第69回句会桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:年の市、影(陰・蔭)、懐かしい(不言題)

冬の句 雑詠または題詠
兼題1(季題) :    「年の市」 
兼題2(キーワード題) :「影(陰・蔭)」
兼題3(不言題) :  「懐かしい」(その言葉を使わずに心を詠む)
 12月15日(土)投句受付開始
 12月22日(土)24時 投句締切、翌日選句開始
 12月29日(土)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 12月31日(月)披講 

投句: 閑人、巴人、ぎふう、芳生、康、七梟、素蘭、雲外、重陽、海斗、英治、まよ、樂子、庚申堂、やんま、省吾、葉子、明子、徳子、木菟、しゅう、伊三、顎オッサン、梵論、めだか、旻士、愛子、鞠、登美子、晴雲、若芽、水、絵馬
選句: ぎふう、巴人、旻士、顎オッサン、七梟、閑人、雲外、徳子、芳生、英治、香世、登美子、まよ、やんま、庚申堂、水、梵論、鞠、柊、暁生、海斗、木菟、若芽、愛子、樂子、葉子、素蘭、めだか、明子、しゅう

披講

・15点句

晴々と一文なしや年の市  ぎふう
<旻士(天)>
いいですね。この句。
一番に目を引きました。

有り金を全部使った気持ちよさがイイ新年を呼込みそうです。

ずっと頭に残りそうなインパクトがありました。

<雲外(天)>
「晴々と」がいい。そして「一文なし」がいい。
萬札を懐にして幸運を買いにゆく俗悪さから
極北にある俳味をかって、天に推す。

<香世(天)>
晴々ですか。いいですね。豊かとはお金と物ではない。俳句を詠む心がある限り明日があります。江戸っ子かな。

<愛子(人)>


<樂子(地)>
あれこれ、買いすぎて お財布が空っぽに・・・
なったんでしょうねぇ

<めだか(天)>



・14点句

父に似し羅漢と語る去年今年  徳子
<顎オッサン(天)>
羅漢の中に親爺がいてもいいじゃないか。
初詣に何を願うのでしょうか。

<七梟(天)>


<海斗(地)>
<父に似し羅漢>も<語る去年今年>も天文学的数字の句作例があるの
ではないか・・・ということは・・・日本人がとても興味も持っている
ということなんだと思います。
 ですが、この2つを組み合わせると、愛情とユーモアを感じるから
不思議です。
 去年今年を語られてこそ、羅漢が喜ぶんじゃあないかと思いました。
(新しい発見です。)

<若芽(天)>
20年前に亡くなった父を思い出しました。 今でも似た人がいると思わず振り返って見てしまいます。 たくさんの羅漢さんの中にも懐かしい顔がいらっしゃいますよね。

<素蘭(天)>
五百羅漢のさまざまな表情のひとつに見た亡き父の面影と交感する
訪れる人もまばらな静まりかえった境内でのしみじみとしたひとときに
去年今年という季語が見事に呼応していると思います。


・8点句

日本の明日を買ひけり年の市  海斗
<英治(人)>
気概がこもっていて、勢いがある。小泉首相がんばれ!

<庚申堂(人)>
「年の市」は良い句が多くて迷いましたが、未来志向をかって選ばせていただきました。

<暁生(天)>
買いの日本でありますように。

<樂子(天)>
せめて新しい年に期待して


・6点句

越前山河雪吊の影絵めく  しゅう
<巴人(天)>
破調のリズムが心地良い。

<柊(天)>
モノトーンの美しい世界が目に浮かぶ。

許さるる大いなる嘘クリスマス  樂子
<巴人(人)>
軽みの句。上五・中七と下五の落差が可。

<英治(天)>
教会に行き懺悔すれば、罪が許されるというキリスト教をユーモラスに描写。

<柊(地)>
子供を喜ばせるために、一生懸命ついた嘘が懐かしい。

後ろからオイという声年の市  しゅう
<水(天)>
親しかった知友;忙しくて、あるいは、その他の理由で疎遠になっていた。「オイ」の声は、振り向くまでもなく、ききなれた彼の信号であろう。

<葉子(天)>


年の市すぐ燃えそうなもの並ぶ  まよ
<やんま(天)>
そういわれればそうだ。すぐにいらなくなる物ばかり並んでいる。

<鞠(天)>
「すぐ燃えそうな」から、注連飾りなど正月用の藁製品が売られている、浅草寺
の裏手のガサ市の賑いを思いうかべた。

枯れながら漆喰の蔦おのが影  めだか
<ぎふう(地)>
「おのが影」は枯れ蔦の影と読みました。「枯れながら」という措辞に惹かれました。景が見えます。

<水(人)>
消え失せたように見える蔦の休眠;その「影」から新芽が出てくる情景とリンクすれば、一層おもしろい。

<愛子(天)>



・5点句

かあさんを真似て影絵のきつね啼く  晴雲
<閑人(地)>
お母さんを真似て指絵の狐を影絵で作った。なく 迄言わないでもと思いますが。

<登美子(地)>


<まよ(人)>
はっとしました。すっかり忘れていた子供の頃の思い出が蘇ります。
季語の「きつね」が面白いです。

遠会釈名はしらねども年の市  重陽
<梵論(天)>
挨拶をすると、少しだけ心が温まる気がしますね。薄日が差したような。

<木菟(地)>
 そん事もあったかも知れない長い年月が偲ばれます。

約束のやうに来にけり年の市  素蘭
<芳生(天)>
いつのまにかまた一年が回ってきた。それも約束されたようにという感じが出ている。

<まよ(地)>
約束のようにと言う表現が成功しています。
そうか。もう年末なんだなあ。と思わせます。


・4点句

塩つまむ形に暮の富士を見る  葉子
<愛子(地)>


<めだか(地)>


もうよいと棒でまさぐるたき火かな  省吾
<徳子(天)>
本当に懐かしい。焚き火の中の甘藷の大きさも大人が「これ位がよい」と決めた。
都会に住む人の句ではないかと思うが。

<香世(人)>
当然、薩摩藷ですよね。懐かしい情景です。「ほら、まだ芯が焼けてないでしょ!」

白菜やほのかに甘いふたり鍋  七梟
<旻士(地)>
白菜。これ煮ると甘いんですよね。
しかも、しつこくもなくあっさりしたイイ旨みなんだ。
そんな関係の二人の夕餉を連想しました。

ご馳走さま。

<暁生(地)>
いい感じですね。

小春日和や障子に映る鳥の影  雲外
<旻士(人)>
個人的にこういう情景が好きなんです。

鳥の影って、過ぎる一瞬に光りませんか?

<梵論(地)>
冬の朝は、もう少し寝ていたい。鳥の声を枕にして。

<若芽(人)>
こんなひとときを私も持ちたいと思いました。 

蓑虫のゆらりゆらりと影までも  徳子
<木菟(天)>
 「影」をクロ−ズアップすると、一番気の利いた句のように思えました。

<葉子(人)>


羅漢かな日向ぼっこの老爺たち  閑人
<雲外(地)>
何をかたろうているのやら、寡黙な古老たち。
いい情景ですネ。

<若芽(地)>
穏やかな陽射しの中で楽しげに歓談する老人達の様子が、よく出ていると思います。 句の中にメッセージをいろいろ入れて失敗する私には、良いお手本です。

年の市ティッシュばかりの福を引く  若芽
<暁生(人)>
そう、何事も自然体で受け入れる貴方に福来る事を祈念します。

<明子(地)>
私もティッシュ以上のものを引いたことはありません。
きっと私の福もその程度・・・・

<しゅう(人)>
「ティッシュ」は街頭でよく配られているので、ただで貰えます。福引で「ティッシュ」を貰うと本当に外れってっていう感じがします。ながながと並んでやっとがらがらを回して全部「ティッシュ」だとほんとうにがっかりします。着目が巧いですね。

風呂敷の唐草模様年の市  樂子
<七梟(人)>


<閑人(天)>
年の市の雑踏を大きな唐草風呂敷包みが行くのが目に浮かびました。

寄席にのみ残る売声年忘れ  鞠
<まよ(天)>
今年は一度も売り声を聞きませんでした。
ただただ懐かしいです。

<明子(人)>
いつまで残っていてくれるでしょうか。

甲斐駒の影迫りくる冬田打つ  芳生
<巴人(地)>
好みの句。蛇笏調でイメージ鮮明。

<徳子(地)>
甲斐駒の勇姿は東名高速からも分かります。その影になっている田畑は寒いでしょうね。

父も子も浪人となる師走かな  絵馬
<徳子(人)>
悲痛な句なのにあっけらかんとしていて笑える。きっとこの父と子には「あしたがあるさ」

<樂子(人)>
春には、きっと!

<素蘭(地)>
現代の家族風景をほろ苦いおかしみで掬い取ったようにも見えますし
12月ということで赤穂浪士を重ねてみたようにも取れないではない
面白い句と思います。


・3点句

目瞑れば囲炉裏の傍の太郎かな  巴人
<庚申堂(天)>
何ともいえず「懐かしい」句です。三好達治の詩を思い浮かべました。

黄泉からの母のこゑとも返り花  芳生
<海斗(天)>
 返り花の本情ってなんなんでしょう?
 黄泉からの声を明るく聞き止めているように思えます。
 母が自分の中に溶け込んで、自分なのか母なのか・・・
 自分であり母である永遠の命脈のような声。

父の手にすがりし記憶歳の市  明子
<ぎふう(天)>
不言題「懐かしい」の句としてもいい。「記憶」と「年の市」が絶妙な味わいで照応していると思いました。

対岸に樹影届けり冬日和  樂子
<明子(天)>
静かな静かな冬の日の情景。その静けさが心にしみ込んできます。

上等の昆布探して年の市  葉子
<しゅう(天)>
「昆布」はおせち料理に欠かせない食材です。「昆布」は喜ぶに通じるとして、欠かせない。また、昆布は大変上等な、品の良い、旨いだしが出る。だしにこそ拘ると言うところに、作者の人柄が出ており、作者の生き方を巧く昆布に託して詠んでいると思う。

炬燵猫リリアン編む娘と仲直り  晴雲
<やんま(地)>
何となく微笑ましい。

<鞠(人)>
母娘共それぞれの小学生時代に、リリアン編みが流行った。孫・曾孫の世代には、
どうであろうか?

かじかみて乳まさぐりし子ら遠し  愛子
<ぎふう(人)>
下五を「子の遠し」としたいですね。お子さんを立派に育てあげた母親のこころが伝わってきます。

<芳生(人)>
どの親も子の面影に赤ん坊時代を重ねあわせるものです。

<木菟(人)>
 そんなにまだ遠くない豊かな乳房の、若い母親が似つかわしい。

敗戦の寒夜生まれし希望の子  伊三
<登美子(天)>



・2点句

指を折る子と柚子風呂の長湯なり  七梟
<水(地)>
「もういくつねると・・・」;指を折る子供さんとの語らいだろうか。

老舗への路地塞がれて年の市  徳子
<葉子(地)>


こぼれ銭捲土重来年の市   旻士
<しゅう(地)>
「こぼれ銭」と「捲土重来」から立ってくるところの俳諧味が面白い。

冬の月つかずはなれず影ふたつ  葉子
<芳生(地)>
月光に照らされた影で二人を表現したのがよい。

冬日向影を落として影をみる  やんま
<七梟(地)>


濁声にソプラノ混じる熊手市  雲外
<鞠(地)>
下谷の鷲神社の熊手市は、相変らず大賑いであるが、郊外の鎮守の境内のそれは、
不況のせいか出店も少なくさびしい。それでも男女混声の売声や手締めは、初冬の
懐しい風物詩である。

松過ぎの早や碁敵と黙しをり  英治
<庚申堂(地)>
当人同士がまじめになればなるほどおかしい、という落語の世界が出ているようでおもわず顔がほころびました。

初雪や庭師の鋏む音浄し  水
<香世(地)>
初雪と浄し、が、共鳴して美しい句です。

風花や面子の束を抱へゐて  海斗
<顎オッサン(地)>
鼻垂れ小僧、いましたね。
「ぱっちん」懐かしい。

寒ノ空円盤ツヒニ応答セズ  素蘭
<登美子(人)>


<海斗(人)>
 私も空飛ぶ円盤と交信しようとしたことがあります。
 私にも交信できませんでした。素直な心がないと交信できないと
言われたので、円盤が見たいばかりに素直になる努力もしました。
(したと自分では思っている。)
冬の夜空を一心に見つめて、星の瞬きののどこかに円盤が現れないか
震えながら待っていました。
 人麻呂の歌に”星の船”がありましたが、あれは空飛ぶ円盤を歌った
のだと思っています。
 でも、応答があったらどうなってしまうのでしょうか?

影絵めく八ヶ岳は八つ峰冬銀河  閑人
<英治(地)>
語調がうつくしい。峰々のシルエットと、天空に輝き始めた天の川。厳粛なひととき。


・1点句

赤米のポニーテールや注連の市  水
<雲外(人)>
ポニーテールに「赤米」がいい。
それにしても、古代米を挿し古来からの
信仰心が、ふと若い娘さんに現れる。
皇紀二千六百六十一年が暮れようとしている。

褞袍着てかぼそき己が影を見る  ぎふう
<めだか(人)>


水洟や背に負ふものもすでになし  愛子
<梵論(人)>
洟垂れの頃の、なんとも甘酸っぱい気分を思い出しました。

寒椿一輪馳走囲炉裏の間  雲外
<顎オッサン(人)>
冬の温泉宿は落ち着きます。

湯豆腐の無味と滋味知る齢なり  水
<やんま(人)>
湯豆腐が無味だった頃の私は無鉄砲だった。今は若い者を応援しながら、湯豆腐で熱燗など。

小坊主が氷柱剣に見立て舞う  梵論
<素蘭(人)>
連句のなかでこんな句に出会ったらわくわくするに違いない
美しい躍動感のある句だと思います。

インバネス父の匂ひをまとひけり  ぎふう
<閑人(人)>
先ず インバネス にしびれました。

童歌ふと始まりて年忘れ  まよ
<柊(人)>
日ごろの労苦を忘れ、楽しい一時と思われる。