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七吟歌仙『小鮎の巻』


1997/3/11-3/26

     初折表
     春    その命遊ぶが如く小鮎跳ね    やまめ  
     春     また一段と青む麦の穂     木粋   
     春    水夫が声音太し春の山を背に   みお   
     雑     ずんと伝わる銛の手応え    粋    
     秋・月  引き給へ弓張りの月北斗見て   きこ   
     秋     脱ぐ片袖に鈴虫を浴び     みお   
     初折裏                       
     秋    秋の夜半身も焦がれたる香枕   ひとし  
     雑     爪弾く三味の間がいじらしく  やまめ  
     夏    林泉越ゆる揚羽真青く閃光す   みお   
     雑     雲の仙人蛾眉山に飛び     ひとし  
     雑    たそがれに孤身万里の道寥々   ゆう   
     春     願い叶いて春に召されし    やまめ  
     春・月  かぎろひや月ぞ傾く西の空    ゆう   
     春     根芹の水の薫る玉響      みお   
     春・花  櫂歌へ瑞木のかげの花蕾む    きこ   
     雑     翁の行く手に立つそぞろ神   やまめ  
     雑    あらわれし億の値のつく旅日記  粋    
     雑     にはかに蔵を探す婿殿     みお   
     名残表                       
     冬    底冷えや遺言の文にわが名無し  ひとし  
     冬     すべてこの世は木枯らしの中  粋    
     冬    ふうはりと雪も舞ひ入る赤提灯  きこ   
     雑     満艦飾の黄色いハンカチ    やまめ  
     雑    老兵は去りゆくのみか巻煙草   ひとし  
     雑     檄文飛べど上がらぬ烽火    ゆう   
     雑    ミニはいて左ハンドル得意げに  やまめ  
     雑     景気好すぎて自動車摩擦    ひとし  
     夏    炎帝をブラスバンドの練り歩き  みお   
     夏     ざくざく廻せ氷苺を      はる   
     秋    あの月のあたりに咲いた大花火  粋    
     秋     流燈語る忘れ形見に      ゆう   
     名残裏                       
     秋    茱萸の酒この日ばかりは遠慮なく やまめ  
     雑     交はす杯相手は白髪      ひとし  
     春    永き日に明神縁起説きにけり   やまめ  
     春     遙かに霞む蜃気楼みて     ゆう   
     春・花  花受けし舌吸はれつつ昼静か   みお   
     春     ひと時舞ひて胡蝶休らふ    はる   

      やまめ 8句
      木粋  5句 月
      みお  7句 花
      きこ  3句 花・月
      ひとし 6句
      ゆう  5句 月
      はる  2句