第77回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:盆(霊祭)、浜、涼しい(不言題)

晩夏または初秋の句 雑詠または題詠

兼題1(季題) :      「盆(霊祭)」
兼題2(キーワード題) :  「浜」
兼題3(不言題) :     「涼しい」
 8月15日(木)投句受付開始
 8月22日(木)24時 投句締切、翌日選句開始
 8月29日(木)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 8月31日(土)披講       

投句: 芳生、蘇生、巴人、四万歩、省吾、七梟、海斗、柊、葉子、郭公太、英治、伊三、鞠、冬扇、童奈、木菟、顎オッサン、登美子、馬客、やんま、愛子、明子、川蝉、眞知、梵論、旻士、東夷、晴雨、水、庚申堂、若芽、丹仙
選句: 芳生、巴人、英治、柊、鞠、顎オッサン、冬扇、葉子、七梟、四万歩、海斗、やんま、蘇生、郭公太、馬客、旻士、伊三、木菟、水、庚申堂、童奈、悠久子、梵論、香世、省吾、登美子、川蝉、愛子、明子、晴雨、若芽、丹仙

披講

・14点句

風すでに絹の手ざはり今朝の秋  明子
<顎オッサン(天)>
作者の感性を信じます。

<木菟(地)>
 季節の移り変わりを、それだけデリケ−トに捕らえられたら、素晴らしい。

<童奈(天)>
「絹の手ざわり」で決まり!

<悠久子(天)>
素敵な句だと思います。
一読、爽やかさに包まれました。

<晴雨(天)>
一句是絹のなめらかさ。流れのよい句は詠み手を陶酔させます。
ことに「絹の手ざはり」新発見。脱帽。


・12点句

漆黒の闇に彫り込む大文字  愛子
<芳生(人)>
大文字の文字がはっきりと見えます。

<英治(人)>
表現の巧妙さがやや鼻につくが、風格を感じさせる句だ。

<柊(地)>
大文字をくっきりと浮き彫りにして、形のよい句。

<悠久子(地)>
映像でしか見たことのない赤い大文字、くっきりと浮んで来ます。

<登美子(天)>
「彫り込む」ですか!
京の町が闇に沈んで、浮かび上がる炎の色が
くっきりと描かれましたね。

<若芽(天)>
大文字焼きは、確かに漆黒の闇に文字を彫り込んだように見えます。イメージが鮮烈です。


・9点句

星飛ぶや浜に埋もるる亀の夢  梵論
<英治(地)>
いいなぁ。何だか宮沢賢治の世界。ロマンチックでメルヘンチック。

<葉子(天)>


<伊三(人)>


<省吾(人)>


<登美子(地)>
ファンタスティックですね。
「埋もるる」だから亀の卵でしょうか。
広い海を泳ぎまわる日を夢見ているのでしょうね。


・8点句

陰のばし大樹は秋を抱き寄せて  庚申堂
<柊(天)>
大樹の下の涼しさがかんじられる。

<四万歩(天)>
秋を抱き寄せての表現がうまい。樹木の長い蔭ができ、そこはかと涼しい風さえ吹きわたる。はや、秋になりにけり。

<旻士(地)>
綺麗な句です。これから実を結び、葉を散らす、そういう一年のリズムも感じました。


・7点句

新盆の夕星うるみゐたりけり  芳生
<柊(人)>
情感のある句。

<川蝉(天)>


<明子(天)>
どうしようもなくわき上がってくる悲しみが、よく伝わって来ます。

十字架の下の家紋や墓洗ふ  冬扇
<鞠(天)>
「十字架」と「家紋」は、個人にとって共に大切なシンボルであり、「墓洗ふ」はそれを浄める敬虔な行い、この二つの事物がそのまま詠み込まれ、無駄な説明や感情移入が全く省かれている。

<馬客(地)>
この様な墓石を目にしたことは
有りませんが、十字架とエンブレムは
洋の東西を問わないのですね。
隠れキリシタンにまで思いが至ります。

<丹仙(地)>
キリスト教にも様々な考えがありますが
宗派によっては、仏教や神道の祭式を拒絶する
厳しいものもありますね。この作者の場合はどうでしょうか。
なんだか、先祖の供養という
ことを認めない宗派だったようです。
家伝来の宗教との間に板挟みになった感慨が伝わりますね。

連休の貼紙破れし盆の街  馬客
<庚申堂(天)>
うらびれた商店街の感じが良く出ています。

<梵論(天)>
わびしいような、切ないような、懐かしいような、味のこもった句だと思いました。

<晴雨(人)>
「破れ」が眼目。時間の経過からストーリーが生まれます。

絶え間無き風鈴秋へ縺れけり  やんま
<冬扇(地)>
鳴り続けた風鈴。その音が秋にまで・・・。感じが出ている。
(季またがり(?)なんでしょうか)

<伊三(天)>


<愛子(地)>


カンナ立つ浜へと続く納屋の裏  海斗
<巴人(人)>
情景が鮮明にイメージできる。

<庚申堂(地)>
いい句ですね。

<梵論(地)>
きっと静かな漁村なんでしょうね。思わぬところに婆がいたりして。

<香世(地)>
カンナは、浜へ続く納屋の裏です。はい。ぴったりこん!


・6点句

酔ひ覚めの故郷の径盆の月  巴人
<鞠(人)>
人間関係の希薄化を言われる現今でも、盆休みに故郷へ帰省する人は多い。肉親や幼馴染みとの再会の酒の味は一入である。

<四万歩(地)>
盆には死者は家に帰るといわれています。そうした思いを抱きながらの盆の帰省の感慨がうまく出ています。

<省吾(天)>


空耳のごと鳴りやまぬ風の盆  木菟
<巴人(地)>
「空耳のごと」の比喩にひかれる。

<伊三(地)>


<若芽(地)>
風の盆とは、あの祭りのことでしょうか。不思議な余韻を感じます。

野の花の一輪添へし盆の供華  登美子
<芳生(地)>
出来合いの花でなく野の花こと仏にふさわしいのかも。

<木菟(人)>
 華やかではないけれど、何となく視線が行ってしまうような。

<丹仙(天)>
こういう自然体の句が好きですね。野の花はなんでしょうか。
個人的には、山百合などをイメージしましたが。

子の作る空翔ぶかたち茄子の馬  明子
<海斗(天)>
私も子供の頃に、茄子馬を拵えたことがあります。
ぶきっちょのせいか座りが悪いものしかできませんでした。
それを「空翔ぶかたち」だと見る。
とても睦まじい家庭生活が浮かんできました。
盆帰りした御霊たちも喜ばれているなと思いました。

「子の作る」も「空翔ぶかたち」も「茄子の馬」に掛かる。
散文としては不自然に見える語順が、俳句では自然に見える
ことも面白かったです。
<子の作る茄子馬空を翔ぶかたち>とするよりも、何故か
優しさ感じます。

<馬客(人)>
我が家の茄子の馬は「草食むかたち」でした。

<晴雨(地)>
もくもくと子供は作っています。読み手も、もくもくと造型します。


・5点句

かなかなや路地にはじまる与太話  英治
<蘇生(地)>
“路地”と“与太話”の取合せで、日常のほのぼのとした人間関係まで描かれた秀作・・。

<香世(天)>
与太話の好きな私としては、一票!
銭湯の帰り、将棋盤でも覗いて...なんて、いいな。


・4点句

素の足に砂柔らかし秋の浜  童奈
<葉子(人)>


<やんま(地)>
さしもの灼熱の砂も、素足にやさしくなった秋の浜。

<愛子(人)>


敗戦の浜にわれをりけふも在り    蘇生
<木菟(天)>
 その時代を知っている私には、見過ごせない風景です。

<香世(人)>
戦争を知らない世代ですが、戦中派の方の思いは想像出来ます。

新しき声の交じるや魂まつり  英治
<海斗(人)>
赤ちゃんが生まれたんでしょうね。
お盆とかの集まりで、小さい子供がいるととても賑やかになりますね。
御霊も喜んでいらっしゃるようです。

<蘇生(人)>


<明子(地)>
お盆は過去と未来を思い遣る絶好の機会なのでしょうね。

目を剥いて蚊を逃がしやり盆の月  梵論
<顎オッサン(人)>
この日は心静かにいたいもの。

<旻士(天)>
そうそう盆に殺生は禁忌です。
普段おそらく淡々と殺すであろう蚊を「目を剥いて」まで逃がすのが滑稽です。

かなかなの声湧く刻に逢ひにけり  明子
<郭公太(天)>
蜩の鳴く時間は短いんですね。・・・。

<登美子(人)>
「その時刻に居合わせた」のではなく
「その時刻にいとしい人に逢った」
と読んで楽しんでしまいました。

楽士らの競ふ広場や晩夏光  柊
<冬扇(人)>


<やんま(天)>
ひと夏の終わり。覚めやらぬ夏の夢。ジャズと晩夏光は良くにあう。

退きて知る世のことわりを秋意かな  蘇生
<庚申堂(人)>
私の友人にこういう人がいます。

<愛子(天)>


浜に立つ遠きまなざし終戦日  英治
<芳生(天)>
海の彼方に散った数十万の将兵を思い起こしているのでしょうか。

<川蝉(人)>


山椒の実すり潰す背の静かなり  梵論
<冬扇(天)>
「ほんまもん」の世界でしょうか。料理に没入している姿。

<やんま(人)>
父の背中を見るような。


・3点句

迎え火や異教の彼も来し気配  水
<海斗(地)>
<異教の彼>とは、この句の作者のおじさんかなあと想像しました。
キリスト教徒になった(一族からは風変わりな人と思われていた)
おじさんは、作者が子供の頃にとても優しかった。
そのおじさんも亡くなってしまった。
盆に迎え火を焚いたら、どうもそのおじさんも来ているように思えた。
(霊祭は、現世の宗教とは次元の違う先祖供養なんでしょうね。)
で、どうしてキリスト教かと言うと、その方が格好が良いと思ったまでです。
<[33]:十字架の下の家紋や墓洗ふ>にも「霊祭」の本意を感じましたが、
句の明るさで、こちらを取らせて頂きました。

<明子(人)>
私のまわりにも異教の人が多かったので、この感じが良く分かります。

夏の昼古刹の庭に猫もいず  省吾
<蘇生(天)>
じりじりと太陽が照りつける境内の森閑とした感じが“猫もいず”
の措辞で見事に描かれた。

砂浜に啄木と描く青き海  伊三
<巴人(天)>
啄木の歌が思わず口に出てくる。

蜩や川に迫り出す宿の窓  晴雨
<七梟(天)>
秘湯の宿、蜩とせせらぎは秋の色

なき父の歳越えにけり霊祭  丹仙
<鞠(地)>
あたふたと生活していても、盆を迎えると、亡親の享年に己が齢を較べたりして、感慨にふけることが多い。

<四万歩(人)>
亡き父を想う。そうした年齢になった人誰もが抱く感慨です。

マーブルの卓上に置く水中花  柊
<英治(天)>
さわやかに心に入ってくる。「涼しい」の不言題をよく捕らえた感じ。

糊こわき浴衣を抜ける風をめで  葉子
<水(天)>
袖を通すと;まず、くすぐったい違和感、やがて清涼感。

廃船を犬嗅ぎ回る秋の浜  柊
<馬客(天)>
絵画をそのまま句にされたような。
廃船に染み込んだ潮の香も伝わってきます。


・2点句

どの顔も歳重ね着る霊祭  四万歩
<葉子(地)>


茄子飾り茄子を食して送り盆  郭公太
<水(地)>
盆行事の原始型。茄子の連珠がよい。

ふるさとの言葉なつかし盂蘭盆会  省吾
<童奈(地)>


我知らぬ祖父の話を霊祭  海斗
<省吾(地)>


後れ毛がそよいで撫でるサンドレス  木菟
<川蝉(地)>


球音につい手の止まる残暑かな  冬扇
<顎オッサン(地)>
とても良く解る句です。
同じ気持ちを良く詠んでくれました。

遠き日の想いは薄れ浜に立つ  若芽
<郭公太(地)>
ふと、過去を想ってしまいます。・・・。


・1点句

滝壷に轟音やまず神気這ふ  四万歩
<旻士(人)>
「神気這ふ」がいいですね。
滝壷という以上の涼しさと凛とした感覚を覚えました

朝露のまだ残りおる風の尾根  童奈
<梵論(人)>
きれいですね。

浜風や校旗を仰ぐ眸の涼し  馬客
<悠久子(人)>
甲子園の浜風ですね。
「涼し」はこの句の場合は季語とだけと見ました。高校野球が好きです。

汗ふきて普通列車に乗りこみぬ  省吾
<水(人)>
蝉時雨の田舎駅;乗り遅れると、1時間待ちか。

新盆や転居通知の舞い戻る  童奈
<丹仙(人)>
どなたがなくなられたかは分かりませんが
たとえば、つれあいがなくなり、転居したけれども、昔つきあいがあった人も
縁遠くなった、という感慨でしょうか。「舞い戻る」というところ
に不如意の感があります。

生意気もよしとするかな地蔵盆  顎オッサン
<童奈(人)>


盆経を唱える小僧の声清し  眞知
<郭公太(人)>
人生を積み重ねた人でなければ詠めない句。

思ひ出が秋風連れて浜をゆく  木菟
<若芽(人)>
何かを達観したような、穏やかさを感じます。