桃李歌壇

目次

風船

私の小さな部分が手のひらから外に向かって膨張する
それは私の一部を取り込み 存在としてこの世のものの一部を担う
もう一つの私の内側
まるくあかい風船よ

ほら おまえはこうして諸々の手の中から現れ
放たれた外の世界の重力と風力に翻弄されつつ
やわらかく空と目の高さの間を行き来して
空間の特別な位置を示してゆく

吹き込まれた温もりが
次第に冷ややかになろうとも
ついにこの手のひらに戻ることがなかろうとも

一瞬だけおまえはそのままのかたちで空に静止する
私のもっとも軽やかな内なる想いを
ほんの少しの高みのところに示しながら