第345回桃李10月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:渡り鳥、蔦紅葉、平和賞(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 渡り鳥
兼題U 蔦紅葉
兼題V 平和賞(不言題)

10月15日(火)投句開始
10月22日(火)投句締切 翌日選句開始
10月29日(火)選句締切 
10月30日(水)披講 
  
不言題とは「平和賞」という言葉を使わずに平和賞を詠む題詠です。

投句: 素人、寿美子、しゐ、素蘭、春愁、風子、白馬、実生、翔河川、秋童子、ヨアヒム、丹仙
選句: 素人、春愁、寿美子、風子、白馬、翔河川、しゐ、素蘭、秋童子、実生、ヨアヒム、丹仙

披講

・12点句

藍蔵の白壁のぼる蔦紅葉  寿美子
<素人(天)>
深まる秋を心行くまで

<翔河川(天)>
漆喰でしょうか

<素蘭(天)>
藍職人の質実な暮らし それを象徴するような白壁 蔦紅葉  
一幅の絵ですね。

<実生(天)>
深谷かな。


・9点句

割り箸に絡む水飴小鳥来る  春愁
<素人(人)>
飴細工師の指の巧みさ

<風子(人)>
季語との関係性がつかず離れず心地よいバランス。

<白馬(地)>
幼い頃の思い出と相俟って。ラ行も効果的です。

<しゐ(天)>
水飴の絡み具合にも秋を感じる作者の、細やかな暮らしぶりが伝わります。

<実生(地)>
やってみょ。


・8点句

蔦紅葉父の生家は瞽女の宿  しゐ
<春愁(天)>
想像を超えています。草深い山中なのでしょうか。

<白馬(天)>
三味線の音とご先祖様のお宅が響き合う。

<丹仙(地)>
瞽女の口説や歌物語という江戸時代に遡る古い伝承を感じさせる味わい深い句と思いました。


・7点句

宵闇や長崎の鐘鳴り止まず  ヨアヒム
<寿美子(天)>
平和賞受賞は私達の一縷の望み 長崎の鐘に励まされる

<秋童子(人)>
下半身付随の体となりながら初期の原水爆禁止運動を支えた渡辺千恵子さん、被爆者として初めて国連総会議場で「ノーモア・ヒバクシャ」の演説をした山口仙ニさん、熱線で焼かれた自分の赤い背中の写真を掲げながら国内外で核廃絶を訴え続けた谷口稜曄(すみてる)さん・・・。
私がお会いした長崎の被爆者も、すでにほとんどの方々が亡くなってしまいました。でも、いまその遺志は、被爆二世や地元の若者たちにしっかり引き継がれています。

<丹仙(天)>
長崎の鐘の記憶が人々の心に十六夜の月とともにのこりますように。


・6点句

報われし想いは深し天高し  風子
<素蘭(地)>
過ちは繰り返します。
であるからこそ共有すべき「声」、その遡及力。
過ちを繰り返さぬよう…

<秋童子(天)>
被爆者の方々は、長く苦しい闘いの果てにようやくひとつ報われた、と心から喜んでいらっしゃいます。
私も仕事を通じ、被爆者の方々の言い尽くせぬ苦しみや怒りに触れてきただけに、今回の受賞は本当にうれしく思っています。

<実生(人)>
報道で知って嬉しかった。


・5点句

ゲーテ座のレンガの壁を蔦紅葉  素人
<春愁(人)>
横浜の山手、よく見かけます。

<風子(地)>
ゲーテ座は岩崎博物館。煉瓦の壁、重厚な出立ちに蔦紅葉が似合う。

<素蘭(人)>
横濱 黄昏 明治のアロマ 
於母影 しがらみ 港のエリス
ロマンス 残り火 男の未練
あの人は…
virtual hike の醍醐味です。

<丹仙(人)>
蔦紅葉にはその土地の風土と古い歴史を連想させる働きがありますね。現在の岩崎ミュージアムの佇まいにそういう者を感じさせると言うことですが、「ゲーテ」という文豪の名前からの連想として、「ウィリヘルム・マイスターの修業時代」や「遍歴時代」など、戦前の日本人に親しまれた自己形成物語の歴史まで感じました。


・4点句

住む人のいない生家や蔦紅葉  風子
<春愁(地)>
背高泡立ち草も庭を占拠しています。

<ヨアヒム(地)>
 蔦紅葉が生家の思い出と繋がっている。

鳥わたるついていきたい遠い国  風子
<白馬(人)>
そのお気持ち解ります。

<ヨアヒム(天)>
 ブッセの詩を思い出した。「遠い国」は夢の国かな、それとも…。


・3点句

鳥渡る沖へ一筋光る潮  寿美子
<翔河川(地)>
暗闇に一瞬海が光って

<しゐ(人)>
読みながら、光を追ってつい目を細めていました。

被爆者の御霊に捧ぐ断腸花  寿美子
<風子(天)>
断腸花とは、秋海棠の異名とある。なぜか悔しい思いが伝わってきて興味深い。


・2点句

大鳴門小鳴門の空鳥渡る  素蘭
<寿美子(地)>
スケールの大きさに共感

白きヴィラすっぽり容れて蔦紅葉  春愁
<寿美子(人)>
蓼科高原散策 紅葉の季節 モダンな山荘点在していました

<翔河川(人)>
つたに埋もれて

鶴来る北の大地の蒼き空  ヨアヒム
<素人(地)>
老いたる農夫笑みを浮かべる

ノーベル賞山口仙ニに告げし秋  秋童子
<しゐ(地)>
受賞のお知らせは、山口さんはじめ多くのみたまに届いたことでしょう。でもこれがゴールではなく、今ある私たちに求められていることの重さを感じます。

星月夜被爆のいのちの幾千万  しゐ
<秋童子(地)>
人間はもちろん動植物に至るまで、幾千万の命を奪い去ってしまったあの原爆。被爆後79年が経ってなお、放射能による後遺症に苦しんでいる人もいます。
このおぞましい核兵器を2度と使わせまいとする被爆者の運動を、高く評価してくれたのが今年のノーベル平和賞でした。


・1点句

渡り鳥時にはマストで友を待つ  白馬
<ヨアヒム(人)>
 発想が素晴らしい。大海原を感じさせる。「時にはマストで」を7文字にすれば…