第84回桃李1月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:屠蘇、歌留多、老いも若きも(不言題)

新年の句 雑詠または題詠

季題1: 「屠蘇」      
季題2:「歌留多」
不言題:「老いも若きも」   

 1月15日(水)投句受付開始
 1月22日(水)24時 投句締切、翌日選句開始
 1月29日(水)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 1月31日(金)披講   

投句: 青榧、巴人、顎オッサン、ぽぽな、四万歩、伊三、徳子、素蘭、やんま、英治、眞知、芳生、七梟、清子、葉子、丹仙、馬客、頼髪、香世、童奈、海斗、晴雨、柊、木菟、浮遊軒、愛子、鞠、素人、梵論、梨花、明子、径、庚申堂、省吾、川蝉、旻士、水
選句: やんま、浮遊軒、芳生、顎オッサン、巴人、青榧、英治、伊三、鞠、ぽぽな、木菟、七梟、海斗、童奈、庚申堂、水、川蝉、梨花、柊、清子、梵論、馬客、願船、旻士、愛子、径、剛、晴雨、明子、素蘭、頼髪、丹仙

披講

・15点句

くちびるは笛吹くかたち春隣  明子
<浮遊軒(天)>
春近しの思いがこの句から伝わってくる。

<顎オッサン(天)>
春隣がとても良いですね。
どんな曲でしょうか。
とても良い句です。

<英治(天)>
木々が芽吹きの準備をしているように・・。いかにもそんな感じだ。

<童奈(天)>


<丹仙(天)>
なんともよい気分にさせてくれる句ですね。春隣とは「春近し」ということですが、この句では、人情他の句としているので、「隣」が隣人のような語感があります。


・12点句

屠蘇としていつもの酒をいただけり  童奈
<巴人(人)>
どこかとぼけた滑稽味のあるところに惹かれる。

<青榧(地)>
わざわざ屠蘇を用意はしない。私の 家も同じです。共感できます。

<鞠(天)>
いつも愛飲している酒を、元朝は屠蘇としてあらためて味う。その新鮮さと
懐かしさを賞美しながら……。

<ぽぽな(天)>
すっと素直に納得の句です。我が家もそうでした。実は恥ずかしいのです、「お屠蘇とは清酒とずっと思ってた」。

<素蘭(天)>
「いつもの酒」という気負いのなさに「いただけり」という結句に枯れたユーモアを醸感じます


・10点句

ほろ酔いていろはがるたの輪の中へ  愛子
<七梟(天)>


<梨花(天)>


<清子(人)>
遊び心が読み手にも伝わってきてここちよい

<頼髪(天)>


これやこの母が十八番の恋かるた  径
<巴人(天)>
「本句取り」の句でリズムも良い。連句の恋の句の雰囲気で、「十八番」(おはこ)も利いている。

<剛(地)>
なんだか口調がよい。覚えやすいのが十八番の取り札とあっている。

<明子(天)>
これやこの行くも帰るも・・の歌がお母さまのお気に入りだったのですね。
恋の歌ということで若い頃の様子なども想像されます。

<素蘭(地)>
これは身に覚えがあります
ちなみに私の場合は「由良の門を」と「瀬をはやみ」の二首


・8点句

胸元の少しずれゆく歌留多かな  清子
<ぽぽな(人)>
どきっとしますね。

<木菟(人)>
視線が定まらなくて、歌留多に集中できない。

<海斗(天)>
正月に着慣れない和服を着ているのでしょう。
胸元がずれていることを気にしているところ
に初々しさを感じました。
そんな座に交わってみたい憧れを込めまして、天。

<童奈(人)>


<馬客(人)>
作者の句に込めた趣とはやや、ずれるでしょうが
歌留多の女王選手権の決勝のシーンとして
鑑賞しました。

<願船(人)>
正月の晴れ着に着飾ったお嬢さんたちの胸元も次第に緩んできた。歌留多のなかの華麗な歌の世界と現実に動いている今の世界。そのイメージが二重写しになって俳句の中に現れてくる。

リストラの話そらせり屠蘇の客  水
<やんま(人)>
話し出した者の軽い後悔を余韻に話題が変わる。微妙に白時間が流れて。

<浮遊軒(人)>
正月くらいはリストラの話はよしましょう。深刻な話ですが、句はすっきりしている。

<川蝉(天)>


<馬客(天)>
時事の内容を、日常性のかなり乏しくなった
「屠蘇の客」に乗せて、巧み。


・7点句

屠蘇酌むや富嶽は長き裾曳いて  芳生
<愛子(天)>


<径(天)>
お正月にこれ以上望めないくらいの構図ですね。
わたしも美しい初日の出を拝みました。
おだやかな一年でありますように。

<丹仙(人)>
富士の見える旅館で年を越す−これは私は経験がありませんが、この俳句でそういう正月気分を味あわせて頂きました。

薺囃子妻は日本の鶴となる  丹仙
<やんま(地)>
薺囃子の事は知りませんが、「妻は日本の鶴となる」に大変魅せられました。

<径(地)>
奥様は外国から嫁いで来られたのでしょうか。
日本の風習にも馴染んで薺囃子を歌って七草を祝う。
「鶴」にも似た美しい恋女房なんですね♪

<剛(天)>
薺囃子の文句というのはたしか中国から悪い鳥がやってくるまえに....とかいうものだった。どういう意味だかしらないが記憶に残っている。妻は日本の鶴になると言うのは鶴の恩返しみたいだが、不思議とよく調和してると思った。


・6点句

汝も我もこの星の者福笑い  やんま
<伊三(地)>


<庚申堂(人)>
こういう句はなんとなく好きです。

<晴雨(天)>
きっと異星人の作った句でしょう。一点に集中して素晴らしい。

子の嫁の指に触れたる花歌留多  清子
<やんま(天)>
こんな場合しか触れる事もあるまい。仄かな家族愛。

<旻士(天)>
 舅の恥じらいが見えるいい句ですね。

かるた切る我手に落ちし恋小町  やんま
<ぽぽな(地)>
手に落ちたのは、かるただけなのでしょうか、それとも憧れの人もなのでしょうか。その含みが生きていると思います。

<清子(地)>
恋小町の据え方が成功させている

<願船(地)>
「かるた切る」−「我手に落ちし」ー「恋小町」と流れてゆく歌留多の動きの中に
「花の色はうつりにけりな」と詠う小野小町の艶を自分に引きつけた。

”おめでたふ”母八十才の初メール  庚申堂
<海斗(人)>
”おめでとう”の旧仮名を教えて頂き有難うございました。
八十才にして、メール(携帯電話の雰囲気あり)を打って
いらっしゃる。その若々しいお母様のお姿に一票。

<柊(天)>
心身ともにお元気なお母様に乾杯!

<旻士(地)>
お題に一番沿った句だと思いました。正月の一家団欒の席で、孫にでも進められて帰って来れない子に打つメール。旧仮名遣いがいいですね。

絵がるたや小さき手の取るいぬの札  頼髪
<芳生(人)>
今年は戌年。子供(それも4,5歳までの子)はすぐに覚えて取る。情景がよく分かります。

<梨花(地)>


<柊(人)>
たった一枚のお気に入りの札でしょう。取らせてあげて下さい。

<愛子(人)>


<径(人)>
こんな可愛い句に出会うとうれしくて。
取りやすいようにまん前に置いてあったのでしょうね。
家族の団欒の様子がほのぼのと伝わります。


・5点句

屠蘇の座にたちまち倦みし童かな  英治
<芳生(地)>
大人はご機嫌様でも子供はいっときも静かにしてはをられないもの。

<顎オッサン(人)>
何処にもにもある風景。
お年玉はいくらかな。

<梵論(地)>
直前の句(畏まっている一歳児)と対になって一層おかしみが増しました。同一作者かな。

並べてはひとり眺むる歌がるた  梨花
<青榧(天)>
眺めながら、楽しく遊んだ頃のことも思い浮かべたのでしょうね。共感できます。

<丹仙(地)>
眺めているのが読み札か取り札かですこし印象が変わってきますね。
取り札だと、なんだか百人一首のコンテストの準備をしているようです。
読み札だと、そこに繰り広げられている王朝の絵巻のような和歌の世界を一人で
味わっているような感じです。

元日や我を捜しに野を歩む  伊三
<英治(地)>
哲学的でいいなぁ。「われ思う故にわれあり」ですかね。

<水(天)>
我は誰? どこへ?; 重くなりがちな哲学的テーマですが、「野を歩む」で軽く、軟着陸したのがよい。

屠蘇の盃父一献の潔さ  ぽぽな
<庚申堂(天)>
凡人にはできないという句が多い中で。
7,58も好きです。

<愛子(地)>


若者はみな村捨てて柚子たわわ  芳生
<水(地)>
たまたま大分の柚子農家の方と列車で隣席して、話す機会がありました。1時間の会話の情景が、この句に凝縮されている感がします。

<梨花(人)>


<馬客(地)>
若手のみならず、やがては老も村を捨てざるを
えなくなる、との心でしょうか。
当地では柿も採る手なしにたわわです。


・4点句

歌かるた覚えしのみの六十路かな  英治
<七梟(人)>


<願船(天)>
中七「覚えしのみの」に自分の生きてきた人生に対する深い思いがある。歌かるたのような「恋」も「ひとり寝」のわびしさもなく作者は安らかな六十路にさしかかった。かすかな感傷が感じられる。


・3点句

希望とは黄泉人知らず歌がるた  庚申堂
<伊三(天)>


諳んじる犬棒歌留多の世代かな  徳子
<巴人(地)>
久しく「犬棒歌留多」を忘れていた。その記憶がありありと思い起されてきた。

<頼髪(人)>


屠蘇受けてしばし薬味を舌に置く  やんま
<水(人)>
屠蘇も一気に飲み乾すノドゴシ派ですので、風雅な味わいかたにひかれます。

<川蝉(地)>


歌留多取り張り切る祖母の声高く  葉子
<庚申堂(地)>
情景が浮かぶようです。
18,25,44,96,102みんないい句でした。

<川蝉(人)>


屠蘇酌みて子は異国へと旅立ちぬ  眞知
<浮遊軒(地)>
外国へ行く若者も屠蘇を酌む。いい状景ですね。

<鞠(人)>
クリスマス休暇で一時帰国していた子は、年が明けるや屠蘇もそこそこに、再び
海外へと旅立って行ってしまった。

取りたきを目でおさへつつ歌留多取る  海斗
<顎オッサン(地)>
目で押さえますか。なるほどと
膝を打ちました。

<明子(人)>
カルタを取るときの皆の目を思い出しました。これだけはと思っていた札を
取られた時の悔しさも。

初鏡たしかに写す過ぎし日を  木菟
<木菟(天)>
どう見ても他人に好かれるご面相じゃなくなった。

座布団の下で歌留多はかくれんぼ  梵論
<剛(人)>
子供の心で作った俳句だと思うが、正月の気分がでている。

<晴雨(地)>
どうしても見つけられなかった覚えがあります。

指先の触れて頬染む歌留多かな  素人
<芳生(天)>
このような思いでは誰でも持っているものです。

あわあわとひかるちゃんちの歌留多会  童奈
<清子(天)>
ひかるちゃんと言う名前で歌歌留多会のほほえましい様子が目にうかぶ

”イナズマの某”が居て歌留多会  馬客
<梵論(天)>
たしかに“ちょんぼの○○ちゃん”とか、居そうですね。二つ名がうまく使われ、親和性の高い集まりの雰囲気がよく伝わってきました。


・2点句

かるた取りジョンは「い」と聞き「こ」を取りぬ  ぽぽな
<海斗(地)>
ジョンに「お手つきよ」と言った後、字を教えている和やかな
情景が浮かびます。
ジョンは「オーマイガッ」と楽しげに言ったのではないでしょうか。

どんど燃ゆ囲む三代恙無し  愛子
<頼髪(地)>


青春はいくさの日々の歌留多会  木菟
<鞠(地)>
終戦8ヶ月前の正月、学徒動員に拘束されていたので帰郷はできなかったが、
学寮の賄いにはおせち料理もあり、寮生たちは百人一首を楽しんだ。東京大空襲
は未だ始まらず、妙に平和な三が日であった。

一人屠蘇妻も訪なう人も無し  庚申堂
<木菟(地)>
いっそこの方がさっぱりしてと言ってみても。

押され行くままに手を拍つ初詣  巴人
<柊(地)>
全くこの通りです。

屠蘇の数重ねしほどに枯れもせず  木菟
<明子(地)>
実感があります。年は取れどもさっぱり進歩もないようで・・・

母方は長寿の家系屠蘇祝ふ  明子
<七梟(地)>


春なれや市民マラソン超長蛇  晴雨
<童奈(地)>



・1点句

川面飛ぶ鳥の数ほど寒さまし  省吾
<英治(人)>
「鳥の数」と寒さの関係は? 理屈はともかく、雰囲気を作っている。

歌留多読む声音のいつか母に似て  芳生
<梵論(人)>
しんみりとしたいい句だと思います。

子の歌留多天津風のみ狙ひをり  浮遊軒
<晴雨(人)>
実に子供の心情が出ています。

それぞれに成人の日のあり姿  英治
<素蘭(人)>
新成人の門出をただ祝うだけでなく、自分のその日を振り返る日にするというのも良いですね。イマドキの若者は!と言いたくなる時など特に…

ボロ歌留多子に嫌われても捨てきれず  旻士
<青榧(人)>
天と同じ感想です。眺めながら、楽しく遊んだ頃のことも思い浮かべたのでしょうね。特に子供たちとの思い出を。共感できます。

正札のままに売れゆく破魔矢かな  水
<旻士(人)>
うーん、不景気はケチっていては治らないか。

側溝に果てし虫にも冬の月  青榧
<伊三(人)>