第92回桃李九月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:十六夜、桔梗、秋日傘

雑詠または題詠 秋の句
兼題1: 「十六夜」
兼題2: 「桔梗」
兼題3: 「秋日傘」

 9月15日(月)投句受付開始
 9月22日(月)24時 投句締切、翌日選句開始
 9月29日(月)24時 選句締切、翌日MLで合評開始
10月 1日(水)披講   

投句: 雛菊、ぎふう、葉子、素蘭、芳生、やんま、まよ、四万歩、梵論、童奈、木菟、東彦、英治、鞠、ぽぽな、好鵡、木綿、旻士、顎オッサン、梨花、康、香世、愛子、馬客、水、径、人真似、柊、晴雨、明子、庚申堂、素人、願船
選句: 素人、顎オッサン、鞠、芳生、葉子、柊、梨花、木綿、好鵡、英治、雛菊、やんま、まよ、東彦、梵論、ぽぽな、童奈、四万歩、水、人真似、浮遊軒、旻士、素蘭、晴雨、庚申堂、願船、愛子、馬客、木菟、径、悠久子、明子

披講

・13点句

十六夜や義足をほろと脱ぐ少年  ぎふう
<好鵡(地)>
異国の遅い月の下、地雷で失った足の傷あとが明るい月光に照らされている。戦争を恨む。しかし、この義足と一生つきあって行かざるをえない自分は、じっと自分の運命を、現実を見据えている少年。

<やんま(地)>
今までの私は義足で歩いて来た様なものです。
それが何時の間にか本当の足になりそうなんです。

<まよ(人)>
ほろとがやさしい響きです。

<梵論(天)>


<水(天)>
「ほろ」の意味が、よくわからないだけに、余情を深めている。

<庚申堂(地)>
今日(28日)義足のサッカー少年のドキュメントを見ました。


・11点句

回転ドア出て秋風となる女  顎オッサン
<芳生(地)>
素材が新鮮。

<葉子(人)>
なかでは何を話していたか。秋風になるにはやはりすらりと細身
の美女でありましょう。

<英治(人)>
女心と秋の空。正しくは男心と秋の空だそうだ。身体ごと秋の風に溶けてしまいたい。

<やんま(人)>
回転寿司食ってふらりと秋風に

<素蘭(天)>
さういふひとにわたしはなりたい

<悠久子(天)>
爽やかな動きの女性。
すらっとしなやかな若さかとも思うし、或いは和服の中年の。


・10点句

寄り添いて試歩ゆつくりと秋日傘  愛子
<芳生(人)>
夫婦の情愛がよく読み取れます。

<やんま(天)>
ゆっくりと歩いてくれる人。
寄添ってくれる人。
そんな人は絶対いません。こらからも。
奇跡のお二人に乾杯!

<四万歩(地)>
長く連れ添ってきた夫婦のやさしい思いやりがあらわれています。

<馬客(天)>
61と同想の句ですが、こちらの句が登場人物を
限定せずに楽しめましたので。

<明子(人)>
優しい温かい光景です。


・9点句

猫の耳折り返してみる十六夜  香世
<鞠(天)>
 やや遅い十六夜の月を待つ所在なさに、猫の眠りを妨げてみたりして……。

<葉子(地)>
ユーモラスでなんとなくやってみたくなる。猫がいないのが残念

<梨花(地)>


<水(地)>
サスペンスドラマの一幕になりそう。


・8点句

街道は雲に連なり花桔梗  芳生
<英治(地)>
雲の彼方まですうっと延びている街道。足元の桔梗の花。よい舞台の景だ。

<ぽぽな(地)>
広大な風景です。

<童奈(地)>
道ははるかに雲へと続く中、道脇には濃い花桔梗が咲きそろっている。その中を行くのは?

<四万歩(人)>
日本の美しい風景が目に浮かびます。

<願船(人)>
遠くまで伸びている街道の果ては雲の中に消えている。はるかに開けた遠景。近くに桔梗の花を置いたのがうまい。


・7点句

十六夜の沖島仄と周防灘  康
<芳生(天)>
周防灘の情景がよく見えてきます。

<柊(天)>
景がきれいで、スケールが大きい所がよいと思います。

<愛子(人)>


金婚や試歩に寄添ふ秋日傘  鞠
<木綿(天)>
金婚ということは、寄り添って50年。仲の良いご夫妻のどちらかが療養中であろうか、「秋日傘」の季語から療養が少し長引いているような寂しさを感じる。

<雛菊(人)>
高齢のご夫婦のご主人が快癒されてお散歩に奥さんが寄り添われているのですね。良い光景でいただきました。ただ、頭の金婚やの語感がインパクト強すぎて季語がちょっと沈んだかな

<径(天)>
老いていたわりあう相手があるのは幸せですね。
つい数ヶ月前までの両親がそうでしたから、
とても惹かれました。

山門を出でて再び秋日傘  晴雨
<鞠(地)>
 お寺参りにうららかな秋日を恵まれました。

<童奈(天)>
映像がくっきりと浮かぶ、物語を感ずる句。

<愛子(地)>


十六夜の手に触れしより四十年  英治
<東彦(地)>
遅めのデートか、彼女を家に送っていく途中でさりげなく手に触れる。意思が伝わる、恋が深まり結婚をする。40年を思う。あの時もこんな月だった。遅めに出た月が皓々と照っていた。

<庚申堂(天)>
始めと今がありその間を想像させるストーリーがあり、素敵な恋の句だと思います。

<木菟(地)>
ただ触れただけではないような、年月の重みを感じるが、意外と純情とはそんなものかも。

ほろ酔いの影踏みて行く十六夜  馬客
<顎オッサン(地)>
同行二人ですね。

<木綿(地)>
このほろ酔いは良いお酒の酔いですね。素敵な方とデートした帰りのような感じです。デートの余韻を月明かりがいつまでも包んでいそうですね。

<四万歩(天)>
どこか物悲しい十六夜の光景です。


・6点句

母の忌や庭荒れしまま桔梗咲く  馬客
<素人(人)>
生前の母の苦労に思いを馳せて、一寸苦い悔いも噛み締めている。
季語桔梗に想いを託した句です。

<梨花(人)>


<木綿(人)>
お母様が手入れしていた桔梗が、主がいなくなっても健気に咲く。しかも忌日にである。自然界の摂理を感じる。

<木菟(天)>
花の咲いているところなどみた事ないのだけれど、桔梗という言葉の雰囲気が、何となくこんな思い出につながりそうな。

桔梗の音を溜めたるつぼみあり  まよ
<浮遊軒(地)>
「音をためたる」と言われると、次からは、本当にそんな気持ちで桔梗の花を眺めることになりそうです。

<庚申堂(人)>
[38]もそうですが、桔梗からつぼみの音を連想する人は、子供のころ桔梗を摘んだことのある人でしょう。

<明子(天)>
桔梗のつぼみ、かわいくて大好きです。
あの中には音が溜まっているという発想、同感です。
花開いたその時、きっと思いきりおしゃべりをするのでしょうね。


・5点句

古書店の前を過ぎゆく秋日傘  梵論
<好鵡(天)>
間口が狭く奥行きのある薄暗い店内から見た表通りの秋の陽射しは、白白としていやに眩しい。明暗の妙。

<人真似(地)>


音消へし寺町通り秋日傘  明子
<梨花(天)>


<まよ(地)>
彼岸間近な寺町へ出かける用は何だったのでしょう。

終電は途中迄なり十六夜  晴雨
<旻士(人)>


<素蘭(地)>
途中下車させられて途方にくれている作者と十六夜の月
お気の毒様ながらその後の展開がとても気になります

<馬客(地)>
古い季語を現代の句として用いるのは
大変難しいことと感じました。
この句は上手に活かしておられると
思います。

老いぬればつれなきものを秋日傘  素蘭
<好鵡(人)>
日傘に、雨傘にも、杖代わりにもなる傘。加齢するにしたがってますます手放せなくなった。老いればこそ<物の価値>が分かるというものだ。

<英治(天)>
若い連中といると、ふとこんな気分に。達観せざるを得ない。芭蕉の句「あかあかと日は・・・」の連想が働くが、それも悪くない。

<人真似(人)>


桔梗や避けがたく在る喉仏  ぎふう
<まよ(天)>
蕾の形なのでしょうか。
女の私には作れない句です。気になります。

<願船(地)>
まだ開いていない、角張って閉じている桔梗は言われてみると男の喉仏だ。
避けがたくとは。女の歌とするとエロスがあるよ。


・4点句

十六夜のきのふに変る静ごころ  人真似
<童奈(人)>
十五夜の昨日は少し心も騒いだけれど今日は心静かに月を見る。

<旻士(地)>


<馬客(人)>
古い季語を古く使って詠めば、これ
このとうり、と言うお手本。

少しだけ大人になりて秋日傘  ぽぽな
<水(人)>
周囲を意識しながらの試歩; ぎこちなさと若さ。

<浮遊軒(天)>
「少しだけ」になんとも言えぬ味があると思います。

失職の夫をのこして秋日傘  英治
<雛菊(地)>
日傘をさして自転車に乗って職場に向かう妻。夫に「平気よ、今度は私ががんばるから」なんて言って。のこしての所に、夫を思う気持ちが………

<梵論(地)>


桔梗や野辺に苔生す道祖神  愛子
<東彦(人)>
道の別れの古い道祖神のすぐ横に桔梗が咲いている。さりげなく、昔と変わらず今年も咲いている。平凡ではあるが、しっとりとした日本の風景である。じつに自然である。

<ぽぽな(天)>
ぴったりの取り合わせ。


・3点句

桔梗の鐘形五裂に山気あり  好鵡
<旻士(天)>


桔梗に吐息聞かれてゐたるかな  康
<願船(天)>
何に悲しんだのだろうか。何に喜んだのだろうか。それは分からない。その場にあった桔梗だけがその吐息を聞いたのだ。膨らんでまだ開いていない桔梗が似合うようだ。あの閉じた空間にはいろいろ聞いたことを黙って閉じ込めているような気がするのだ。

助手席に秋の日傘の忘れ物  馬客
<鞠(人)>
 秋の日は釣瓶落し、助手席に日傘を忘れたのは誰?

<柊(地)>
秋日傘の句の中では目新しいと思います。

二藍のゆかりに野辺の桔梗かな  素蘭
<愛子(天)>


十六夜の虜となりて余呉の湖  柊
<人真似(天)>


十六夜の萩の城下を通りけり  芳生
<径(地)>
行ったことはありませんが、
「十六夜」と「萩の城下」がとてもよく合っていますね。
いつか行ってみたいと思わされました。

<悠久子(人)>
萩の町を思い出させて頂きましたので。
十六夜の似合うところだと思います。

十六夜や寝飽きた母に頬寄せて  愛子
<雛菊(天)>
介護の現場の句でしょうか。お母様に寄り添うあなた。2人を見守るお月様十六夜の季語が句に透明感をつれて来ました。 

秋日傘手を上げ別れそれつきり  ぎふう
<東彦(天)>
熟年の夫婦の別れか、手を上げてさりげなく別れを告げ、振り返りもしない。未練を残さない決意の現れであろう。秋日傘がそんな感じにぴったりである。

秋日傘深く傾げて別れ来し  径
<晴雨(天)>


十六夜やまなこつむりて終ひ湯に  明子
<顎オッサン(天)>
月明りが差します。ご苦労さん。

秋日傘墓前の母の若かりき  柊
<素人(天)>
亡父の墓前に手を合わせる母への娘の眼差し。労りと母の今後の幸せを願う優しさが伝わります。

利かん気のままの寝顔や小鳥来る  径
<葉子(天)>
なにげない写生の句だが、ほのぼのとしていて気持ちがいい。


・2点句

オカリナを吹き十六夜になりにけり  ぽぽな
<晴雨(地)>


十六夜の無人の街の石畳  東彦
<素人(地)>
名詞のみを並べた句、魅力を感じます。

十六夜や新宿始発白馬行  好鵡
<明子(地)>
新宿発の夜行で山に通った頃を思い出しました。
ザックを指定された場所に置いて、出発まで山靴で新宿の雑踏をうろうろ。見上げると
十六夜の月が何となく場違いな感じで顔を見せています。
明日は山の中でまたあの月に会える‥‥‥

悪役の顔にすんなり村芝居  香世
<顎オッサン(人)>
なりきるんですね。解ります。

<径(人)>
「すんなり」が面白いです。
いつもコワモテの方なんでしょうか。
お隣のやさしいおじさんだったりして。
村芝居の楽しさですね。

桔梗色の母の匂ひのある着物  東彦
<悠久子(地)>
とてもよく分る句です。
桔梗色という表現が一段と素晴らしくしています。


・1点句

秋日傘白き襟足抜きし背中  東彦
<木菟(人)>
何処に目をつけているのか、男って仕様がない。

かたむけていく度も別れ秋日傘  木菟
<柊(人)>


いたずらっ子桔梗のつぼみをプチ、プチン  雛菊
<素蘭(人)>
その誘惑は今だに健在です

秋日傘近江の海を見てゐたり  芳生
<晴雨(人)>


うす闇にいちずに開く白桔梗  四万歩
<浮遊軒(人)>
桔梗はそんなに派手な花ではないので、「いちずに」ということばが、この花には良く似合うような気がします。

十六夜を待つ間ひとりの湯に沈み  願船
<ぽぽな(人)>
二人ではない。

道草は桔梗の藍に暮れにけり  ぽぽな
<梵論(人)>