第57回句会桃李4月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:花(桜)、旅人、夢(不言題)

春の句 雑詠または題詠
兼題1(季題):「花(桜)」
兼題2(キーワード題):「旅人」
兼題3(不言題):「夢」
4月15日(日)投句受付開始
4月22日(日)24時 投句締切、翌日選句開始
4月29日(日)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
5月 2日(水)午前まで作者名を伏せたまま合評 午後披講

投句: 七梟、夜宵、海斗、顎オッサン、重陽、葉子、素蘭、富章、旅遊、ゆきふね、木菟、悠久子、絵馬、香世、明子、樂子、めだか、やんま、洗濯機、あずき、晴雲、登美子、暁生、省吾、しゅう、若芽、とびお、旻士
選句: 葉子、とびお、旅遊、顎オッサン、香世、七梟、めだか、木菟、晴雲、登美子、旻士、海斗、やんま、明子、富章、しゅう、樂子、暁生、洗濯機、省吾、素蘭、悠久子、若芽、智志、ゆきふね、絵馬

披講

・25点句

落花止まずバスに狐と乗り合はす  とびお
<葉子(人)>


<旅遊(天)>
不思議な情景ですが、これは納得できます。一度、こんな感じを味わってみたいも
のです。

<香世(天)>
ふたつの不思議があります。狐とは、なにか。なぜ、落下止まずなのか。
まさに夢のように幻想的でいいですね。いろいろ空想してみたい。

<海斗(天)>
「バスに狐と乗り合はす」幻想的で可笑し味のあるところが抜群です。
「トトロ」のようです。

<やんま(天)>
不思議ですね。私も同じ夢を見ました。

<明子(天)>
夜とか眠るといった言葉はまったく無いけれど、これは確かに夢の句ですね。
こんな夢なら毎晩でも見ていたいと思いました。

<富章(人)>
とても落花が多い昼間バスに乗ってふと隣をみたらスーツを着た
狐だった。
なんて童話のような情景を思い浮かべました。

<しゅう(天)>
落下の中にいる虚ろさが巧く表現されているのではないだろうか。乗合わすのが「狐」なのが良い。決して狸ではない。鹿でも狼でも青鮫でもない。狐が言い得ていて妙である。

<素蘭(人)>
昔懐かしいボンネット・バスが出てきそうな句ですね。
落花ふりしきるなかの白昼夢に乗り合わせた乗客のなかには、
会いたかったお方もいらっしゃったのではありませんか?

<智志(人)>
何だか良く分からないけれど面白い!!

<絵馬(天)>
夢という不言題だとシュールレアリスティックな意匠の句も自然になります。掲句は、そういう句の中で、もっとも成功していると思いました。「落花止まず」でいったん切れますが、バスの中で狐と乗り合わせた作者には、その落花が残像として継続している感じになりますね。「狐」と「花」の配合は珍しくないが、「バスに乗り合わす」という意匠が、現代の日常性のなかに突如侵入した神話的世界を思わせて面白い。このバスは、やはり、鄙びた田舎道を走るバス、たとえば、西行がそこでなくなったと伝えられる弘川寺のバス停などを連想しますね。


・15点句

字ひとつ見守る位置に山桜  明子
<旻士(天)>
桜は「さ」田の神。「くら」は神の坐す場所。
村の豊作を見守る桜の風情がはっきり目に浮かびます。
いいですね。
満開の山桜は神々しさも感じます。

<海斗(人)>
 山桜の持つ神秘感が見守るという表現に生きています。

<富章(天)>
田舎の小さな村の入り口にある老木。
毎年きれいに咲いてるんでしょうね。
見事に咲いているけど村の人たちにしか知られていないような桜の木。
大昔から村の人々を見守って春になると村人達だけの為に立派な桜を
咲かせている。いろいろな物語を想像させてくれる句でした。

<洗濯機(天)>
山桜は,山中で人を寄せず,ひとりで,凛と咲き凛と散る.
ここの桜は火の見のような位置にあり,全村に目配りしているようである.
ということは,はるかなその桜の一年を知らぬ者は村にはいないわけである.

<悠久子(天)>
「字ひとつ」が効果的と思います。
その余り広くはない地域を、長年に亘って見下ろし見守って来た山桜の美しさ。

<若芽(地)>
山の上から見下ろす位置にある、古木でしょうか。 山桜のたたずまいが静かで素敵です。


・14点句

寝ころべば蒼天へ散る山桜  海斗
<葉子(天)>


<旅遊(地)>
蒼天へ散るというのがよいですね。視点を変えるとこういう句も作れるということ
ですか。

<香世(地)>
きっと大の字で寝ころんでいるのでしょう。

<登美子(地)>
素敵な桜の句がたくさんあって迷いましたが
寝転んで見ているというのが新鮮でいただきました。

<明子(地)>
桜の根元で大地に寝転がって空を見上げている。風が吹いてきて花びらが
絶えまなく流されていく。それはまるで蒼い空に桜が散っていくようだ。
美しい時間が目にうかびます。

<洗濯機(地)>
麓から見えた山桜の木の下まで,なんとかたどりついた.
やれやれと,斜面に身を横たえると,雲一つない青空.
一陣の上昇気流があって花びらは,虚空へ吸い込まれていくようである.

<絵馬(人)>
「蒼天に散る山桜」という意匠が非常に印象的ですね。それだけに「寝ころべば」が、緩慢で説明的なのが惜しいと思いました。「ば」という接続詞は、ここでは、あることに気付いたきっかけを表す用法ととれますが、 この接続詞には理由や原因を述べる働きもあるので、俳句を平板なものにしてしまう危険があります。上五にもう一工夫あれば、さらに素晴らしい句となったのではないかと考えます。


・12点句

石鹸玉我より若き母が吹く  海斗
<木菟(天)>
 石鹸玉を吹く適齢期といえば、お母さんが子供の頃だったら、自分はまだ生まれていないんだ、などと埒もないことを考えたりします。それだけ不思議な魅力があります。

<登美子(天)>
若くして亡くなられたお母様なんですね。
しみじみとした愛惜の情が漂って
とても惹かれます。

<やんま(人)>
石鹸玉ですよね。今日孫が作っていたのは洗剤を輪ッかに付けて振回すやつである。

<しゅう(地)>
「我より若き母が吹く」を一読したとき、どういうことかと錯乱したが、すぐ、記憶の母かと気付いた。石鹸玉が効いて、童謡のなかのおかあさんといった句だと思いました。「記憶の母」と言わないところが、甘い、母俳句になっていないところが良いと思います。

<ゆきふね(天)>
石鹸玉の楽しさとせつなさがよく出ていると思いました。
子供のために吹くというよりも、自分のために吹いているような、そんな気がしました。


・6点句

春愁や一家の笑ふ写真立て  香世
<しゅう(人)>
一句に陰陽があって、俳句らしい、俳諧性のある句だと思いました。

<樂子(天)>
はいチーズ!と無理やり笑わせられてカメラに収まったものの
出来あがった写真を見るとやっぱり・・

<省吾(地)>



・5点句

菜を抱いてちょうちょう母と思うかな  やんま
<めだか(天)>
「ちょうちょう」は抱えていた菜から不意に出てきたのか、それとも抱いている菜にやって来たのか。そのちょうちょうに「あ、お母さん」と気づかれた模様が、「思うかな」になだれ込んでいるようにも思いました。柔らかな拡がりのあるふしぎな句。

<旻士(地)>
ちょうちょうが菜の花を抱く。そうですね、しっかり抱きしめて、赤ちゃんのようですね。
ほのぼのとした暖かさを感じる秀句だと思います。
赤ん坊を育てている(1歳1ヶ月)ところでこういう句にはまっちゃいますね。

胸中に虻の飛びゐる告知の日  葉子
<やんま(地)>
なるほど。胸騒ぎを写生して妙。

<素蘭(天)>
告知と胸中の虻、なるほどそういう境地なんですね…。

百人の異形の俺が花を詠む  旻士
<とびお(天)>
桜は、人の中の異形の部分を誘い出す花のようですね。
「百人の異形」とは、なにか原典があるのでしょうか。私はそれを知らないのでそのかみの俳人達すべてをさしているように思えました。
自分を異邦人としての異形と捉えて書いた俳句なのでしょうが、この「百人の」が効いていて重層的なイメージ。過去の俳人はすべて異形の者として花を詠んだのではないかとさえ思えます。

<絵馬(地)>
百本の桜に囲まれた「俺」ではなく、「百人の異形の俺」というところ、主観性の強い句であるが、桜の花の多様なる姿、その妖しさに酔う気分が良く現れていると思った。


・4点句

旅人や春眠深くパパのなか  旻士
<顎オッサン(天)>
春の家族の楽しい一日を感じます。
愛児の重さ気にならず。

<晴雲(人)>
ゆっくりのんびりと旅、深き春眠の中なら楽しい旅ができそうです。ほのぼの。

せせらぎの高鳴るところ山桜  樂子
<七梟(天)>
花見に行きたくなりました

<明子(人)>
誰もいない山のなか、せせらぎが楽しそうに歌っている。そのそばにかなりの
樹齢の山桜が、ゆったり枝をのばして・・・
山に行きたくなりました。

こぼれ咲く花踏まぬよう靴の先  暁生
<顎オッサン(地)>
解ります、この気持ち。
昨日行った蓮華畑ではないな。
優しさを感じる句は好きですね。

<省吾(人)>


<ゆきふね(人)>
他の人は気づいていない、地面に散っている桜にも作者の視点は注がれています。
「満開の桜」や「散る桜」だけでなく、「散った桜」にも作者は気を配るのです。

嫩草や銀輪で往く少女達  悠久子
<めだか(人)>
辞書を引くと、嫩(わか‐い)は「女のわかくてよわいの意」でしたが、字面をみていると逆の感じもします。銀輪(自転車!)に乗ったちょっと艶っぽい少女達にもみえます。ヴェールのかかった原色が動いているよう。語句によってこんな絵画的な句が作れるのですね。

<登美子(人)>
萌え出ずる若草のような少女たちの健康さが
銀輪でいっそう強調されてさわやかです。

<智志(地)>
嫩草、銀輪、少女の取り合わせが印象的でした。

旅人や「西行花伝」桜蘂  しゅう
<とびお(地)>
旅人、と聞いたとき、過去へ戻らなければつくれないかなと思ったのですが、この俳句のように、読書によって、旅人にこころを寄せて行く句は無理がなく実感もあっていいと思いました。桜蘂の赤い色が開かれたページの上に見えるようです。

<悠久子(地)>
とても惹かれました。
特に 桜蘂 がぴたりと来ます。
「西行花伝」改めて読みたくなりました。


・3点句

妻座せり残んの桜舞ふ野辺に  海斗
<若芽(天)>
さかんに桜の花の散る中で、幸せそうに座る妻の表情が目に浮かぶようです。

焦るなよ。風も日差しも春うらら  夜宵
<晴雲(天)>
焦るなよ。と桜に散り急がぬよう呼びかけておられるのでしょう。併せてご自分に。そしてこの句を拝読した私にもはっきりとエールをいただきました。

大言も大病も来る田の祭  洗濯機
<とびお(人)>
大病がきたら困るんですが、大言もときには迷惑なのですが、来る者拒まずがいいですね。うきうきしている気分が伝わります。

<海斗(地)>
 私は、大法螺吹きも大病を患っている人も来ずにはいられない
”祭”の神聖さを感じました。

樹皮温し老大木の花吹雪  顎オッサン
<暁生(天)>
温かい樹皮、老大木の年輪を感じます。

旅人となりたや林檎の花の頃  悠久子
<旻士(人)>
林檎の花は、生憎と庭にあった一本しか知らないんですが、これが林檎畑で咲きほこる様は、桜よりもキレイだ、と青森の友人が語っていました。
旅に誘われる「花」ってありますよね。私は躑躅(長野のタカボッチ)かな。
私の琴線に触れました。

<暁生(人)>
春の時期、知らない遠くの地に行ってみたい気持ちになります。

<若芽(人)>
私も林檎の花を見に行きたいと思っていました。

文字だけが暦にのこる花見かな  若芽
<省吾(天)>
”花見”と書かれた何月何日。
実際には行けたのだろうか?
雨で流れたのだろうか?
それとも、ふられたのだろうか?

梨の花わが奥つ城のありどころ  絵馬
<智志(天)>
三好達治の梨の花の詩を思い出させてくれたこの句を選びました。
故郷の梨の木のことかもしれませんが、それよりあの世からの眼を感じます。


・2点句

正逆を得ぬ人の問ふ朝寝かな  洗濯機
<めだか(地)>
なんとなく納得。ご自分のこと(たぶん)を寝床の中でつき離していて、きちんとした正逆が出そうな句。

旅人は牧水に似て雲の峰  やんま
<ゆきふね(地)>
「雲の峰」が決まりすぎるくらい決まっているような感じ。
西行、芭蕉、山頭火など他の旅人なら、「雲の峰」はどう変わるのかなって思いました

母と来て愛でる湖畔の遅桜  省吾
<暁生(地)>
年老いた母親に盛りの桜を見せたいが、母親の体調や天気や仕事などの都合で、不本意ながらも遅咲きの桜の頃になってしまった様子と、何とか間に合った安堵感が伝わってきます。

春の陽の眩しさの中見失い  夜宵
<素蘭(地)>
春の陽の穏やかな明るさ眩しさがくっきりと、〈見失った夢〉という内なる哀しみの深さを映しだしているように思いました。

助手席の独り笑いや春の夢  香世
<富章(地)>
運転手にとっては「コノヤロー」ですよね。
でも可愛い寝顔を見てなんとなく許せない。
ほのぼのとした雰囲気がとても良かったです。

未明の世ながらに花の盛りかな  重陽
<葉子(地)>


目覚めれば残雪の山一人旅  登美子
<七梟(地)>
私も春には北へ一人旅してみたい

愛憎のいまは思ひ出花おぼろ  樂子
<木菟(地)>
 花の美しさは、どんなものでも押し流してくれる、同感です。

雪月花一度にそろい花見酒  七梟
<樂子(地)>
今年はこんな日がありました。
お酒も美味しかった事でしょうね

桜雲にのって逃げたし告知の日  葉子
<晴雲(地)>
花の雲という季語がありますが、ここははっきりと桜雲、どなたの告知にしても逃げ出したい気持ちです。悟空のキントン雲ならぬ桜雲にのって、非常な現実から逃げ出せたら…そんな思いが許されそうな桜雲です。


・1点句

今生は旅人なりし山桜  樂子
<木菟(人)>
 そうです。みんな旅人なんです。

てのひらにふわりとおちるさくらかな  富章
<旅遊(人)>
なんでもないことと言ってしまえばそれだけですが、これを一句にまとめるのはな
かなかできません。感じの良い句です。かな書きがよい。

永き日に飽かず眺むる世界地図  晴雲
<香世(人)>
飛行機が苦手な私なので、こんな境地がうらやましい。今まで訪れたところを飽かずに眺めているのでしょうね。いいな。

小走りに都をどりの出演者  省吾
<悠久子(人)>
何度か観たあの舞台が浮びました。
ほんとうに、桜の小枝などを持ち小走りに出て来る舞妓さん達です。

美しき人会ひにけり春の闇  素蘭
<七梟(人)>
春は美女が多い 朧月易者の前に美女ひとり

さくらばなちりてつもれば大和なる  ゆきふね
<顎オッサン(人)>
少し茶目っ気のある感じが良いです。

旅人よ蝶々は海を越えるらん  晴雲
<樂子(人)>
蝶々は大海を無事に越えられるか・・そして我にも人生という大海

旅人や霊園チラシの花細し  とびお
<洗濯機(人)>
「チラシの花細し」がよくわかりませんが,面白そうな作です.
どういう状況なのか知りたく思います.