桃李歌壇  梅足漢詩集

漢詩の小道

前頁 次頁

その2

 2...漢詩のリズム
 先ほど、「音読みで棒読みしても、なんとなく、流れるような感じがしませんか。
そもそも漢詩は昔の中国の歌詞だっ たのです。そして、私達日本古来の和歌や俳句
と同じように、実は漢詩も五七五なのです。」 と言いましたが、漢字には一字一字
にリズムがあるのです。

------------------------------------------------------------------------

●そして、「近体詩」が成立した中国の唐の時代では、漢字をリズムによって、四つ
に分類していました。
 平声(ひょうしょう)、上声、去声、入声(にっしょう)の「四声」です。これ
を、作詩の観点から次のよ うに整理してみました。
○「平声」−(一)発音がなだらかで、上がり下がりがない。
・「上平声」
{一東、二冬、三江、四支、五微、六魚、七虞、八斉、}
{九佳、十灰、十一真、十二文、十三元、十四寒、十五刪}
・「下平声」
{一先、二粛、三肴、四豪、五歌、六麻、七陽、八庚、}
{九青、十蒸、十一尤、十二侵、十三覃、十四塩、十五咸}
上平声と下平声は単純に二つに分けたもの。それぞれ、十五ずつ、分類され、数字の
横の字は各々代表する 字をもって「一東」とか呼びます。
●「仄声(そくしょう)」
・上声−(二)尻上がりのアクセント。
・去声−(三)尻下がりのアクセント。
・入声−(四)「つまる」音。
 このような分類は、ある程度の漢和辞典にはそれぞれの漢字について記載されてい
ます。又、この分類は「 平水韻」に従っており、韻の専門の書物を「韻書」とい
い、分類毎の漢字が一覧としてそれぞれ記されてい ます。
 ここで、「○平声」と「●仄声」というように、記号を分けて、分類したのにお気
づきでしょうか。 これには、ある意味があるのです。
 まず、漢詩のリズムを構成する基本は平声と仄声です。 そして、作詩の本では、
「○=平声」と「●=仄声」と表現しているのが通例です。ここでは、皆さんに最初
からこのような表記に慣れて頂く為に「○平声」「●仄声」というように書きまし
た。
 そして、この「○平声」「●仄声」の決まった組み合わせ、西洋音楽で言えば、ハ
長調とかイ短調とかに相 当するものでしょうか、これによって心地よい響きのある
詩となるというわけです。

------------------------------------------------------------------------

●ここでは、唐の時代の漢字そのものの発音のリズムを述べましたが、私達日本人の
読み方として定着して いる「読み下し文」のよさもあります。
 漢文の授業でこれだけは私の耳に残っていたという「陽関三畳」もその一つです。
「西の方、陽関を出づれば、故人(知己の意)なからん。なからん。なからん。故人な
からん。」
 というフレーズです。これは、今でも私の心の奥に響いています。 これをいまさ
ら、「西方陽関無故人(せいほうようかんむこじん)」では雰囲気が出ませんよね。
 閑話休題

前頁 次頁