第75回句会桃李6月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:鮎、香(薫)、父の日(不言題)

兼題1(季題) :   「鮎」 
兼題2(キーワード題):「香(薫)」
兼題3(不言題) :「父の日」(その言葉を使わずに心を詠む)

 6月15日(土)投句受付開始
 6月22日(土)24時 投句締切、翌日選句開始
 6月29日(土)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 7月01日(月)披講  

投句: やんま、芳生、七梟、巴人、旻士、葉子、童奈、明子、まよ、柊、頼髪、冬扇、馬客、英治、四万歩、眞知、木菟、若芽、徳子、顎オッサン、梵論、ぽぽな、川蝉、郭公太、登美子、水、庚申堂、悠久子、香世、伊三、愛子、海斗、めだか
選句: 巴人、七梟、郭公太、やんま、顎オッサン、冬扇、徳子、英治、頼髪、四万歩、梵論、柊、芳生、馬客、木菟、明子、香世、悠久子、川蝉、まよ、若芽、水、愛子、葉子、伊三、海斗、登美子、暁生、めだか、旻士、庚申堂、ぽぽな

披講

・12点句

揖保川の舟と暮るるや鮎の宿  英治
<巴人(人)>
上五の「地名」と中七の「や切り」が活きている。

<木菟(天)>
 墨絵のような景色。古めかしくて、懐かしいような。

<香世(天)>
滑らかな句形のいい俳句です。ネットで揖保川を検索してみました。思ったとおりの美しい清流でした。「舟と暮るる」が、情緒あります。湯上がりに、宿の窓から、その川をぼんやりと見ている。もう小一時間もすれば、鮎料理を頂けるはずだ。

<愛子(地)>


<葉子(天)>


鮎の背へ塩振り胡座組替へる  海斗
<英治(人)>
雰囲気がよく伝わる。生唾が出てくる。料亭ではなく、自分で釣ったものに違いい。

<梵論(地)>
実に美味そうな景色。ああ、たまらん。

<香世(地)>
さて食べ始めるぞ。身体の重心を移動させます。まず、背を箸で押して...

<水(天)>
味も意気も淡白でよい。川辺でのあぐら? 読めなくて、辞書の世話になった(胡坐もある。足の組替えなら、坐がいいかな。座席の組替えなら、胡座。)

<愛子(人)>


<登美子(天)>
もちろん自分で釣り上げた天然もの。
焼き加減も大事。「胡座組替へる」に
意気込みと満足が伝わって気持ち良いですね。

叱られに帰りたき日や額の花  明子
<頼髪(天)>


<芳生(地)>
いくつになっても親に叱られたいと思う日があるもの。

<葉子(人)>


<海斗(天)>
今回の不言題は、とても難しく感じました。
父の日につきまとうのは、「その日があることすら忘れられてしまって
いる」というイメージだと思っていました。
ところが、桃李句会参加者の皆さまは素直な方が多く、このイメージを
払拭されていらっしゃいます。
私のあまり入り組んでいない脳みそのヒダで考えまして、
選句と<[66]:亡き養父を憶ふ夕べに降る蛍>が残りました。
(66はとても素直に気持ちが伝わって来る句です。)
さて、どちらを選ぶか?
自分の子供が将来私と離れて暮らすことになったら、どう思って欲しいか
という全く私事的な選び方ではありますが、父親である自分の視点で
[45]を選ばせて頂きました。

<庚申堂(天)>
素敵な句です。


・9点句

釣り人の身ぶり手ぶりや鮎の宿  明子
<七梟(天)>


<郭公太(天)>


<冬扇(地)>
そうですね。いつの世でも釣り人の話は面白く尽きるところがありません。「身ぶり手ぶり」で自慢し合っている様子が見えます。

<暁生(人)>
太公望達は自慢話に花を咲かせている

にぎわいは線香花火の果てるまで  庚申堂
<四万歩(天)>
庭先での花火はたいてい線香花火で終わります。幼い頃の記憶が懐かしくよみがえります。

<川蝉(天)>
孫を相手に、そんな光景でしょうか(いや、子供かな)・・・

<伊三(天)>


すれ違ひ老女かすかに香を残し  葉子
<やんま(地)>
これです。幼女可愛いや少女は清し、恋する乙女に、愛する女、母は聖なり祖母孤高、我が人生の女めら。そしてその香に惑わされたご同輩諸君諸氏よ。

<徳子(地)>
お洒落な老女がすれ違った時少し香水の・・・いいなあ。
90才過ぎた患者さん?

<若芽(天)>
すれ違った老女から感じた香。出してきたばかりの夏衣の香でしょうか。年輩の女性のたしなみが美しい。

<暁生(地)>
品の良いくですね


・8点句

夏布団嵩の小さき父おはす  愛子
<やんま(人)>
我もまた今父の立場に。

<頼髪(地)>


<芳生(人)>


<馬客(天)>
作者にとって精神も肉体も巨きな
父上であったのでしょう。
この句を詠まれる寸前まで。

<水(人)>
夏蒲団よりも軽くなってしまったお父さん?
介護しながら、いろいろな思い出が。


・5点句

山の子や倣ひし鮎のじゆう形  めだか
<顎オッサン(天)>
夏の山の子供達の川遊びの風景を
上手く切り取ったものです。

<海斗(地)>
一読では、<山の子が鮎を見てじゆう形を真似しているよ。(そう、作者には見えた。)>
という意味だと思いました。
ですが、何度か読んでいるうちに、直接言葉で表していないにも関わらず、
鮎と一緒に泳いでいる姿が浮かんで来ました。
間接的な描写と呼んだら良いのでしょうか?
そして、この子供は過去の自分、若しくは分身のような感じなんですけれど、子供達に
愛情が注がれていますね。
とても温かい作品だと思います。

麦秋を行く自転車の髪香る  海斗
<徳子(天)>
麦秋と洗い髪と自転車。きっと若い女性でしょう。さわやかですね。

<柊(地)>


硝子戸に朝顔市の父見たり  童奈
<巴人(天)>
「言外に匂ふ」何かが感じられる句。

<梵論(人)>
静かな情感が伝わってきました。

<木菟(人)>
 本当は居るはずのない、幽霊のような感じがあって、おかしい。

頼むぞと送り出す瀬の囮鮎  郭公太
<柊(天)>


<馬客(地)>
1回でも友釣り経験された方なら
「頼むぞ」に強く共感を覚えられる
ことでしょう。

初夏の潮の香とどく観覧車  芳生
<頼髪(人)>


<四万歩(地)>
初夏の候、かすかに漂いくる潮のかおりを観覧車のなかで感じる。初夏と潮のかおりのとりあわせが効いています。

<明子(人)>
おおらかで明るい、気持ちの良い句だと思います。

<旻士(人)>
近年、海岸べりの観覧車が増えてきました。近畿圏でも海遊館わきの大観覧車・ポーピアランドなどが素晴らしい。

実際、なかなか潮の香はしてこないんですが、そういう気はします。(神戸や大阪湾ではなく。たとえば太平洋なんかに面していればするのでしょうか)

ぱっと光景が眼に広がる句でした。


・4点句

薫風に窓明け放つケアハウス  愛子
<英治(天)>
力感があふれている。将来、こんな所で世話になりたいものだ。

<馬客(人)>
「ケアハウス」で活きました。

鮎刺や迷ひなきこと良しとする  顎オッサン
<香世(人)>
3句とも、鮎の句になりました。串にさされて身動きできません。形も決まります。不自由もまた良し。かな。

<登美子(人)>
作者はなにか迷いをもっていたのでしょうか。
一直線に水中に突進する鮎刺に羨望を感じたのか。
迷いもまた良しだと思いますが。

<めだか(地)>
川魚を刺身で食べるのは、ちょっと勇気がいります。それとは関係なさそうですが、鮎刺と、下七五が妙に合っています。

6月の父端座して祝はるる  四万歩
<梵論(天)>
父を労わる眼差しが暖かそうで、快い句です。わたしも何かの折にはぜひ端座してみようと思いました。

<柊(人)>


若鮎のごとくねらせてサ−ブ打つ  木菟
<悠久子(人)>
主語はきっとスリムな若い女性!

<暁生(天)>
躍動感がいいですね


・3点句

渓流の鮎は苔の香苔の色  登美子
<芳生(天)>


雨上がり紫陽花の群虹を吐く  葉子
<冬扇(天)>
良い題材を得てそれを活写された。「虹を吐く」が面白い表現ですね。虹は雨上がりに決まっているという論評もあるかも知れないけれど・・・。

貫禄はなくも甚平の怒り肩  木菟
<若芽(人)>
痩せた肩に羽織った甚平。年老いた父親への愛情が感じられます。

<旻士(地)>
甚平は僕も好きなんですよね。
春秋は作務衣・夏は甚平を愛好しています。
厄年を越えたころには家庭では和服を通したいのが夢です。

で、糊のはった甚平って怒り肩になるんですよね。
着目が面白いな。
僕も妻にこう思われてるんじゃないかと共感を感じました。

鮎釣りは龍の鱗の岩の上  冬扇
<悠久子(天)>
龍の鱗の岩の上で鮎を釣るという面白さ。

鮎の香に集う炉端や妻籠宿  四万歩
<悠久子(地)>
兼題の「鮎」と「香」の二つを使い、いかにも天然の鮎の香が漂いそうな情景を描かれた。

<まよ(人)>
まだ行ったことのない妻籠の旅吟ですね。
これは行ってみたい私の願望が強すぎて選ばざるを得ませんでした。

子と共に大波小波浮いて来い  顎オッサン
<まよ(天)>
「浮いて来い」という季題が好きなんです。
プールの父と子ですね。
状況が目に浮かびます

子の名にて宅配来る鮎ニ匹  巴人
<ぽぽな(天)>
読んですぐ、幸せな風景が目に浮かびました。

いらんがなおおきにだけで 燕立つ  旻士
<明子(天)>
究極の父親の思いでしょうか。無事に巣立ってくれればそれでいい。何もいらん。
そう、「おおきに」の一言でもあればそれで充分なんだ。
無口で頑固そうな、でもあたたかい父親の像が見えてきます。

薫風や拳小さき肩たたき  馬客
<徳子(人)>
幼子の拳で肩叩きあんまり効き目はないけれど子供は一生懸命なのです。
私にもそんな時がありました。

<葉子(地)>


初鮎や昔かたぎの手土産に  川蝉
<めだか(天)>
竿、川、みどり、匂い、点在する家々までも、目に浮かびます。
おそらく、バイクか自転車で行かれるのでしょう。

腸や大人ぶつたる鮎の宿  海斗
<旻士(天)>
第一句が秀逸ですね。

はらわた?なんだろうと引き込まれました。

そうそう、通は鮎の腸を好むんですよね、川苔の香りが一段とたつので(塩辛もありますしね)。しかし、焼き魚の時はくっくと苦い。確かに日本酒には合うのですが・・・(もっとも養殖では腸は食わない方がいいですよ)

独身の頃、奈良奥吉野の宿で天然鮎をいやほど食べた夜を思い出しました。

風呂入れて裸子にある木の香り  やんま
<まよ(地)>
裸子の木の香りと言う表現に惹かれました。

<庚申堂(人)>
視点はすばらしいのですが、ちょっとつかえてしまいました。

待ちわびて第三日曜草を引く  水
<愛子(天)>


リハビリの父に贈るや夏帽子  眞知
<川蝉(人)>
優しさが伝わってきます、早く回復されますように・・・

<伊三(人)>


<めだか(人)>
父の日(不言題)はむつかしかったです。よい句ですね。

うなだれて鮎一匹を持ち帰り  葉子
<やんま(天)>
身につまされます。この一匹、囮の分だったりいたします。

早苗田の朝露香る青さかな  梵論
<木菟(地)>
 清々しい、心が晴れ渡る句です。

<海斗(人)>
語感に勢いを感じます。
「さな」え「だ」の「あさ」つゆ「か」をる「あ」お「さかな」
と、あ音多いので元気良く響くのでしょうか?
そして、<朝露香る青さ>と見切った表現が気に入りました。


・2点句

掛香が携帯電話のストラップ  まよ
<川蝉(地)>
粋ですね(演技っぽいけど)・・・

剥がれ落ち膝に散りたる鮎の塩  梵論
<ぽぽな(地)>
塩焼きの皮の感触と身からふわっと香が立つ時の喜びを思いました。

羅に香たきしめて過ぎゆけり  木菟
<英治(地)>
気品を感じさせる。誰のために焚く香ではない。自身の平常心を保つためのもの。

鮎の香の古里の香の匂ひけり  巴人
<庚申堂(地)>
「香」を重ねたところがおもしろいと思いました。

鮎走る遥かな渓の涯目指し  芳生
<巴人(地)>
中七の「遥かな渓の」から下五の「涯」への流れが可。

バラ一輪肩たたき券添えられて  庚申堂
<伊三(地)>


白檀の香薫く忌日夏座敷  愛子
<若芽(地)>
白檀の香のする夏座敷のたたずまいが自然に目に浮かびました。

銀婚の地図広げたる夏座敷  香世
<登美子(地)>
「夏座敷」が明るく力強く
子育てを終わって旅をする余裕のできた夫婦の
ほほえましい様子がうかがえて共感を覚えました。

手の中に跳ねる跳ねるよ鮎の色  悠久子
<明子(地)>
跳ねる跳ねるとくり返したことで、手の中から飛び出しそうな元気な鮎の様子と
釣り人の感動が伝わってきました。

気分屋の父の背中に黒揚羽  七梟
<水(地)>
おおかみに螢が一つ付いていた(金子兜太)を連想。

眼鏡橋くぐる早瀬や鮎心  水
<顎オッサン(地)>
鮎の気持ちってこんな感じでしょうか。


・1点句

イナモトの若鮎のごとすり抜けて  庚申堂
<ぽぽな(人)>
あの瞬間を思い出しました。旬の句ですね。

朝市に陽の香集める赤茄子かな  ぽぽな
<四万歩(人)>
採れたてのトマトの水みずしさがあらわれています。ところで、トマトは赤茄子とは言いますが、そのように書きますか?俳句歳事記では「蕃茄」とありますが?

陶房にコーヒー薫る梅雨晴間  明子
<冬扇(人)>
陶工のほっとするひとときでしょう。久し振りの晴れ間。よい焼き物ができそう・・・。

夏帽とはにかみを子に贈らるる  英治
<顎オッサン(人)>
微笑ましい句です。