第76回句会桃李7月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:雲の峯、蔭、夏休み(不言題)

夏の句 雑詠または題詠

兼題1(季題) :    「雲の峯」
兼題2(キーワード題) :  「蔭」
兼題3(不言題) :   「夏休み」

 7月15日(月)投句受付開始
 7月22日(月)24時 投句締切、翌日選句開始
 7月29日(月)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 7月31日(水)披講  

投句: 巴人、康、梵論、やんま、芳生、星麿☆、英治、ぎふう、剛、冬月、七梟、木菟、顎オッサン、馬客、葉子、頼髪、庚申堂、省吾、徳子、海斗、四万歩、冬扇、水、愛子、川蝉、香世、旻士、眞知、悠久子、童奈、めだか、ぽぽな、明子
選句: 巴人、ぽぽな、芳生、四万歩、ぎふう、英治、香世、頼髪、やんま、星麿☆、旻士、冬月、徳子、水、馬客、葉子、川蝉、海斗、顎オッサン、木菟、省吾、庚申堂、冬扇、悠久子、梵論、明子、童奈、めだか、七梟、愛子、暁生

披講

・17点句

失職の父の一服雲の峯  英治
<芳生(天)>
失職というテーマと雲の峰の対比が新鮮である。煙草をくゆらしている父の視線の遥かに雲の峰。「雲の峰」のなかに父の希望があるようです。

<冬月(地)>
面白い。ただ、失業の一服の季感が「雲の峰」かどうかは判断が割れるだろう。もっといい季語があるかもしれない。

<水(天)>
「一服」にいろいろな心情を差し替えてみると、句意が変化しておもしろい。失意もあり、リベンジもあろう。

<葉子(天)>


<川蝉(人)>
遠と近・・・上手く捉えていると思います、早く就職されることを・・・

<童奈(天)>
泰然自若

<愛子(地)>
雲の峯と失業中の父の取り合わせが大変面白いと思いました


・14点句

暮るるまで蝉取る兄の後を追ひ  眞知
<四万歩(地)>
遠い昔の甘酸っぱい記憶が、なぜか新鮮によみがえる。そうした心象風景がうまく描かれています。

<ぎふう(天)>
夏休みの一日が映像となって僕の前に繰り広げられました。「兄の後を追ひ」が句の奥行きを深めているのでしょうか。とても好きな句です。

<星麿☆(地)>
まさに夏休みですね。でも、一昔前のという気がしないでもない。
ゲームばかりのこの頃。。。今の子供達が大人になって夏休みをイメージするときってどんな夏休みになるのでしょう?

<水(人)>
自立と反抗心が芽生える寸前の弟。回想かな。

<省吾(地)>


<悠久子(人)>
そんなことが私にもあったわ‥‥そういう懐かしさを誘って頂きました。

<愛子(天)>
幼い日 歳の離れた兄が一日中そばにいることが嬉しくて
しょうがなかった遠き日を思い出していました


・12点句

水切りの石高く跳ね雲の峰  芳生
<ぽぽな(地)>
地平から上空へ、手前から遠くへと広い空間へ連れていってくれる句です。スピード感もあります。

<香世(地)>
川や湖の水面を見ると、水切りをしたくなる心理。いつの歳か忘れてしまいました。

<海斗(天)>
最初「水切りの石」が分らなかったのですが、
水面に石を投げることだと分かりました。
5回は跳ねるんですが、中々6回以上跳ねさ
せられませんでした。
そして、たまに高く跳ね上がってしまうことが
ありました。
意外さに、少年達は「おゝ」と叫んでいるでしょう。

<梵論(地)>
水面から空に目線を転じた動きが自然で快活。

<明子(天)>
水切りの小さな石と雄大な入道雲の対比がとてもいいと思いました。
キラキラ光る水面、白く灼けた河原、真っ黒に日焼けした子供たち、蒼い空・・・
どんどん視野が拡がっていきます。


・11点句

どっかりと海に胡坐や雲の峯  七梟
<川蝉(天)>
スケールの大きさ・・・素晴らしい景色です。

<顎オッサン(天)>
揺るぎのない写真の出来上がりです。

<木菟(人)>
 連想すれば、間違いなくこんな景色です。

<冬扇(人)>
海のほうに見える入道雲を印象的に詠んだ。「どっかりと胡座」が巧み。

<暁生(天)>
どっかりと、に惹かれました

向日葵やウサギ当番ひとりきり  頼髪
<巴人(地)>
大きな「向日葵」を見ると「ウサギ当番」などを思いだしますね。こういうこと
は、今の夏休みでもあるのだろうか?

<ぽぽな(天)>
「ひまわり」「ウサギ当番」はもちろん、とどめの「ひとりきり」に学校の非日常、夏休みの様子があらわされていると感じました。
30)同じ不言題の「蜘蛛はいて」も素敵でした。

<芳生(地)>
夏休みには交代で兎当番をするんですよね。ひとり当番をする児を見守っているひまわり、状景が分かります。

<馬客(地)>
人影の無い夏休みの小学校の校庭、
甘いような、せつないような思い出
の雰囲気が抜群。

<川蝉(地)>
向日葵季語とひとりきりの関係・・・いいですね。


・8点句

片蔭の真一文字に加賀城下  芳生
<英治(人)>
城下町によくある真っ直ぐに揃った家並み。いかにもの風情。

<悠久子(天)>
「真一文字」と「加賀城下」が鮮明な印象を誘います。
私の場合は東の茶屋街が浮んで来ました。
一度だけ訪れた金沢をあれこれ思い出しました。

<明子(人)>
静まりかえった真夏の午後の城下町。とても端正なたたずまいが目に浮かびます。

<童奈(地)>
逆に日差しの強さが見えるよう

<愛子(人)>
風景が目に浮かびました


・7点句

飲み干したコップが一つ雲の峯  めだか
<英治(天)>
何かこう絵になりそうな構図。窓辺のカウンター席に残されたコップ。背景の雲。印象的だ。

<旻士(人)>
子供等が縁側から部屋に駆け込み、一気に炭酸水を飲み干して踵を返す。
残ったコップに入道雲が映る。ガキの頃の夏の風景が甦りました。

<省吾(人)>


<冬扇(地)>
手近のコップと、遠くの雲と。景の広がりが感じられます。


・6点句

雲の峰膝の骨壺重きこと  葉子
<旻士(天)>
お盆前のお骨納めの風景でしょうか。
一見ミスマッチに見える雲と骨壷ですが、死の背後にむくむくとのびあがる生を感じられて、なんとも宗教哲学的な感銘を受けました。

<省吾(天)>


川風にゆれる日除けや氷菓売り  四万歩
<やんま(人)>
まずこう暑いとどうしてもこの1句をいただきたくなる。

<梵論(天)>
”氷”の一文字もはためいていそう。ミンミンゼミも鳴いていそう。

<めだか(地)>
このシンプルさに一票。

八月十五日陰より出て黙祷す  巴人
<頼髪(地)>


<馬客(天)>
「蔭より出て」に強く共感を覚えます。
「終戦日」でも「敗戦日」でもない、
「八月十五日」にも。

<庚申堂(人)>
なにはともあれ、この日をこういう行動を忘れてはいけないと思います。


・5点句

雲の峯黒きサーファー立ち上がる  童奈
<庚申堂(天)>
句の通りの情景が想像できます。それもディフォルメされ圧倒的におおいかぶさってくるような・・・。

<悠久子(地)>
雲の峯の句は多く、幾つか惹かれましたが、この句を選びます。
日焼けなのかシルエットなのか、「黒きサーファー」が「立ち上がる」に、動きと夏の力強さがありますね。
海が好きということもプラスαでしょうか。

山の風海のにほひを夏帽子  明子
<頼髪(天)>


<海斗(地)>
できれば、この夏帽子は可愛い少女のものであって欲しいと
思います。そうすると、この夏帽子にプレミアがつくような
気がします。


・4点句

雲の峰五段活用教えけり  顎オッサン
<星麿☆(天)>
雲の峯の層を数えるのと五段活用のリズム感がマッチしていて、次から雲の峯を見る度、思わない思います思う思う時思えば思え。。。なんて呟いてそうです。

<めだか(人)>
五段活用と雲の峯が、おもしろい。先生の夏休みももうすぐ。

宿浴衣まさに似たもの夫婦なり  香世
<やんま(地)>
こうしておなじ柄の宿浴衣を着てみると、外見までも似たもの夫婦となってぴたり決まった。

<旻士(地)>
夫婦は似てくる。
浴衣なんかは、かなり個性的な着こなしになるはずだが、ぴったり。
ほのぼのとしたいい句です

列車から日焼けの祖母を見つけたり  童奈
<頼髪(人)>


<冬扇(天)>
帰省のときのことでしょうか。古里への思いが、祖母をみつけたという表現に凝縮されているように感じます。

帰省子や何か一匹掴みくる  やんま
<英治(地)>
夏休を親と田舎に帰った子供の興奮が伝わる。何か一匹を素手でつかんでいる気分が・・。

<明子(地)>
我が家に帰る道すがら、昔かけがえのない仲間だった一匹に目がとまってしまった。
これは連れて帰らなきゃ。
家に着いたときには、もうすっかり気分は幼い頃の夏休み!

蜘蛛這いて用なきままの昼寝かな  梵論
<葉子(人)>


<木菟(天)>
 夏休みの倦怠感がいかにもという感じで、働き蜂の日常が偲ばれます。

道訪ふてかたむく日傘蔭生るる  愛子
<香世(天)>
道を聞く人を無意識に選びますね。ここでも、やさしい人に聞いています。日傘を差しかけてくれる思いやり。いいな。季語がやや説明的?

<馬客(人)>
手練れの一句。点を献ぜざるを得ない。


・3点句

廃校の落書見入る汗のまま  巴人
<香世(人)>
母校だったのでしょうか。なんて書いてあったのでしょう。季語がまだ推敲の余地あり?なんて、人の句は言える。(笑)

<星麿☆(人)>
夏休みに廃校になった母校を久し振りに訪れたのでしょうか。汗が出るほど暑いのに、そんなことも忘れるぐらいに落書きを見て思い出に浸ってしまう。

<顎オッサン(人)>
懐かしい風景はいつまでも。

雲海の遥かにも見ゆ雲の峯  悠久子
<徳子(天)>
豪快に自然を見ていて爽快である

靴穿きの龍馬駆け抜け雲の峯  海斗
<ぎふう(地)>
「靴穿きの龍馬」に惹かれました。坂本龍馬はハイカラだったから革靴も履いたらしいけれど、この龍馬はスーツ姿でネクタイを翻して目の前を駆け抜けた現代の龍馬に違いない。

<童奈(人)>
まさに竜馬がゆく

露天風呂山また山の雲の峯  巴人
<七梟(天)>


朱夏の風レタスの淡き蔭を剥く  梵論
<めだか(天)>
「朱夏の風」がちょっと付きすぎかなとも思いましたが、「レタスの淡き蔭」に親近感をおぼえました。

緑陰や風さわさわと立ちどまり  顎オッサン
<徳子(人)>
爽やかな風の匂いがするごうかいに

<木菟(地)>
 涼しげな様子は、緑陰からか、立ち止まった風からか、さわさわという擬音からか、あるいは全然涼しくないのか、ちょっと不思議な句です。

水無月の花みな襤褸葬のあと  葉子
<巴人(天)>
「襤褸」という表現が印象に残った。また、「水無月の花」はそのような印象だし、そして、「葬のあと」とくるとその印象が更に鮮明となる。

自転車を押す坂道や雲の峰  眞知
<やんま(天)>
自転能力も尽き果てそうになって、坂の上には絶対的に立ちはだかる雲の峰がある。

短くも風鈴の音陰日向  七梟
<四万歩(天)>
涼し気な風鈴の音が日陰の軒先きから流れてくる。外は炎暑。陰日向の情景が活きています。

夫の瞳に少年の色雲の峰  明子
<冬月(天)>
雲の峰にはこういう効果がある。子どもの頃の夏休みを思い出したのだろうか。説得力がある。


・2点句

明け易き病舎の蔭の恋語り  木菟
<葉子(地)>


小麦色麦わら帽子はみだせり  顎オッサン
<徳子(地)>
夏いっぱい遊んだ満足感が溢れている。

軽くなく重くもあらず雲の峯  めだか
<水(地)>
静止しているようで動いている様態を、軽・重によるたくみな表現。

片陰や鈴懸の音を聞いたかも  やんま
<庚申堂(地)>
日陰で風がそっと通りすぎたときこんなことが感じられるのでしょうか。

熱帯夜エンゼルフィッシュにキスをする  剛
<暁生(地)>
熱帯夜を吹き飛ばすようなリズムの良さがいいですね

孫来るの報せに満たす冷蔵庫  愛子
<顎オッサン(地)>
優しさいっぱい。


・1点句

片蔭の媼にときを問はれけり  英治
<ぽぽな(人)>
「片蔭の媼」が想像力をかきたてました。

牧牛の仰ぎ見る阿蘇雲の峰  水
<四万歩(人)>
雲の峯の雄大なさま出ています。牧牛、阿蘇、雲の峯の組み合わせが効いています。

雨戸閉め朝顔の鉢部屋に入れ  省吾
<暁生(人)>
やさしい心遣いですね

ヨーソロー左舷前方雲の峯  海斗
<芳生(人)>
「ヨーソロー」という船乗り用語を配することによって、臨場感が湧きました。しかも左舷前方には「雲の峰」。面白味と雄大さと。

玄関の靴のごちゃごちゃ昼寝どき  ぎふう
<梵論(人)>
寝姿もごちゃごちゃ。

職安の向こうに黒き雲の峰  庚申堂
<冬月(人)>
象徴的にも読めるが、そこが評価の分かれるところ。

梅雨未明握る手冷えて末期かな  葉子
<海斗(人)>
身近な方が亡くなられたのでしょう。握っている手が段々と
冷えてくる時の辛さはいかばかりなものでしょう。
合掌。

遠花火絵日記やっと出来上がる  馬客
<ぎふう(人)>
季語「遠花火」にちょっと不満。しかし、後のフレーズがいかにも夏休み。子どものほっとしたニンマリが見えてきます。こんな思い出、僕にもあります。

凌霄の花蔭走りゆく仔犬  悠久子
<巴人(人)>
凌霄の花(赤?)、そして、その花陰に、仔犬(白?)が走ってゆく。よく見て作句
しているという印象とそのコントラストの面白さ。