> (裏移) > 初句 半世紀語るつれづれ去来の忌 茉莉花 晩秋 述懐
に続けて次の投句がありました。
1 やむことのなき戦乱に世は
措辞が連歌の付句としては異例です。述懐の句ならば、
やむことのなき戦乱の世や
あるいは
やむことのなき戦乱の世ぞ
となる方が普通です。ただし、そう直すと、蘇生さんの原句とは微妙にニュアンスが違ってきますね。蘇生さんの句はたんなる述懐ではなくて、むしろ、そういう世がこれからどうなっていくのかという未来への気遣いが感じられました。
2 酒を満たさむ十のさかづき
十は蕉門十哲を連想させますね。
3 ネットの先の風狂の友
これはなんだか私のことを言われているようです。
4 父の遺せし軍事郵便
これは太平洋戦争に出征した父の遺品を整理したときの情景。述懐の付けです。
5 岩波文庫書き込みのあり
こちらは去来抄に着眼されました。どちらかといえば、4のほうが印象的でした。
6 覚悟を決めて家を出るまで 7 さっさと職を辞めるつもりで 8 ふと見つけ出す古い新聞
このなかでは、8があっさりとした感じで良いですね。 6,7は個人的なドラマを含んでいますので、まだ波瀾万丈ですね。
9 縁故疎開の児童老いにき 10 晩翠の歌詞雨にうたれて
これは9のほうが、述懐の句として実感があります。
最初は、蘇生さんの句を通常の述懐の表現に改めて頂くつもりでしたが、そうすると、原句と離れすぎるということに気づきました。そこで、措辞は異例ですが、蘇生さんの句をそのままの形で頂戴します。
追記
初句 半世紀語るつれづれ去来の忌 茉莉花 晩秋 述懐 二句 やむことのなき戦乱に世は 蘇生 述懐
この二句で「世」が同字になっていますが、これはむしろ同字であることが効果を上げているという判断で直しませんでした。初句と二句を、併記してみると、蘇生さんの句の良さが分かると思います。 (同字付不嫌については、百韻談話室に書きましたので、そちらもご覧下さい)
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