桃李歌壇  目次

木枯らし

連作和歌 百韻

3601 > 右からの木枯らし頬にけやき道おなじ記憶をどこかにさがす 
(蘇生)
(127 0453)

3602 > 溢るるは杉の香りと笑顔哉ツリー売り並ぶ極月の街
(ぽぽな)
(127 0610)

3603 > 思ひ出には未だできなくて電飾の夜の大通りを目を伏せてゆく
(たまこ)
(127 0753)

3604 > 電飾の煌めきにみる虚飾かな覚めた心にときめきの無し 
(素人)
(127 1136)

3605 > 絵に描ける餅こそ飢を満たすらめ浅き夢みし水に醒むれど  
(丹仙)
(127 1253)

3606 > 現世の手かせ足かせ逃れたし夢の世界に束の間遊ぶ 
(素人) 
(127 1613)

3607 > 「夢屋」といふ駄菓子や玩具を売る店の引き戸に閉店を告げる張り紙
(たまこ)
(127 2203)

3608 > 閉店の二文字にこもる悲哀かな木枯らし吹きて鎧戸叩く 
(素人)
(127 2238)

3609 > はんなりと弥勒菩薩の頬笑みはこころの扉開きたまひぬ 
(ぽぽな)
(128 0205)

3610 > 冬の寺半眼微笑の菩薩像気負いおのずと消えゆくを知る 
(素人)
(128 1134)

3611 > 西国の満願寺へとあまたひと運びし鉄路錆びにし鉄路 
(素蘭)
(128 1509)

3612 > 廃線の錆びつくままに放置さる鉄の栄華を謳歌せし街 
(素人)
(129 0004)

3613 > 雪月の街の灯遥か月天心独り舞台をすすみゆくなり
(ぽぽな)
(129 0216)

3614 > 昭和史に欠かせぬページ雪の日の戒厳令はいかなるものぞ
(茉莉花)
(129 1206)

3615 > たらればは歴史に無しと思えどもあの雪の日に戻りてみたし 
(素人)
(129 1306)

3616 > 洞窟の獅子危めたる益荒男の矢は失せにけりこの雪の夜  
(丹仙)
(129 1423)

3617 > ことごとく繁りていたる葉をぬぎて凛々として寒風に立つ 
(蘇生)
(129 1948)

3618 > 洞窟に打ち寄せ砕ける荒波を寒風さらにあおりて飛ばす 
(素人)
(129 2148)

3619 > 荒海のごと乱れゐる吾が心君に再会したる運命ぞ
(冬扇)
(129 2215)

3620 > シェイプアップお肌の手入れを我に課し同窓会まで後一か月
(たまこ)
(129 2246)

3621 > 同窓の絆は強し空白のたちまち消えて思い出の渦 
(素人)
(129 2304)

3622 > 類は友となりたる子らに思ほえず同窓の母三人(みたり)まみえり 
(素蘭)
(1210 0022)

3623 > 同窓の同郷なりし何がしと不況の故のセールス多き 
(蘇生)
(1210 0606)

3624 > 賀状など出せるはずなき目の奥に君あらわれて語り始めん
(ぽぽな)
(1210 0717)

3625 > ふるさとの高校卒業五十年記念をやると言いし友逝く 
(蘇生)
(1210 0755)

3626 > 恋ひ初めし少年の日の懐かしく消えぬおもかげ古里の花
(冬扇)
(1210 0828)

3627 > 面影は若き日のまま奥深く会うか会わぬか迷いのありて 
(素人)
(1210 0848)

3628 > 甥の顔つくづく見れば誰やらに似てをるぞそは吾が田舎顔
(冬扇)
(1210 0935)

3629 > 「田舎家」に集う輩同郷の忘年会に訛り懐かし 
(素人)
(1210 1238)

3630 > 初雪が屋根の個性を白くして冬の化粧やわが街の顔  
(蘇生)
(1210 1238)

3631 > 薄化粧都会の雪は淡く消ゆ一時見たる夢の儚さ 
(素人)
(1210 1246)

3632 > 隧道を抜けて着きたる湯の町に吾を待ちをる月見草かな
(冬扇)
(1210 1337)

3633 > 山峡の温泉宿の冬桜雪のやうなるその花の色
(たまこ)
(1210 1836)

3634 > 小雪まふ小谷(やつ)の道はくねりゐてつまるあはひはいよよ冬色 
(蘇生)
(1210 1917)

3635 > 風花をたまづさにかへおくらばや冬ざれにけるきみの街へと 
(素蘭)
(1211 0044)

3636 > 淡き日に瓦模様が浮き出でて積もりし屋根の雪が解けゆく 
(蘇生)
(1211 0532)

3637 > をみなごは淡き想ひにほほ染めてうつむく髪に雪の降りつむ
(ぽぽな) (1211 0855)

3638 > 雪降れば雪に思ほゆ花咲けば花に思ほゆ君が面影
(冬扇)
(1211 0858)

3639 > 淡雪の残る日陰に悴みし冬の蝶あり息絶え絶えに 
(素人)
(1211 0933)

3640 > おぼろなる遠山にまで連なりて春の野に花咲き乱れたる
(冬扇)
(1211 0956)

3641 > 年を祝ぐひととせを経し水茎に故人を偲びつ春遠からじ  
(蘇生)
(1211 1023)

3642 > 近づけば枯れ木の枝のそれぞれに芽をはぐくむや春遠からじ
(ぽぽな)
(1211 1044)

3643 > 裸木はしっかと次なる芽を宿す寒きに耐えてひたすら春待つ 
(素人)
(1211 1155)

3644 > 枝先に少し残りし初雪は朝の光にプリズムとなる  
(蘇生)
(1211 1747)

3645 > 柊の葉先に光る露の玉 許されるのはむしろ哀しく
(たまこ)
(1211 2033)

3646 > しろがねの飛騨の雪嶺まぶしかり風花を追う赤き手袋
(やんま)
(1211 2043)

3647 > 音もなき白き真霜の平らかにしばれる朝に故郷を想う  
(蘇生)
(1211 2121)

3648 > 凍てつきし朝の道をば犬とゆく暁の明星白く輝く 
(素人)
(1211 2241)

3649 > 星はスバル六連星(むつらぼし)にて浪漫の燭かかげたる明星その後 
(素蘭)
(1212 0036)

3650 > 寒天のあれがスバルと指し示す北の都の老ドライバー  
(蘇生)
(1212 0529)

3651 > 老ひてなほ北の荒海漁に出る闇に北斗の寒々として 
(素人)
(1212 0844)

3652 > 二筋の轍をなぞり雪道をくだり行く背が息をおきゆく 
(蘇生)
(1212 0919)

3653 > 冬薔薇(そうび)恋に疲れた顔をして雪の慈愛を一途に受けぬ
(ぽぽな)
(1212 1012)

3654 > 嵯峨野なる念仏寺の帰り花けふ衣々の別れ惜しみて
(冬扇)
(1212 1106)

3655 > 化野も雪に暮るるや細々と灯る蝋燭炎の揺らぐ 
(素人)
(1212 1128)

3656 > 恋すればもの皆すべて輝けり春の野に咲く花の色にも
(冬扇)
(1212 1138)

3657 > 春を待つ想い人には劣らねどこの年の瀬をいかに越えむや 
(素人)
(1212 1219)

3658 > らふ梅もほころび初めぬ来る春にすべてたくして北風の街
(たまこ)
(1212 2102)

3659 > 北風に醒めるたるこころ保ちつついつもの街に輪郭はあり
(海斗)
(1212 2122)

3660 > 退きてのち初の師走を迎へなむゆるりと時の過ぎゆくを知る 
(蘇生)
(1212 2235)

3661 > 替え難きことに想えて羨ましゆるりと時を過ごす贅沢 
(素人)
(1212 2310)

3662 > 贅沢は うだる座敷で思ひ切り一人で氷菓喰うてをるとき
(冬扇)
(1212 2322)

3663 > 北国はだるまストーブ赤々と焚いて氷菓を食む楽しみも 
(素人)
(1212 2331)

3664 > 贅沢は素敵と返す落首ありかかる洒脱をほのぼの思ゆ 
(素蘭)
(1213 0113)

3665 > 早暁に詠まんとすれど心なく歌は東雲見ゆる後なり 
(蘇生)
(1213 0629)

3666 > 君の朝は吾の夜なりその朝日大陸(ここ)に来るまでさてひと眠り
(ぽぽな)
(1213 0753)

3667 > 霧深き金門橋のたもとにて故国の君を偲び泣く吾
(冬扇)
(1213 0828)

3668 > 異国の地企業戦士の苦労する警醒祖国に届き居れども 
(素人)
(1213 0845)

3669 > 年明けに再びアジアの開拓に夫婦茶碗の老いたる友が 
(蘇生)
(1213 0905)

3670 > なにごとも穏やかなりし来し方を昔語りの猪口を並べて
(冬扇)
(1213 0915)

3671 > ほそ道を学ばんとしてひも解けば易く芭蕉は尽くせぬを知る 
(蘇生)
(1213 0921)

3672 > 漂泊の思ひのままに旅の宿その土地々々の人と語りて
(冬扇)
(1213 0946)

3673 > 挟まれし和紙の栞もさび色の祖母の遺せし『奥の細道』
(たまこ)
(1213 1005)

3674 > 読経(どっきょう)の声も悲しきみちのくの栄華の都しづかに暮れし
(冬扇)
(1213 1014)

3675 > つれづれに旅に何処と思えども思うまにまに時は過ぎゆく 
(蘇生)
(1213 1035)

3676 > 金色の栄華の館埋もれリ雪燈篭の灯かり仄かに 
(素人)
(1213 1036)

3677 > 細道をなぞる旅なり鳴子へと深き雪をばかき分けてゆく 
(素人)
(1213 1041)

3678 > はろばろと来つるものかな湯煙の白きに憩ふ旅の心に
(冬扇)
(1213 1117)

3679 > ひらひらと舞ひ降り積もる雪のやうに歌もひとひらまたひとひらと 
(ぽぽな)
(1213 1125)

3680 > なぜに皆 かほどに雪を好めるや物のあはれは此()に限らざる
(冬扇)
(1213 1134)

3681 > ひとひらの葉もなき梅の枝先にすずめ群れをり日に当たりをり
(蘇生)
(1213 1140)

3682 > 気忙しき師走なぐさめ冬至梅仄かな香りに暫し安らぐ 
(素人)
(1213 1220)

3683 > 点になるほどの高みに舞う鳶を見上ぐるわれは師走に向かう
(蘇生)
(1213 1236)

3684 > 悠々と鳶輪を描く江ノ島の海穏やかに年の瀬間近 
(素人)
(1213 1250)

3685 > 鎌倉の古き都の木立には美男の仏見え隠れして
(冬扇)
(1213 1311)

3686 > 寒風に海ははるかに澄わたり波ははるかな伊豆大島へ 
(蘇生)
(1213 1316)

3687 > 黒潮の青深くしてうねりおり椿ほころぶ伊豆の大島 
(素人)
(1213 1335)

3688 > 冬の海の暗き碧さにさざなみのきららきららよ遥か島影
(海斗)
(1213 1512)

3689 > 冬ざれの島にクレーンが聳え立ち新たな塔を普請しをりて 
(蘇生)
(1213 1548)

3690 > 景観を損なう批判ものとせず利益追求欲の皮張る 
(素人)
(1213 1615)

3691 > 寒風に茶髪の鳶のエィ・オーと組みあがりゆく東京ミレナリオ 
(蘇生)
(1213 1635)

3692 > 電飾のまやかしの彩一時を委ねて酔うや聖しこの夜 
(素人)
(1213 1644)

3693 > 蘇りイエス歩まば食与へ働けと説く老婆へ笑ましむ
(海斗)
(1213 2034)

3694 > 来しかたの五百のうたを詠みつらねげに千日を笑むはやわが 
(蘇生)
(1213 2046)

3695 > 待降節ふけゆく夜に時満ちて君が詠み歌五百首となる 
(丹仙)
(1213 2101)

3696 > よそ行きの顔を作りしマンションに干せる蒲団は笑窪なるかな
(海斗)
(1213 2104)

3697 > マンションの窓辺の小さな水槽のどぜうもとろとろ冬眠に入る
(たまこ)
(1213 2225)

3698 > とろとろと繰り返し煮るボルシチの色も旨味も濃くなるを待つ 
(素人)
(1213 2312)

3699 > サモワールの出涸らしを飲み議論せるラスコーリニコフの暗き瞳よ
(海斗)
(1214 0013)

3700 > 若き日の熱き想いの懐かしき遥か遠くへ流れしわが身 
(素人)
(1214 0047)