第74回句会桃李5月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:更衣、茶、子供の日(不言題)

初夏の句 雑詠または題詠

兼題1(季題) :    「更衣」 
兼題2(キーワード題) : 「茶」
兼題3(不言題) :  「子供の日」(その言葉を使わずに心を詠む)

 5月15日(水)投句受付開始
 5月22日(水)24時 投句締切、翌日選句開始
 5月29日(水)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 5月31日(金)披講    

投句: 童奈、葉子、東夷、頼髪、冬扇、徳子、鞠、まよ、七梟、川蝉、香世、ぎふう、四万歩、馬客、やんま、旅遊、明子、木菟、芳生、庚申堂、丹仙、英治、めだか、桜 綺澄、旻士、愛子、柊、水、梵論、登美子、郭公太、顎オッサン、悠久子、省吾、眞知、晴雲、ぽぽな
選句: 芳生、やんま、顎オッサン、旅遊、七梟、ぎふう、ぽぽな、葉子、冬扇、英治、悠久子、純奈、水、四万歩、木菟、庚申堂、鞠、まよ、徳子、省吾、登美子、童奈、馬客、香世、旻士、柊、めだか、愛子、梵論、頼髪、明子、川蝉、若芽、丹仙

披講

・11点句

今ごろは黄泉に居りしを更衣  ぎふう
<芳生(天)>
蕪村の「御手討の夫婦なりしを更衣」の句を思い出します。

<葉子(地)>


<童奈(人)>
生きていることの喜びが。

<明子(天)>
取り戻した命の実感を噛みしめている作者の思いが
真直ぐに伝わってきます。

<丹仙(地)>
「....なりしを更衣」というところは蕪村の句に先例があるが、第三者のことではなく自己自身に引き寄せた俳句として共感を覚えた。

古切符はらりと零る更衣  まよ
<ぽぽな(天)>


<葉子(人)>


<庚申堂(地)>
よくある光景ですよね。昨年しまった洋服から千円札が出てきたりして。

<登美子(地)>
思い出もはらりと零れ落ちて、
しばらく手を止めて感慨にふける様子が見えます。
恋の思い出とも読めて、想像が広がります。

<柊(地)>
思いがけずポケットに残っていたものに再会し、感慨を深くする。私にもよくあることです。

<明子(人)>
一枚の古切符から次々思いが拡がり、衣更はなかなかはかどらないのです。

少女らは木の花のごと更衣  明子
<ぽぽな(人)>


<柊(天)>
夏向きの軽く明るい服装を木の花と感じられたのでしょうか。

<愛子(天)>
少女等の明るい声が聞こえてきそうな・・・・

<頼髪(天)>
緑の葉の中にぽつぽつと見える白く小さな花は少女たちの半袖ブラウス。
爽やかな中にしっかりとした初夏の朝の空気を感じます。

<若芽(人)>
若い娘たちが眩しい情景


・9点句

早起きの嫁の入れたる新茶かな  童奈
<四万歩(人)>
早起きの嫁と新茶のとりあわせがいかにも新鮮です。

<省吾(地)>


<馬客(天)>
季語「新茶」が初々しく、かいがいしいお嫁さんを
想起させてくれます。

<香世(天)>
なんとも羨ましい情景です。「美味い!」長生きできそうですね。

茶柱の立ちて卯の花腐しかな  柊
<七梟(天)>


<ぎふう(天)>
鬱陶しい雨も、茶柱発見でちょっと気分転換か。さりげなく味のある句だと感心しました。

<英治(人)>
陰鬱な雨がまだ降っているが、この茶柱で気分が少し前向きに。

<香世(地)>
雨の日、家でのんびり過ごすのは嫌いではありません。落ち着きます。読書をしながらお茶で一服。茶柱がたっているの見つけ、なにやら、はしゃいだ気分になって...


・8点句

焦れ身を更衣して会ひにけり  眞知
<顎オッサン(天)>
ぐっと堪えた大人の恋でしょうか。
じわっと暑いですね。

<四万歩(天)>
焦がれ身と衣更のとりあわせが妙。衣更の意味が引き立ちます。

<童奈(地)>
決心した心を感じます。


・7点句

麦の秋言葉飾らぬ医師の居て  香世
<やんま(天)>
言葉飾らぬ医師に心許して何もかも相談してみたい。一方でインフォームドコンセントといっても、孫みたいな医者にあっけらかんと癌告知されたらどうしようなどとも思う。

<葉子(天)>


<悠久子(人)>
はっきりと話しながらも温かい心のお医者様だと思われる。
「麦の秋」の季語がそう思わせる。

職退きて閑中の閑新茶汲む  芳生
<顎オッサン(地)>
一抹の寂しさの中に静かな憩いを感じます。

<鞠(地)>
現役時代の作者は、きっと忙中の閑を嗜まれたであろう。

<徳子(地)>
長い間お勤めご苦労様でした。美味しい新茶で和菓子を食べてクラシック音楽でも聞いて下さい。

<丹仙(人)>
そして、よき俳句を作ってください。


・6点句

一帆の渺と沖航く更衣  芳生
<まよ(天)>
有名なヨットハーバーが岡山の牛窓にあります。そこにはヨットが沢山停泊していますが、車で30分ほど海岸を行くとそこは静かな海です。そして四国へ行こうとしているヨットが一艇沖に見えます。そのような時ふと、ヨットハーバーの人達がみな軽やかなティーシャツでランチを食べていた事が思い出されるのです。

<丹仙(天)>
この句の場合、一帆の「一」が生きている。それは沖を往く帆船の遠景に更衣という身体性を配することにより、景に奥行きと統一性が生まれ、季節の節目に於ける作者自身のたたずまいが伺われる。

新茶着く濃いめに煎れて妻を呼ぶ  庚申堂
<水(天)>
夫を呼ぶ ではないところ。退職後のご夫婦かな?

<まよ(人)>
なんとも羨ましい奥様

<若芽(地)>
甘味のある新茶と夫婦の仲の良さが香ります。

妖艶を演技してみる更衣  英治
<悠久子(天)>
透ける布地だろうか、タイトなデザインだろうか。ふとそんな演技をする気になる茶目っ気が好ましい。

<木菟(天)>


爺と嬰言はるるままの更衣  冬扇
<登美子(人)>
赤ちゃんが言はるるままなのは当然ですが
なにもかも奥様まかせのこんなだんなさま、
結構多いんじゃないでしょぅか。
楽しいですね。

<頼髪(地)>
三世代同居、いつもにこにこのお爺ちゃん、懐かしさがいっぱい。

<川蝉(天)>
捉え方とリズムが良いですね


・5点句

音もなく風の流るる更衣  悠久子
<英治(地)>
まだ汗ばむほどでないこの時期の空気の感じがうまく表現されている。

<若芽(天)>
爽やかさが目に見えるよう


・4点句

菖蒲湯や鉢巻の嬰べそをかき  晴雲
<冬扇(人)>
鉢巻。そういう風習があるのか(…それとも誰か おとなの思いつきか)。子供の成長を願う心が うかがわれます。

<愛子(地)>
お爺様お婆様の孫を思う気持が浮かびます

<梵論(人)>
幼いものの気分が可愛らしい。不思議の世界にいた頃に、そんなあれこれの理不尽さにむずかった記憶が、あるような、ないような。

青あらし柱の疵の子らかなた  英治
<旅遊(地)>
作者の詠嘆が聞こえるようだ。それは喜びかもしれない。

<まよ(地)>
この家は東西南北どの窓からも豊かな緑が見えるのに、子供達は今大都会の高層マンションでこの緑を見ることも無い。親の切なさは良くわかります。ましてやそれが子供の日に柱の瑕を見つけたときは・・・

更衣年ふるごとに遅くなり  省吾
<鞠(人)>
日本人は四季に敏感と言われるけれど、季の境目は案外曖昧である。花冷え・若葉寒など季の戻りを警戒すると、更衣は遅れがちになる。

<徳子(天)>
早々に衣更えしていた若い頃は良かった。お洒落が面倒になっちゃ女もお終いよ。
自分の事言い当てられた様でドキッ。


・3点句

賜りし命いとしむ鯉幟  ぎふう
<登美子(天)>
作者は病を得ているのかもしれません。
元気に泳ぐ鯉幟を見上げ、今生かされてある幸せを
かみしめていらっしゃるのでしょう。
しみじみと心にしみます。

端午とや武士の魂失せにけり  丹仙
<純奈(天)>
伝法な口調が良い。端午の節句というのは武家の風習で、もともと町人がするものではなっかった。武士というものがいなくなって、やがて戦後にこの日が「子供の日」になってしまったことをかんがえるとなんとなく面白かった。

茶の友と称う交わりや花菖蒲  馬客
<鞠(天)>
若い頃、男女間に恋愛感情抜きの友情が成り立つかを議論した時、「ありうる」と私は断言した。それが今、自然な形で「茶飲み友達」へと推移している。

至福なりご飯の後にすするお茶  桜 綺澄
<省吾(天)>


野や山の進むに合わせ更衣  川蝉
<旻士(地)>
うーん、最近は天気予報も予算不足のロシア衛星のせいか、いまいちあたらないので野山に聞くほうが正解かも。

粋な句ですね。

<愛子(人)>
ひと日づつ夏めく季節を感じました

病室に立夏の風を誘ひ入れ  葉子
<英治(天)>
先客の去った病室の空気の入れ替え、厄落とし? 或いは、快方に向かう病人の、さあ退院も近い。新規蒔き直しだ! いずれにしろ、エネルギーを感じさせる句だ。

短夜や娘の入れし茶の苦さ  頼髪
<童奈(天)>
もうそろそろ嫁ぐ娘。そんな娘の入れたお茶。色々な思いがあるでしょうね。

病む母のつよき茶断や柿若葉  ぎふう
<庚申堂(人)>
「お上手です」の一言につきます。

<柊(人)>
健康を願う強い意志、これが耀く柿の若葉に象徴されています。

<川蝉(人)>
柿若葉・・・ええ快方に向かいますとも・・・と言いたく・・・

一服の茶など召しませ夏籠もり  丹仙
<めだか(天)>
お誘いの、やさしい仕草と気配りが嬉しい。
気持をこのようにきちんと形にあらわしたい。
いただきます。お菓子もおいしゅうございます。ありがとうございました。

一本の茶柱立夏の訪ね人  顎オッサン
<旻士(天)>
想像が書きたてられるいい句です。

『一本の茶柱』がよくって、待ち人来るの雰囲気が出ています。幸せな気分がただよいます。

子雀にけふは仏飯分けてやり  愛子
<梵論(天)>
わが子不在の寂しさを紛らわす所作に、切なさと温か味が織り込まれているように感じました。

更衣してより急に季の戻り  鞠
<旅遊(天)>
なんということもないことを詠んでいながら、それでも心ひかれるものがある。俳
句とはそうしたもにかもしれない。

衣更へてなほ実直や印刷所  めだか
<庚申堂(天)>
個人的な意見ですが、「実直」は人間にかかりますので「印刷所」より「印刷工」の方が感じが出るような気がしますが。

聞き耳を立てているらしアマリリス  葉子
<冬扇(天)>
「聞き耳を立てているらし」と見たのが面白い。


・2点句

常滑の茶香炉香る走り梅雨  七梟
<四万歩(地)>
うっとうしい梅雨の季節、茶香炉の香りがかすかに流れる。情景が匂い立ちます。

臥す夫に浴衣とどけむ雨上がり  庚申堂
<ぎふう(地)>
「雨上がり」が何か良い予感を感じさせます。ご主人の退院もきっと間近いのでしょうね。

更衣すっぽんぽんの心かな  顎オッサン
<めだか(地)>
かあいそうに、こころが空っぽなんでしょうか。で、爽やかで潔い。更衣する時によぎる、剥き身手足の頼りない感覚ともとれます。心といってしまうと、見も蓋もないような気がしないでもない、う〜ん、でも、現代人の身の虚ろさも、そこはかと。すっぽんぽんて、なんだろう。

対岸へ緋鯉真鯉の綱渡り  徳子
<悠久子(地)>
川岸近くの鯉幟。「緋鯉真鯉の綱渡り」が面白い。向こう岸へ泳いで行くような錯覚を誘う。もしかしたら川上へ昇るのかもしれない。

青臭き菖蒲まつはる湯舟かな  四万歩
<やんま(地)>
菖蒲湯の菖蒲の爽やかさ、「まつわって」ほしいですね。

目のとまる二の腕まぶし更衣  木菟
<川蝉(地)>
若者の姿を旨く捉えていると思います

五月雨の音屋根に聞く茶会かな  四万歩
<冬扇(地)>
茶室の屋根にあたる雨の音。お茶の楽しみも いや増すというもの。

新聞の兜かぶりて柏餅  柊
<ぎふう(人)>
「柏餅」ではいかにも平凡、付き過ぎのようにも思いましたが、この句はこうでもしなければ成り立たない。類句がありそうで意外にないのでは。

<香世(人)>
絵に書いたような(!)俳句です。きっと今でも、新聞紙を渡されたら兜を折れるでしょう。

五月鯉手を叩く児に跳ねて見せ  愛子
<芳生(地)>
状景がよく見えてきます。

俺三つお前は一つ柏餅  馬客
<ぽぽな(地)>


茶を喫んでばかり出て来ぬ夏料理  木菟
<梵論(地)>
ビ、ビールが欲しい!!

とんぼ玉くもり卯の花腐しかな  旅遊
<明子(地)>
とんぼ玉のくもりにこの頃の湿った空気が感じられる
とても繊細な感覚と思いました。

十薬や都ぶりにはなれぬまま  登美子
<馬客(人)>
「・・・なれぬまま」は「慣れぬまま」と解釈して
鑑賞しましたが。

<めだか(人)>
「十薬」と「都ぶり」の出会いに、「鄙」と「都」を営々と往還した昔の人々のことも偲ばれます。十薬は、わが鄙にもあったはずですが、都にて花も葉も香りも大好きになりました。この時期は十薬を厠に飾ります、消臭効果もあるとのこと。今年の十薬の花は、どこで出会っても小ぶりです。

鉢の茶を一寸失敬旬の味  川蝉
<水(地)>
ちゃめっけ;後味が良い。

花菖蒲遠目に熱き番茶かな  英治
<木菟(地)>


親と子のはぐるるままの潮干狩  水
<芳生(人)>
子供は泣いて保護されたのかも?

<徳子(人)>
はぐれるだけなら良いのです。すぐ近くの浅瀬で溺れている妹に気づかず、あわや死なせる所だったと言う子供の頃の夫のお話。

飛行雲粽食ふ手を止めにけり  梵論
<馬客(地)>
五月晴れに高々と飛行雲、なんとも自然な句ですね。

せっかちに更衣して後悔し  葉子
<純奈(地)>
今年は、5月になってから寒くなりましたよね。実感!


・1点句

お年頃かしわ餅よりあの子がいい  桜 綺澄
<顎オッサン(人)>
恋すれば、同感です(^^ゞ
良いお年ですな〜。

当ても無くぶらぶら散歩衣更  七梟
<水(人)>
晴耕雨読の方かな?

柏餅一人息子と遊びけり  七梟
<頼髪(人)>
ひとり息子ってどんな感じなんでしょう。一度は味わってみたい。
キャッチボールのあとのおやつは柏餅。

少量のぬるき新茶を賜りぬ  眞知
<やんま(人)>
これをゆっくりと飲み干す。ご気楽ご気楽。

鯉幟尾を振れ嬰の瞠る瞳に  芳生
<木菟(人)>


一年の長さは柱のきずにあり  ぽぽな
<純奈(人)>
面白い。季語があればもっと良かった。

走り茶の贅を分け合ひ友親し  まよ
<旅遊(人)>
一服の茶の香りに幸せを感じる人は、まこと幸せな人なのだろう。良い句です。

太竿に父の結はえし鯉幟  郭公太
<省吾(人)>


鯉のぼりなくてせめてのお子さまランチ  庚申堂
<旻士(人)>
僕らの子供時代は、まだこういう時代でしたね。
近年は小さな鯉幟がベランダに立ち上ってますが、昔は大きな庭がなきゃ鯉幟は望めなかった。

追憶を呼び覚ます句です。
以外に三句目の字余りも気になりませんでした