第99回桃李四月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:花朧、ピアス、新天地(不言題)

題詠または雑詠

兼題1(季題):    「花朧」  
兼題2(キーワード題):「ピアス」   ぽぽな さんの出題
兼題3(不言題):   「新天地」   英治  さんの出題


披講


・12点句

膝に乗る猫の半眼花朧  素馨
<顎オッサン(地)>
眠狂四郎的猫かとも思います。

<葉子(天)>


<ぎふう(人)>
いかにも花朧。ゆったりさせていただきました。

<遊山(天)>
猫の半眼が見事。

<好鵡(天)>
猫も居眠る日和が目に浮かびます。


・11点句

会長も徳利も寝たる花朧  梵論
<冬扇(地)>
会長も徳利も寝ている。いいですね。俳味たっぷり。

<葉子(人)>


<佳音(天)>
会長は一番に騒いで一番にコテン?
やさしい風景ですね。大好きです。

<木菟(地)>
何とも微笑ましい光景ですね。

<素馨(天)>
会長と徳利の組み合わせが、何とも俳諧味があっていいですね。


・9点句

風光る子の振り返ることもなく  馬客
<夜宵(地)>


<素酔(地)>


<ぎふう(天)>
むずかしい季語が見事に決まった一句。清々しい。

<まよ(地)>


ここからは鬼無里ほそみち花朧  ぽぽな
<東彦(天)>
取りたい句が多い中でこれを選んだのは、音律のよさか。「鬼無里ほそみち」を知っていると、ツイこの句を採ってしまう。

<明子(天)>
わらべうたのような素朴なリズムの句ですね。しかし鬼無里と言う地名が持つ
力と花朧とのとりあわせで、一筋縄ではいかない妖しい気配も感じました。

<径(天)>
鬼無里の地名と花朧がよく響き合って、
わが身もおぼろに吸い込まれて行くような感覚を覚えます。


・8点句

母船イマ亀鳴ク地球ニ着陸ス  童奈
<ぎふう(地)>
宇宙からの通信を受け取ったよう。

<馬客(地)>
桃李句会はこの手のSF型俳句がポンと出るのが
とても楽しいのです。
全カタカナの方で投句されたら、もっとすきで〜す。

<素蘭(天)>
新天地のスケールの大きさに天!

<ぽぽな(人)>
これはまさしく新天地。想像力の豊かさに感服しました。想像の景色の中にいにしえ人の想像の「亀鳴く」を当てたところも心憎い。

花薺鳴らせば揺るるピアスかな  青榧
<芳生(天)>
花薺を通して麗人の顔が浮んできます。

<夜宵(天)>


<まよ(人)>


<潮音(人)>
見事。

「ピアス」の兼題を提示されたとき、この題材は俳句になじむのだろうかと考え込み、ついに投句を断念した。ピアスには不潔・不良・躰を傷つける、というイメージしか湧かなかったのだ(ごめんなさい)。しかし、ピアスを軽やかに描いたこの一句には脱帽せざるをえない。みずみずしい感性の光る佳作。


・7点句

人形にピアスの穴や四月馬鹿  晴雨
<英治(天)>
女の子も大きくなるとこんな悪戯を。季語が愉快に働いている。

<やんま(人)>
いやご同輩さまよ。

<月雫(地)>
多分に元々人形に開いてた穴ではなく、悪戯に開けた穴なのでしょう。四月馬鹿の締めが、虚脱感と恐ろしさを与えてます。

<径(人)>
思わずニヤリですね。(^^)
わたしとしては万愚節の方が好みですが、
この諧謔が楽しいです。


・6点句

調弦のげに定まらず花朧  佳音
<青榧(地)>
定まらないのは、他にもいろいろありそうな。

<やんま(天)>
重たき琵琶の抱きごころ

<旻士(人)>



・5点句

花朧社造りの常夜燈  径
<童奈(地)>


<冬扇(人)>
格調高い句ですね。こういうのは好きです。

<佳音(人)>
きれいです。

<木菟(人)>
江戸時代ごろの昔にも、現代にも通用しそうな懐かしい風景ですね。

蛇穴を出づ去年よりも青き空  佳音
<芳生(地)>
面白い詠み方だと思いました。

<馬客(天)>
「新天地」句のなかで一番寓意を広げることの
出来る句であるとおもいました。
七五五で「こぞよりもあおきそら」と言い切った
のも実に歯切れがイイです。

「禁ピアス」運動部室風光る  素馨
<雛菊(人)>
ピアスをつけて無い句を選ぼうとへそ曲がりの私。女子校生かな。えっ?ほんとはつけてるのか。だから禁ピアスなのね。運動するのに危険だから禁?校則かな。「」で囲んだ禁ピアスの新鮮さに1票

<素酔(天)>


<馬客(人)>
無条件にコリャ有るな、と納得しました。
アメリカ女子100米の選手の姿が浮かびました。
ピアスしたって速けりゃイイんです。

里山に古るる板橋花朧  青榧
<童奈(天)>


<庚申堂(地)>
25番鬼無里ともどもきれいな句だと感じました。

新緑や白内障の手術終へ  庚申堂
<旻士(天)>


<鞠(地)>
視力を回復した目に、さぞかし新緑が沁みることであろう。


・4点句

あだめくやピアスの光る祭髪  眞知
<童奈(人)>


<木菟(天)>
最近の風俗としては珍しくもありませんが、対照の妙と言いますかなぜか忘れがたい句です。

すかんぽや小牛にピアス一つづつ  ぎふう
<庚申堂(天)>
おもしろいところに着眼されたと感心しました。
24番禁ピアスも、好きでした。

<明子(人)>
実は私もすかんぽの句を投句したのです。数えてみたら十七文字のうち十文字まで一緒でした・・・。
耳にタグをつけた可愛い子牛の様子とともに、せつなさも感じられます。

寸鉄を心耳に穿つ目借時  素蘭
<英治(地)>
寸鉄はイヤリングのことか。心を穿つとは少々難しいが、言葉に力感がある。

<ぽぽな(地)>
ピアスの不言題として優れています。これはピアスでありイヤリングではありえません。

ほらあそこあの方じゃない花朧  馬客
<東彦(地)>
61の句も捨てがたい。蕪村の「門を出て故人に逢いぬ秋の暮」を思い出す。桜の怪しさ。この句は花朧が効いている。

<素馨(地)>
よくある会話であり、よくある場面ですが、花朧という季語によって、詩になっていると思います。

看護師のピアスの痕も花の下  康
<冬扇(天)>
痕というのですから今はピアスしていないのでしょう。景が見えて面白い。

<月雫(人)>
「も」に理屈が生じ季語の斡旋も甘い気がします、が、今回ピアスの題目で痕を詠まれたのはこの一句だけでした。着目点に選を入れます 

朝闇や月の白みて花朧  旻士
<欅(人)>
横山大観の朦朧体画を彷彿とさせます。

<四万歩(天)>
春は曙ようよう白くなりゆく、の世界が目に浮かびます。

花朧コンビニまでの平泳ぎ  月雫
<夜宵(人)>


<潮音(天)>
絶妙のユーモア。花おぼろにけぶる春の宵を平泳ぎする作者の勇姿。ゴールの店には三水扁に酉のマークがあるのだろうか。「花朧」の兼題では「[102]:微睡みに君若きまま花の宴」の純情にも心をうたれた。


・3点句

恥ぢらひのピアスきらりと春灯下  木菟
<芳生(人)>
浮世絵の中の艶なる光景とお見受けしましたが。

<四万歩(地)>
はじめてつけるピアスのぎこちなさがういういしく描かれています。

墨染の僧の居眠る花朧  潮音
<まよ(天)>


転身の便りの届く卯波かな  芳生
<顎オッサン(人)>
まさに人事句ですね。

<径(地)>
希望に溢れた転身なのでしょう。
卯波の明るさがいいですね。

箒まづ買ひて任地の山笑ふ  英治
<雛菊(天)>
私自身は新天地の題は難しくて投句出来ませんでした。この句は箒まづ買ひてで決まり。山笑うでこの地での未来に希望を感じさせてくれました。

すかんぽや更紗に眠る児のピアス  明子
<ぽぽな(天)>
穏やかで美しい情景です。昔ピアスは魔除けとして、叡智の象徴として着用されていたということに思いが及びます。眠る児をお釈迦様とも思わせる幅のある句です。

命水浴びて植田のあくびかな  潮音
<旻士(地)>


<庚申堂(人)>
春が来れば、田圃はまったく装いを新たにします。

時満ちて出づる土竜の春愁ひ  好鵡
<青榧(天)>
面白くて、悲しい。また、もぐってしまいましょうか。

百隈に影の揺らぎや春遍路  顎オッサン
<欅(天)>
影の揺らぎ、が良いですね。

花朧白きシーツに叔母眠る  まよ
<月雫(天)>
花朧、白いシーツ、叔母と三つのエロチシズムさを盛り込みながらも決してグロテスクにならないのは、作者の力量でしょうか。何度も読み返してますと、惜別の句にも見えてきますから不思議です。

微睡みに君若きまま花の宴  庚申堂
<顎オッサン(天)>
酔いにまかせて久しぶりに膝枕を。
下から見上げる少し年輪を経た君の顔と
今が盛りの満開の桜はどちらも美しい。

朧月ピアスひんやり頬にふれ  庚申堂
<鞠(天)>
情況を朧に表現していて、かえって実感が在る。


・2点句

花朧寄りくるひとの名の出でず  英治
<雛菊(地)>
最近とみにこの経験多し。そのばつの悪さったら。花朧の季語にぴったりあいすぎる感あり

人去りぬ葉ごと食ぶべし桜餅  顎オッサン
<遊山(地)>
雰囲気がよくでています。

ピアス光る老親介護の友の春  雛菊
<好鵡(地)>
ピアスをしていようといまいと、介護しなければならない事情が確実に増えていく。

水分に蛇の衣のありにけり  素蘭
<やんま(地)>
さて蛇は何処へ向ったか。

夕桜となりに行ってあいさつす  素酔
<佳音(地)>
見せたくて、何か言って欲しくって、だから隣までに行ったのですね。

わくわくと耳順ひて入学す  ぎふう
<明子(地)>
耳順、還暦を迎えられたのですね。自分のために、本当に学びたいことを学ぶために入学された喜びが伝わってきます。

蝶高くもつれて消ゆる空の中  やんま
<素蘭(地)>
映画のワンシーンのようですね
心象風景の美しさとせつなさが伝わってきます

花いかだ流れの果てに海の宮  月雫
<葉子(地)>


駅までは畦近道や初燕  径
<潮音(地)>
田圃道を歩くとなぜかほっとした気持ちになる。いつもの道を通らず近道をした作者の眼前にひろがる青田。そのうえを飛ぶ燕の姿が爽快。良寛法師の「青田涼しく風わたるなり」の世界。

花朧墨堤に風渡りけり  柊
<欅(地)>
[68]:花朧墨堤を行く人力車、も。ともに風情がありますね。


・1点句

言葉たち消へてしまへり花朧  眞知
<素蘭(人)>
花朧につつまれてということは
良い意味で言葉がたち消えたということですね

花の種まきて確かむピアスかな  月雫
<英治(人)>
ピアスなら落ちないと思うが。以前からの癖なのか。景が浮かぶ。

初めてのピアス見せつつ月朧  鞠
<遊山(人)>
若者らしい初々しさ。

春泥や馬頭観音片ピアス  やんま
<東彦(人)>
馬頭観音は一部が欠けているものが多いが、「片ピアス」にその情景が浮かぶ。

表札に菫はにかむ新居かな  夜宵
<素馨(人)>
新婚の新居なのでしょうか。
初々しい気分と、可憐な菫が、よくマッチしていると思います。

蛇にはピアス蛙には目借時  童奈
<鞠(人)>
一句の中に、最新の小説から捕食関係の蛇と蛙まで、巧みに取込んでいる。

脱サラの子は春光の地に向かふ  柊
<四万歩(人)>
「春光の地に向かふ」がまさに新天地をあらわしています。

葉桜や未婚の娘二人ゐて  葉子
<素酔(人)>


無住寺を背負つて立つたる楠若葉  径
<青榧(人)>
偉い、楠。イメージが浮かびます。

面接にピアスはなかった入社式  旻士
<好鵡(人)>
入社式、ほとんど全部がピアスをしているのが驚き。