第70回句会桃李披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:年酒、独楽、成人(不言題)

新年の句 雑詠または題詠

兼題1(季題) :    「年酒」 
兼題2(キーワード題) :「独楽」
兼題3(不言題) :   「成人」(その言葉を使わずに心を詠む)

 1月15日(火)投句受付開始
 1月22日(火)24時 投句締切、翌日選句開始
 1月29日(火)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 1月31日(木)披講     

投句: 閑人、巴人、芳生、馬客、ぎふう、香世、スダチ、葉子、鞠、碁仇、やんま、重陽、眞知、七梟、海斗、柊、徳子、りこ、顎オッサン、晴雲、英治、旻士、まよ、素蘭、明子、めだか、愛子、梵論、登美子、省吾、樂子、庚申堂、水、しゅう、頼髪、絵馬
選句: 巴人、芳生、スダチ、水、まよ、閑人、やんま、鞠、梵論、顎オッサン、葉子、馬客、素蘭、旻士、庚申堂、重陽、徳子、七梟、香世、頼髪、りこ、暁生、木菟、碁仇、英治、柊、剛、登美子、晴雲、海斗、ぎふう、明子、愛子、めだか、省吾、樂子、しゅう、絵馬

披講

・16点句

独楽回る八方の峰傾けて  芳生
<馬客(天)>
このような句がよみたいのですが。
羨望の一票です。

<徳子(天)>
とても美しい風景。しみじみと山河を抱いている地方に住みたいと思う。

<りこ(地)>
小さな独楽と、雄大な八方の峰との対比。自分が独楽になった気分のする句である。

<碁仇(天)>
言葉のリズムと切れがよい。ところで「独楽」は季語?

<英治(地)>
回る独楽からの視線で、雄大な八方尾根を描写する。何だか自分も傾いて世の中を生きているようだ。

<柊(人)>
独楽に対しての大きいスケールの背景が良い。

<海斗(地)>



・15点句

初点前二十歳の膝の揃ひけり  りこ
<鞠(天)>
今時の若い者はと言われても、茶席に参じては、正座の膝を揃えて虔しい。
ハ・ハ・ヒと、ハ行音の重なりが新年にふさわしく清々しい。

<徳子(地)>
成人された娘さんにこの一時こそこれからの人生に+になると思われる。
行政の企画では20才は受け入れないかもね。

<香世(天)>
私もちょうど二十歳ころ、お茶を習っておりました。
着物を来て、お師匠さんのお手前を緊張して見ていたのを思い出します。
だから、正座に慣れない様子まで目に浮かびます。
二十歳の娘は、ひとりというより弟子が何人かそろって並んでいると見ます。

<暁生(地)>
初々しさと謙虚さが良いですね。

<剛(人)>
膝をそろえた若者の姿が目に浮かぶようですね。巧い!

<ぎふう(地)>
一読、気持ちがすっきりする句です。「膝の揃ひけり」がうまい。

<省吾(人)>


<絵馬(人)>
鮮やかなお手前でした。


・14点句

冬木の芽けふ解かれんと天に在り  愛子
<芳生(人)>
「成人」を象徴的に、上手に表現していると思う。

<梵論(人)>
なんか、きっぱりとしていて、気持ちのいい句です。

<葉子(天)>


<庚申堂(天)>
力を溜め込み一気に伸びようとする若い力を十分表現していると感じました。非常に上手な句だとおもいます。

<柊(天)>
冬木の芽はこれから社会人として出発する成人の明るい未来を示している。良い励ましになる句である。

<絵馬(天)>
嘱目の叙景句としても優れていますが、成人式の不言題詠として秀逸と思いました。良い句を読ませていただいたという充足感がありますね。


・13点句

馬面を誉めちぎらるる年酒かな  ぎふう
<やんま(天)>
ウマい!今年はウマ年。作者の芸に脱帽、座布団三枚。

<七梟(地)>


<りこ(天)>
今年はウマ年、めでたさ二倍の句。

<晴雲(地)>
今年ならではの御句ですね。我が家にも午年が二人ほど

<めだか(天)>
いい方なんでしょうね。新年の座の賑わいを彷彿とさせます。類句がありそうな気もしますが天。


・11点句

一嘗めの年酒一族下戸ばかり  明子
<芳生(天)>
一族郎党にふるまう年酒。みんな下戸なので、ほんに一嘗め。情景が良く分かる。

<スダチ(人)>
下戸でも仕来りケジメは守るのです。

<やんま(地)>
一合の徳利が親子兄弟で空かないと知人が言っていました。その話しっぷりが呑み助の私には可笑しくてしかたありませんでした。

<ぎふう(天)>
こういうご家族の知人がいます。とてもほほえましい景が見えました。

<省吾(地)>



・9点句

まはらねば倒れてしまふひとり独楽  素蘭
<水(地)>
倒れるのは自明であり、ナンセンスな理であるがゆえに、この句はおもしろい。自己叱咤の側面もあろうか。

<登美子(天)>
私には詠めなかった独楽の句、
ほかにも惹かれるものがあるけれど
この切ないような緊迫感をいただきました。
人生を見るような気もして。

<ぎふう(人)>
切なくなります。

<樂子(天)>


野に独楽を放ちて紐のしなりけり  海斗
<まよ(人)>
写生に徹して作られた俳句。勢いを感じました。野に放った独楽・・ロマンです。

<素蘭(天)>
広い野原で子供達が独楽まわしに興じている昔懐かしい風景と
独楽を放ったあとの紐がしなやかに舞う一瞬の情景
遠近と緩急、ふたつの対照が大変印象的です。

<庚申堂(地)>
独楽を回したことのある人は、誰でもこの感覚を持つと思います。一瞬を見事にとらえています。

<愛子(人)>


<絵馬(地)>
独楽の題詠ではこれを選びました。この句、リズムが気持ちよい。


・8点句

気の強き娘となりて喧嘩独楽  まよ
<スダチ(天)>
愛娘の元気な姿に眼を細めつつも、男勝りなところに心配もする。

<素蘭(地)>
・・・年齢的なことはさておいて、これって…(?)

<碁仇(人)>
「なりて」がすこし説明的だとは思うが、気に入った句。

<明子(地)>
男の子にひけをとらない独楽廻しの腕を持つ女の子。
黒い大きな瞳をきらきらさせている勝ち気な少女が目に浮かびます。
この句はもしかしたら成人の句でもいいかもしれませんね。


・7点句

親離れ子離れ思ふ霜の朝  柊
<顎オッサン(地)>
シンプルだから良く解る親心です。

<葉子(地)>


<省吾(天)>


湯豆腐や酒系継ぐ子と認めたり  ぎふう
<水(人)>
湯豆腐鍋をかこんで、酌み交わせるのは、以心伝心の理想的な親子。 対話はあり?

<やんま(人)>
父親は一人前になった息子と馬鹿っ話しをしながら一杯やるのが夢。ときに説教に及ぶとぷいと席を立たれてしまう。

<鞠(地)>
認めたのは、父か祖父か? 成人の日を期して、酒系を継ぐのは、昨今、案外娘かもしれない

<明子(人)>
子供とお酒を飲むのはきっと男親の永遠のあこがれなのでしょう。
うーん、これはけっこういける口だな。さすがはおれの息子だ・・・・

<樂子(地)>


飛ばされてそれでも回る逸れ独楽  スダチ
<水(天)>
リストラされて、ベンチャー起業するなど、このきびしい世相の一断面。

<暁生(天)>
「それでも回る独楽」が好き!

<晴雲(人)>
人はそれぞれの場所で、生ある限り回りつづけますね。


・6点句

一献をまづは嫁御よ年の酒  登美子
<頼髪(天)>
「去年はよう頑張ってくれたねぇ」
一等賞のお嫁さんの笑顔が象徴するように
輝かしい新年を迎えた団欒の風景。

<晴雲(天)>
ほのぼのとして、人生の余裕すら。はい、一献は私もいただきました。

粋がりし独楽傾きて唸りけり  やんま
<七梟(天)>


<愛子(天)>



・5点句

独楽を打つどの子も紅き頬をもて  樂子
<閑人(地)>
今は独楽を打つ情景は見れないでしょうが昔はこう言うことは
普通何処でも有りました。回すので無く 打つ のです。
赤いほっぺた 皸の手 懐かしくも聊かもの悲しい光景を
思い出させてくれました。

<顎オッサン(天)>
風の子どこの子此処の子。
こんな子みたいな。

初日の出宇宙も地球も我も独楽  庚申堂
<旻士(天)>
ミクロコスモスの原子運動は、すべてのマクロコスモスとつながっています。
なるほど、自分の細胞から銀河系まで、すべてが独楽といえますね。

「独楽」からこんな壮大な光景を浮かび上がらせるとは、感服しました。

<碁仇(地)>
なるほど。

捜さむと踏み出す一歩冬の虹  明子
<まよ(天)>
夢を実現するには厳しい現実が待っている。でもその一歩を踏み出す。それこそ成人の証。

<柊(地)>
不安と希望を示す冬の虹が成人となった者の心情を良く表している。


・4点句

恋終わりおとこ静かな白梟  しゅう
<巴人(天)>
「白梟」が利いている。成年よりも熟年・老年という感じ。

<めだか(人)>
白梟だから白髪まじりの方。実際は恋ではないのかもしれませんが、精魂を入れ込んでいた何かが終わったあとの夕暮れ。後姿を見ている女性の句でしょうか。「おとこ静か」の色気に一票。あっ、これは本物の白梟の恋?

口上のありて年酒の核家族  英治
<まよ(地)>
微笑ましい風景ですね。結婚して出て行かれた子供さんたちのニュースが、幸せを確認するような形で述べられているような口上でしょう。

<旻士(地)>
我が家でも「口上」はやります。
祖父が健在の頃は祖父が、実家では父がやっています。
我が家も四人家族ですが、やはり礼節は重要。
かかさずやっております。
この句は「礼節」の重さをさりげなく読み込んで秀作だと思います。

独楽廻すこと諦めて飾りけり  巴人
<海斗(人)>


<明子(天)>
独楽の色、形、大好きですが、どうしてもうまく廻すことができませんでした。
上手に廻す子を尊敬のまなざしで見ていたことを思い出しました。

逝きし子や廻らぬ独楽の傷の数  ぎふう
<巴人(地)>
狙いが的確。「や」切りのニ句一章か、「の」の一句一章か迷うところ。

<登美子(地)>
何を見ても思い出されるいまは亡き子。
傷だらけの独楽には元気いっぱいだった頃のことが
ことさらに浮かぶのでしょう。
切ない句ですね。

君優し室より出でて花となる  顎オッサン
<スダチ(地)>
両親が大切に育てた「箱入り娘」なのでしょう。

<木菟(地)>
 成人なんて大したことじゃないけれど、さなぎが蝶々に変わる
びっくりするような変容を、ときたま目にする事がありますね。

老人が独楽を回して見せてゐる  閑人
<芳生(地)>
近頃は路上で独楽遊びをする光景が見られなくなった。お年寄りが独楽遊びを子供に教えねばならない時世であることが淋しい。

<香世(地)>
はじめは孫に教えるつもりが、面白くなってきて途中から
老人が本気になって遊んでいるのではないでしょうか。

金粉の浮かぶ年酒でありにけり  まよ
<七梟(人)>


<英治(天)>
新年を迎え、杯を手にするときの、深い感慨がにじみでている。


・3点句

晴着の子交番の椅子座りをり  香世
<しゅう(天)>
私は一読、事件のようには思わなかった。交番のお巡りさんに晴れ着を見せに来たのだろうか?交番の前で待ち合わせしていて入り込んだのだろうか?若者らしい、印象的な、鮮やかな景が描かれていると思いました。

独楽廻す孤独といふを友として  柊
<重陽(天)>
完璧に回転している独楽には、ふと自分の存在だけを感じさせる不思議がある。
そんな感覚を甦えさせる句である。

傾きは地軸のさまに独楽黙す  重陽
<海斗(天)>
独楽回しの(回した本人にとってそう感じる)大きさがよく表現されています。

元朝やブタ河馬アヒル勢揃ひ  絵馬
<剛(天)>
ナンセンスな俳句だが、なぜか印象に残った。聖家族というから、動物たちは皆、家族の愛称なのだろう。年賀状などに、そういう俳画がかいてあったら楽しい。

三碗も年酒かゆるや病上がり  絵馬
<梵論(天)>
この正月は私も風邪で情けない日々を送っていましたので、まこと、身につまされます。

杯をおくりおくりて年酒かな  頼髪
<閑人(天)>
杯をおくりおくり と中七が利いています。これで年酒が上手に
表現されて手にする人々の顔まで見えてきます。

七人の敵に振舞ふ年酒かな  りこ
<剛(地)>
よくわかる句。7日あたりの新年会で、仲の悪いやつとも、今日は杯を酌み交わす。

<しゅう(人)>
七人は家族では多すぎるから家族ではないのでしょう、仕事関係の年始客の集まりではないでしょうか。仕事は、楽しみでもあり、また、ストレスにもなる。「振舞ふ」あたりが俳諧的な可笑し味で面白いと思いました。

添書きはなべて哀しき年賀かな  水
<葉子(人)>


<重陽(人)>


<木菟(人)>
 年酒の題とは少し違うけれど、この兼題にはあまり秀句がなく
、つい手が伸びました。老境の句か?


・2点句

大吉の貌もて揃ふ年始酒  愛子
<重陽(地)>
何があろうが、年始酒にはこうして集まる。「貌もて・・」が良い。

兄ちゃんのこまといっしょにまわったよ  頼髪
<巴人(人)>
作句する心が伝わってくる。関東の方言の「あんちゃん」を思い出していた。

<英治(人)>
いつも、あんちゃんのレベルに追いつこうとしている弟の喜びがよく出ている。下の坊主のセリフをそのまま拝借したのだろうが。

晴れて酒呑める輩に寒鴉  英治
<しゅう(地)>
寒鴉は口うるさいひとを比喩しているのだろうか?私は成人式の式に呼ばれた来賓を風刺しているのかなあと思った。滑稽な風刺画として面白いと思い、いただきました。

廻るなよ傀儡もたれる独楽の軸  めだか
<愛子(地)>


兄弟の集ひ毛羽だつ年酒かな  しゅう
<梵論(地)>
なかなか、兄弟ってのは難しいもので。
先ほど、義兄危篤の報せが入り、複雑な気分で選びました。

手つかずの膳さがりくる寒の昼  葉子
<馬客(地)>
昔、親しい人が病院の賄い仕事に従事
していました。その人の胸のうちを
聴いたようなきがして。

しみじみと黒きコートの似合ふ子よ  登美子
<頼髪(地)>


花びらを掃き残したり冬の庭  省吾
<暁生(人)>


<登美子(人)>
多分山茶花の紅い花びらでしょうね。
さみしい庭に花びらを残す気持、よく分かります。

七草や老いを介けて老い行くか  馬客
<めだか(地)>
つぶやきが句になったような、しぜんな感じがします。「七草や」で、忌避ではなく受容と受け取りました。七草の小さき草々が目に浮かぶからです。


・1点句

年明けて静かに笑う女へと  眞知
<馬客(人)>
「・・・女へと」変身・成長されたのでしょうか、
成りたいとの願望なのでしょうか。

なにはともあれ満杯の年酒かな  めだか
<りこ(人)>
なにはともあれ・・・すんなりと共感できました。

年酒酌むトンボ返りの倅かな  晴雲
<徳子(人)>
とんぼ帰りであれ父親と年酒を酌み交わした事は孝行息子だと思いました。

結ばれぬ口並びゐし小正月  素蘭
<旻士(人)>
しゃべってはいなくても、ひとつしてキリリと締まった口元などないかもしれない。
現況の成人式をうまくつかっていると思います。

世の倣ひ吾子に説きつつ麦を踏む  芳生
<閑人(人)>
普段は余り言葉を交わさない親子、今日は並んで麦踏。 お馴染みの
腰に手を当てて進みながら何時も無口な親父が倅に昔話やら村の
しきたりやら伝統行事などぼつぼつ話している様がセピアの写真
を見るように展開しています。日曜日の農村そして好天。

竜の玉明日は自分でつくるもの  樂子
<素蘭(人)>
何となく茨木のり子の『自分の感受性くらい』という詩を思い出します
長くなりますので終わりの三連だけ引用いたします

  初心消えかかるのを
  暮らしのせいにはするな
  そもそもが ひよわな志にすぎなかった

  駄目なことの一切を
  時代のせいにはするな
  わずかに光る尊厳の放棄

  自分の感受性くらい
  自分で守れ
  ばかものよ

所詮人は自分を基準にしてしか、ものは考えられないし行動できないもの
日本のムラ社会においては非常識、生意気となる場合もあるかもしれませんが
自分を支えるのは自分でしかありえないという気概を持って
人生を切り開いていってほしいものですね。

学徒出陣声無き声を忘れめや  閑人
<庚申堂(人)>
「成人」をテーマにするとき、どうしても成人直後または未成人のまま逝った人たちのことを忘れることはできません。私もなんとかこの人達をおりこんだ句を作ろうと試みましたが成功しませんでした。

独楽音や炬燵の猫の動く髭  碁仇
<顎オッサン(人)>
ネコの気持ちだにゃン。

独楽紐のまずは巻き方教えけり  眞知
<樂子(人)>


左右から女所帯の年酒かな  眞知
<香世(人)>
少し解釈が難しい句です。左右とはなにか。
新年の宴会の席である。
普段、飲酒という場の少ない女所帯であるが、
両隣の男性から、お酒をすすめられている。
ちょっと戸惑いながらも嬉しい心持ち。てな解釈は?

じゃじゃ馬も兄には勝てぬ独楽廻し  晴雲
<鞠(人)>
おっとりとした惣領息子の兄は、勝気な妹には いつも言い負かされてばかり  なのだけれど…

大寒や窯変天目盗みたし  葉子
<頼髪(人)>
いくら金があっても(ないけど)売ってくれないだろうから
手に入れるには盗むしかない。正直さに共感。
上五に何を置くかがポイントですね。
大寒や とくるとかなり思いつめているのではと少し心配。
小春日や なら冗談ぽいので安心。