初折表
春 その命遊ぶが如く小鮎跳ね やまめ
春 また一段と青む麦の穂 木粋
春 水夫が声音太し春の山を背に みお
雑 ずんと伝わる銛の手応え 粋
秋・月 引き給へ弓張りの月北斗見て きこ
秋 脱ぐ片袖に鈴虫を浴び みお
初折裏
秋 秋の夜半身も焦がれたる香枕 ひとし
雑 爪弾く三味の間がいじらしく やまめ
夏 林泉越ゆる揚羽真青く閃光す みお
雑 雲の仙人蛾眉山に飛び ひとし
雑 たそがれに孤身万里の道寥々 ゆう
春 願い叶いて春に召されし やまめ
春・月 かぎろひや月ぞ傾く西の空 ゆう
春 根芹の水の薫る玉響 みお
春・花 櫂歌へ瑞木のかげの花蕾む きこ
雑 翁の行く手に立つそぞろ神 やまめ
雑 あらわれし億の値のつく旅日記 粋
雑 にはかに蔵を探す婿殿 みお
名残表
冬 底冷えや遺言の文にわが名無し ひとし
冬 すべてこの世は木枯らしの中 粋
冬 ふうはりと雪も舞ひ入る赤提灯 きこ
雑 満艦飾の黄色いハンカチ やまめ
雑 老兵は去りゆくのみか巻煙草 ひとし
雑 檄文飛べど上がらぬ烽火 ゆう
雑 ミニはいて左ハンドル得意げに やまめ
雑 景気好すぎて自動車摩擦 ひとし
夏 炎帝をブラスバンドの練り歩き みお
夏 ざくざく廻せ氷苺を はる
秋 あの月のあたりに咲いた大花火 粋
秋 流燈語る忘れ形見に ゆう
名残裏
秋 茱萸の酒この日ばかりは遠慮なく やまめ
雑 交はす杯相手は白髪 ひとし
春 永き日に明神縁起説きにけり やまめ
春 遙かに霞む蜃気楼みて ゆう
春・花 花受けし舌吸はれつつ昼静か みお
春 ひと時舞ひて胡蝶休らふ はる
やまめ 8句
木粋 5句 月
みお 7句 花
きこ 3句 花・月
ひとし 6句
ゆう 5句 月
はる 2句