第71回句会桃李2月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:雪解、五輪、恋猫(不言題)

春の句 雑詠または題詠
兼題1(季題) :   「雪解」 
兼題2(キーワード題):「五輪」
兼題3(不言題):  「恋猫」(その言葉を使わずに心を詠む)

 2月15日(金)投句受付開始
 2月22日(金)24時 投句締切、翌日選句開始
 3月 1日(金)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 3月 3日(日)披講 

投句: 風花、やんま、重陽、七梟、香世、閑人、鞠、郭公太、ぎふう、芳生、素蘭、馬客、顎オッサン、雲外、巴人、英治、明子、りこ、悠久子、旻士、絵馬、愛子、庚申堂、海斗、梵論、葉子、水、柊、木菟、登美子、めだか、スダチ、しゅう、晴雲
選句: 芳生、顎オッサン、やんま、鞠、風花、七梟、葉子、閑人、柊、ぎふう、スダチ、雲外、水、琉龍、旻士、馬客、香世、海斗、巴人、純奈、英治、素蘭、郭公太、木菟、梵論、暁生、登美子、愛子、庚申堂、絵馬

披講

・19点句

片栗の俯いて聞く雪解かな  晴雲
<顎オッサン(人)>
春らしい点描です。

<風花(天)>
やさしさのあふれる、童話の挿絵のような句で、いただきました。

<葉子(天)>


<ぎふう(天)>
やさしい心の伝わる句ですね。静かな景も見えます。

<雲外(天)>
国道20号線が高尾の山中にさしかかる辺りに
「うかい鳥山」という湧水に離れや庵を配する
料亭があります。そろそろ片栗が咲くでしょう。

<海斗(天)>


<庚申堂(天)>
やはり上手な句だと思います。「俯いて」が利いています。4月に長野にかた栗を見に行って来ます。


・13点句

馬魂碑のうしろ渦巻く雪解川  りこ
<芳生(人)>
馬魂碑というあまり見慣れない題材ですが、様子が分かります。

<柊(地)>
勢いある雪解川の様子が良く分る。

<馬客(天)>
40歳代、渓流釣りに熱中しました。この句の景を
まざまざと思い出しました。「馬魂碑」がきいています。

<英治(天)>
競走馬か農耕馬の慰霊碑なのだろう。雪解けの濁流と、生前、よく働いてくれた馬の力感が響き合っている。

<庚申堂(地)>
まさしく俳句です。子供のころ千曲川の上流で経験した台風の後の情景が浮かび上がってくるようです。

<絵馬(地)>
馬魂碑と雪解川との取り合わせ。属目の風景でしょうが、なんとなく馬の魂が洗われているような感触もありますね。


・9点句

惜しと思ふ嬉しと思ふ雪解水  海斗
<水(天)>
惜別。 日常身辺の事象を、ありふれた言葉で、素直に表現。 下萌え をよろこぶ。

<旻士(天)>


<梵論(天)>
何とも説明し難い揺らいだ気分が伝わってきました。春特有の気の迷いは、こういうことなのかも知れませんね。


・8点句

春暁の路地駆け抜ける玉と三毛  柊
<芳生(天)>
情景が見えます。

<七梟(人)>


<葉子(地)>


<ぎふう(地)>
むずかしかった不言題をうまくこなしていると感心しました。「玉と三毛」が傑作。


・6点句

葬の列小さくなりぬ雪解道  柊
<閑人(天)>


<スダチ(地)>
雪解道はぬかるんでいて通り難い。人の死を悲しんでいる人が、現実の些細なことで煩わされている。

<水(人)>
葬列の後ろ側からの、遠景かな?


・5点句

わき水は千古の雪解芹洗う  庚申堂
<葉子(人)>


<雲外(人)>
郡上八幡の街並が回想されました。
「芹」がイイですね。

<旻士(人)>


<登美子(地)>



・4点句

境内の闇なまぐさき眼やいくつ  雲外
<やんま(天)>
いや、出くわした事あり。「なまぐさき」とは言いえて妙。

<郭公太(人)>
暗闇の情景が見えます。「なまぐさき」の形容がお見事です。
勉強になりました。

運命の雪解の夜になりしかも  木菟
<七梟(天)>


<琉龍(人)>
雪解けと運命の夜、二つの言葉の並びに胸がどきどきします。雪解けが作者の運命を幸運へと導いたことでしょう。

独り臥す雪解雫の音の内  英治
<スダチ(人)>
一人静かに雫の落ちる音を聞く。いっそう音も大きくにぎやかに違いない。

<登美子(天)>


猫の恋五輪のジャンプしなやかに  登美子
<巴人(人)>
「猫の恋」と「五輪」との二つの題をクリアした着眼点の良さ。

<純奈(地)>
猫と五輪の組み合わせにウィットを感じました。

<絵馬(人)>
題詠を二つまとめた手際にメダル贈呈。

紙雛を飾り老女の孤宴かな  葉子
<素蘭(天)>
紙雛と老女の取り合わせがいかにも俳諧的ですね
枯淡の境地にある春の一夜がしのばれます

<木菟(人)>
 ご自分が老女であれば、ピッタシだと思います。

スケートの娘の花になり風になり  りこ
<芳生(地)>
銀盤上の華麗な舞の様子がうかがえます。

<木菟(地)>
 競い合うオリンピックとはまた別の、見せ物ですね。

町中の猫浮かれ出る朧かな  りこ
<香世(地)>
漫画を目に浮かべてしまいます。上がり目のにやけた猫の顔。
みんな浮かれて猫踊りをしなさい。はい、ネコフンジャッタ♪

<英治(地)>
屋根の上や空地の大騒ぎがよく伝わってくる。沸き上がる春の勢いが感じられる。


・3点句

「窓開けよ」春へと転がる毛玉かな  旻士
<顎オッサン(天)>
人も猫もみな春を待っている。
さあ出かけよう。

大試験やうやく終へて雪解水  絵馬
<純奈(天)>
雪解けの道を歩いていると、重苦しい緊張感もとけてくるようです。

あはれなり身分違ひのノラの恋  香世
<暁生(天)>
家の中で大事に飼われている猫との悲恋なのでしょうか

もてあます吾が人見知り草を焼く  明子
<やんま(人)>
元来の人見知りが幾つになっても直らない。お察しいたします。

<馬客(人)>
イイ歳して、とヒトは言うけど。

<登美子(人)>


雪女帯解き流す渓の音  やんま
<木菟(天)>
 ロマンがありますね。

雪解風水行堂よりをんなごゑ  閑人
<絵馬(天)>
水行といえば天台宗や日蓮宗の荒行の一つ。寒さ厳しい山中に水垢離を何度も行います。雪解けの頃になって、その修験同情であった水行堂から女の声が聞こえる。
俳諧連歌のなかでつかうと実に効果的な句です。

雪解けや吾子の生れたる声あがる  葉子
<香世(天)>
人類普遍の喜びです。「感動した!」

餌入れに目刺草臥れ朝帰り  スダチ
<郭公太(天)>
「朝帰り」にちょっぴり擬人化された猫の姿が見えました。しかし、その姿は、どう見ても猫そのもの。
私にはそのように見えました。勉強になりました。

雪解けやいそいそとして躊躇わず  香世
<スダチ(天)>
天気のよい雪解けの日は、晴れ晴れとして心も開放感で満たされます。

律儀にも鴬来たり梅の花  香世
<琉龍(天)>
「律儀にも」が作者が期待していたこと、そこへすかざず「うぐいす」がきてくれてありがたい・うれしい気持ちが伝わりました。ただ、「梅の花」と「うぐいす」
は強い関係のある二つなので、「梅の花」を「若梅」や「老い梅」等の形容を入れてはどうかなとも思いました。

藁を打つ水車や雪解の隠れ里  鞠
<柊(人)>
雪深い隠れ里の静かな景色が好い。

<素蘭(地)>
雪深い里に春の訪れが実感されるころ
暗くて長い冬の間の藁仕事にも終わりを告げる頃の心象でしょうか
墨絵を見るように美しい静謐な情景ですね

さにつらふ君が睫に雪解水  素蘭
<鞠(天)>
枕詞「さにつらふ」がよく効いていて、林檎の頬の乙女を髣髴とさせる。
「睫」には「雪解雫」かとも思うが…。

春耕へラジオ五輪の大歓声  閑人
<鞠(人)>
早春の農作業に励みながらの五輪応援、「大歓声」がビビッドで佳い。

<雲外(地)>
ハウス栽培でしょうか。
大歓声がかえって畑地の静寂を際立たせて
お見事というしかない。

白猫の修羅となりゆく春の闇  閑人
<柊(天)>
必死の猫の恋が詩的に描かれている。春の闇に対して白猫がよい。

そんなにもひたむきな目を梅の闇  登美子
<愛子(天)>


ほつほつと雪解の坂に蕗の薹  雲外
<巴人(天)>
「ほつほつと」の上五が何とも良い。


・2点句

田から田へ道横切りて雪解水  馬客
<水(地)>
棚田かな? 

天かけて五輪の戦士日脚伸ぶ  英治
<海斗(地)>


堂の屋根雪解零れて日の光  スダチ
<巴人(地)>
「雪解零れて」の「零れて」に惹かれた。

吾輩の旬を妬むや春の人  水
<愛子(地)>


うつしてと寄り添ひ甘ゆ春の風邪  風花
<暁生(地)>
甘い人生の春の盛りかな?
私は人生の秋の風情を感じる日々です。
お幸せに!

大屋根にいのちいとなむ朧月  英治
<郭公太(地)>
「いのちのいとなみ」という言葉に崇高さを感じます。
勉強になりました。

北窓を開くや猫は一目散  晴雲
<鞠(地)>
「恋猫」の不言題は難しいけれど、「北窓開く」という季語の斡旋が見事。

氷上に揚羽舞ひゐる五輪かな  葉子
<閑人(地)>


退院と雪も解けたの知らせくる  重陽
<琉龍(地)>
これはうれしい春ですね。きっと大切な人、肉親が雪解けの始まりに退院なさったのだと思います。

シユプールに刻む五輪の覇者の夢  芳生
<風花(地)>
冬期五輪の一瞬と選手の思いを、詠まれたことが美しく、いただきました。

毛穴から雪解している顔パック  しゅう
<顎オッサン(地)>
人は毛穴に春を感じる。愉快です。

春泥も心の傷も舐めてをり  明子
<風花(人)>
春泥の季題で恋猫を、詠まれたことが、すばらしく、いただきました。

<閑人(人)>


春燈毛ばだつ声の走るかな  めだか
<七梟(地)>


春に酔ゑ劫初を歌えのぉのぉなぁごぅぉん  旻士
<馬客(地)>
上五中七で決まり。下五オノマトペとしては理解、
「ののなごん」が不勉強で分かりません、乞ご教示。
「恋猫」は素敵な作が多くて。

雪解の浮いたあたりに気はひそみ  梵論
<旻士(地)>


雪解や峠の蕎麦屋湯気なびく  水
<やんま(地)>
雪解けの風情は都会ではなく峠の茶屋での景にかぎります。ここの蕎麦が温ったくて美味いのなんのって、あなた。

落城の天主ゆ雪解雫かな  芳生
<梵論(地)>
時代とか情景とか、あれこれ想像をかき立てられます。


・1点句

せからしか里子にださんね春の屋根  旻士
<香世(人)>
猫好きなので、ふたつも猫から選んでしまいました。
これは、博多弁ですよね。たしか。
下5句が、苦しいですが、ここを猫の恋とすれば、ぴったりですね。

千幾万の小石の上や雪解川  海斗
<英治(人)>
川底の千幾万の小石も、雪解けの水に洗われ、砕かれ、流されて、いく星霜の後には・・、などと考えさせられる。

魔女ひとり魔男さがすトタン屋根  絵馬
<純奈(人)>
何となくハリーポッターを連想してしまった。

もの動きそむとき雪の解けはじむ  めだか
<愛子(人)>


春雨や闇に鼈甲塗りたくる  梵論
<庚申堂(人)>
猫の句はこれを取りました。だまされたかも解りませんが、感覚としてうなずけます。

春の夜やうっそりと来る闇の声  馬客
<海斗(人)>


漱石も耳ふさぐよな春の夜半  庚申堂
<ぎふう(人)>
これはまさしく恋猫。

春宵に聞きわけあるは哀しけれ  愛子
<梵論(人)>
ちょっと素通りできない句です。

春の夜は男時か女時か鳴き明かす  鞠
<素蘭(人)>
恋猫を不言題としながら飄逸とした味のある句と思います
本来の意味から言えば運の良し悪しで恋の結末を暗示するともとれますし
現代的に解釈すれば今の時代恋愛をリードするのは男か女かと問いかけてもいるようです