第344回桃李9月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:秋出水、彼岸花、選挙戦(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 秋出水
兼題U 彼岸花
兼題V 選挙戦(不言題)

9月15日(日)投句開始
9月22日(日)投句締切 翌日選句開始
9月29日(日)選句締切 
9月30日(日)披講  

不言題とは「選挙戦」という言葉を使わずに選挙戦を詠む題詠です。

投句: 素蘭、風子、春愁、しゐ、白馬、寿美子、丹仙、翔河川、秋童子、志音、ヨアヒム、明子、実生
選句: 実生、風子、寿美子、志音、しゐ、素蘭、白馬、翔河川、ヨアヒム、秋童子、明子、春愁、丹仙

披講

・8点句

言はざりし言葉の重さ秋出水  素蘭
<しゐ(天)>
とても言葉では表せないこの現実。

<ヨアヒム(地)>
テレビ画面で、人の心は写し切れない。

<秋童子(天)>
想像を絶する辛い体験をされたのでしょう。もはや言葉もありません。


・7点句

野仏の裾あらふ雨捨て子花  春愁
<志音(地)>
映像鮮明な御句。野の地蔵に着せられた紅い服の裾を濡らす雨。その横には、同じように雨に濡れそぼった真紅の曼珠沙華。「捨て子花」という傍題を敢えて選択したことが「野仏」と静かに響き合います。

<素蘭(地)>
野仏に捨て子花の措辞が隠れ里っぽくていいですね。狐花なら、野仏ならぬ髑髏が、、、

<翔河川(天)>
野仏のそばにも


・6点句

ご公儀の不浄払ふや秋の雷  春愁
<実生(天)>
雷嫌いでも、不浄払ってくれるなら。いいかも。

<白馬(天)>
雷さまにも怒って欲しいです。

新月の魚類は歌ふ礁かな  素蘭
<志音(天)>
選挙戦(不言題)の句であることが私にはよく分かりませんでしたが、句としては一番惹かれた御句でした。詩的断定が新鮮で素晴らしいです。

<丹仙(天)>
選挙戦という不言題の句の中で、これが最も印象的でした。
新月は新たな創造のエネルギーに満ちた月、それゆえに「祈願」の意味があり、選挙戦に結びつきます。そして不言題とはべつにしても、新月と魚類が歌う礁のイメージも美しい。

棄て舟の艫のみ見ゆる秋出水  明子
<素蘭(天)>
艫乗りはいま何処…

<翔河川(地)>
泥水のなかに艫だけ

<丹仙(人)>
「捨て船の艫のみ」というところ、いかにも颱風被害の状況を活写しています。

亡き人は大空になほ彼岸花  ヨアヒム
<しゐ(地)>
死者と生者を繋いでいるような花。

<翔河川(人)>
まだ近くに

<明子(天)>
ええ、確かに大空を自由に飛び回っているのです。風とともに!


・5点句

泥の家泥の田畑秋出水  しゐ
<寿美子(天)>
悲惨です。速報で届く悲劇に 励ましの言葉をかけようもない

<秋童子(地)>
家も田も、あたり一面すべて泥にまみれて。近年、こんな惨状が日常になってしまいました。


・4点句

彼岸花の丘にクルスの墓六基  志音
<白馬(地)>
上5と中7の取り合わせが面白いですね。

<丹仙(地)>
鹿児島の福昌寺にある潜伏キリシタンの墓に詣でたときのことを想起しました。ザビエルにも縁のあったこの寺、彼と忍室との交流も記録されています。浦上四番崩れのときに流謫の苦難のあったキリシタン達ですが、他県とは違ってこの福昌寺では、住民から好意を持って遇されたようです。
 この句の読みですが、「彼岸花の岡」の「の」はない方が、字余りにならず口調が良いと思いますが如何でしょうか。

拉致されし吾娘に哭すや彼岸花  丹仙
<実生(地)>
合わせてあげたい。

<風子(地)>
連想の距離感が意外で興味深い。


・3点句

秋出水乗り捨てられたEV車  丹仙
<風子(天)>
ハイブリッドも秋出水には勝てません。

だるまさんがころんだ束の間の秋  風子
<春愁(天)>
破調がかえってリズムを

彼岸花雨粒抱き光おり  翔河川
<ヨアヒム(天)>
日常の細やかな情景。生命の繊細さを感じる。 


・2点句

気がつけば父の命日彼岸花  実生
<春愁(地)>
思い当たる

自転車の一旦停車彼岸花  寿美子
<明子(地)>
思わず自転車を止めてしまいました。人の足を止めさせる美しさです。

ポスターは十人十色ちんちろりん  寿美子
<風子(人)>
上五を選挙ポスターとしたら明瞭になったかも。

<春愁(人)>
蟲しぐれ

曼珠沙華つま先立で舞うプリマ  翔河川
<寿美子(地)>
彼岸過ぎてようやく曼珠沙華がひらきました
明るい視点 素敵です

病む地球溢れる涙秋出水  秋童子
<しゐ(人)>
この洪水は地球の涙だったのですね。

<ヨアヒム(人)>
人類は21世紀を乗り切れるのだろうか。


・1点句

秋出水かっぱの行方杳として  春愁
<白馬(人)>
あの惨状は別として、句として面白いですね。

秋出水生活の橋流されて  ヨアヒム
<明子(人)>
生活の基盤の全てを流された方も。胸が痛みます。

幼子の天然パーマ彼岸花  白馬
<秋童子(人)>
なるほど。あの髪型は彼岸花にそっくり。納得です。

鴉にもはらからあらむ秋出水  寿美子
<志音(人)>
空に鴉が一羽。眼下には未だ引かぬ泥水。あの独りぼっちの鴉にも兄弟姉妹があるに違いない、と思っている作中主体もまた、独り取り残されているか。

今年また逢いに行こうか彼岸花  風子
<素蘭(人)>
かくありたし。

背くらべしてる椎の実小楢の実  明子
<寿美子(人)>
全くその通り
木の実に国のハンドルを任せられますか?

津波跡軒端に高し海猫の聲  丹仙
<実生(人)>
洪水も津波も残酷、ごめが鳴くから、ニシンが来ると、知らせられない
ごめもかわいそう。考えるだけでぞっとする。