1701 > 現世に生きゆくわれは帰途の駅の鏡に写して口紅を塗る(たまこ) (3月30日 09時19分) 1702 > 別れ来し男ひとりが喫泉をふふむ紅の香すすがんとして(堂島屋) (3月30日 12時07分) 1703 > 友禅の賀茂の清みに紅色のよどむ岸辺に落花舞ひけり〈重陽) (3月30日 14時42分) 1704 > 落ち椿を手に拾ひつつ生き恥と言ふも晒して生きむと思ふ(たまこ) (3月30日 19時50分) 1705 > いはけなく歌よみてただ歌よみて翁とならば嬉しからまし(堂島屋) (3月30日 20時46分) 1706 > 意味などを問ふこともなく歌ひこし息吐くやうに息吸ふやうに(たまこ) (3月30日 21時27分) 1707 > 意味といふもの脱ぎすてし裸身今きらぎらしくもまなかひに立つ(堂島屋 (3月30日 22時27分) 1708 > みどりごの手足おのづから舞ふやうに鎧捨てたる歌はまはだか(登美子) (3月30日 23時12分) 1709 > けふ生れし人の如くに百千鳥鳴きすむ朝をめで愛しむかな(堂島屋) (3月30日 23時29分) 1710 > 鶯の来鳴きてやまぬ里山にけふは初花咲くを愛でたり(素蘭) (3月31日 00時48分) 1711 > 満開の花に小リスが群がりて枝から枝へ小鳥のやうに(重陽) (3月31日 06時27分) 1712 > 今更に雪降り来る桜花僕の為にも耐えて下さい(海斗) (3月31日 15時54分) 1713 > 海なりのとほくきこへしあばらやの花めでくまむながき斗の酒(重陽) (3月31日 16時31分) 1714 > 花冷えの冷えつくしたる東京よ友の婚ほぐべく我は来ぬ(堂島屋) (3月31日 16時46分) 1715 > 散れよ散れよと吹ぶく桜を身に浴びて流されゆきし帝のありき(たまこ) (3月31日 18時20分) 1716 > 郷愁と幻想と愛シャガールの絵に霊感の花嫁は舞ふ(素蘭) (3月31日 18時31分) 1717 > 渚にてさざ波白くよす砂にふる雪きへて春遠からじ(重陽) (3月31日 21時07分) 1718 > 渚より持ち帰りたる陶片の示せし歴史の神秘に触るる(萌) (3月31日 23時54分) 1719 > いつの日にか拾ひし白い貝殻を窓辺において海風を呼ぶ(たまこ) (4月1日 06時46分) 1720 > きみのゐた去年(こぞ)の浜辺の桜貝耳に寄せれば海鳴りの音(素蘭) (4月1日 15時09分) 1721 > 築かれし渚の砂のマンションのまだそのままに波や寄せくる(重陽) (4月1日 17時18分) 1722 > ブー・フー・ウーにさらに弟がゐたならば砂のお家にしたかもしれぬ(たまこ) (4月1日 21時12分) 1723 > ヒマラヤの嶺より落つる雪解けの水に還りく砂の曼陀羅(素蘭) (4月1日 21時51分) 1724 > 雪解けの思いがけない激しさにふだん瀬とみる水が滝なす(萌) (4月1日 23時21分) 1725 > 激しさを普段は隠しているけれどふいに湧き来る抗えぬもの(登美子) (4月1日 23時30分) 1726 > 花の下妻と二人で乾杯す癌取り去りて三度目の春(海斗) (4月2日 05時42分) 1727 > せつかくの一生だからみの虫も春には若葉に着替へてみたい(たまこ) (4月2日 09時41分) 1728 > うららかに春はめぐりて至れども齢重ねる父母の明日想う(藍子) (4月2日 17時32分) 1729 > それぞれの迎へる春はとりどりの仕立て直しの衣まとひて(重陽) (4月2日 20時26分) 1730 > 真つ白なノートを開く心地する四月新たな門出祝ひて(素蘭) (4月3日 00時42分) 1731 > 新入の若き決意の面々と夢をともにし日々にすすまな(重陽) (4月3日 06時51分) 1732 > 夢求めとつ国へ立つ若きらよわが踏むもいまだ知らざりし道(4月3日 17時32分) 1733 > 介助犬連れて学門くぐりたる三年(みとせ)の辛き試練を耐えて(素蘭) (4月3日 18時04分) 1734 > ここしばらく開かれしことなきような西洋館の門に風花(萌) (4月4日 00時47分) 1735 > 廃材の残る更地にさくら散る生垣荒れて今は声なき(重陽) (4月4日 06時45分) 1736 > 廃屋に白木蓮が高くさき谷間の村の過疎になりゆく(たまこ) (4月4日 10時54分) 1737 > 杣道を辿れば散り来る峰桜蒼穹揺らし高きひともと(登美子) (4月4日 18時47分) 1738 > すこし目を上げて歩けばわが巡りの山のをちこちに桜花咲く(たまこ) (4月4日 21時27分) 1739 > 桜咲き十日も経てば咲いているのが当たり前散ると思えず(萌) (4月4日 23時11分) 1740 > 清滝へ紅葉の渓を山桜うすくれなゐに霞染めたる(素蘭) (4月5日 00時07分) 1741 > 「添ふてもこそ迷へ」と風のささやけば風の流れに散る桜花(たまこ) (4月5日 10時30分) 1742 > 北の野のまだ覚めるやらぬ雪の間のささやく風に散る花もなき(重陽) (4月5日 14時19分) 1743 > ためらひてをればおぼろの月影が誘ふらしいで枝離れてみむ(登美子) (4月5日 17時00分) 1744 > 花おぼろ鶴千代もまた亀千代も押し込められて家絶えにけり(堂島屋) (4月5日 19時16分) 1745 > 花万朶鶴亀の島浮かべたる庭園に居て落つる涙も(萌) (4月6日 00時03分) 1746 > 神苑の水面に映るくれなゐの枝垂れ桜に春は闌けゆく(素蘭) (4月6日 00時59分) 1747 > その花は彼岸に咲くや天心にして脇見せり春の雁(かりがね)(羊羹) 永田耕衣へ (4月6日 10時35分) 1748 > うらうらとただよふごとく散る花に此岸にたくむ吾をわすれむ(重陽) (4月6日 19時10分) 1749 > 明日はもつといい日にならむさくら色に土蔵の壁が夕陽に染まる(たまこ) (4月6日 21時53分) 1750 > 染井吉野ばかりの並木抜けてきて一本の山桜に心魅かれる(萌) (4月7日 00時19分) 1751 > 湧水の渓を覆へり花霞うすくれなゐに色を重ねて(素蘭) (4月7日 08時50分) 1752 > 渓流へ届くほどなる雪柳せせらぎの音に何思ふらむ(海斗) (4月7日 09時54分) 1753 > 花冷えの池をみにゆく車椅子疾く疾く押せと曽祖父のいふ(堂島屋) (4月7日 11時36分) 1754 > 注ぐ酒の絶へなば絶へね桜花一期一会と聞き給ふゆゑ(海斗) (4月7日 12時23分) 1755 > 山峡にふる花びらの幽けしや沈金のごと岨のせせらぎ(重陽) (4月7日 13時10分) 1756 > 春風を切りて川面を飛ぶつばめの歌あり四月初めの歌会(たまこ) (4月7日 15時18分) 1757 > みちのくの旅の終はりの水湊灯ともしごろに花は舞ひ散る(素蘭) (4月7日 16時41分) 1758 > 一日の山旅は終はりに近づきて火の見櫓のたつ村が見ゆ(登美子) (4月7日 18時53分) 1759 > ゆかむとす旅のすがらの手合いなど思ふなどして予ねてたのしぶ(重陽) (4月7日 19時14分) 1760 > 日を受けて花の命の鮮やかに咽ぶまで咲け目に焼きつけむ(海斗) (4月7日 20時21分) 1761 > 放課後のコートに躍るきみを見てわれは佇(た)ちをり残照のなか(素蘭) (4月7日 22時44分) 1762 > 葉を少し兆して地味になる桜 残照のなか輝き戻す(萌) (4月7日 23時48分) 1763 > あさの日に恥かしげなる春の山夕べに深き憂ひをたたふ(重陽) (4月8日 06時31分) 1764 > 歩き初めしをさなごのやうに深山木の梢ひたすら春に向かへり(登美子) (4月8日 06時44分) 1765 > 木漏れ日の窓より入りてゆらゆらと長閑けからまし我が恋知らず(海斗) (4月8日 09時37分) 1766 > 心当てに君を待ちをる春の苑夕闇甘く揺れるブランコ(素蘭) (4月8日 12時21分) 1767 > 花過ぎしだあれもいない鞦韆のふいになつかし風にゆれるを(重陽) (4月8日 12時58分) 1768 > ミシン踏む妻の姿よ洟啜る音もいとしき日を重ねつつ(海斗) (4月8日 13時34分) 1769 > 波音をいとしきものと思いつつ海より離れしオフィスに居りぬ(萌) (4月8日 18時04分) 1770 > よせてまた返へす潮間の小波の潮の満てるは猛けるが如し(重陽) (4月8日 19時17分) 1771 > 猛りくる波と空とのあはひにも光は満ちてターナーの海(素蘭) (4月8日 21時23分) 1772 > 画用紙に横に一本線を引き子の絵はたちまち海と空になる(たまこ) (4月8日 21時34分) 1773 > 一筋の雲曳きながらジェット機は空と海とのあをに消えゆく(素蘭) (4月8日 23時49分) 1774 > ジェット機の影落つ春の山間にやや斜交いに煙たなびく(重陽) (4月9日 07時52分) 1775 > 朝靄の青きに紛れやまあいの里に炊ぎの煙のぼり来(登美子) (4月9日 09時42分) 1776 > なにもない村よと仰げば曇天に黄の羽広げて鶺鴒が飛ぶ(たまこ) (4月9日 11時27分) 1777 > 夕空の朱に遊弋せし鳶の仰ぎし吾をいかに思ふや(重陽) (4月9日 14時22分) 1778 > 悠然と空に画く輪を絞りゆく鳶の狙ひは春の野うさぎ(たまこ) (4月9日 22時32分) 1779 > 夕桜はやも散りける川面より雁飛び立ちぬ 心残さず(素蘭) (4月10日 00時05分) 1780 > 夕光に照り翳りつつ薄墨の花散るに似て『かげろふ日記』(たまこ) (4月10日 09時51分) 1781 > 新芽なす谷のあはいのそこだけに色をまとひし山桜かな(重陽) (4月10日 13時36分) 1782 > 散りそめし桜の花に雨がふり夢ならばとまた思つてしまふ(たまこ) (4月10日 18時47分) 1783 > 薔薇色の蕾にあるる春愁ひ鬱金桜の夢ならなくに(素蘭) (4月10日 20時15分) 1784 > 薔薇色の風を集めて横浜の山手の丘に佇む茶房(萌) (4月10日 23時15分) 1785 > 昼下がりの茶房にたまゆら思ひ出す 今でもミルクはたつぷりですか(たまこ) (4月11日 09時20分) 1786 > 遠のけば乳白色に溶けてゆく思ひ出のなかの鮮やかなるもの(登美子) (4月11日 09時32分) 1787 > 身の傷はいと消えやすし十年経ておぼめく君を赦すべきやは(堂島屋) (4月11日 18時04分) 1788 > 傷癒へてそなたの傷を思ふときそっとなぞるは壁のイニシャル(重陽) (4月11日 19時52分) 1789 > アルプスの星降る小屋に痛めしむ小指はいまも「小指の思い出」(しゅう) (4月11日 21時37分) 1790 > 懐かしき歌口ずさみ湯に入ればシャワーの漏りのリズムとやなる(海斗) (4月11日 22時06分) 1791 > 懐かしき歌はいつでも別れ歌 手首の傷などわれは知らぬに(素蘭) (4月11日 22時54分) 1792 > 故郷で「す・き・で・す・・さ・つ・ぽ・ろ」口ずさむ疼く傷など無くもナツメロ(重陽) (4月12日 05時33分) 1793 > 傷跡は十重に二十重に包みおき「おぼろ月夜」をくちずさんでみる(登美子) (4月12日 17時44分) 1794 > 花の宴朧月夜に果てぬるをかたみにかはす扇眺めつ(素蘭) (4月12日 23時20分) 1795 > そのむかしおさなごころにかんじたる おぼろづきよのたよりなきゆめ(萌) (4月12日 23時20分) 1796 > 闇の底に覚めをればおぼろの思ひ出は扇に隠すかんばせのごと(登美子) (4月13日 20時43分) 1797 > 春風の生まれてきたる扇状地濃く彩りてゆく桃の花(萌) (4月13日 23時42分) 1798 > 源平のゆかりならずも紅白に交じりてゆかし 桃の花咲く(素蘭) (4月14日 01時17分) 1799 > 風つよく窓を見やれば生垣の葉先きはすでに新緑が咲く(藍子) (4月14日 14時55分) 1800 > 春の闇にほふがごとくしみじみと一里かなたの汽笛聴きをり(堂島屋) (4月14日 19時28分) |