自由投句の部屋の歌仙の評釈です: 木粋
【初折表】 春 命あれ我が足下に春の雪 きこ ※芭蕉の「命なりわずかの笠の下涼み」を早春に
春 鉢あらためて福寿草見る ひとし ※新しい季節の訪れを「鉢あらためて」で受けて
春 城山へ春一番に吹かれ来て 鞠 ※丈高く離れろの心得通りの見事な第三。発句脇
雑 文擲つも若かりしゆえ みお ※前句のドラマ性をとがめて、文なげうつは確か
月 ? 水月を寒満月の照らす真夜 涼 ※月の定座。「水月」と「寒満月」は、どう読む
春 南下ひそかな流氷の群 絹 ※前句の冬の句と見たのか、南下を開始しようと
【初折裏】 雑 隣国のその指導者も遂に逝き みお 初折裏入り。前句に大きく動きはじめんとする
雑 地に平和なき天安門か 五十一 ※「平和なき」が作者の感慨。ちょっと付きす
雑 都には都の愁い雨もまた ? 雑 窓辺で独り啜る珈琲 ひとし ※前句に雨とあれば、ここは季節をはっきり出
春 微睡む子薄紅色のヒヤシンス きこ ※この句は、やや気分で付けた遣り句。ヒヤシ
夏 ルピナスの穂にとまる瑠璃鳥 はる ※ヒヤシンスに、あえてルピナスを持ってくる
月 秋 ストローを空に向ければ昼の月 みお ※月の定座。姿が藤の花に似たルピナスは、一
雑 甘味も欠けて黙す二人に きこ ※春秋は三句以上という約束事は、現代連句と
雑 DJの“a”のなまりの心地よく やまめ ※ちょっと付け筋が見えませんが、aのなまり
雑 停車場懐し"so"を聴きにゆく はる
※心地よいなまりは、ふるさとのなまり。啄木
花 春 子供らと花を飾ってイースター きこ
※前句の解釈がいまひとつ明らかでないので、
雑 帽子の羽に鳩もとまりて ゆう ※イースター(復活祭)に付けた句。幸い、作
【名残表】 雑 立ち尽くす野外劇場石冷えて みお ※ここより名残表。一句立とみれば、さまざま
冬 大道芸も仕舞ふ木枯し 鞠 ※前句を付け伸ばして、はっきりと季節を出し
雑 さりげなくふたりのはてをつぶやくに 絹 ※前句の眼目を「仕舞ふ」とみて、男女の別れ
雑 子に恵まれぬ幸か不幸か 粋 ※別れの理由をさぐっています。子がないから
夏 ひたすらを青嵐吹くこの朝 みお ※「石冷えて」以後の沈鬱とした運びをやぶっ
雑 船出待つらむ吾が背の君は はる ※青嵐の吹き渡る朝は、わが背の君が船出する
春 昇進の単身赴任へ黄砂降り 鞠 ※船出は昇進ゆえ、しかし単身赴任という悲喜
春 霞む彼方へ急ぐ犬あり 涼 ※この句は、単身赴任するサラリーマンを急ぐ
春 カルストの丘から谷へ野火盛ん 絹 ※急ぐ犬を猟犬と見たのか、盛んに燃え上がる
雑 馬嘶きて蘆の海底 きこ ※この句は自注があります。「野焼きの火と走
月 秋 月明かり平家の琵琶の響き 木粋 ※海底から聞こえてくるのは琵琶の音か。前句、
秋 峰まで続く葛のさやけさ みお ※この歌仙随一の付句。なにより移りがよく、
【名残裏】 秋 霧流れ歩荷の喘ぐ塩の道 鞠 ※遣り句ながら、名残裏であまり趣向をこらす
春 山菜入りの焼味噌を舐め 涼 ※前句の付けのばしの感あり。ちょっとあらぬ
春 新学期うちの坊やもつくしんぼ はな ※山菜→野草→土筆という連想とのこと。ただ、
春 「ほう」と声して耕馬向き変ゆ やまめ ※前句との関係でいえば、耕馬が振り向いたの
花 春 春風や花嫁御寮野道ゆく ひとし ※馬が振り向いたのは花嫁行列のせい。これは
雑 腹をたたきて老翁安堵す ゆう
※挙句は、前者が「鼓腹撃壌の故事をかりて太
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