>
地球が紫陽花のサイズに、紫陽花が地球のサイズに見えてきて、自分の居場所を見失いそうになる不思議な句。

<ヨアヒム(地)>
スケールがある。

<丹仙(天)>
濃紫陽花→地球→天河へと、小宇宙から大宇宙へと拡大、そしてまた眼前の貴石のような濃紫陽花へと縮小する宇宙、その神秘的照応が素晴らしい。


・6点句

蛍追ふ認知の母のあとを追ふ  素人
<白馬(地)>
御母堂と蛍、そして作者。悲しくも優しい心。

<素蘭(人)>
童心に帰ったような母上、見守る立場の逆転が切ない、、、

<秋童子(天)>
童心に返ってしまった母を追う自分。ああ、昔は逆だったのに。

武蔵野に湧水多し額の花  明子
<素蘭(天)>
清冽な湧水、めぐりに咲く額の花、武蔵野の情趣を今にとどめて

<風子(天)>
地名の効果、水と紫陽花は深い仲。うまく絡み合って全体に格調が生まれた。


・5点句

短夜や厨の氷生るる音  春愁
<しゐ(人)>
短いながらも一番深い闇に包まれる時刻に響く音。「氷生るる音」がとても神秘的に思えます。

<風子(人)>
身近な体験、今も聞いたその音。眠れぬ夜のそばだつ音。

<翔河川(人)>
冷蔵庫から

<秋童子(地)>
「氷生るる音」が、この季語にとてもよく合っていると受け止めました。


・4点句

蛍の点滅シナプスの伝達  風子
<しゐ(地)>
あの点滅がシナプスの伝達だったとは。すごい発見。

<明子(地)>
蛍の点滅は命の点滅ですね。


・3点句

漆黒の闇に希望の蛍かな  秋童子
<素人(天)>
点滅にある命の重み

短夜や校正作業きりもなし  素人
<明子(天)>
実感がこもっています。


・2点句

紫陽花の雨に好かれてしどけなく  翔河川
<実生(地)>
しどけなくけど風にぶらんぶらん。

紫陽花やリスボンの海なつかしき  丹仙
<素蘭(地)>
日本原産ながら世界中で愛好される紫陽花
リスボン沖に浮かぶアソーレス諸島の紫陽花は殊に有名とか

洗ひ場の跡に蛍の飛びにけり  明子
<風子(地)>
慣れ親しんだ田舎の生活を彷彿させる一句。

短夜を早駆けに過ぐ月白く  しゐ
<翔河川(地)>
すぐに朝すぐに朝になり

山紫陽花祖眠る村の遥かなる  しゐ
<丹仙(地)>
「遙かなる」という言葉が、目に見える山紫陽花から、悠久な過去へと連なる時間を感じさせます。


・1点句

明易の新聞配るバイク音  明子
<実生(人)>
寝なくちゃ。と焦ってしまう。

紫陽花の路地を巧みにピザバイク  春愁
<素人(人)>
時間通りに届にゃならぬ

安曇野に住まいし祖父母蛍の夜  ヨアヒム
<白馬(人)>
蛍。そして望郷。

心痛み眠れぬままの短夜かな  ヨアヒム
<秋童子(人)>
実感があります。短い夜はあっという間に明けてしまって。

蛍篭残してみんな失せにけり  寿美子
<明子(人)>
ぽつんと残った籠が、寂しさをより強く感じさせます。

短夜や夢を二度見る時間割  白馬
<ヨアヒム(人)>
「老い」を生きるのは大変。

もののふの耶蘇のクルスや蛍飛ぶ  素蘭
<丹仙(人)>
「もののふの耶蘇」ということばから、小西行長や高山右近のようなキリシタン大名の姿が浮かびますね。「桃李福音歳時記」を私が編むとすれば、かならず夏の句の秀句に入れるでしょう。