第83回桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:初雪、忘(れる)、凄まじい(不言題)

冬の句 雑詠または題詠

季題: 「初雪」      
キーワード題: 「忘(れる)」
不言題:「凄まじい」   

 12月15日(日)投句受付開始
 12月22日(日)24時 投句締切、翌日選句開始
 12月29日(日)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 12月31日(火)披講       

投句: 川蝉、願船、冬扇、英治、素蘭、ぽぽな、四万歩、晴雨、梵論、葉子、巴人、馬客、顎オッサン、頼髪、七梟、明子、芳生、浮遊軒、省吾、愛子、徳子、やんま、眞知、柊、梨花、木菟、水、庚申堂、めだか、登美子、素人、旻士、清子、丹仙
選句: 芳生、顎オッサン、徳子、巴人、由衣、願船、清子、川蝉、やんま、英治、冬扇、素人、ぽぽな、浮遊軒、梵論、梨花、七梟、旻士、庚申堂、愛子、水、馬客、柊、頼髪、四万歩、登美子、若芽、めだか、晴雨、素蘭、明子、丹仙

披講

・12点句

忘るてふ癒しもありぬ冬の草  芳生
<顎オッサン(天)>
つらい季節の後の喜びを信じたいものです。
春には芽がでると。
迷いなく「天」にしました。

<清子(地)>
冬の草という季語によって、前向きに生きんとする作者の姿が見えてきた。

<川蝉(地)>


<梵論(地)>
さて、あれもこれも悉く忘れちまったら、癒しどころじゃないけれど。

<柊(人)>


<素蘭(地)>
忘れるということは癒しの段階にはいったということだと思いますが
心理学的には冬草のようにじっとしているより
身体を動かす、運動をするといった行為が大変有効だそうです

初雪に目覚めし山の高さかな  登美子
<清子(天)>
いつも見慣れている山をもってきて、初雪への感動が伝わってくる。

<英治(地)>
いつもと違う窓外の景。厳かな山の姿。すうっと言い切った鮮やかさ。

<ぽぽな(天)>
雪を頂いた山並みが目に浮かびます。すがすがしい。

57「初雪や妻の墓前に靴のあと」も心に残りました。

<七梟(地)>


<丹仙(地)>
初雪によって普段見慣れた情景が一変する様をよく捕らえています。ただ、措辞について言うと、「目覚めし」という過去形よりも、

「初雪に目覚むる山の高さかな」

と現在形にしたほうが、作者と山との一体感が出て句が生きると思いました。


・9点句

初雪や妻の墓前に靴のあと  葉子
<徳子(地)>
雪の中を誰が墓参してくれたのか靴跡がある。あたたかい人の温もりが見えて私の好きな句です。靴跡の主は身内以外の人だろうと思われる。

<旻士(天)>
 これはドラマだ。動揺する夫の気持ちが、「初雪や」の落ち着いた常套初句にかえって反映している。
 いったい誰が参ったのだろうか。靴あとは。男物の革靴(しかも大きめ)に違いない。

<若芽(地)>
初雪でも降らなかったら知らずにいた誰かの存在。 そんな雪の日に何を作者の妻に話し掛けていたのだろうと、いろいろ想像させてくれます。

<めだか(人)>
奥様のお人柄が偲ばれます。

<丹仙(人)>
初雪の清浄さが亡き人にたいする心配りを際だたせていますね。
誰かがお参りに来てくれた、孤独の癒やされる一瞬です。

雪の日は降る雪だけを見ていたい  清子
<巴人(天)>
シンプルな口語口調の句であるが、そのシンプルさにひかれる。

<英治(天)>
本当にそうだなと思わせる力がある。「♪雪の降る町を・・」の気分。

<馬客(天)>
今月の投句では素直系のお作に
心ひかれるものが多くありました。
素直系第一位。


・8点句

初雪や話し逸れゆく薬売り  やんま
<梵論(天)>
お話も目線も逸れてうわの空…いよいよ冬ですな。

<頼髪(地)>
初雪の頃はもう年の瀬。薬の話もほどほどに、空模様から景気、政治、事件などなど、この一年間の出来事に話題は移っていきます。締めくくりは、家族、健康のこと。「じゃ、来年もよろしく」と戸を開けると、やっぱり雪が降り始めました。

こんな情景がすんなり浮かぶのも、句のリズムが良いからだと思います。

<明子(天)>
きっと話題は故郷の富山のことに・・・

呼び止めし人の名忘れ師走街  眞知
<巴人(地)>
滑稽味のする句である。「師走街」の雰囲気が伝わってくる。

<素人(天)>
私もそうですご同役。まさに共感の句。
これから、ますますこうなってゆくのでしょうか。
思い出せないまま話し終えて別れました。未だに思い出せない。

<ぽぽな(地)>
せわしい年の瀬の様子をうまく切り取った句だと思います。

87「忘れたることも忘るる去年今年」もとても語呂が良く口に気持ちの良い句でした。わたくしの場合も作ってみたくなりました。「忘れたきことは忘れず年忘れ」

<梨花(人)>
お正月の準備で街に買い物に出かけると思いがけない人に会い
思わず「あ!」っと立ち止まるのですが、お互い相手の名前が
出てこない…。確かにあります、そんなこと。


・7点句

初雪や往来塞ぐ三輪車  梵論
<やんま(地)>
路地裏のほのぼの風景。癒されます。

<冬扇(人)>
立ち往生しているのか,単に止まっているのか。いずれにしても一句通じて景が見えて面白い。塞ぐというくらいだからオート三輪かと思うが,作者が見たのは,子供の三輪車かも知れない。

<浮遊軒(人)>
狭い道路に三輪車が一台道を塞いでいるようにみえる。初雪に気をとられた子供が置き忘れていったものか、雪が降り出したので、母親にすぐ戻るように言われて慌てて家へ駆け込んだものか。

<丹仙(天)>
三輪車、乗り捨てた子供は、雪だるまでも作っているのでしょうか。
そのへんを語らずに読者の想像に任せ、眼前の景を叙するだけでとどめた
ところに俳句が生まれました。

雪と書く大きな午後の黒板に  清子
<梨花(天)>
雪が降ってきたのが嬉しくて、掃除が終わってきれいになった黒板に
白いチョークで「雪」と書いてみた。
わくわくするような、誰かに知らせたいようなそんな気持ちが伝わって
きました。

<柊(天)>


<登美子(人)>
小学校でしょうね。
初雪が降って来たチャンスを捉えて
「雪」という字を書いて教えた。
すてきな先生ですね。
子供たちはきっと一遍で覚えたことでしょう。

初雪や老の朝餉に軒雀  川蝉
<愛子(人)>


<頼髪(天)>
近ごろ雀の姿を見かけません。朝に当たり前のチュンチュンという声が無いと
気付くと寂しく、また心配になったりします。
まさに初雪の朝、家の軒に雀が姿を見せてくれた。雀の挨拶に作者もほっとされた
のかなと思いました。

<めだか(天)>
初雪、朝餉、軒雀に風情があります。和食の後のほうじ茶がまたいいですね。


・6点句

着膨れて思ひ通はぬままにをり  明子
<芳生(天)>
寒いときの恋とはこのようなものでしょうか。心の底では恋の炎が燃えているというのに。

<願船(天)>
思いきって自分の心を打ち明けようとするが言葉がうまく口から出てこない。その時のつかえたような感情を「着膨れて」という上五の措辞がよく伝えている。

初雪や闇の形を教へけり  顎オッサン
<徳子(人)>
雪の明かりで浮かび上がるモノトーンの美しい雪景色

<梨花(地)>
降る雪が車のヘッドライトかなにかに照らし出されたとき
雪の白さにかえってまわりが「闇」であることを意識する。
形のない暗闇が浮き上がって見えるような気がしました。

<四万歩(天)>
闇の形が明らかになる雪の夜の情景が良く出ています。


・4点句

テレビ見ることを忘るる柚子湯かな  川蝉
<素人(人)>
大河ドラマの総集編だったですか。
柚子湯の寛ぎの方が大きな幸せですよ。

<七梟(天)>


社会鍋なる季語のあり忘れゐし  馬客
<顎オッサン(人)>
社会性の感じられる句です。
ふとした時にこんな感情は確かにありますね。

<巴人(人)>
「社会鍋」というのももう「死語」になったのでしょうか…、「忘」の句として
良いですね。

<水(地)>
社会全体に不信感がつのり、慈愛の心が薄れたのでしょうか、師走の街から慈善鍋が消えてしまったようですね。

一生の名句を忘れ冬日向  頼髪
<若芽(天)>
俳句を作ろうとして座った縁側の情景でしょうか。 なんとものんびりとした雰囲気がたまりません。

<明子(人)>
気持がゆったりしてきます。

人嫌ひ加速してゆく年の暮れ  素蘭
<素人(地)>
私もそうなんですよ。先行き不安でもあります。
妻からは、ならば今から自律の訓練をと言われています。

<七梟(人)>


<四万歩(人)>
分かる分かる。

地吹雪や足元見えぬ世となりぬ  四万歩
<英治(人)>
臨場感のある表現。東北の猟師マタギの映画を思い出す。

<素蘭(天)>
これはもう世相と個人との関係そのもの
「引きこもりのすすめ」が流行るわけです

初雪や静かに歩む堰の鷺  芳生
<浮遊軒(天)>
初雪が降っている。ふと見ると、堰のあたりを、鷺がゆっくりと歩んでいる。鷺も初雪を愛でているのだろう。

<頼髪(人)>
毎朝通勤の途中で鷺を見かけます。こちらはバイクで凍りつきそうなのに
鷺は浅瀬でじっとしています。肩のラインがとても寒そうにみえるのですが、
もちろん大丈夫なのでしょう。
「静かに歩む」とされたのがいいと思いました。


・3点句

熊を追う弱き犬より吠えかかり  庚申堂
<川蝉(天)>


年の瀬や鳥影に犬吠え立てる  馬客
<芳生(地)>
犬は雀が近寄ってきても己のテリトリーを乱されぬよう吼えるものです。年の瀬の感じが出ていると思います。

<庚申堂(人)>
「枕草子」から発想したと思いますが、私も同じでした。

初雪や白寿の母の背に着地  水
<登美子(天)>
初雪を喜んで外に出られたお母様でしょうか。
ご健勝であればこそ、ですね。
見守る作者のあたたかい視線を感じます。

冬霞とうに忘れし恋の傷  ぽぽな
<芳生(人)>
恋の傷を「とうに忘れる」とは余程達観した人物と見えます。

<顎オッサン(地)>
冬霞が効いています。

水涸れて忘れし音のよみがえり  省吾
<愛子(天)>


赤錆の骸を攻むる冬怒涛  愛子
<徳子(天)>
放置された船泊などが冬の荒い波に洗われて益々赤錆て骸となる。
今問題の船?

無雑作に初雪はらう男の手  省吾
<浮遊軒(地)>
女なら別の所作もあろうものを、この男、肩にうっすらと積もった雪を、初雪とも思わずに無造作に払いのけてしまった。男にロマンティストたれとは無理な要求なのだろうか。

<晴雨(人)>


極月や父に日数の限られて  登美子
<ぽぽな(人)>
お父様をどうぞお大事に。

<明子(地)>
同じ思いをしたことがあります。

初雪や髪切りかろき肩先に  眞知
<庚申堂(天)>
弾むような感じが出ています。46番も好きな句でした。

初雪や恋のはじめの初メール  頼髪
<晴雨(天)>
きっかけとして初雪は相応しい。「は」音の流れも美しい。

肩の荷をおろして海鼠日和かな  顎オッサン
<やんま(天)>
私も定年後の軟体動物状態ですので、気持ちが分かります。

初雪や小首傾げしペルシャ猫  浮遊軒
<水(天)>
世界中が騒然としている昨今ですから、この句は童画の世界を見ているようで、心をなごませます。

ときも音も封じ込め凍つ不動滝  梵論
<冬扇(天)>
凍った滝。音も時間も止まっっている。冬の滝と,それに向き合っている作者が見える。「封じ込め」は主観的な言葉かも知れないが,この際 適切な表現と思う。
(「凍つ」は終止形。したがって小理屈を言えば,この句は,文法的には「凍った滝(凍っている滝)」にはならず,「〜凍つ。不動滝」の構造になっている。作者はそのお積もりで作句なさったと思うが…)

初雪や五体投地の湯殿山  丹仙
<由衣(天)>
初雪の上での五体投地。湯殿山は霊場ですが、湯殿のイメージがあるので、ことによると作者は、露天風呂をでて雪の上に熱く火照った身体を投げ出しているのかもしれません。


・2点句

初雪やふるさとになるやもしれぬ  めだか
<登美子(地)>
引っ越したばかりの土地に初雪が降った。
寒々しい景色が一変した。
この土地をふるさとと呼べるように
いつかなれるかもしれない、という意味に取りました。
いまだ、嫁いできた土地に完全には親しめないでいるわたしには
胸が痛くなるような句です。

初雪や蕪には蕪のいかり肩  願船
<清子(人)>
大胆な詠いぶりで初雪と蕪との取り合わせが成功している。リズムもよい。

<梵論(人)>
八百屋の店先で、吾も身を縮めてのいかり肩。

年の湯にふんはかふはと忘れたる  やんま
<庚申堂(地)>
のんびりとしたムードがただよっています。

息白し鳩を啄ばむ烏かな  七梟
<めだか(地)>
自然の摂理とはいえ、こういう時の烏の嘴は凄まじい。

初雪の鏡に薄き紅を引く  願船
<由衣(地)>
鏡の向こう側に初雪が写っていて、作者は紅を曳いています。絵に描いたような情景ですね!

秋の夜の父の遺墨の乱れかな  芳生
<冬扇(地)>
ご父君の残された書きものを見ておられる。秋の夜長。その筆の乱れに子供ならではの 様々な想い。しみじみとした追悼句。

どこまでも欅を登る蔦紅葉  柊
<愛子(地)>


老ひてなほしがみつく人今日冬至  素人
<旻士(地)>
冬至というのは神学的に一年の終わりとみなされるようです。(ことに太陽信仰は)

太陽が生まれ変わって次の周期に入るということでしょう。
この句を読んでもらいたい政治家やフィクサーが次々と目に浮かびました。

行年や何か忘れてゐるやうな  晴雨
<四万歩(地)>
年のかさなりと齢のかさなりがそうした感慨を誘います。

熊寝ぬる採り忘れし実は夢の内  梵論
<柊(地)>


初雪やボンネットにへのへのもへじ  ぽぽな
<馬客(地)>
素直系第2位。
子供の頃から「へへのの・・・」と
おぼえていましたが、この句を音読
すると「へのへの・・・」じゃないと
リズムがノリませんね。

備忘録開きしままに冬銀河  めだか
<願船(地)>
日常のあれこれを書きとめたノートの頁が開かれたままになっている。作者は目を閉じて追想の世界に入っているのであろうか。青い冬の銀河。それは幻想とも現実ともとれて美しい。

目を入れてもらえぬままの雪達磨  清子
<晴雨(地)>



・1点句

皸に炎ゆる色ある齢かな  登美子
<旻士(人)>
年を重ねた人の皸って、そういわれれば妙に赤い方が多いですよね。
観察眼に感服しました。

数へ日や人を喰ふ絵にひとだかり  英治
<川蝉(人)>


ヘルニアを長湯で誤魔化し妻の冬  旻士
<素蘭(人)>
ヘルニアは体質なので上手につきあいなさいと言われますが
冷えると確かに症状が出やすくなりますね。お大事に

喉仏御座す葛湯はいかほどに  顎オッサン
<やんま(人)>
介護疲れも、葛湯にほっとしながら癒されます。

初雪やグリム童話を聞かす声  英治
<由衣(人)>
なんとなくグリム童話とあいますね!

初雪の携帯に打つユキの二字  願船
<馬客(人)>
携帯は持っていますが、メールできません。
「ユキ」ぐらいは打ってみたいです。

肝心の牡蠣買ひ忘れ野菜鍋  葉子
<若芽(人)>
はい、私にも覚えがあります。 共感・・・

はじめての雪手のひらを捧げ受く  明子
<水(人)>
「はじめての」がよい。その年の初雪のことか、それとも、生まれてはじめて雪を見たときの情景(雪の降らないところから来て)なのか。

クリスマスディナー犬にも忘れずに  明子
<願船(人)>
心に思い実行したことをそのまま素直に表現している。作者の優しさが伝わってくる。