第49回句会桃李10月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:後の月(十三夜)、菊、同窓会(不言題)

秋の句 雑詠または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)
は「後の月(十三夜)」または「菊」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、「同窓会」です。
10月15日(日)投句受付開始
10月22日(日)24時投句締切、翌日選句開始
10月29日(日)24時選句締切、翌日披講

投句: 旅遊、素蘭、天藤志織、星麿☆、千両、重陽、犬堂、香世、葉子、とびお、碁仇、頼髪、木菟、登美子、絵馬、愛、洗濯機、悠久子、省吾、暁生、池之端、一蟷
選句: とびお、葉子、星麿☆、旅遊、天藤志織、重陽、暁生、頼髪、素蘭、香世、千両、省吾、悠久子、登美子、絵馬、洗濯機、池之端、碁仇

披講

・12点句

巨きもののたうつ如く芒原  重陽
<葉子(天)>
一陣の風が吹き抜けていくすすき原の風景が的確にとらえられている。風と草との作り出す怪しい光景。どこかに賢治が立っているかもしれない。

<素蘭(天)>
子供の頃、真っ暗になるまで遊んだ薄の原っぱ、名残を惜しんで振り返る目に焼き付いたのは確かにこんな風景だったような、心象風景のような…。

<登美子(天)>
「のたうつ」があまりに生々しくて、でもこの言葉でなくては
表せない巨きさなのか。

<碁仇(天)>
なるほどと思わせる一句。


・10点句

酒蔵の乱るる甍後の月  暁生
<とびお(地)>
瓦の影に時間を感じました。

<旅遊(天)>
酒蔵と後の月との取り合わせが見事です。酒蔵の屋根はどういうものか波うって
いるように見えるのですね。

<頼髪(人)>
つや消しの瓦が月明かりをほんの少し散乱させている。静かな夜、いい感じ。

<香世(天)>
古い酒蔵。甍も時代を経て、瓦の重なりに乱れがある。
月の光りが、その甍をおだやかにやさしく照らしている。
美しい詩情が表現されています。

<千両(人)>
 酒蔵の乱るる甍 というのが、 立派な瓦ではなくて、 そこに、後の月
が、かかっているのが、住んでいる人と、見ている人を感じさせる。


・9点句

ザビエルも立ちし御堂や菊匂ふ  絵馬
<とびお(天)>
人の救済と菊の香りはせつないです。

<旅遊(人)>
歴史好きな人間にとって、こういう句を見せられると弱いのでして。

<重陽(地)>
わが国で伝導に尽くしたザビエルだから、「菊」が似合う。「も立ちし」の修辞がとても良い。

<香世(人)>
フランシスコザビエルが日本滞在したのがちょうど450年前らしい。
山口市にも公園の高台に、その記念の教会がありました。
この句で、故郷を、青春を懐かしく苦く思い出しました。

<洗濯機(地)>
日本の仏に捧げるには菊が最も落ち着いている.白の小菊もつつましい.
堂前に群れ咲く菊.風が菊の香を運ぶ.
かの師たちはいかなる情熱をもって世界の果てまで来たのか.


・7点句

菊を切る手に過去帳の匂ひかな  とびお
<頼髪(天)>
香(こう)ではなく、過去帳の匂いとしたことで思いが広がる

<香世(地)>
お寺の奥様の手でしょうか。久しぶりに迎える門徒のために床の間に飾る菊を整えている。
まだ先程、その門徒に見せるために蔵から取り出した古い過去帳の匂いがその手に残っている。

<絵馬(地)>
「過去帳」は、菊の展示会の場がお寺であるともとれますし、
菊を切る人の職業がお寺に縁のある人とも、また、もっと漠然と
葬儀に縁のある菊を、生者と死者の狭間の象徴としたともとれますね。
いずれにしても、そういった諸々の連想=匂いを、現実の菊の匂いと重ねた
趣向をとります。


・6点句

アワダチソウバブル崩壊モノトセズ  碁仇
<星麿☆(天)>
我が家の塀の横に溝があるのですが、そこから背高泡立草がにょきにょきッと伸びて塀をこえる高さになっています。バブル崩壊なんて何のその。人間の作り出したことなんて、自然のでっかさに比べたら、小さいってこのなのでしょうか。

<暁生(地)>
あのパワーにあやかりたいものです。

<素蘭(人)>
とても面白い句ですが、正しくは、バブル崩壊に乗じて日本資産を買いたたく外資の如く、在来種の薄を駆逐してはびこり、大量の花粉をまき散らす帰化種のセイタカアワダチソウです。(この花のおかげで私はコンタクトレンズ使用禁止を宣告されました)


・5点句

秋の葉のかけ廻りおり古戦場  一蟷
<重陽(天)>
「かけ廻りおり」が、秋の葉と古戦場を際立たせ、情景が動画になって迫ってくる。

<池之端(地)>
とても感じのでている句だと思います。秋の葉が古戦場によく
ついていて、土の上を多くの枯葉が風に吹かれている情景を
想像させてくれます。


・4点句

夕べきて檸檬かすかに発光す  葉子
<悠久子(天)>
秋の夕暮れの窓辺に、一つレモンが置かれている。
その静かなしかし際立つ存在。

<碁仇(人)>
「夕べきて」がなんとなく説明的で気になるところだが、「かすかに発光す」が非常によくで取る気になった。もし「夕べきて」がもっと別の言葉であれば
天だったかもしれない。

紅葉して桜ふたたび装へり  旅遊
<天藤志織(地)>
生あるものが本当に終わりを迎える前には、いかにも盛りの輝きを取り戻したように見える瞬間があるのかも知れません。そしてそのことが、生まれ変わりの神秘などを期待させてくれるのでしょう。

<素蘭(地)>
美しい表現ですね。春の華やかさに比べ、しっとりとした美を感じさせる表現のように思います。

セピア色の友よみがえる菊の酒  絵馬
<星麿☆(地)>
♪卒業写真の面影が・・・♪と思わず歌いたくなるような。セピア色になってしまっている写真の面々が、秋の日の菊の盛りの同窓会に寄り集まって、お酒を酌み交わせば、たちまちに「〜ちゃん」とか「〜くん」と呼んでしまいたくなるほどに、昔の記憶が蘇ってくる。同窓生が写真から飛び出して来る感じがしました。

<旅遊(地)>
セピア色が効いています。私もそんな年になったのかと思わずいただきました。


・3点句

菊枕久女の夢を追うてみる  素蘭
<絵馬(天)>
久女と菊枕の配合に共感。菊枕は、頭痛や眼の煩いに効くと言われていますが、干した菊花の香りに包まれて眠る夢に、女流の俳人として著名だった久女の人生を
かさねた句。田辺聖子に久女を主人公にした小説がありますね。

句に余るゆたかな秋を迎へけり   重陽
<葉子(地)>
本当に秋にはあまりにも句の材料になるものが沢山あって迷うことしきり。それをあっさりとこのように表現しているのは巧い。

<絵馬(人)>
無造作な句つくりですが、それが却って、作者の感性の充実を飾らぬ形で
表現している−−そういったところに惹かれました。

影薄く寄り添いし星後の月  星麿☆
<暁生(天)>
いい句ですね。

空青く小菊は白く波打てり  悠久子
<天藤志織(天)>
美しくもはかない秋の風情が、よく表われています。「波打てり」の表現が、かすかな心の揺れを表現し得ているのだと思います。

揺れながら話す瞳や後の月  天藤志織
<省吾(天)>
話す瞳と揺れながらで色々な事を想像します。
言葉で話して居るのか、目だけで訴えているのか
揺れながらとは、、、、、

秋潮の岩上鴉の独語かな  登美子
<池之端(天)>
野性的な生命力と、そして野性的な孤独を感じた句でした。
うまいです、欲をいえば中七でいったん切って欲しかった。

菊摘みて少女の如くはしゃぐひと  木菟
<千両(天)>
 菊をつむ、少女ではない、少女が、天女のように見える。
 薄き羽衣の、引力か……。

十三夜介護さる母の大笑い  香世
<洗濯機(天)>
介護される者の大笑いは,介護する者の大笑いがあってこそ.
する者はされる者によって育まれ,される者の気遣いとする者の気遣いには先後がない.
空では後の月が静かに笑っている.


・2点句

コスモスは目の高さなり高さなり  犬堂
<悠久子(地)>
リフレインで半分以上を使いながらも、だからこそコスモスの姿を
色や揺れ方までも見せてくれる句。

月白くテレビが終わる秋の蚊帳  池之端
<碁仇(地)>
月と秋の蚊帳の季重なりが少し気になった。しかし、雰囲気は◎。

髪染めし若者もあり秋遍路  旅遊
<重陽(人)>
現代を映す素直な好感のもてる句。

<省吾(人)>
最近はお寺を訪れる若者が増えたとか
また、四国八十八ヶ所を巡る若者を多いとか
ネットの世界をさまようよりも
自分の足で出向き、実物を感じることも大事かと......

秋の日や鬼籍の君の名もあだな  とびお
<登美子(地)>
送られてきた同窓会名簿に、亡くなった同窓生の多いことに驚きました。
あだ名で呼ばれる亡き人はきっとクラスの人気者だったのでしょうね。

行く秋や小さくなりし師を中に  重陽
<頼髪(地)>
「中に」をどう読むか。私は、同窓会が終わって、先生を真ん中に駅に向かって、皆でとろとろ歩く風景と思いたい。火照った頬に、ひんやりとした秋の風が心地よい。

酢加減もほどよき姑の菊膾  葉子
<省吾(地)>
私のおふくろは卒寿、もう料理はしません。
田舎から送って来た野菜などを使った女房の料理に
子供の頃であった味に出くわすことがたまにあります。
うれしい一瞬です。

龍馬ならアワダチソウも愛でにけむ  碁仇
<千両(地)>
 竜馬は、かの昔に、新婚旅行をしたそうな。
 麒麟草という、花は以外と似合うかも……。


・1点句

ひとり寝てひとり起きてる十三夜  頼髪
<葉子(人)>
よくある日常の風景。お供えの栗を食べて仕舞った人はさっさと寝てしまったのだろうか。起きている人はインターネットでもして夜更かしか。いろいろなことが想像できて楽しい。

ひんやりと この人の掌は 十三夜  愛
<とびお(人)>
すてき。

秋日和会いたい人はただひとり  星麿☆
<暁生(人)>
いいなあ。お相手の方もそう思っているよね、きっと。

青みかん嫌はれぬやうに息してる  香世
<星麿☆(人)>
フフフ、はい、これここの句会での私の様子。そんな気がしました。でも、「青みかん」と言うほど若くないし、可愛くないかな?!皆様のお邪魔にならないようにこれからも頑張ります。

原ちゃりを 盗られて秋に 風替わる  千両
<池之端(人)>
まるで風のかわり具合が伝わってくる様です。

ゆるゆると菊花おのれを展べてゆく  登美子
<悠久子(人)>
大輪の糸菊のように思われます。
先を巻きながら伸びて行く花弁。「展べてゆく」が素晴しい。

菊膾恩師肴となる夜かな  頼髪
<洗濯機(人)>
肴にしたり,肴にされたり.若者の同窓会は,およそ盆正月.
秋の同窓会なら,隠居組か.恩師の年も先輩に毛の生えた程度.
もしかして,双方全員無事か.

乱菊を纏ひて恋の姫人形  悠久子
<登美子(人)>
「乱菊を纏ひて」に、切ない恋に思い乱れる姿が浮かびます。
美しくもあわれで、惹きつけられました。

象の眼の悲しき夜や汽笛鳴る  絵馬
<天藤志織(人)>
象の眼が悲しいというのは、珍しい表現ではないのかも知れませんが、それを夜の汽笛という目で見えないものと対比させたところが、この句の手柄だと思います。