2701 > まみるるはなにゆゑさくるすべもなきくれなゐの海わたくしをつつむ(素蘭) (1月3日 00時24分) 2702 > 紅の鶏冠に見入る絵師ひとり 人恋知らずは淋しからずや(ギオ) (1月3日 20時15分) 2703 > その絵師に惚れ込むアメリカ人のゐてああ瞠目の動植綵絵(どうしょくさいえ)(しゅう) (1月3日 22時42分) 2704 > 若冲の翼そびらに生ほすがに太鼓打ちてむ鼓動はやまず(素蘭) (1月4日 00時51分) 2705 > 暁闇の神の社の真清水は大地の息吹のごとく鼓動す(登美子) (1月4日 15時51分) 2706 > 伊吹山荒ぶる神は白き猪となりて猛りぬ雪降りやまぬ(素蘭) (1月5日 00時46分) 2707 > 漂泊の神はいづこに窶すらむ 風雪に散る徒花なるか(ギオ) (1月5日 01時11分) 2708 > 初富士の白虎のごとき存生に天動くやに思ひたりけり(重陽) (1月5日 05時49分) 2709 > 志摩の果て安乗の沖の冬潮の天に寄り添ふまで深きあを(登美子) (1月5日 16時22分) 2710 > いまだ見ぬ神を思へり群青の宙に皓なす鶴の渡りに(素蘭) (1月6日 00時36分) 2711 > 音もなく移る星辰願はくはUFOなどのあらはれよかし(登美子) (1月6日 23時21分) 2712 > 隈取りのシスあらはるる宇宙戦黒沢映画の栄華しのばゆ(素蘭) (1月7日 23時59分) 2713 > 少年はスターウォーズを夢みるもうつつの戦に子らは殺さる(ギオ) (1月8日 01時50分) 2714 > うなゐ髪揺らし駆け来るをさなごの昼寝の夢にも影ささずあれ(登美子) (1月8日 19時00分) 2715 > をさな子が夢に戦ふ怪獣は父たる我と知れば悲しも(ギオ) (1月9日 00時17分) 2716 > 南洋に怪獣あらはれやすしとふ猛獣ならば身ぬちにゐるが(素蘭) (1月9日 01時03分) 2717 > わがうちに住まふ小鬼の御しがたく時にたはぶれにくきわざなす(登美子) (1月9日 19時58分) 2718 > 泣く鬼も笑ふ鬼も住む鬼ヶ島 攻めたき敵ゆゑ鬼とやいはん(ギオ) (1月10日 00時00分) 2719 > 託言おほき身を赦さざる赦文鬼界ヶ島に僧都果てにき(素蘭) (1月10日 00時35分) 2720 > あの旅を思ひてみれは夏の日のモンサンミッシェル干潟にありき(重陽) (1月10日 08時33分) 2721 > ミカエルの城のめぐりのあやにしき砂地に行きてたれかは帰らぬ(素蘭) (1月11日 01時35分) 2722 > 砂に描くお城は崩れてしまうこと幼いころから知っていたけど(登美子) (1月11日 06時26分) 2723 > 砂糖菓子のこはるる刹那はらほろと零るる夢をたれか見ざりき(素蘭) (1月11日 23時14分) 2724 > 悲しみの器流れて砂に帰す 父と子の旅いつかは果てむ(ギオ) (1月12日 01時42分) 2725 > 悦びも悲しいときも流れ逝くたれにも同じ時の移ろひ(しゅう) (1月12日 16時41分) 2726 > 〈喜びも悲しみも幾歳月〉をふりほだしとはきづなならむか(素蘭) (1月12日 23時20分) 2727 > 喜びの時は疾く過ぐつかの間に憂きこと時は沼に澱めり(重陽) (1月13日 05時39分) 2728 > 開発の進むふるさと一角に古き小さき沼は残れり(登美子) (1月14日 08時36分) 2729 > ふるさとは旧る里にして経る里か思へば幾地めぐり来ぬらむ(素蘭) (1月14日 22時22分) 2730 > ふるさとは帰るに遠く父なきも母いますゆゑふるさと恋しき(ギオ) (1月15日 01時10分) 2731 > いつにても二千歩ほどを歩みゆく絵島を指呼の浜や愛しき(重陽) (1月15日 05時31分) 2732 > 山靴の一歩一歩は確実にわれを高みへ導いてゆく(登美子) (1月15日 20時06分) 2733 > 美しき富士の体もいつの日かマグマに爛れて朽ち果つるとは(ギオ) (1月16日 00時23分) 2734 > ポンペイのかの一日を思へ繁栄のつひえるときは瞬時にやあらぬ(素蘭) (1月16日 01時03分) 2735 > まほろばのやまとの国に宮柱太しく立てし宮跡ぞこれ(登美子) (1月16日 16時30分) 2736 > 森ふかき国のまほらに愁ひつつかくれんぼの鬼うたとたはむる(素蘭) (1月17日 00時54分) 2737 > 森ふかく苦悶にぬたうつケイロンよ 不死とは永久の苦痛の謂ぞ(ギオ) (1月17日 01時54分) 2738 > 不死願ふ王あり不死の罰を得し男あり死は救ひか虚無か(登美子) (1月17日 20時45分) 2739 > 倦怠のなかですべてが始まると夕陽見つらむひとのありしか(素蘭) (1月18日 00時58分) 2740 > 西山の頂に立つ鉄塔が日の入るときにあきらかに見ゆ(登美子) (1月18日 23時27分) 2741 > とほきよりまよひ来にけるひとひらの雪くちづけて水に還さむ(素蘭) (1月19日 00時13分) 2742 > 青年はめざすものなく雪の降る温泉宿に骨ひゞかする(ギオ) (1月19日 00時37分) 2743 > 半島の東の稜のV字から冬日一閃なべて始まる(重陽) (1月19日 10時26分) 2744 > うす桃に明るむ雪に足跡をひとつらとどめ去りし人はも(堂島屋) (1月20日 12時41分) 2745 > さりげなく歴史の跡を片隅に記して京の露地に雪積む(登美子) (1月20日 22時26分) 2746 > いくたびも雪の深さを尋ねける立つことかたきひとの習ひに(素蘭) (1月20日 23時26分) 2747 > 河口から遠く離れし石狩の厳しき冬に雪晴をゆく(重陽) (1月21日 06時30分) 2748 > 厳冬のマッキンレーの岩稜に大きく手を振り冒険家は消ゆ(登美子) (1月21日 21時50分) 2749 > 太陽に向かふて墜ちしイカロスの父の嘆きを知るや冒険者(ギオ) (1月22日 02時25分) 2750 > 二十億光年めぐる法則としてニュートンの林檎落つるや(素蘭) (1月22日 19時37分) 2751 > 九十年の人生語らず信濃なる伯母は林檎の実るころ逝きぬ(登美子) (1月22日 23時16分) 2752 > 入院を重ね萎えゆく老妻をいま助けなと卆寿の父は(重陽) (1月23日 05時16分) 2753 > 車椅子の膝に毛布を掛けやりて語らひながら行く老夫婦(登美子) (1月23日 23時17分) 2754 > 日脚のぶ電車に語りまどろみて寄り添ふ老いを安けくも見つ(素蘭) (1月26日 01時10分) 2755 > 雪雲の真っ正面から昇る日のあかね色増す春近みかも(登美子) (1月26日 06時34分) 2756 > あかねさす紫草の生ふといふ武蔵野あはに雪や降りける(素蘭) (1月27日 00時39分) 2757 > 冬至よりひと月余り過ぎしいま日の出の位置は北に目映き(重陽) (1月27日 05時19分) 2758 > 北国に異才あらはれ胸底の雪の炎を燃やしをはんぬ(登美子) (1月27日 16時15分) 2759 > 永訣のいろとふふみし白雪は蒼鉛色の天のmannaとぞ(堂島屋) (1月27日 19時30分) 2760 > みちのくの七つ森とやしらじらと雪月ありぬ汽車は旋りぬ(素蘭) (1月28日 00時46分) 2761 > 夜行列車の振動に身をゆだねをり明けなば君が住む町を見む(登美子) (1月28日 20時02分) 2762 > くらき玻璃にしづもれるものひとりみて自由軌道をかける汽車はも(素蘭) (1月29日 00時46分) 2763 > 夕焼けを追ふやうにゆく飛行機は冬空をゆく光る物体(重陽) (1月29日 06時47分) 2764 > わが身よりあくがれいづる魂あらば目覚めしむべし虚空(みそら)の風花(登美子) (1月29日 19時52分) 2765 > きさらぎの望月の花たが願ふけふ望月のすみすみてゆく(素蘭) (1月30日 01時09分) 2766 > 北風に抗ひて飛ぶ冬の蝶花咲く春を待たで果てぬる(登美子) (1月30日 21時52分) 2767 > 凍蝶の翅ゆるやかに上下して凍れる時間の砕くる 微音(ギオ) (1月31日 00時30分) 2768 > おのが夢たたみて眠る冬の蝶翅ふるはするはつかなる音(素蘭) (1月31日 00時52分) 2769 > 里山の落葉かそけく踏みゆきてひとすじ細き流れに出会ふ(登美子) (1月31日 18時38分) 2770 > 時としてこの詩のようにさし示すこころにひそむ何かに出会う(重陽) (1月31日 21時22分) 2771 > ゆくりなく悲しきこころ知りしとき添ひにき歌を忘れやはする(素蘭) (2月1日 00時24分) 2772 > 悲しびはたとへば三月鴨池の鴨の渡りぞ また常の朝(ギオ) (2月1日 01時44分) 2773 > 哀しみはたとへば樹液ねつとりとまとはりついて透きとほるもの(素蘭) (2月1日 18時56分) 2774 > コルク質すべて削がれし大幹はまばゆきまでに白く光りぬ(重陽) (2月2日 05時30分) 2775 > とりどりの象を択りて雲流れまばゆきまでのきさらぎの空(素蘭) (2月3日 00時55分) 2776 > たゆみなき雲のうつろひそれよりも万華鏡なすわが心かな(登美子) (2月3日 06時08分) 2777 > 紅梅のうつろふさまを背にして今目覚めんと白き梅が枝(重陽) (2月3日 06時57分) 2778 > 伝説は濃きくれなゐのかたちして崑崙黒とふ椿はありぬ(素蘭) (2月4日 18時38分) 2779 > 伝説の大陸いづこの海底に眠るや人智の挑戦待ちて(登美子) (2月4日 23時10分) 2780 > 地球とふ宇宙のオアシスありけりと星の旅人伝へて語れ(ギオ) (2月5日 00時12分) 2781 > タトゥインとふ砂の惑星辺境ははぐれものゆゑオアシスならむ(素蘭) (2月5日 01時29分) 2782 > わが園にひととき憩へ凍蝶の羽を伸ぶべき春は来にけり(登美子) (2月5日 16時49分) 2783 > メドゥーサの髪のごとくに金縷梅の花ねぢひろごりて春や来つらん(ギオ) (2月6日 00時20分) 2784 > なにげなしまろくなりける空の色重きコートを脱ぎにけるかも(素蘭) (2月6日 00時23分) 2785 > 紅梅の色のさめゆく理に朝な朝なの時を惜しめり(重陽) (2月6日 07時32分) 2786 > セピア色の写真一葉忍ばせぬ会はで別れしひとのかたみに(登美子) (2月6日 20時27分) 2787 > セピア色水色薔薇色思ひ出をたとふる色はさまざまなれど(素蘭) (2月7日 00時04分) 2788 > 日溜りでいかでか鳥の昵むるは紅いならぬまだき梅が枝(重陽) (2月7日 08時16分) 2789 > 恒河沙の星のひとつぶ身ぬちより紅蓮の炎噴きて砕けぬ(登美子) (2月7日 20時13分) 2790 > 手にとれば死にがほ美し落椿 花の形で腐ゆるぞあはれ(ギオ) (2月7日 22時35分) 2791 > 海石榴市(つばいち)の八十の衢のかしましく水さすものぞ歌垣あはれ(素蘭) (2月7日 23時14分) 2792 > たらちねの母が呼ぶ名は秘め置きて歌垣の輪にたちまぎれをり(登美子) (2月9日 06時27分) 2793 > たらちねとたらちめたらちをたらればの小言おほしき昔しのばゆ(素蘭) (2月10日 01時16分) 2794 > 平安の都といふも厳冬は民草凍れり 母こそ堪へめ(ギオ) (2月10日 02時07分) 2795 > ぬるむ日の二三日ありて冴え返りまた冴え返りつつ春ならむ(重陽) (2月11日 06時10分) 2796 > 果てもなき空の青鈍過飽和を告ぐるや春の霙降りける(素蘭) (2月11日 13時37分) 2797 > メビウスの帯幾度も行き戻り青春といふ霧のただなか(登美子) (2月12日 16時40分) 2798 > クラインの壺のごとかる日常のえうなきものとたはむれしころ(素蘭) (2月13日 01時05分) 2799 > 春なれや シュレディンガーの猫たちは量子論的恋をやせむ(ギオ) (2月13日 01時49分) 2800 > 春の闇狂ほしければ金色のひとみひたひた恋猫奔る(登美子) (2月13日 20時18分) |