1901 > 生きるとはかく歩むこと物云はぬ君車椅子にて教へ給ひき(紀) (5月3日 18時00分) 1902 > ゆっくりと歩けばいいのよ追い越してゆく者はゆけ君の歩幅で(登美子) (5月3日 23時12分) 1903 > めのまへの青き芽吹きのあまたなるゆるりあゆみて語りかけばや(重陽) (5月4日 09時11分) 1904 > あをやかに欅並木は匂ひたちはつ夏の歌奏でゆく風 (素蘭)(5月4日 11時10分) 1905 > 蕪村展帰るさ初夏の噴水をよぎれば親子親子ざざめく(堂島屋) (5月4日 20時39分) 1906 > 毛馬堤三々五々五々は黄とたんぽぽ踏みて蕪村歩めり(素蘭) (5月4日 22時53分) 1907 > ながむれば鳥わたりゆく京の空なほに見ゆれどみな筋違に(重陽) (5月5日 05時43分) 1908 > ながむれば朧に消(け)ぬる夜半の月なほも見つれど雫こぼるる(素蘭) (5月6日 00時18分) 1909 > いにしへの民が残せる天体図謎と夢とを未来につなぐ(登美子) (5月6日 06時13分) 1910 > いにしへのもののふの道たどりては孫とかたりし昔々を(重陽) (5月6日 09時09分) 1911 > いにしへの京の都の陰陽師酔ふにはあらず反陪とこそ(堂島屋) (5月6日 19時26分) 1912 > 古き家の梁(うつばり)の塵払ふてふ秘めし想ひはせうこともなく(紀) (5月6日 21時31分) 1913 > 古き家の軒に絡める山藤の花紫に秘めし想ひ出(素蘭) (5月7日 00時13分) 1914 > 藤房の清らかに咲く山すそに半ば打ち捨てられし古寺(萌) (5月7日 00時37分) 1915 > いにしへはおほ寺なりし山門の影を出づれば己が月影(重陽) (5月7日 05時15分) 1916 > 「ターミナル」を「テルミー」などと読みちがへ欅若葉の影にまちをり(たまこ) (5月7日 11時58分) 1917 > 新宿の夜行のホームにザック負ひ若者列なすその一人なりし(登美子) (5月7日 18時56分) 1918 > 埃くさき夜行列車に甲子園球児もろとも乗りしことなど(堂島屋) (5月7日 21時18分) 1919 > 手荷物は等身大の縫ひぐるみロイヤルバレエの少女機上に(素蘭) (5月7日 21時54分) 1920 > ひだり手に成田空港見下ろせば玩具のような機々犇めきて(重陽) (5月8日 04時50分) 1921 > 留守番のハッピーホリデイあか錆びしブリキのおもちゃの金魚のきもち(たまこ) (5月8日 19時32分) 1922 > 錆びついた心の奥を取り出して拭ってみたい雨の休日(登美子) (5月8日 23時12分) 1923 > 連休のモード切り替え戦場の入り口となる通勤電車(萌) (5月9日 00時10分) 1924 > 東塔の凛と聳ゆる薬師寺に洗はれてゐる雨の休日(素蘭) (5月9日 00時28分) 1925 > うつし世の聳ゆるものの朧たりめぐりくるらし春をかぞへむ(重陽) (5月9日 07時40分) 1926 > うつし世の哀しみすべて翠黛の山に預けて大原の里(登美子) (5月9日 23時26分) 1927 > うつし世の哀しみ己(おの)がうちなれば透きたる玻璃の色を愛でたる(素蘭) (5月10日 00時49分) 1928 > ゆく春のアンテナわたる朝なさな鳴くうぐいすの哀しくもあり(重陽) (5月10日 05時22分) 1929 > 鶯は俳句短歌は四十雀面白かりし投稿の歌(しゅう) (5月10日 09時09分) 1930 > 山鳩は胸で鳴くらしほうほうとひと声ごとに胸ふくらます(たまこ) (5月10日 16時11分) 1931 > 七色に光りて弾む鳩の胸いかなる夢か詰めて膨らむ(堂島屋) (5月10日 20時59分) 1932 > 縁側から空へ飛びたちその先の途切るる夢を何回も見き(たまこ) (5月10日 21時29分) 1933 > 空色の種子を集めてゆるやかに丘の青さと溶け合いている(萌) (5月11日 00時02分) 1934 > 若草の丘にのぼりて見晴るかす海と空との溶けあふところ(素蘭) (5月11日 00時44分) 1935 > 天窓ゆさす月光と玻璃に盛るマルメロの黄の溶けあふやうな(たまこ) (5月11日 10時19分) 1936 > 春風に淡紅色のアンランジュ月に香りて熟しゆくなり(重陽) (5月11日 11時31分) 1937 > 月光の照らす横顔つくづくと惑乱きざす春の宵かな(堂島屋) (5月11日 12時47分) 1938 > 新参のホームレスなるか横顔の鼻梁高きが心惑はす(素蘭) (5月11日 20時33分) 1939 > 荒野ゆく惑ひの王よ欲したのはたったひとつの愛だったのに(登美子) (5月11日 21時13分) 1940 > こののちも愛にみたされてゐるだろう爪に小さな星も生(あ)れたり(たまこ) (5月12日 11時59分) 1941 > オリオンの闇に星生れ蝋梅の花は大気に香を放つなり(羊羹) (5月12日 23時46分) 1942 > 生(あ)れかはる星は宇宙の真闇より幾億年後の便り届けむ(素蘭) (5月13日 00時10分) 1943 > 立錐にひしめく星に無限をば思ひ明かせし青春ありき(重陽) (5月13日 04時55分) 1944 > 果てもなき宇宙に生れつぐ星たちの光ほのかに真闇を満たす(登美子) (5月13日 06時14分) 1945 > 遥かなる大爆裂の余響なほ生きとし生けるものぬちにあり(堂島屋) (5月13日 17時00分) 1946 > 開闢の初めにありとふビッグバン 神を信じぬきみ説きたまふ(素蘭) (5月14日 00時09分) 1947 > ビッグバンもすなはち謎なり人智には計れぬものがたしかにあれども(登美子) (5月14日 07時54分) 1948 > 藝術は爆発なるやポップコーン鍋に蓋あり吾に身体あり(羊羹) (5月14日 10時40分) 1949 > 藝術は水でありしとこんこんと身内を巡る水音を聞く(しゅう) (5月14日 15時18分) 1950 > 一本のわれは水管かき氷のレモンが喉より身内へ下る(たまこ) (5月14日 16時43分) 1951 > 炎天のアイスクリンの幟より龍馬仰ぎし桂濱かな(堂島屋) (5月14日 17時46分) 1952 > 外洋のうねり寄せくる桂濱像となりても南溟を見む(素蘭) (5月14日 23時27分) 1953 > 新しき道を示して消えゆきしをのこは今も南溟見つむ(登美子) (5月15日 06時13分) 1954 > 「自我の詩」をかかげし男(を)の子鉄幹のやがて失速めきゆくあはれ(たまこ) (5月15日 18時36分) 1955 > 自我を保ちゆくことのまたむつかしき街かどの誘惑多き五月に(萌) (5月15日 23時53分) 1956 > 星の詩思えば揺れるそこここに星のぶらんこ銀河公園(萌) (5月15日 23時54分) 1957 > そのかみの音楽機関車展示され銀河公園綿虫の群れ(萌) (5月15日 23時56分) 1958 > 太陽電池負へるかささぎ光年の橋こそ渡せ乳いろの河(堂島屋) (5月16日 12時24分) 1959 > ミルキーウエイの煙る夜なり本棚の「よだかの星」を抜きだして読む(たまこ) (5月16日 22時28分) 1960 > 隣室の物音に起き覗き見る 熊が林檎を食べし途中と(萌) むかし話ではなく、新聞のニュースにあった実話です。 (5月16日 23時29分) 1961 > やすらげば青き林檎の香りして水無月に向くカフェの窓ぎわ(萌) (5月16日 23時31分) 1962 > 青林檎さびしき人のこころもて置かれし部屋のかをりすがしく(素蘭) (5月17日 00時50分) 1963 > 花みかん香ればおもふふるさとの真闇の底に覚めゐたる夜を(登美子) (5月17日 06時13分) 1964 > ゆるやかに日田彦線を走らせて風光る野がきみのふるさと(たまこ) (5月17日 18時04分) 1965 > 閉園となりて久しき幼稚園 妻の遊びしプールひび割れ(堂島屋) (5月17日 18時07分) 1966 > 閉館となりて久しきシアターに通ひつめたる日々なつかしき(素蘭) (5月17日 20時12分) 1967 > 初めて観し映画は「ピノキオ」若き父に幼きわれは肩車され(たまこ) (5月17日 21時19分) 1968 > 歯車に五月の日ざしあざやかに当たれば青き工員服よ(萌) (5月17日 23時44分) 1969 > 若葉風吹き渡るらんまほろばの大和にまだ見ぬ友われを待つ(登美子) (5月18日 06時47分) 1970 > 春はまた巡つてくるしそよ風を感じる力ものこつてゐるし(たまこ) (5月18日 08時58分) 1971 > むらさきの衣の裾をひくように花鉄線はそよ風の中(重陽) (5月18日 14時36分) 1972 > くれまちす・あやめ・おだまき・あぢさゐのむらさき匂ふはつ夏の苑(素蘭) (5月19日 01時05分) 1973 > 朝日影もろ手に包むかたちして芍薬咲けりその白を愛づ(登美子) (5月19日 16時31分) 1974 > ひっそりと葉かげに白き柚子の花しかと香りて秋を凌げり(重陽) (5月19日 18時14分) 1975 > 白薔薇夕くれなゐに染まりつつ吐息のごとく花を散らせり(素蘭) (5月19日 18時39分) 1976 > カーテンを揺らす吐息のやうな風窓辺にねこがとろとろ眠り(たまこ) (5月20日 06時16分) 1977 > こがねづく麦の穂揺らし風わたる初夏の空スピカ麗し(素蘭) (5月20日 22時19分) 1978 > 乙女座の星のひとつになるための訓練をするひと世をかけて(萌) (5月21日 00時04分) 1979 > 禅刹の門をゆきかふ作務の蟻来む世に何の身とやなるべき(堂島屋) (5月21日 12時19分) 1980 > 六道を見しとふ女院ゆかりなる大原の里に何思ふべし(素蘭) (5月22日 00時11分) 1981 > その眼には時空超えたる闇映し猫しなやかに地に下り立てり(登美子) (5月22日 20時03分) 1981 > 来む世には何になりたい家猫か天窓をよぎる鳥を見あげて(たまこ) (5月22日 17時02分) 1983 > 配達の合い間に停めしクロネコのトラックにもぐり込みたる子猫(萌) (5月22日 23時50分) 1984 > しなやかに地に下りたちぬ猫族はネットに購ふ本携えて(素蘭) (5月23日 00時24分) 1985 > いぬねこを好きになれぬはトラウマか玩具ごときも吾を避けゆく(重陽) (5月23日 07時41分) 1986 > あれは五月 ハチ公広場で待ち合はせサンテグジュペリ語り合ひにき(たまこ) (5月23日 19時07分) 1987 > 窓の外の緑の深さに慰めを感じていたり梅雨の走りに(萌) (5月23日 23時56分) 1988 > 褐色のサハラ砂漠に咲ける薔薇 砂漠の薔薇に心慰む(素蘭) (5月24日 00時29分) 1989 > きみとわれの遠させつなしこの夜も薔薇星雲が空に浮かんで(たまこ) (5月24日 12時37分) 1990 > 星を欲る艦長がゐて赤道に緊急浮上せしノーチラス(堂島屋) (5月24日 18時06分) 1991 > またひとり冒険家死すかの人もジュール・ヴェルヌを読みたる世代(素蘭) (5月24日 23時27分) 1992 > 泣きながら幼が走る買物に出た母追って小さな冒険(登美子) (5月25日 06時44分) 1993 > 風寒き日の暮れかたの留守番のわれ飼ひ犬を抱きてをりぬ(堂島屋) (5月25日 11時42分) 1994 > 暮れかたの梅雨をきざせし急坂を何買ふと無くコンビニへゆく(重陽) (5月25日 15時52分) 1995 > ぬばたまの夜をあかあか灯しつつコンビニは今し空へ発つ船(たまこ) (5月25日 18時11分) 1996 > ぬばたまの夜をあかあかと電脳の海に溺るる漂流者あり(素蘭) (5月25日 22時09分) 1997 > 桐の花の匂ひ流るるかはたれは流離人になりたい心(たまこ) (5月26日 13時11分) 1998 > 高みより梧桐の淡き花の雲ここは異国ぞ北京郊外(重陽) (5月26日 16時08分) 1999 > ときに異国のようなときめき感じたる表参道のオープンカフェ(萌) (5月26日 19時45分) 2000 > つかの間のエトランゼなり帆船の行き交ふ海に思ひ馳せれば(素蘭) (5月27日 00時47分) |