第94回桃李十一月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:凩、冬紅葉、(不言題)七五三

雑詠または題詠 冬の句

兼題1: 凩
兼題2: 冬紅葉
兼題3: (不言題)七五三 


披講


・13点句

冬紅葉二人の歩幅揃ひけり  虹子
<素人(人)>
踏まないように気をつけて歩くうちにそうなったのでしょう。

<水(天)>
歩調は心のシグナルだと思います。ちぐはぐに乱調だった歩みも、 いつのまにか、並列になって歩幅が揃いはじめた。

<童奈(天)>
静かな夫婦(恋人どうし)の午後

<馬客(人)>
「90」の句とどちら、となり
当方のすきずきということで
この句に一票となりました。

<晴雨(天)>
映画のラストシーンにしたいほど

<明子(地)>
穏やかな冬のひとときです。


・12点句

大人びたお辞儀をひとつ千歳飴  素人
<浮遊軒(地)>
七五三ということで、少し背伸びをしてみせている子供。よく描けています。

<芳生(地)>
親の指示が目に見えるようです。

<雛菊(人)>
大人びたお辞儀の表現に緊張感とかわいらしさが出ています

<ぽぽな(天)>
七歳のお嬢様でしょうか。女の子は口が立ちます!それを聞いた親族の明るい驚き「あら、まあ」微笑ましい情景が浮かんできました。

<康(地)>
ちょっといつもとちがうなあ。でも可愛い。

<鞠(地)>
 祝われる日、七五三歳の子供達は、みんな紳士淑女となる。


・9点句

冬雲や数へ七つの初化粧  佳音
<素人(天)>
不言題をうまく処理したと感心しています。
数え七つの初化粧とはお見事な表現です。

<英治(天)>
いかにも七五三を詠んだ雰囲気。「数へ七つ」のひびきが良い。

<四万歩(地)>
3歳の時の祝いはどうだったのでしょうか。七つになってはじめての化粧、親の思いが伝わってきます。

<庚申堂(人)>



・8点句

水底にまだ新しき冬紅葉  素人
<遊山(天)>
水底の紅葉が生き生きと立ち現れる。

<素酔(天)>
水と陽の光と、その中に動かぬ冬紅葉。冬紅葉のもっとも鮮やかなイメージですね。

<柊(地)>
澄んだ水と冬紅葉の美しさがよいと思います。

凩の街吹き抜けて今朝の富士  童奈
<梨花(天)>


<青榧(地)>


<馬客(地)>
梢から大量に落ち葉すると、今まで
遮られていた景観が見えるようになり
ます。ましてそれが「富士山」なら、
まさに「今日の富士」でしょう。

<明子(人)>
洗われたような富士の姿。

鳩を追ふ六文の足袋けふ小春  佳音
<英治(人)>
言葉運びがうまい。「六文の足袋」がくっきりとしている。

<梨花(人)>


<素蘭(天)>
六文の足袋は五歳男児と七歳女児のどちらか?
正装させてお宮に連れてきたものの鳩をみつけて駆け出すやんちゃ振り
まだあどけない5歳男児のほうが断然好みです

<愛子(天)>



・7点句

冬紅葉たがひの老ひは見ぬことに  明子
<葉子(人)>


<素酔(人)>
共感しました。

<素蘭(地)>
他人の失敗・欠点は見なかったふりをしてくれる友人がいて
マヌケでヘンクツなナマケモノも何とか生きながらえております

<青榧(天)>


日は病みて一樹離れし冬紅葉  やんま
<潮音(地)>
「日は病みて」とのおとなしい出だしから一木の冬紅葉の佇まいへの移行は凡百一籌を輸する才能の面目躍如。唐突ではあるが、竹内てるよの詩を想い出してしまった。もっとも、本句の場合は日蝕ではなく、暗い目で空を見上げた作者に日の光が「病」を感じさせたのであろうが。時が経てば病んだ日を見上げている一樹の冬紅葉もあたたかな雪がつつんでくれるであろう。

<木菟(天)>
冬紅葉のどこかうらぶれた趣が眼に浮かぶ

<愛子(地)>



・6点句

袴着や野球の兄と出会いけり  素酔
<康(天)>
まぶしそうに眺める兄、すこしはにかむ弟。

<馬客(天)>
本来の主役は5歳の児。
しかし、作者の目と思いは
少年野球のユニホーム姿の「兄」に
向いている。ついこのあいだ5歳の
祝いをしたのに、あんなに凛々しい
少年になった、の感慨。イイ句です。


・5点句

冬紅葉いつしか抜けし羞恥心  英治
<雛菊(天)>
晩年にはこんな老いの境地にたどりつきたい

<晴雨(地)>
教訓にします

初紅は母のものなり冬麗  顎オッサン
<浮遊軒(天)>
はじめて紅をぬってもらってはしゃいでいる女の子の姿がかわいらしい。

<遊山(人)>
ひょっとしてお祖母ちゃんの紅でお化粧? 三代の七五三とは素敵。

<童奈(人)>
母と子の笑顔、ゆったりとした時間が感じられます

西行の庵主なく冬紅葉  四万歩
<芳生(天)>
「西行の庵」が効果的です。

<庚申堂(地)>



・4点句

凩に笑み盗まれてしまひけり  梵論
<佳音(人)>
うん、でもなんだかよそにもありそうなきがしないでも・・・。

<庚申堂(天)>


かごめかごめこがらしきたぞちらばれー  潮音
<顎オッサン(人)>
一番気になった句です。
天にしようか迷いましたが、
「ちらばれー」の表現がが気になりました。

<鞠(天)>
 鬼ごっこやかくれんぼと違って、「かごめかごめ」は散らばらない遊び。下五の
「ちらばれー」が意表をついて楽しい。

肩先の痣の紅冬紅葉  梨花
<ぽぽな(地)>
本人のもか、それとも相手のものか。後者とみたいと思いました。

<佳音(地)>
艶っぽくて好きです。

陽に晒す残りの紅や冬紅葉  まよ
<梵論(地)>


<梨花(地)>


血脈の一筋残り千歳飴  やんま
<佳音(天)>
子孫繁栄末広がりに・・でも乳幼児死亡率のぐぐっと低くなった今、一筋でも
いいといっているのだろうか、地球が。
一筋残りが喜ばしくてかなしい。

<梵論(人)>


冬紅葉萩本陣の手水鉢  芳生
<冬扇(天)>
本陣の手水鉢に冬紅葉。景があざやかで印象的ですね。

<康(人)>
近くに住んでいながらまだ訪れたことがない。周防の端、萩に押しやられた毛利藩にも本陣があったのか。その冬紅葉、見に行きたいですね。

小春日や袴に靴の子が闊歩  眞知
<東彦(人)>
主人公になった子供の得意げな様子。見守る祖父祖母が見える。

<まよ(天)>


小春日や紋服の児の眠りこけ  馬客
<芳生(人)>


<素酔(地)>
小春日の句にはいい句が多くありましたが、子供の存在感というようなものをこの句にいちばん感じました。

<柊(人)>
よく見かける微笑ましい光景です。

行く人に待つ人あれと冬紅葉  顎オッサン
<鞠(人)>
 待つ人の許へ行き着ける人は幸せ、その幸せをそっと祈る人の想いは、寂しい
冬紅葉の色か。

<潮音(天)>
「待つ人あれ」とは技巧で出てくる言葉ではない、陶冶された人格から出てくる言葉である。作者のあたたかな目線を感じさせる珠玉の一句。
作者を待つ人もきっといる、そこに。
本当は、「[18]:下り坂上ってみやう冬紅葉」もともに「天」として票を投じたかった。佳作揃い。


・3点句

凩の水面に落す星ひとつ  芳生
<四万歩(天)>
凩の吹きすさぶ、冷えきった夜の情景がよくあらわれています。「水面に落とす星ひとつ」が効いています。

神主の烏帽子に見入る千歳飴  梵論
<やんま(天)>
三歳の眸、何だろうと真ん丸くしている。

口紅を塗らぬ母娘の千歳飴  冬扇
<葉子(天)>


恋仇夕木枯しのなかを来る  康
<雛菊(地)>
さあ、これから女の決闘ぞ。相手は手強い、凩の中堂々と決着をつけに来た

<まよ(人)>


凩を身方に烏賊の一夜干  雛菊
<葉子(地)>


<潮音(人)>
快然、おもわず膝を打つ一句。この句の境地は、「凩=うらぶれた人生の哀感」などという類型的な発想よりもはるかなる高みにある。
軽く、それでいて、句がうわついていない。練達の技の冴え。

霜の声かすかに灯明揺らぎをり  葉子
<東彦(地)>
『声』がはっきりしないが、早朝灯明をいれ、仏壇に祈る。静寂の中に霜の音が聞こえる。澄んだ空気と静寂。清明な気が満ちている。

<冬扇(人)>
霜の声と灯明の揺らぎ。絶妙の取合せのように思います。

華やかにいまを過ぎ行く冬紅葉  木菟
<柊(天)>
いまを過ぎ行くの中七がよいと思います。

膝にのる晴着の色の小春かな  愛子
<明子(天)>
不言題なので、千歳飴や袴着などを使わない句をと思いました。
この句は景色が浮かんでくるのと同時に、親の嬉しい気持も感じさせます。

凩や壊さる家の跡狭し  眞知
<梵論(天)>


凩や五重の塔は天を突き  晴雨
<東彦(天)>
木枯しと五重塔の取り合わせがいい。五重塔の造作の角々を過ぎる木枯しの音が聞こえる。

木履の子地にすれすれの千歳飴  鞠
<冬扇(地)>
地にすれすれの千歳飴との云いが何とも良い。木履の子ともよく照応している。

<木菟(人)>
いかにもほほえましい

うらおもて丁に半あり柿落葉  水
<顎オッサン(天)>
柿落葉の色はとても複雑です。
ちょっと上と中が混み合っていますが、
人生を言い得て妙です。


・2点句

凩に入相の鐘千切れ飛ぶ  青榧
<木菟(地)>
切れ切れに聞こえる入相の鐘の響きが絶妙

凩や耳ふさぎても胸に哭く  やんま
<童奈(地)>
お察しいたします

冬紅葉沈む湯に入る女身かな  佳音
<素人(地)>
真っ赤な冬紅葉と真っ白な女身とのコントラストがなんとも艶かしい。

小春日や不承不承の宮参り  庚申堂
<顎オッサン(地)>
七五三のことがとてもよく解ります。

紅葉道駆け来し頬に触れてやる  康
<水(地)>
もっともシンプルな親子の愛情表現。

凩や共寝の人の意思くめず  愛子
<遊山(地)>
凩とエロスの取り合わせの妙。「意思くめず」に品格あり。

病院の復路に燃ゆる冬紅葉  冬扇
<まよ(地)>


凩に髪詰め夫を抱きにゆく  ぽぽな
<やんま(地)>
きっと寒い日の湯たんぽ代わりでしょう。(^^ゞ

冬雲雀見上げる夢のありどころ  顎オッサン
<英治(地)>
冬雲雀だからこそ夢を求めるせつなさが感じられる。心象風景かも。


・1点句

凩や家に帰れぬわけありて  葉子
<ぽぽな(人)>
そんな日にかぎって、薄着だったりします。

木枯しや客降り尽きし終電車  馬客
<愛子(人)>


暮れる日に灯るごとあり冬紅葉  童奈
<四万歩(人)>
たそがれ時のうす暗闇にぼんやりと映える冬紅葉は、あたかも灯りが点るかのようであります。

こがらしや父の喪知らすはがき書く  明子
<浮遊軒(人)>
寒々として冬の風景がよく見えます。もう今年もそんな季節になったのかと。

凩と飛びこむ浜の屋台酒  願船
<青榧(人)>


栄えの日の記念樹なりし冬紅葉  青榧
<晴雨(人)>
感慨無量

民宿のおやじ無愛想烏瓜  浮遊軒
<やんま(人)>
この民宿にしてこの烏瓜。

錆つきし遊具の陰に帰り花  青榧
<水(人)>
不況を反映して、さびれた公園の一角だろうか; 忘れられまいと、懸命に咲いている。

木枯や遺言セミナーの扉をたたく  水
<素蘭(人)>
いつまでもタブー視していないで積極的に自らの死(後)とかかわる姿勢が必要な時代と共感しました