第79回桃李10月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:紅葉、背、再会(不言題)

秋の句 雑詠または題詠

季題:      「紅葉」
キーワード題: 「背」
不言題:     「再会」

 10月15日(火)投句受付開始
 10月22日(火)24時 投句締切、翌日選句開始
 10月29日(火)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 10月31日(木)披講     

投句: 浮遊軒、伊三、葉子、童奈、巴人、芳生、鞠、英治、ぎふう、四万歩、七梟、馬客、蘇生、庚申堂、木菟、晴雨、頼髪、省吾、やんま、ぽぽな、めだか、梵論、冬扇、愛子、眞知、柊、旻士、梨花、川蝉、登美子、明子、水、顎オッサン、素蘭、丹仙
選句: やんま、巴人、芳生、葉子、四万歩、冬扇、浮遊軒、ぽぽな、童奈、伊三、顎オッサン、ぎふう、鞠、頼髪、七梟、英治、川蝉、蘇生、庚申堂、めだか、木菟、梵論、馬客、水、愛子、旻士、晴雨、若芽、登美子、梨花、明子、省吾、眞知、素蘭、丹仙

披講

・17点句

薄紅をひく母であれ草紅葉  顎オッサン
<葉子(天)>
生活に追われ化粧する暇もない母。草紅葉の赤にそのような母を(或いは妻か)を思う人。己の不甲斐なさをこのような形で表現したものか。

<ぎふう(天)>
老いたる母を思う作者の願いが伝わって来ました。

<庚申堂(天)>
二つの「紅」とてもよく調和していて、とても良い句だと感じました。

<めだか(地)>
共感しました。いつまでも日々の喜びを見いだして、長生きてほしいものです。秋の声妻は小さき背を持てり もよかったです。

<梵論(地)>
草紅葉がきいていますね。

<水(地)>
清楚;母のように、私も。

<旻士(地)>
息子の幼稚園に参観に行ったのだけれど、その派手なこと派手なこと。
なんかずっと学生気分で社会人してる人が増殖している気がします。
年代に見合った落ち着きなど霧散してますね。
この句のような母であって欲しいものです


・13点句

旧姓で肩抱かれし郷は秋  愛子
<芳生(天)>
情感がよく出ていると思います。

<顎オッサン(人)>
懐かしさが良く伝わります。

<頼髪(天)>
不言題「再会」を最も上手く表現していると思う。
省略が巧み、「顔」と書かずにたくさんの「顔」を見せてくれる。

<川蝉(地)>
・・・さん(ちゃん かな)暫らく・・・ですね。

<蘇生(天)>
何とも素晴らしい5・7・5です。
旧姓、郷、肩がお見事です。

<明子(人)>
旧姓で呼ばれた時に感じる不思議な懐かしさを思い出しました。


・9点句

初鮭やはやる背の瀬に絶ゆるなく  蘇生
<顎オッサン(天)>
「絶ゆるなく」という良い方は気になるが、
輪廻を感じる句のイメージが気に入りました。

<ぎふう(地)>
大串章さんの「水裂いて今生の鮭のぼりけり」の「今生」の部分を描けばこうなるのでしょうか。

<旻士(人)>
昔昔、北海道で住所不定無職の生活を10月から3月までやっていました。(昭和63年・64年・平成元年)
 その時遡上する鮭に息を飲んだのを思い出しました。こう云う風景が、ごくありふれた光景に戻る日がくるのでしょうか?

<丹仙(天)>
「はやるせのせにたゆるなく」というリズムに鮭の河を遡る勢いがある。
人間の背ではなく初鮭の「背」に命の連なりを感じます。


・8点句

老人の背がみなすらり菊日和  英治
<やんま(人)>
背中のもつ哀愁感を「老人の背がみなすらり」と実に明るくとらえて重くないところがいいですねえ。

<晴雨(天)>
平明で季語の座りが良い句だ。

<登美子(人)>
今のお年寄りは本当に姿勢がいいですね。
「菊日和」が風格を添えていると思います。

<眞知(人)>


<丹仙(地)>
気持ちの良い句。老人の長寿を祈りましょう。

乖背のすゑの時雨や墓の前  ぎふう
<童奈(地)>


<梵論(天)>
背を詠んだ句のなかで一番気に入りました。「墓の前」よりもう少し凄みのある表現がありそうですが、とはいえ天に推しました。

<愛子(天)>



・7点句

背信のあまたを呑むや吾亦紅  梵論
<童奈(人)>


<伊三(天)>


<めだか(天)>
さみしげな吾亦紅の姿形が、ぽーんと投げ出された感じ。何が何の頭を呑むのか私には分かりませんが、描写でも理屈でもない、生まれてしまった句のようで惹かれました。

背に砂のまだあたたかし秋の海  頼髪
<馬客(地)>
海なし県に住んでいますので、かえって
ああ、そうなんだろうなと、すんなり
感じとってしまいました。

<若芽(地)>
まだ暖かさの残る砂浜の感覚が、私の背にも伝わってきました。

<梨花(天)>
秋の海の色、仰向けになって見る空の色、人のいない海辺の少し冷たい風、打ち寄せる静かな波、寝転んだ背の温かさ・・・。景色と温度、音までが一気に広がりました。


・6点句

アルバムを又繰りて居り秋しぐれ  馬客
<童奈(天)>


<七梟(天)>


花入を小籠に替えて初紅葉  明子
<梵論(人)>
空間装置はさりげなく、でも多忙なんだ。

<晴雨(地)>
地味な句だが、俳句の心を感ずる。

<眞知(天)>



・5点句

振向かぬ背に一すぢの木の葉髪  鞠
<木菟(地)>
 哀しくなりそうな老い、身につまされます。

<梨花(人)>
「振り向かぬ背」、「木の葉髪」。すごくせつない感じがして、ひかれました。

<眞知(地)>


秋の声 妻は小さき背を持てり  丹仙
<葉子(地)>
ふと見れば、妻はなんとはかなげに小さいことか。夫たる者そんな妻を大きく包んでやらねばなるまい。

<明子(天)>
長い間一緒に暮らして来て見慣れていた筈の妻の背中。あんなに小さかっただろうか。
気がつかなかったなあ・・・
優しい気持ちが感じられる句と思います。


・4点句

魔王殿桂一樹の紅葉かな  柊
<やんま(地)>
魔王殿が意表を突いて、桂紅葉が鮮やかです。

<四万歩(人)>
鞍馬山でしょうか?深閑とした山中に建つ御堂。その庭前に一樹の紅葉した桂の木が黙然と立つ。静かさが伝わります。

<ぽぽな(人)>
漢字使いが効いています。堂々と立派な紅葉です。
32)風にゆれ〜はさらりと詠まれておりその通り!と思いました。

初恋や手袋はづし握手され  ぎふう
<やんま(天)>
現在進行形のドキドキとも取れるが、再会としたこの距離感がたまらなくいい。

<丹仙(人)>
初恋のひとに年を経てからめぐり会った。
「手袋外し握手され」は、心のときめきを叙して秀逸

会へぬとも会ふとも言はず秋の川  眞知
<鞠(天)>
 今回は結果的に、天・地・人共に「再会」という最もドラマチックな兼題の句を
選んでしまった。秋思に加えて、目下の拉致問題に触発されたきらいもある。
 待ち人は来り、また去り、川とともに秋も行く。

<木菟(人)>
 考えれば考えるほど、どうしたらいいか分からなくなるのが男女の道でしょう。

空白が余白となりし秋真昼  素蘭
<巴人(人)>
「空白が余白」という言葉遊びのようで、そうでない、そのギャップの面白さに惹かれる。

<旻士(天)>
空白が余白となる、というのが見事な表現だと思いました。
同じような意味なのに、この温もりの差はなんなのでしょう。
日本語の繊細さだと思います。

秋深し背で温もる娘かな  旻士
<ぽぽな(天)>
その娘さんを愛しく思う背中の持ち主の気持ちが伝わってきます。
24)追いかける〜は、子供の無邪気さ一途さを53)背に砂の〜は、秋の新鮮な驚きをうまく伝えていると感じる、好きな「背」の句でした。

<若芽(人)>
幼い娘への愛情があふれています。

アメーバも生きて一生秋の川  顎オッサン
<英治(天)>
示唆に富ます意図が感じられるが、それでいて軽妙だ。「あ、い、い、あ」の語調のせいか。

<蘇生(人)>
アメーバで類型を脱しました・・。

閑けさや即身仏在す紅葉寺  鞠
<頼髪(人)>
平日の夕暮れ、嵯峨野あたりの風景を思い出しました。

<登美子(天)>
お花見でも紅葉狩りでも、喧騒を避けられない気がして
名所と言われるところへは足が向かないのですが、
このお寺なら心行くまで紅葉に染まっていられそうですね。

焼き栗を白髪の殖えし弟子と食む  葉子
<浮遊軒(天)>
何十年も前の子供が白髪頭となって、同じ白髪の先生と一緒に栗を食べている。なんとも面白い句です。栗としか言ってないのに、その場の雰囲気は本当によくわかります。

<水(人)>
「酒を酌む」ではなく、「栗を食む」;師も弟も実直な方だったのかな?

見つめあい言葉遅れし星祭  童奈
<ぽぽな(地)>
その一瞬が永久のように夜空に向かって広がるイメージです。
13)あの時も〜は、「あの時も」「わ」「温み」「酒」がよく効いて艶っぽさが素敵でした。

<鞠(地)>
 星今宵、中七の「言葉遅れし」に、感無量の再会が偲ばれる。

まどろめば紅葉の谷に沈みゆく  巴人
<頼髪(地)>
不思議な感覚。なぜか、星野立子の
  障子しめて四方の紅葉を感じをり
が頭に浮かぶ。

<梨花(地)>
目を閉じて、一面の紅葉を思い浮かべてみました。実際に見ているのとはまた違う幻想的な美しさのなかでまどろんでゆく。素敵ですね。


・3点句

呼び戻す空白の時月の雲  七梟
<若芽(天)>
なんでもない時に眺める月も、秋の月ならなおさら深い意味を持って目に映る。 まして思い出があるなら・・・。

時満ちて慈雨となりけり返り花  顎オッサン
<巴人(地)>
「時が解決してくれる」というような渋味が心地良い。

<葉子(人)>
返り花はひっそりと咲き、季節の移り変わりを告げる。静かなよい句である。

山門に臨く一枝の紅葉かな  頼髪
<七梟(地)>


<愛子(人)>


追いかける子らの背なにも赤蜻蛉  伊三
<四万歩(地)>
よくあった懐かしい光景です。情景がよくでています。

<七梟(人)>


まなじりに浮かぶおもかげ温め酒  英治
<四万歩(天)>
相手は同性か異性か。時をへだてた今、再会した友のどこかに遠い昔の面影をさぐろうとする。「まなじりに浮かぶ面影」がそれでした。その友と、酒をくみかわし、心なごむ。

四匹の背丈比べる秋刀魚かな  眞知
<省吾(天)>


吊橋のあたりもつとも渓紅葉  芳生
<馬客(天)>
「紅葉」の季題はなにか大変難しい
題でした。
この様にすらりと自然によむべきでした。

寅さんの背中野菊の道を行く  やんま
<晴雨(人)>
なるほど寅さんのフィナーレ。野菊が似合う。

<登美子(地)>
無骨な寅さんと野菊の取り合わせが面白いです。
川土手を去ってゆく寅さんの姿を想像すると
野菊がぴったりに思われてきます。

業平の寺コスモスの風の中  浮遊軒
<木菟(天)>
 業平とコスモスと風の中、何か三題噺のような、繋がりありそうでなさそうな、
新鮮さを買いました。

母の足の喜ぶ古都の紅葉かな  冬扇
<水(天)>
五感のうち、触感で秋を愛でること。とくに、「足」は臨場感が濃い。

登り窯見下ろす丘の薄紅葉  浮遊軒
<川蝉(天)>
紅葉している所へ白煙が・・・よい景が見えてきます。

書に倦みて背筋伸ばせば鳥渡る  芳生
<巴人(天)>
「背」の句で「背筋伸ばせば」という着眼点が面白い。「鳥渡る」の季語も利いている。

雲居へと色溶き放つ薄紅葉  愛子
<冬扇(天)>
美しい景。「色溶き放つ」が巧み。

空白の刻を埋めるやちちろ鳴く  巴人
<素蘭(天)>
奪われた歳月そのものの空白感と
その間に生じていった距離感
故郷の懐かしく穏やかな風物に癒されていってほしいという祈りを感じます


・2点句

風に揺れ光に揺れて山紅葉  童奈
<英治(地)>
あたかも風が光を散らすがに、紅葉をきらめかす。情景がありありと浮かぶ。

山紅葉染まる古刹やおこしやす  七梟
<蘇生(地)>
下5で、見事に上5と中7を京の晩秋にしましたね・・。

瓦投げ一直線に紅葉中  頼髪
<庚申堂(地)>
高見から下の紅葉に向かって瓦を投げる状況はよく解るのですが、一直線というのが気になりました。
紅葉には良い句があって、41番、60番なども素敵でした。

足長き猫背の少女雨の月  七梟
<ぎふう(人)>
少女像の絵画を見ているような気にさせられました。

<めだか(人)>
傘を差してうなだれている少女、部屋で手紙を書いている少女…、イメージがふくらみます。屈託のない少女かもしれない。

神父また紅葉明りを浴びてをり  やんま
<明子(地)>
ミサの後、あるいは結婚式の後でしょうか。
神聖なひととき、鮮やかな紅葉と明るい光が溢れています。
美しい光景と思いました。

青春の背表紙は薄紅葉色  登美子
<浮遊軒(人)>
これは老人の繰り言ですか。リズム感があまりよくないのは考えものですが、同世代の一人として、一票を投じます。

<英治(人)>
よく分からないのだが、何かコマーシャルのキャッチコピーのようで・・。気にかかる。

相輪に層を重ぬる照葉かな  冬扇
<素蘭(地)>
相輪はおそらく紅葉の名所である日光輪王寺の相輪とう(木+棠)
日光に美しく照り映えている紅葉(照葉)が地名の日光とよく響きあっています

秋の雨とらえて光る日暮れ道  省吾
<冬扇(地)>
雨をとらえて光る,という捉え方が面白い。秋の日暮れの感じがよく出ている。

千々に揺れ川面のもみじ山を恋ふ  梨花
<愛子(地)>


白雲を抜く長城の紅葉かな  丹仙
<芳生(地)>
雲を下に見ての万里の長城の様子が分かります。

歩み去る人の背に降る落ち葉かな  葉子
<省吾(地)>


母の背の丸まっている小春かな  童奈
<浮遊軒(地)>
老いた母を見守る目がいいですね。俳句で家族のことを詠むのはあまり好きではないのですが、この句は自然体というか、良い感じです。

拉致の悲を秘めし幾年秋の海  水
<伊三(地)>


おにぎりも転がる気配紅葉谷  水
<顎オッサン(地)>
楽しい句ですね。親子でピクニックかな。
秋の雰囲気も良く解ります。


・1点句

暫らくは田畑の土手も草紅葉  川蝉
<馬客(人)>
高山にも里山にも人里にも
秋は同じように気配りをして
呉れるのですね。

立山の霧の中なる初紅葉  四万歩
<川蝉(人)>
そうですね・・・高嶺ですもの。

胡桃割る暫しデジャ・ヴュに身をゆだね  梵論
<庚申堂(人)>
「デジャ・ヴユ」という言葉は私もいつかは使いたいと思って暖めていました。「身をゆだね」がいい繋がりでした。

たゆたふや紅葉を透けし子守唄  めだか
<伊三(人)>


秋蝶の吾が背に憩う気配あり  馬客
<冬扇(人)>
ほのとした句。私も秋蝶が背にとまって欲しいもの。

総領の兄の背老いし夜半の月  巴人
<芳生(人)>
弟、妹から見た、一家を背負う兄の姿が読み取れます。

美少女の面影残す秋袷  木菟
<鞠(人)>
 秋袷をすっきり着こなし、そのかみの清純派は、落ち着いた今でも美しい。

ボギーの背ギャバンの背中秋思う  庚申堂
<素蘭(人)>
全共闘華やかなりし時代の東大駒場祭の名コピー(橋本治作)
 とめてくれるな おっかさん
 背中のいちょうが泣いている
 男東大どこへ行く
久々にこの名文句を思い出しました

絵手紙の紅葉に来よと書き添えて  馬客
<省吾(人)>