第73回句会桃李四月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:春泥、眠、入学(不言題)

春の句 雑詠または題詠

兼題1(季題) :     「春泥」 
兼題2(キーワード題) :  「眠」
兼題3(不言題) : 「入学」(その言葉を使わずに心を詠む)

 4月15日(月)投句受付開始
 4月22日(月)24時 投句締切、翌日選句開始
 4月29日(月)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 5月 1日(水)披講      

投句: 郭公太、巴人、四万歩、童奈、閑人、蘇生、伊三、まよ、旻士、旅遊、葉子、川蝉、眞知、柊、七梟、桜 綺澄、芳生、明子、りこ、鞠、馬客、木菟、ぎふう、香世、省吾、顎オッサン、梵論、英治、めだか、愛子、悠久子、雲外、スダチ、星麿☆、やんま、しゅう、登美子、若芽、冬扇、庚申堂、頼髪、晴雲、水、丹仙
選句: やんま、スダチ、葉子、りこ、まよ、鞠、芳生、顎オッサン、桜 綺澄、巴人、旅遊、伊三、冬扇、香世、童奈、梵論、閑人、木菟、徳子、ぎふう、馬客、英治、頼髪、四万歩、川蝉、水、剛、七梟、柊、純奈、庚申堂、暁生、めだか、しゅう、登美子、明子、省吾、旻士、愛子、晴雲、丹仙

披講

・17点句

吊り革の大ゆれ小ゆれ春眠し  りこ
<葉子(人)>


<顎オッサン(人)>
まさに春眠ですね。

<香世(天)>
乗り物は、なぜに眠たくなるか。吊り革の揺れを見ているとその答えがわか
りそうです。

<馬客(天)>
春昼のガラ空き電車でうたたね、
大ゆれで半醒、小ゆれで半睡。
眠り名人句の達人。

<水(人)>
空席のある午後の電車;音のない子守唄。急ぎの用がない老人には、のどかな春の快眠。 いそぎのサラリーマンには、いやーな睡魔。

<剛(地)>
大揺れ小揺れが、いかにも車中の雰囲気を良く出している。大揺れしても眼を覚まさない乗客がいかにも眠そう。

<柊(人)>
車中の居眠りの句は多いけれど、その中で、面白かった。

<純奈(天)>
通勤電車のなかで実感がありますねえ。ホントに眠くなりそう!

<丹仙(地)>
通勤途上での春眠。「大ゆれ小ゆれ」が日常表現ながらもよく決まっていますね。


・16点句

春泥に傘寿の恋の手をとらる  雲外
<スダチ(天)>
幾つになっても恋心は失いたくない

<冬扇(天)>
春の道を歩く老年のふたり。ぬかるみのところなどで男のほうが女性を助けるのでしょう。若いときには取り合えなかった手を今やっと取り合えるようになったのかもしれません。人生の味わいをうたった句だと思います。

<木菟(天)>
「足とらる」ではないですか?

<ぎふう(天)>
「傘寿の恋」が効いていますね。何とも言えぬ味わいがある。とても好きな句です。

<登美子(人)>


<晴雲(地)>
春泥の中、手をとり合う光景が微笑ましいですね。決して老いらくの恋などとは申しません。

<丹仙(人)>
傘寿というのが句を面白くしている。リアリズムでないところがよい。


・8点句

諫早のムツゴロウなり春の泥  丹仙


<やんま(天)>
ムツゴロウ君、春の泥を得て立派な俳句になりました。とにかく「ムツゴロウ」には弱い。文句無く一票です。


<剛(天)>
諫早のムツゴロウが生き延びることが出来ないような社会では俳句が依存してきた自然と人間の交流が失われるだろうと思う。いまはムツゴロウが発言すべき時だ。


<純奈(地)>
ムツゴロウが名乗りを上げているようで面白い。春の泥には命がありますね。

 

鶯に夢やぶられし寓居かな  雲外
<暁生(天)>
ウグイスの声は眠りを覚ますほどの感動があります。

<登美子(天)>


<省吾(地)>
永眠の母に親しき初音かな  英治
<芳生(地)>
初音を聞いてありし日の母を偲んでいる様子が分かります。

<巴人(地)>
「親しき初音かな」の作者の感慨に惹かれた。

<冬扇(人)>
なくなられたご母堂をしのぶお気持ちに,聞こえてくる初音が重なる。生前に初音を聞くことを喜ばれたのでしょう。いま作者がそれを引き継いで,生前のご母堂とおなじように初音に耳をすましている。そういう情景であろうかと思います。

<柊(天)>
心優しい句です。


・7点句

春泥にティラノサウルス駈け抜ける  頼髪
<馬客(人)>
ジュラ紀の春泥か、ジュラシック・パークの
春泥か。
前者として、大笑いして選ばせていただきました。

<剛(人)>
怪獣はたぶん男の子でしょう。実に楽しい句。

<めだか(地)>
都会ではぬかるんだ道を歩くことはあまりなく、たまにぬかるみにでくわすと、イヤな感じと懐かしさとが同時にやってきます。海や川に入った時とはまた違う、もっと生々しい原初に引き戻されるような感じ。
何ヶ月か前の新聞に、あの体型と重量では、映画ジュラシックパークのティラノサウルスのようには走れなかったのではないかと出ていましたが、そうだとしても逆に面白いと思いました。

<明子(天)>
恐竜の足跡の化石を見たことがあります。恐竜本体の化石よりもずっとリアルに
彼等の生きていた空間を感じることができ、不思議な感覚でした。
この句を読んで、あの時の感動を思い出しました。

叡山へ径なほ遠し春の泥  芳生
<まよ(人)>
これは単なる山登り以上、人生の行程をも感じさせられました。

<閑人(天)>
叡山と言う固有名詞が良く働いており中七の常套語を救いました。

<英治(地)>
霜柱や積雪が消えるころの山道のぬかるみには難儀をする。道端の若草を踏みながら堂塔を目指す。修行者の息遣いを感じる。

<頼髪(人)>


春昼の眠りに落ちし山手線  柊
<スダチ(地)>
平日の春昼というのは、街全体が夢現

<徳子(天)>
車中で居眠り風景はこの時期よく見られます。コマーシャルに「お客さん終点ですよ」と言うのがありますが、山手線なら安心してぐっすり春眠を味わえますね。環状線と春眠の取り合わせ楽しい句です。

<ぎふう(人)>
「山手線」で思わず笑ってしまった。この軽さがたまらない。

<愛子(人)>


花咲くやどの子の目にも未来あり  芳生
<顎オッサン(天)>
単純明快にそうであってほしい親心。

<伊三(地)>


<頼髪(地)>



・6点句

春泥の桑畑を抜け分校へ  鞠
<旅遊(地)>
数多くの春泥の句のうちで、これが一番と思います。田舎の風景が目に浮かびます。

<童奈(天)>
子供たちの話し声が聞こえそう

<純奈(人)>
こういうのが春泥という季語の本来の使い方ではないでしょうか。

奥飛騨の深雪に眠る峠神  芳生
<葉子(天)>


<閑人(地)>
峠神成る程 と思いました。奥飛騨とも考えましたな。

<庚申堂(人)>
正攻法で良い句だと感じました。

亀鳴くや法螺の上手な人とゐる  香世
<童奈(地)>
亀も鳴くものと思えます

<七梟(天)>


<めだか(人)>
法螺吹きでなく、法螺の上手な人って興味津々。ご家族でしょうか。

諍ひの眠りの後の春の雨  眞知
<桜 綺澄(天)>
複雑な心を包む春の雨のやわらかさが感じられ、素敵だと思いました。

<四万歩(天)>
争いのあとの眠りから目覚めると春の雨がしとしと降っていた---情景が目に浮かびあがります。

雑草と言われるも良し君に春  顎オッサン
<しゅう(天)>
「良し」で切れていると思った。
これは父親の言葉、心情を句にしたものではないか。一流校へ入学という訳にはいかなかった息子、横道ばかりに逸れる、雑学に強い、逞しい息子へそれも良いよ、という祝いの句だと思った。息子ではないかもしれないが、先輩として「君」の呼びかけが良かったし、その厚い心情に惹かれました。

<旻士(天)>
一言、いいです。

下手な感想をつけると、この句を汚しそうです。


・5点句

制帽の一本線や風光る  童奈
<りこ(天)>
高校生よりも中学生がいいですね。始めてかぶった制帽に白線が一本、眩しいのは風のせいばかりではないでしょう。

<暁生(地)>
一本線と風光る、がいいですね。

春泥の匂いかすかに夜の庭  若芽
<伊三(人)>


<頼髪(天)>


<四万歩(人)>
春の一夜、土臭い匂いがかすかに庭先からただよってくる---春の夜の静かな世界がよく出ています。

新しき四月の風よ金釦  ぎふう
<まよ(地)>
明るい入学生の喜びが金ボタンの言葉に溢れています。

<芳生(天)>
入学の様子が「金釦」でよくまとめていると思います。

春泥に戦車の轍富士を曲げ  閑人
<木菟(地)>
何だかよく分からないけど、富士の裾野の演習場というのは、興ざめですね。

<庚申堂(天)>
春泥というといろいろな跡ができますが、「戦車の轍」は良いところを見たと思います。ただ、「富士を曲げ」は、意味がよくとれませんでした。

春泥を撥ねて逢瀬にひた走る  木菟
<りこ(地)>
春泥に一途な若さが感じられる。梅雨季や凍解けの泥道では、こうはいかないのでは?

<まよ(天)>
どんな方が待っているんでしょう。
そこはかとなく感じられる色気のようものに惹きつけられます。

花に立ち1年1組阿部昭  りこ
<顎オッサン(地)>
まさに一年一組一番なり!

<馬客(地)>
一読60年前の旧友達を思い出しました。
いろんな名前を代入して楽しませて
いただきました。

<英治(人)>
満開の桜の校庭で、新入生の点呼。ピッカピカの1年生たちを取り囲む親の顔、顔。自分の子が元気のよいお返事。いの一番に呼ばれる阿部昭の効きがよい。

花の門尻まで届くランドセル  スダチ
<旅遊(人)>
校門に入ろうとする小学1年生の姿のなんと微笑ましいことか。

<木菟(人)>
可愛くておかしくて。

<愛子(天)>



・4点句

春眠や水の上より人のこゑ  めだか
<梵論(天)>
歯がゆいような、煩わしいような…、もっとこのまま眠っていたいという気分は、ホントよくわかります。

<七梟(人)>


花杏村の広場のマリア像  旅遊
<芳生(人)>
西洋画のスケッチのような句です。

<巴人(人)>
この風景、イメージが浮かんでくる。

<川蝉(地)>
どんな広場だろうと・・・楽しくなります。

この年で一年生とはこそばゆし  若芽
<ぎふう(地)>
僕もこの四月、ひそかに「一年生」になりました。こそばゆいけれど、とっても楽しいし、嬉しい。

<明子(地)>
かわいい入学の句が多いなかで、ちょっと恥ずかしそうな作者が
見えて楽しいです。

春泥に添ひ行くものの足裏あり  愛子
<梵論(人)>
傍らにあるのは犬の足跡でしょうか。

<水(天)>
二人の足跡ではない。要介護の弱い立場の方をかばうために、添い行くもの(のみ)は水溜りのドロンコ道を。 

春眠やふふと微笑む腕重し  顎オッサン
<庚申堂(地)>
「ふふ」がいいですね。

<旻士(地)>
5歳の息子と2歳の娘が、この季節は抱き上げるとすぐ眠ってしまう。
そういう時は、急に腕が重くなって、覗き込むと夢の中で笑っている。
私の日常に、この句が入り込みました。

豆腐屋の五円貨温む春の泥  梵論
<冬扇(地)>
豆腐でも魚でもなんでもスーパーで買うご時世ですが,この作者は豆腐屋さんから豆腐を買っている。そのとき,おつりの五円玉のぬくみを感じたのでしょうね。春の下町の情景が見えるようです。

<香世(地)>
豆腐屋、5円、春の泥。きっと古き時代を懐かしく思っての句でしょう。
5円硬貨が、温むのは、籠に入っている硬貨が、日に当てられてでしょう
か。それとも、子供がお使いで豆腐を買いに来て、無くさないように握りし
めた5円硬貨が手の中で温められたのでしょうか。まだ、舗装されてない道
に面したお店なのでしょう。


・3点句

悪戯が好き花水木風が好き  登美子
<巴人(天)>
実にリズムが良い。「悪戯が好き」の上五の切り口に脱帽。

春暁や老女の眠り浅きこと  葉子
<梵論(地)>
寝ていると思っていたら、突然カッと眼を見開いたりして。

<暁生(人)>
心地よさそう。

朧夜の祖父の怪談眠られず  鞠
<旅遊(天)>
子供の頃の思い出。なつかしさを覚えます。

角帽をすこし目深に春コート  木菟
<丹仙(天)>
入学という不言題は難しかったかも知れませんが、この句、「すこし目深に」というところに真面目な新入生の気分がでていて良い感じですね。

春泥の路地に迷ひし今朝の夢  英治
<四万歩(地)>
目覚めれば、何か行き場のない夢を見ていたような気がする。それはあたかも泥にぬかった路地に迷いこんだような春の夢だった。心象風景がよく描かれていてよし。

<晴雲(人)>
二度寝の夢でしょうか。あまり目覚めがよくないかも知れませんが、春の泥に救われます。

春泥を撫でる箒の重さかな  星麿☆
<香世(人)>
ごもっとも。

<七梟(地)>


燕の子じんじゅく鳴らす赤い喉  やんま
<川蝉(天)>
燕の子様子が見える様です、良い句ですね。

眠ぶる児にかす晩酌の膝ぬくし  愛子
<省吾(天)>


眠たくて眩しくて目に若葉風  巴人
<めだか(天)>
よく晴れた日、若葉にそよ風が吹くと、緑がきらきらと濡れたようみえることがあります。でも、眠たくて眩しくて、開いている目は夢か現か。

初めてのネクタイ花の風に揺れ  悠久子
<晴雲(天)>
ネクタイの主は女性でしょうか男性でしょうか、制服?初めてのスーツ?中学生、高校生、大学生、ひょっとしたら小学生、花の風が新しい未来をやさしく包んでくれます。

春の日のかたぶくまでの眠りかな  童奈
<英治(天)>
類句がありそうだが、言い切り方がうまい。「ひねもすのたり・・・」の雰囲気だ。

囀りも気重なる朝病み上がり  冬扇
<伊三(天)>


春の朝まだ皮堅きランドセル  葉子
<鞠(天)>
「まだ堅き」に、ピカピカの一年生の緊張感が活写されている。


・2点句

甚五郎の猫ゐる寺や花蘇枋  旅遊
<やんま(地)>
錆色の鮮烈な東照宮を想定すると、花蘇枋の紅紫色が正にばっちりですね。

葱坊主平均身長左利  めだか
<柊(地)>
親はわが子を周りの子と比べてみたがるもの。平均身長にほっとし、左利きを心配する、親心。

キャンパス中入部の誘い風光る  馬客
<しゅう(地)>
「キャンバス中」の「じゅう」としたところが「風光る」と呼応して一句が引き締まって、眩しい光を感じるいい句だなあって思いました。

春泥や子等真っ直ぐに歩きをり  眞知
<水(地)>
オトナは、水溜りをさけて通るのが日常。ドロンコを気にしないで、一直線に歩むのは、非日常を好む子供の意地とほほえましい反抗心。

春泥を嗅ぐ犬の尾直くと立つ  巴人
<葉子(地)>


二月はや里から届くランドセル  閑人
<鞠(地)>
孫の入学を待ちきれない実家の祖父母の祝意が、「二月はや」に籠められている。

合格と白き桜の夢吹雪  伊三
<桜 綺澄(地)>
「夢吹雪」の言葉に惹かれました。

春泥を総身に吾子は仁王立ち  スダチ
<登美子(地)>


帰りにはもう友達と新入生  まよ
<徳子(地)>
この子は100人の友達なんか直ぐ出来ますね。将来不安無し。

春の泥鼻に残せし散歩犬  四万歩
<愛子(地)>



・1点句

濡れてまう覚悟があらへん散り桜  旻士
<桜 綺澄(人)>
桜を詠っているのに力強さを感じ、その違和感が面白いと思いました。

春泥は鈍色世界おぼろ月  庚申堂
<旻士(人)>
季節のうつろいを告げる、泥だらけの雪解け風景、春泥のある風景。

そのモノクロームのランドスコープと、そこに芽生える春の暖か味、
それが凝縮された句だと感じました。

眠りより戻れば午後の紅つつじ  悠久子
<スダチ(人)>
眠りを覚ます鮮やかな躑躅の赤

眠れずにインターネット春愁い  星麿☆
<明子(人)>
素直な感じがいいと思いました。

野遊びや疲れて眠る草枕  スダチ
<省吾(人)>


春眠の骨をぬかれただるさかな  四万歩
<童奈(人)>
まさにそんな感じですね

春眠や親子の寝相倣いけり  七梟
<徳子(人)>
親子で天上天下を指して昼寝している姿はこの句がぴったりです。

春泥や三里の灸の効いてきし  りこ
<鞠(人)>
泥濘道の歩き難さ、長さを言うに、「三里の灸」をよく効かせている。

教室になすやかぼちゃの四月かな  しゅう
<閑人(人)>
難しい不言句を なすやかぼちゃ と上手く逃げましたね、感心しました。

高眠の妻ゐて春の不眠かな  ぎふう
<しゅう(人)>
とても楽しい。楽天的な妻と神経質な夫のユーモラス、「春」が効いていて味があるように思った。

あのことも許さるるべし春の泥  悠久子
<やんま(人)>
あのこと、気にしてたんですよ。許していただけますか。よかった。洗濯は自分でやります。

春泥のゴルフの靴をどさと置く  まよ
<りこ(人)>
泥んこのせいで今日は成績が悪かった。だからお土産はないよ!

よく眠る犬と添ひ寝の春炬燵  木菟
<川蝉(人)>
可愛くてしょうがない・・・感じが良く出ていると思います。