第89回桃李六月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:簾、瓜、携帯電話(不言題)

夏の句 雑詠または題詠

兼題1: 簾
兼題2: 瓜
兼題3: 携帯電話(不言題)

 6月15日(日)投句受付開始
 6月22日(日)24時 投句締切、翌日選句開始
 6月29日(日)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
 7月 1日(火)披講       

投句: 雛菊、葉子、ぽぽな、夜宵、東彦、芳生、はる、顎オッサン、英治、徳子、木綿、虹子、梵論、人真似、願船、四万歩、梨花、素蘭、浮遊軒、木菟、鞠、柊、水、光、伊三、素人、海斗、めだか、馬客、明子、若芽、庚申堂、晴雨、旻士
選句: 芳生、雛菊、浮遊軒、顎オッサン、徳子、鞠、東彦、英治、伊三、夜宵、木綿、ぽぽな、梵論、一夏、康、人真似、旻士、光、梨花、木菟、素蘭、願船、馬客、めだか、晴雨、素人、柊、海斗、庚申堂、水、虹子、四万歩、明子、若芽

披講

・16点句

掌のなかに今君が着き夏来る  明子
<雛菊(人)>
若さと夏の快活感がいいと思った。

<夜宵(天)>
掌の中に君が来たという表現で、どんなに大切なメールか伝わってきます。

<梵論(地)>


<旻士(天)>


<素蘭(地)>


<馬客(天)>
不言題「携帯電話」はとても難しい題だと
おもいました。が,なるほど・うまいなあ。
爽やかです。

<めだか(地)>
いいなあ、さわやかです。


・11点句

瓜ぷかり子の尻ぷかり大盥  馬客
<浮遊軒(人)>
これぞ俳諧という句。こんな句を時々作ることが出来たらなあと思うのです。

<木綿(天)>
冷蔵庫のあまり普及していなかった暑い夏、瓜や西瓜を冷やしていた大盥を見つけて、子供がおとなしくしているはずがありません。情景が目に浮かぶようです。

<ぽぽな(天)>
とても和やかな風景です。「ぷかり」の繰り返しも効果的。子の笑い声、陽の明るさをも思わせる句です。それにしてもでかい盥ですね。

<梨花(天)>


<明子(人)>
楽しい句です。

時々は簾で仕切る心の間  雛菊
<芳生(天)>
心理的屈折が「簾で仕切る」のなかによく表れている。

<徳子(天)>
壁でなくて良かった。

<願船(天)>
仕切る空間が部屋でなく、心の間というものに転換した妙を感じた。

<若芽(地)>
そうか、そういう使い方もできるのですね。


・9点句

少年の頃の渾名や簾越し  海斗
<東彦(地)>
お盆に故郷に帰りくつろいでいると、外からあだ名で呼びかけられる。一気に少年の日に、すっかり田舎者になれる贅沢である。故郷は年取れば更に憧れる。

<ぽぽな(地)>
久しぶりに幼なじみが訪ねてきて、懐かしい渾名で自分を呼ぶ声が簾ごしに聞こえる。

<一夏(地)>
生まれ育った所に住み続け、近所に幼なじみが居るということは羨ましいことだと思います。

<光(天)>
「・・・ちゃん、いるかい?」。呼ばれたのは中年以上の男性ですね。


・8点句

立腹の父の立膝簾越し  光
<雛菊(天)>
団扇パタパタして立て膝でご立腹のお父さんを簾越しに様子を伺う子。
簾を挟んでの距離感がいいと思う。昭和時代の父と子。

<伊三(天)>


<水(地)>
立腹と立膝の配置よし。 一家のたよりになる、律儀で頑固なオヤジ。

青簾かけて遠のく娑婆の音  晴雨
<東彦(天)>
実際は何の変わりも無く、そとの音はそのままだし、娑婆は娑婆であるのに、青簾を掛けるだけで別世界にいるような気になる。青簾の効用である。

<旻士(地)>


<四万歩(天)>
たかが簾、されど簾、簾は娑婆との結界ともなるものです。その簾の効果がよく出ています。

袂より着メロ漏るる浴衣の娘  庚申堂
<芳生(地)>
「袂より」が効いている。

<鞠(人)>
 若者の間で浴衣の人気はなかなかのもの。携帯電話は手放せないけれど……。

<ぽぽな(人)>
きゅんとしますな。音のする方を見る口実にもなります。

<素人(天)>
携帯電話は必需品になってしまいました。浴衣の袂は、収納場所としては一寸不便でしょう。帯に挟むとか、相変わらず首から下げるとかになりそうですが。

<柊(人)>
現代の風俗が活写されている句です。

肩揚げも直し終へたり青簾  明子
<浮遊軒(地)>
肩上げという言葉も使える人が少なくなったのでは。良い句ですね。

<人真似(地)>


<海斗(地)>
浴衣と青簾。日本の夏って感じですね。
団扇も風鈴も縁側も見えてくるようです。
娘の背丈が伸びたことと、肩揚げを直し終えたことに
満足して微笑む母親の笑窪がありますね。

<庚申堂(地)>
夏の雰囲気がよくでいます。

古き家守りて古き簾掛く  馬客
<浮遊軒(天)>
古い家には古い簾が似合うのでしょう。旧家の景がよく見える句です。

<木綿(地)>
代々続いた家を大事に守り四季にあわせて設えを変えていく、日本の家の姿が窺えます。

<庚申堂(天)>
いい句だと思いました。


・7点句

味噌漬の瓜の小皿や風通る  願船
<東彦(人)>
居間の座卓の上に瓜の味噌漬けが2−3片小皿に取り分けてある。風が居間を抜けていく、夏の風景である。風が冷たい。

<一夏(天)>
「風通る」がいかにも夏の句。涼しげでした。

<康(地)>
瓜の皮のさわやかな光りまで見えるようです。涼しげです。

<水(人)>
つくってみたい作風。が、むつかしい。


・6点句

瓜をもむ遠き昭和の陽の匂ひ  英治
<顎オッサン(天)>
迷わず天に頂きました。
瓜は胡瓜ほど母の感じはしませんが、
この句は「瓜を揉む」母を感じます。
昭和という年号に懐かしさを感じます。
全体的に嫌みのないノスタルジーを感じる句です。

<馬客(人)>
平成十五年、昭和も遠くなりたるか。

<虹子(地)>


真桑瓜私も母となりました  はる
<英治(地)>
あめつちとつながった思いか。ずっしりとした喜び。

<光(人)>


<めだか(天)>
そういえば、生まれたての赤ちゃんの頭は真桑瓜みたいです。「私も母になりました」。だれもがもつ同じ感慨をずばりと。

瓜蔓の添木に触るるを吹返し  鞠
<人真似(天)>


<柊(天)>
観察の行き届いた句です。

甲斐駒の夕闇迫る簾かな  芳生
<英治(天)>
雰囲気がすうっと入ってくる。格調のある句。

<康(天)>
雄大に迫ってくる夕闇。それに抗するがごとき一枚の簾。作者は家の内に居てそれを感じている。


・5点句

真夜中のメロン怪しく香りをり  木綿
<木菟(地)>
匂いというものは、つかみどころがなくて、そのくせ忘れられない迫真性がある。

<晴雨(天)>


借景の近くなりたり青簾  木綿
<晴雨(地)>


<明子(天)>
簾をかけることで近くの細々したものが見えなくなって、借景としていた
離れた景色だけが身近に感じられたのでしょうか。
言い切ったところにすがすがしさを感じます。


・4点句

電源をお切り下さい梅雨最中  素人
<英治(人)>
このアナウンスはケイタイを意味することが常識となった。

<四万歩(人)>
携帯電話花盛りのなかでやはり気になることが多いものです。その気持ちがよくあらわれています。

<明子(地)>
電車に乗るたびに聞かされ、なんとも空しい気持にさせられるあのアナウンス。
梅雨最中の鬱陶しさもいっそう強く感じられます。

冷し瓜厨は土間のつきあたり  素蘭
<梨花(地)>


<馬客(地)>
これも「遠き昭和」を思わせます。
「土間のつきあたり」に家屋の
大きさがわかります。

しかられて瓜のまるみをなぞりたり  梵論
<顎オッサン(地)>
たまたま瓜があったとしても良しとしましょうか。
いや心象風景ですか。
母にしかられた子の気持ちがよく解る句です。

<素人(地)>
言いたいことがあるのに言えずに、くすぶる不満を瓜を撫でて紛らわせる。経験があるだけに共感する句です。

簾買ふ父の闘病長引けり  素人
<鞠(地)>
 自宅介護の長期化に備えて簾を買う。冷房もさることながら、病む人にとって
簾の涼感は優しい。

<木綿(人)>
すぐに回復するだろうと思っていた病が、簾のいる季節になっても癒えない。
ご家族の看病の大変さも想像できます。

<虹子(人)>


爪半月十指にありて瓜きざむ  虹子
<めだか(人)>
白魚のような十指でありましょう。

<素人(人)>
十指に爪半月が出てるのは健康なのだそうです。健康に感謝しつつ胡瓜を刻んで家族の食事の準備をする。微笑ましい景です。

<四万歩(地)>
平凡な日々のなかで健康であることを噛みしめている実感が出ています。


・3点句

朽ちし瓜堅き実さらし畑の端に  庚申堂
<梵論(天)>


蛍袋山恋ふ色となりにけり  柊
<虹子(天)>


声もなくただつながっている夏蛍  夜宵
<若芽(天)>
何も話せないまま、携帯電話を手にしている様子。夏蛍とは電話の小さな明かりのことも意味しているのでしょうか。初々しさを感じます。

青簾幽明界を異にせり  願船
<木菟(天)>
今でも、別に珍しくなったわけではないけれど、簾ごしの会話にはどこか古めかしい趣がある。

朝顔の夢の中なる遠花火  伊三
<海斗(天)>
早朝に朝顔を見ていると、花の中に(昨日見た)遠花火が蘇って来る。
この句は、どうも好きな人と一緒に見た花火のように思えてなりません。
しかも、「夢の中なる」に忍ぶ恋を感じます。
心を寄せている青年と夕暮れの道で偶然に出会い、
思いがけず、話しながら歩いています。
すると、遠花火が上がりました。
二人は立ち止まって、しばし眺めている。
そんな背景を「夢の中なる」に感じます。
朝顔に触発された遠花火の句だと思いました。

汗ぬぐいマナーモードを解除する  馬客
<鞠(天)>
 周りを気にしないで、思いっきりおしゃべりできる場所に着き、モードを切替えたら、どっと汗の噴き出ること!!

瓜食みて顔見合わせる双児かな  四万歩
<水(天)>
ホームビデオを超える、五七五の底力。

勝手口くの字つの字のへぼ胡瓜  ぽぽな
<素蘭(天)>
勝手口くの字つの字のへぼ胡瓜
 んの字への字のなすびうつふん

幽霊と会話のはずむ夜道かな  若芽
<徳子(人)>
相手の姿は見えずひそひそ話も気味悪いですね。相手は幽霊でしょう。

<伊三(人)>


<木菟(人)>
ここはやっぱり相思相愛の異性でなければ様にならない。


・2点句

着信のBACH響くや夏屋敷  ぽぽな
<光(地)>
「トッカータとフーガ」だろうか?

あたしよといふなり切れる梅雨の宵  葉子
<夜宵(人)>
そんじょそこらのホラー映画よりも怖い!(笑)

<素蘭(人)>


声高に電話の歩く暑き夜  芳生
<徳子(地)>
携帯で怒鳴りながら歩いている人も見かけます。暑い夜は厭ですね。

瓜食めば想ひが過去が追うて来る  木菟
<伊三(地)>


夏空へアンテナ伸ばす痴話喧嘩  英治
<夜宵(地)>
喧嘩になるなら電話しなきゃいいのに・・。でもその辺が痴話喧嘩の所以ですよね。

初簾青き匂ひに慣れるまで  虹子
<願船(地)>
初簾の匂いもまた新鮮で涼を呼ぶ。

幼きは簾に模して指を組み  梵論
<柊(地)>
可愛らしく、微笑ましい句です。

洋館のテラスにさらり簾かな  ぽぽな
<願船(人)>
「さらり」がよい。線のはっきりした簾の矩形は洋館の線にもよく似合う。

<若芽(人)>
いかに洒落た洋館でも、夏といえば簾。ミスマッチが微笑ましい。

留守番のお駄賃皿に甜瓜  素人
<雛菊(地)>
瓜がおやつの頃のなつかしさをいただきました。


・1点句

ITは遠近両用サングラス  伊三
<旻士(人)>


瓜売りの器量に負けて買ひにけり  晴雨
<芳生(人)>
俳諧味があってよいと思う。こうして買うのも一面の真実。

茫々と梅雨の潮騒受話器より  光
<梵論(人)>


地下道や日傘の雨滴はたきおり  水
<梨花(人)>


メル友に背かれて居る梅雨じめり  木菟
<康(人)>


夕餉時居間の家族の簾越し  東彦
<晴雨(人)>


夕まぐれ秘密めきたる軒簾  四万歩
<人真似(人)>


さくらんぼ含みて思ひ吐き出せず  顎オッサン
<一夏(人)>
つやつやしたさくらんぼの肌触りと、少女の頬の感触が伝わってきそうです。

しつらひといふにあらねど葭簾  素蘭
<庚申堂(人)>


簾かけ透かして眺む裏表  若芽
<顎オッサン(人)>
天使魚の愛うらおもてそして裏   中原道夫
を思わせる句ですね。何が見えましょうか。

電話鳴る振り向き際の夏帯に  めだか
<海斗(人)>
夏帯が艶めいています。「振り向き際」だからでしょうか。
見返り美人ではありませんが、和服は体を捻った時に色気がでるもん
なんだなあと感心しました。
携帯電話すら艶めいています。