第41回句会桃李5月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:ハンカチ、青嵐、南国(不言題)

初夏の句 雑詠または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)
は「ハンカチ」または「青嵐」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「南国」です。
5月15日(月)投句受付開始
5月22日(月)投句締切、選句開始
5月29日(月)選句締切、披講

投句: 葉子、旅遊、重陽、木菟、暁生、省吾、雲外、富章、池之端、悠久子、登美子、香世
選句: 雲外、重陽、暁生、木菟、葉子、省吾、悠久子、池之端、香世、登美子、富章

披講

・9点句

父もまた世に容れられず粽解く  葉子
<雲外(地)>
親父と言葉少なに粽を食う男の哀歓。
粽というと粽鮨を思いうかべてしまいますが、
季題としては端午の節句の柏餅のように餡入り
のものでないと、なぜか哀歓がわきませんネ。

<省吾(天)>
この父はどうして「世に容れられない」のだろう?
「また」というと、まだ他の誰か同じ境遇の人がいる、誰?
「ちまき」で、子供の姿がどこかにちらつきます。
リストラと就職難をおもいます。

<香世(天)>
人の気分は、いつも決まっていません。
この句を「天」に選ぶときは、こちらの心理がそうなのでしょう。

<登美子(人)>
「父もまた」なんですね。
父に似た自分も・・でしょうか。
「硬骨漢」のイメージですね。


・7点句

青嵐過ぎて畳のやや湿り  葉子
<暁生(地)>
いよいよ夏がくるなあって感じます

<悠久子(地)>
実際にそうなのでしょう、青嵐には湿り気を感じます。
6畳ではない、8畳か、もっと広い和室を思い浮かべました。

<富章(天)>
青嵐の去った後、畳が湿っていた。
その視点にとても惹かれました。


・6点句

桐の花空むらさきに染めにけり  旅遊
<雲外(天)>
昔は女児が生まれると、嫁入り道具の箪笥の材料にと
桐の木を植える風習があったとか。
先日、相模川のかなり上流を歩いていて、満開の桐を
私もみましたが、句にはなりませんでした。
そうですか 五月にしては珍しい薄曇りの空を紫に染めて
ましたか。
う〜ン いい句だなァ!

<悠久子(天)>
ひたすら美しいと思いました。
そんな空を、桐の花を見上げてみたいとも。

過ぎし日を捨てきれずゐし衣更  香世
<木菟(地)>
衣更えの季節になると、毎年過ぎし日の思い出が蘇って、どうにもならないことなのに、後悔の念に駆られる。わかります。
 

<葉子(地)>
着ることもなくなった衣類の処分がなかなかできないのは、女性だけなのだろうか。衣装箱につまっているのは、衣類のみならず、過去の思い出なのだろう。

<登美子(地)>
捨てられないんですよね。
過ぎし日が染み付いていますもの。
袖を通すことはないけれど。


・4点句

首ひとつお湯にうかべて河鹿きく  雲外
<重陽(天)>
情景が鮮明に浮ぶ。表現の面白さにひかれます。

<省吾(人)>
「首ひとつ」が実に滑稽で、うまい表現だと感じる。

ゆったりと天井に大扇風機  悠久子
<暁生(人)>
これぞ南国のイメージ

<省吾(地)>
この納まりの悪さが、天井でのたりのたりと回る
大きな扇風機を想像させてくれます。

<香世(人)>
けだるく、ゆっくりと時がすすむ。
お昼寝したいですね。


・3点句

生きてをり五月の朝の斜光かな  重陽
<葉子(天)>
若い人にはあまり実感がないかもしれないが、年をとると朝起きて、ああ生きていた、と思うことがしばしばである。

朝凪げば昨夜褥にありしこと  池之端
<木菟(天)>


意味深ですね。「褥で」でないところが、句のひろがりを増して、いろいろな想像を刺激されます。

 

イニシャルを縫ふハンカチの眩しくて  登美子
<重陽(地)>
素直に詠まれていて好感が持てます。

<悠久子(人)>
ずっと以前に、私にもこんなことがあったような、そんな気がします。

妻の出すハンカチ二枚の頃となり  省吾
<暁生(天)>
心遣いとやさしさが伝わってきます

鳳梨の黄は太陽の恵みかな  暁生
<登美子(天)>
一読、明るい陽光に包まれた気がしました。
南国とはこういうものか!と膝を打って納得しました。


・2点句

青嵐ドミノ倒しで吹き抜ける  暁生
<池之端(地)>
着眼点に惹かれて選びました。私としては、「ドミノ倒し」という言葉
のイメージの中に既に「吹き抜ける」感じがあるので、下五は他の言葉
にした方がもっとよくなると思います。たとえば、時間の流れを感じさせる
ような古語の動詞の終止形とか。

仮睡する我にハンカチ被せあり  葉子
<香世(地)>
うふふ、となったので、これに決めました。はい。

体温のまだなき朝のハンカチーフ  池之端
<富章(地)>
まだ冷たいハンカチの様子、そのままなのですが
とても爽やかですね。
「体温の」とした所がとても朝の爽やかさを醸し出していると思います。

若葉風試歩たしかなる老母かな  登美子
<雲外(人)>
医術の進歩もさることながら、心からの看病が
ないと老いた病人は回復しませんよね。
よかったですネ。

<池之端(人)>
情景が目に浮かびます。


・1点句

御手洗に咥うハンカチ水鏡  重陽
<富章(人)>
キリっとした女の人なんでしょうね。
「気合い入れるぞ!」って感じが感じられました。

ゆくりなき出逢ひとなりぬ花みかん  登美子
<木菟(人)>
「みかんの花が咲いている 思い出の道丘の道」で初恋の人に出逢ったという、一編のドラマです。  

蚤の跡数えて夫の背を流す  香世
<重陽(人)>
夫婦の積み重ねてきた歴史とこまやかな愛情の表現に・・。

葉桜となりてしじまの戻りけり  旅遊
<葉子(人)>
花さかりのころは、花を見る人が居なくてもなんとなくあたりがざわめいている感じがある。花が見て、見て、といっているかのように。その季節がいつしか過ぎ、時折小鳥の声がしじまを破るのがうれしいころになった。