第81回桃李11月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:帰り花、酒、戦う(不言題)

冬の句 雑詠または題詠
季題:「帰り花」       
キーワード題:「酒」 
不言題:「戦う」    

 11月15日(金)投句受付開始
 11月22日(金)24時 投句締切、翌日選句開始
 11月29日(金)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 12月 1日(日)披講  

投句: やんま、旻士、芳生、郭公太、顎オッサン、七梟、素人、巴人、素蘭、葉子、ぽぽな、馬客、冬扇、蘇生、童奈、梵論、英治、丹仙、鞠、浮遊軒、梨花、ぎふう、木菟、柊、愛子、川蝉、明子、晴雨、香世、省吾、庚申堂、四万歩
選句: 顎オッサン、蘇生、巴人、葉子、芳生、柊、浮遊軒、川蝉、鞠、英治、素人、香世、四万歩、ぽぽな、童奈、冬扇、馬客、徳子、梨花、木菟、やんま、庚申堂、旻士、梵論、愛子、若芽、明子、晴雨、素蘭、丹仙

披講

・21点句

入院の朝音高く葱きざむ  明子
<柊(天)>


<浮遊軒(人)>
なにか悲しくなるような句ですが、悲運に負けまいとする気持ちが伝わってきます。

<ぽぽな(地)>
胸に溢れる不安と戦っているのでしょうか。
49)「銃口を〜」も心に残りました。認めるには酒の力が必要な現実。

<童奈(地)>
不安、いらだち、無事退院するぞという決意が「音高く葱きざむ」に表れていると思います。

<冬扇(地)>
入院することになった。不安な気持ちを抑えるように,葱をきざむ音を しいて 高く…。家族の皆なの励ましの気持ちまで伝わってくるようだ。

<馬客(天)>
入院するのはたぶん自分自身。
凛とした決意のようなものが
闘病生活を支えるのでしょう。

<徳子(天)>
闘う。病気に向かって。葱がぴったりです。

<やんま(天)>
入院の朝の複雑な心境を「葱きざむ」に集約した表現が見事。

<丹仙(地)>
「戦う」の不言題ですが、病との戦いを、「音高く葱きざむ」としたところが印象的でした。


・15点句

炉話の途切れし酒を父に注ぐ  馬客
<英治(天)>
いかにも俳句に詠まれそうな情景だ。無口な親子だから、ついつい話も途切れる。

<素人(天)>
父を早く亡くした者にとって、この境地は羨ましい。
父親の側からしてもこれはひとつの願望でしょうね。

<四万歩(人)>
さりげない行為に、親子の情愛があらわれています。

<冬扇(天)>
炉を囲んでの会話。ふっと話が途切れる。老いた父に黙って酒を注ぐ。万感が伝わって来る。

<やんま(地)>
こういう間合いがある。何とも言えない沈黙に千金の値あり。私ふうのリズムでは<炉話の途切れて父に酒を注ぐ>となってしまうところ。

<愛子(天)>



・13点句

指相撲くしゃみする間に負けてをり  葉子
<川蝉(天)>
子供の笑顔が・・・

<鞠(地)>
 気の合った仲間と、或いは恋人同士、それとも家庭の団欒か、腕相撲に比べても
指相撲は、より睦み合い、じゃれあうような気分がある。嚔などした途端に負けること請け合い。

<香世(天)>
あは。思わず、納得と頷きました。くしゃみする間は、力抜けますよね。うん。

<旻士(天)>
 戦いというお題で、肩の力が抜けた題材ですね。全ての戦いがこんな具合で終わればいいのに。遺恨の残らない爽やかな味わいがこの句の魅力ですね。

<愛子(人)>


<丹仙(人)>
子供か孫と指相撲をしている微笑ましい情景です。相手の子供の真剣さが伝わり、おかしみが増します。


・11点句

鰭酒や職無き身とは軽きもの  愛子
<顎オッサン(地)>
良い身分とはこのこと。
寂しさのかなにホットした感じが
良く解ります。
いっぱいやって何をしましょうか。

<芳生(人)>
既に職を退いた身にはよく分かる句です。

<浮遊軒(地)>
実感できる句です。共感できます。

<童奈(人)>
どこか開き直りと自嘲の響きを「鰭酒」に感じます。

<明子(地)>
あんなに自由の身に憧れていたのに、いざ職を離れてみると何とも心もとない・・・
そんな感覚が良く分かります。

<素蘭(天)>
無職の(肩書きのなくなった)身が軽いという潔さに惹かれました


・10点句

登るほど海の展けて帰り花  芳生
<巴人(地)>
海のある一情景が季語の帰り花でイメージが鮮明となった。

<柊(地)>


<浮遊軒(天)>
景色が良く見えます。詠者の感動が伝わってきます。

<英治(人)>
胸の内に景色が広がってくる感じを覚える。帰り花を誘った日当たりの良さも想像できる。

<梨花(地)>



・9点句

含羞のすこしほどけて燗の酒  素蘭
<蘇生(地)>
ほのぼのと心が通ってくる情景が浮かんできます。

<葉子(天)>


<木菟(地)>
酒というものはそんなものなのでしょう。

<旻士(地)>
  例えば見合いの席。どうしても続く気まずい雰囲気。例えば単身赴任で何年ぶりかに家族一同集まった時。なにかしら気恥ずかしい雰囲気。
そういうシチエーションにほのかに湯気をあげる熱燗。
そうして一杯の酒が座を紐解く。いい句ですね。

失せしものもどす術なき帰り花  木菟
<四万歩(天)>
そういう年令になったことを改めて想う。ふと見れば帰り花が咲いているではないか。感慨が痛切につたわります。

<童奈(天)>
花はこうして帰って来ることもあるが。冬の痛さを感じました。

<愛子(地)>


<若芽(人)>
花はひょんなことで遅れて咲いたりするのに、失ったものは、そうはいきませんものね。


・8点句

雪つぶてあの娘へ撃つはやわらかく  馬客
<顎オッサン(天)>
とても甘い雰囲気の句ですが、
句全体から愛を感じる。
でも「撃つ」はきつすぎる。「打つ」でしょうか。

<晴雨(天)>
下五が非凡。

<素蘭(地)>
といいながら集中的に攻撃してたとか?


・6点句

詫びごとの素直に言えし帰り花  馬客
<芳生(天)>
帰り花が前段の内容とよく合っています。

<明子(天)>
なかなか言えなかった「ごめんなさい」がやっと言えた。ほっとして空を仰ぐと、
そこに一つ二つ帰り花が。なんとなく温かい気分になりました。


・5点句

枯れすすむ日々の通院長引きし  愛子
<蘇生(天)>
もっと早く快癒する筈が・・と、季節の深まりとともに心に疼きを感じている様が・・。

<梵論(地)>
「戦う」の不言題で最も心に染みる句でした。

昼酒にふうわり抱かれ小春空  梵論
<香世(地)>
仕事持つ身には、昼にお酒をいただくのが一番の極楽だと考えます。ぽかぽか陽気にけだるい酔い心地。いいなあ。くそっ!

<梨花(天)>


この小春日にも何処かで兵士が血を流す  ぽぽな
<馬客(地)>
「小春日や」で句意は充分伝わる
とも思いますが・・・。

<庚申堂(天)>
すばらしい句だと思います。

九条は死守せよ吾子よ寒の雷  丹仙
<四万歩(地)>
抗しがたい流れのなかで、それでもノーをいう勇気をこそと。寒の雷がきいています。

<木菟(天)>
いささか生硬な感なしとしないが、これはこれで充分に説得力があります。


・4点句

家売る日思ひつつ掃く落葉かな  葉子
<川蝉(人)>
句の為のストーリーと・・・

<若芽(天)>
長年住み慣れた家を離れる時の気持ちでしょうか。この先、住むわけでもないのに落ち葉をきれいに掃く様子がしみじみと伝わります。

日溜りや猫が添い寝の帰り花  旻士
<鞠(天)>
 飼主の有無に拘わらず気儘に生きる猫は、俗に「寝る子」が語源と言われる通り
昼寝が大好き。本格的な冬に入る前の、一時の小春を楽しむ猫と帰り花の取合せは心温まる情景である。

<ぽぽな(人)>
とても暖かで幸せな気持ちになりました。猫が横になり触れ合える丈の花、その花の名はなんでしょう。

計算のできぬ愚直さ狂ひ花  素蘭
<川蝉(地)>
面白い・・・で済むように・・・

<素人(地)>
愚直であることに誇りを持ちましょう。
皮相的に過ぎてゆく日常生活の中にあって、愚直であることの真価はこれから必ず見直されるはずです。


・3点句

予後の良く妻の支えや返り咲く  川蝉
<梵論(天)>
心の温かくなる句ですね。お大事に。

冬の日に錆び燦燦と連山や  蘇生
<丹仙(天)>
「錆び燦々と」に惹かれました。初冬の連山の趣をよく言い表しています。

一杯の塩酒許せ寒座禅  丹仙
<ぽぽな(天)>
緊張感がみなぎっています。
75)「ふるさとの山の名の酒」も好きでした。読む人の数だけそれぞれに違う名の酒を思い起こさせる一つの句、素敵ですね。わたしの場合は「黒松千丈」
51)「「過ぎし日を〜」映画の一場面のようです。

霜枯れの野に残兵は将棋指し  梵論
<巴人(天)>
戦いの前線の映像のような一コマをよくまとめている。

風呂吹の透きとおりをりコップ酒  郭公太
<蘇生(人)>
風呂吹とコップ酒の相性がいい!

<素人(人)>
薄味で、大根の甘みが残っている風呂吹き、酒が進みます。
コップ酒とありますから木枯らし吹く屋台が似合いそうです。

<梵論(人)>
ああ、どっちも美味そう。

吟行の連れは同窓帰り花  丹仙
<顎オッサン(人)>
帰り花の雰囲気を「プラス」にとった
良い句と思います。

<鞠(人)>
 昨今、俳句人口の中に、定年後の男性と子育てを了えた女性の占める割合がとても高い。それぞれの人生行路を経て来た同窓の先輩・同期・後輩が、俳句を機縁にして再び集うことも多々在るであろう。

<香世(人)>
同窓会大好き人間です。これも、納得。楽しいだろうなあ。狂いたい?なんて願望があったりして(笑)


・2点句

情愛の果てにありけり帰り花  顎オッサン
<英治(地)>
谷崎潤一郎の世界。憧れるなぁ、そんな心境。こんな経験もなく老境に入ってしまうのも・・。

板塀の猫笑みてをり帰り花  梵論
<徳子(地)>
叙景が浮かびます。長閑な描写です。羨ましい。

夕星や旅路の古寺の帰り花  鞠
<葉子(地)>


坂登りきって城跡帰り花  浮遊軒
<芳生(地)>
情景が見えてきます。

わが半途後手後手ばかり帰り花  晴雨
<庚申堂(地)>


借景の山粧ひて時忘れ  省吾
<若芽(地)>
山の装いとは、紅葉なのか、雪化粧なのか。こんな時間て、たしかにあります。


・1点句

恋心地風邪の薬で治しけり  香世
<素蘭(人)>
病は気から、早めの治療が無難です

咲いちやった恥らひてゐる帰り花  葉子
<巴人(人)>
前段の口語調と後段の文語調との取り合わせの面白さ。

酒呑みて酒に呑まるる師走かな  晴雨
<徳子(人)>
酒に呑まれる人にもそれなりの言い分ありです。特に今年の師走は多いでしょうね。体に気を付けてください。

 しぐるるや谷(やつ)北面のさびの色  蘇生
<木菟(人)>
鎌倉に来て「やつ」という言葉を知って、何となくそれらしい句に会いました。

霜の朝産休明けて自転車出す  庚申堂
<冬扇(人)>
さあ又,と出勤する。自転車を出す。外は霜。冷たい朝の空気の中で、新しい気持ちで勤め先に向かう。

銃身を削りゐし手や温め酒  英治
<馬客(人)>
銃後の小国民であった身として
見過ごせない一句。

万物の眠る日近し帰り花  明子
<葉子(人)>


熱燗や業火抱きて持て余す  やんま
<庚申堂(人)>


闇汁や決意新たに酒を酌む  童奈
<旻士(人)>
闇汁と決意と酒のつながりがよいのではないかと

雪晴れの空に行き交ふ鬨の声  四万歩
<やんま(人)>
凍えるような寒の空を燃えたのは若きラガーか雪合戦か、晴れて勝利の鬨の声である。

帰り花会ふてときめく瑞泉寺  四万歩
<柊(人)>


帰り花時を忘れし恋に似て  庚申堂
<明子(人)>
とても巧みな比喩と思いました。納得です。

悔いを増す酒としとどの時雨かな  木菟
<梨花(人)>