第87回桃李四月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:春眠、復活、選挙(不言題)

春の句 雑詠または題詠
兼題1(季題): 「春眠」
兼題2(キーワード題): 「復活」
兼題3: (不言題):「選挙」

投句: 葉子、伊三、顎オッサン、ぽぽな、やんま、晴雨、芳生、英治、素蘭、七梟、馬客、彰、水、鞠、徳子、旻士、清子、浮遊軒、四万歩、梵論、柊、童奈、梨花、庚申堂、願船、明子、素人、宏太郎、雛菊
選句: 雛菊、顎オッサン、やんま、芳生、英治、素人、宏太郎、伊三、浮遊軒、鞠、徳子、柊、彰、省吾、馬客、葉子、素蘭、水、四万歩、梵論、梨花、庚申堂、童奈、清子、願船、晴雨、明子、ぽぽな、若芽、旻士

披講

・17点句

春眠の夢と知りつつ深入りす  清子
<顎オッサン(天)>
深入りする夢はまた夢か。
作者の健闘を祈りたい気がします。

<芳生(地)>
こういうことはよくあります。

<浮遊軒(人)>
時にそう思うことがあります。これは実感でしょうね。

<水(天)>
深入りしても罪はなし、他人に迷惑もかけないし、カネもかからないし、貧者も参加できる贅沢;たのしい夢であってほしい。若い方の作かな?(no.40との関連)。

<童奈(天)>
怪しい。

<若芽(地)>
どこかで覚醒しているのでしょうか。でも、完全には目覚めたくない夢を私も見たい。

<旻士(天)>
眠りの浅い夢ははてしなく壮大なドラマになるときがあります。
2度寝して続きが見たいような、そういうほのぼのとした気持ちがにじみ出ています。
平和っていいですよね。


・12点句

街騒を一刀両断つばめ来る  顎オッサン
<伊三(天)>


<浮遊軒(天)>
大胆な措辞。感嘆しました。

<水(人)>
突如あらわれては去りゆく、若者の暴走行為のようで、街では、よくみかける光景です。一刀両断がよい。

<梵論(天)>


<旻士(地)>
つばめが一羽、人々の脇をかけぬける。
誰もが足を止めて、ツバメに魅入る。
4月のツバメは誰を振り向かせる【間】を持っている。


・11点句

投票の前に筍掘りに行き  彰
<雛菊(人)>
いいな、いいな。投票の前に筍堀だって。朝堀りの筍おいしかった?投票の後だったらつまんない句になってたよ。

<宏太郎(地)>
生活感の溢れる楽しい句ですね。

<鞠(地)>
生業も公民の義務も、共に大切にいたしましょう。

<柊(人)>


<馬客(天)>
投票は午前7時から、出掛ける前の「朝掘り」の一仕事。
候補者は雨後の筍・団栗の背比べ。
皮肉たっぷりの俳味を感じます。

<ぽぽな(人)>
ほっこりと良い句です。

<旻士(人)>



・9点句

春眠の袋の底が抜けにけり  願船
<宏太郎(人)>
袋の底が抜けたように眠れてしまうと言うことなのだろう。言えてます。

<彰(天)>


<葉子(地)>
ということはなかなか目がさめて現実にもどれない、ということか。袋の底という表現がいい。

<清子(天)>
春の眠りと言う袋の据え方がうまくその誰にも犯されることのない眠りの世界にも大きな落とし穴があると言う諧謔。


・8点句

たぐり寄す夢の続きや春眠し  明子
<省吾(天)>


<四万歩(天)>
春眠のけだるさのなかで見る甘美な夢は時にその続きを、と想うことがあります。

<梨花(地)>



・7点句

生涯に選ぶ人なし藤の花  やんま
<英治(地)>
選挙の句というより、伴侶に恵まれぬものの感想として面白い。それも人生。

<徳子(地)>
選挙の度に自分の選び方のいい加減さに自己嫌悪しております。
私も生涯に一回で良いからこの人と言う人を選びたいです

<素蘭(天)>
「選ぶ人なし」という諦観は「いてほしい」という願望の裏返し
選挙の不言題ですが(選の字が使われているので不言にはなりませんが)
「藤の花」との取り合わせで源氏物語を思い浮かべました

級長が決まる放課後ヒヤシンス  ぽぽな
<やんま(天)>
この頃から人物評が芽生える。まだヒヤシンスのような純粋な色で観ている。やがて人間の値踏み癖は年と共に深まって手垢がついてゆく。放課後が効いている。

<素人(人)>
遠い青春を思い出しました。そう言われればそうでした。

<梨花(天)>



・6点句

春眠や魚になった夢のまま  七梟
<やんま(地)>
金縛りの「まま」動けない事がある。しかし魚になっているのは居心地がいいからだろう。

<葉子(天)>
さてその魚とはなんの魚か?鯨だったら面白い。

<若芽(人)>
水底でひっそりと呼吸している魚のイメージが面白いです。

おしゃれして風の前ゆく復活祭  清子
<英治(人)>
内気なわたしも春風に背中を押されて・・。何か良いことありそうな。

<彰(地)>


<願船(天)>
主イエス・キリストの甦りを祝う復活祭の習慣は自分の生活には無かった。だが、万物の命が春の陽光のなかで再び生き生きと輝くという明るい希望をこの季語に感じてきた。作者は「おしゃれして」、「風の前ゆく」という行動によって、生命の疼きと躍動に満ちた精神を表現している。人も自然も美しくなる季節だ。春風に乗って未知の世界にジャンプする少女の姿態が季語「復活祭」を余すところなく伝えている。

夜を待つ物の気どもの眠る春  童奈
<葉子(人)>
物の怪ではないか。目覚めて出てくる奴らを見たいもの。

<庚申堂(天)>
春の気怠さ比喩が素敵です。ただ私は、「の」より「も」の方が感じが出るように思いました。

<清子(人)>
妊怪さえ眠ると言う春の発想のおもしろさがいい。

<願船(人)>
万物が生まれ出づる躍動の季節のなかに、夜を待ち潜んでいる「物の氣ども」とは何であろうか。桜の木の根元に眠る死体、古い家の縁の下に転がる骨。モノの生命は多くの死の上に芽生えてくるのであろうか。死霊、生霊など一切の物の氣(怪)が徘徊する夜の闇を待って今は春眠をむさぼっているのであろうか。「春眠」をこのようにして作った俳句を見るのは初めてである。



・5点句

風孕みまたも復活野火の舌  宏太郎
<顎オッサン(地)>
「野火の舌」という表現で火の感じが
とてもよく解ります。

<柊(天)>


春眠や共寝の犬も大の字に  鞠
<雛菊(天)>
日曜の朝パパとママと坊やと犬が安心して睡眠を楽しんでいる絵がうかんだ。なんという平和な光景。春眠の季語がのどかさをひっぱっている。

<柊(地)>



・4点句

遊説の声かちあへり麦畑  芳生
<鞠(天)>
雑踏の駅前などと異なり、牧歌的な麦畑で出会った選挙カー同士が、党派を超えてエールを交換している風景を目の当たりにしたことがある。

<晴雨(人)>


しゅらしゅらと万朶の花に風渡る  明子
<四万歩(人)>
桜を詠んだ句は数々ありますが、これはまた豪勢な桜の競演です。

<晴雨(天)>



・3点句

悪童の復活囃子若葉風  徳子
<雛菊(地)>
漢字が並ぶから重いみたいだけれど動きのある句だと思った。悪童の復活囃子がいいね。ワルガキ大好き、私。

<童奈(人)>


黒髪を風に束ねて復活祭  清子
<英治(天)>
欧州のイースター休暇には浮き立つものがある。春のヨロコビヲ感じさせる句だ。

すみれ草勝者敗者の陣のあと  素蘭
<素人(天)>
勝者にも敗者にも、すみれ草のもたらす感慨はひとしおでしょう。
驕れる者を咎め、落胆する者には慰めを。

春眠や無呼吸症の男たち  童奈
<徳子(天)>
無呼吸症候群って怖いですね。それに春眠が加わると一日ウトウト寝です。
車の運転は止めましょう。

復活の兆しの打球夏は来ぬ  晴雨
<明子(天)>
復活の語が生きていると思いました。爽やかな句ですね。

飽食の身ならねども春眠し  馬客
<芳生(天)>
思い当たる句でした。

春眠に引き戻されて桜雲  旻士
<若芽(天)>
桜雲の意味はよくわからないのですが、文字どおり夢のような不思議な世界を感じました。

春眠や九十分の初講義  水
<徳子(人)>
しゃっきっとして90分の講義を受けるのもするのも大変ですね。
春眠と講義の組み合わせが面白いです。

<馬客(地)>
浪人までして、やっと入学したのに。
半世紀前の学生も、やはりこんな風でした。

春眠はうす桃色の目覚めあり  四万歩
<ぽぽな(天)>
春眠がうす桃色というとらえになんとも説得力が有りました。

両腕をもがれてけふの復活祭  英治
<庚申堂(人)>
よく解らないが、何かおもしろそうです。

<願船(地)>
主の復活を信じるのはキリスト教徒であろう。しかし現在、中東でアフリカで人間の生命が宗教的、政治的対立によって無惨に奪われてゆく世界状況を目の前にするとき、作者のように「両腕をもがれて」という悲痛なうめき声を漏らすのも今日の避けられない現実である。季語「復活祭」から喚起された負の運命をこの俳句は表現している。


・2点句

苔地蔵春眠きめてをりにけり  梵論
<素蘭(地)>
鶯が鳴こうが蝶が止まろうが我関せずのうつらうつら
しているようにお地蔵様の眼は見えますね

春眠や窓に染み入る蒼さあり  顎オッサン
<清子(地)>
春の眠りの安心の蒼さに染まっている作者の心がたまた窓でもある。

紺匂ふ左官屋の背な花曇  浮遊軒
<庚申堂(地)>
颯爽とした左官屋さんの姿が浮かびます。

長堤をゆるやかに行く春愁  素蘭
<やんま(人)>
最近は土手をよく歩く。無心の中にも春愁が入ってくる。

<伊三(人)>


春眠や散髪バサミ忙しなく  七梟
<ぽぽな(地)>
46の「ならぬ約束」39の「初講議」も好きでした。

投票を済ませて貰ふ紙風船  鞠
<伊三(地)>


亡き母の愛書『復活』花時雨  鞠
<四万歩(地)>
母の愛読書、トルストイの「復活」を花時雨のなかでふと思い出す、情景が浮かびあがります。

泥濘に温みのありて初音かな  旻士
<省吾(地)>


復活と言う輪廻あり紫木蓮  馬客
<浮遊軒(地)>
輪廻とは奥深い言葉。

春眠やサイレンの音鳴り止まず  彰
<水(地)>
戦争を体験したもの(ぼくも)にとって、サイレンは防空壕とひもじさを思い出させるトラウマ的悪夢です。

春昼の片腕揺れる骨模型  明子
<童奈(地)>
怪しい。

春眠に縁無き齢になりにけり  徳子
<梵論(地)>


春眠やちよつとあきれた夫の声  ぽぽな
<晴雨(地)>


春眠の親犬子犬打ち揃ひ  柊
<明子(地)>
動物が大好きなので、こういう句にはついつい触手がのびてしまいます。

春眠の果てなくメリーゴーランド  晴雨
<素人(地)>
メリーゴラウンドには春の盛りが良く似合います。


・1点句

人あふる桜見の波渡月橋  伊三
<梨花(人)>


春眠を貪る牛に花吹雪  伊三
<省吾(人)>


復活とそやされもせずいぬふぐり  梵論
<馬客(人)>
「復活」はとても難しい題でした。
「いぬふぐりり」を採られて句が
活きたと思います。

草々に光運んで春の風  童奈
<顎オッサン(人)>
類想はあるでしょうが、まさに春の句です。

復活の為の一鍬桃植える  やんま
<彰(人)>


樹木医の復活の花万朶  柊
<明子(人)>
破調の句ですが、景が良く見えて素敵な句だと思いました。リズムが整っていればもっと
良かったと思います。ちょっと残念です。

いやいやの子も復活す春の馬  ぽぽな
<梵論(人)>


鳴りやまぬ電話のベルや目借時  浮遊軒
<芳生(人)>
季語の斡旋がよい。

恋猫や敗者復活戦があっていい  雛菊
<鞠(人)>
負猫を応援する気持ちに共鳴、中九乃至中十は長すぎるので、「敗者復活」だけ
では如何?

春浅き眠るが仕事ぞ吾子やあこ  庚申堂
<素蘭(人)>
竹下しづの女の「短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎」を思い出します
子育て中の切実な悩みですね
発想を切りかえれば、赤ん坊は泣くのが仕事、泣く子は育つ…(実感)