桃李歌壇  目次

ただ一握の砂

連作和歌 百韻

3701 > 遙か釧路へ流離ののちの歌なればただ一握の砂のごとしも 
(素蘭)
(1214 0155)

3702 > 一握の砂にはあれどその想い小さき粒の一つ一つに
(素人)
(1214 0736)

3703 > ひらがなをおぼえて嬉し子供らは一字一字に肝を注ぎぬ
(ぽぽな)
(1214 0843)

3704 > 愛らしう遊具に遊ぶ子を見れば来しかた全てうべなはれける
(冬扇)
(1214 0956)

3705 > おとうさんとゆらぎて書ける鏡文字の濃き香ただよふ赤きクレヨン
(海斗)
(1214 1001)

3706 > 映し見る紅の色さへ切なくも恋しき君を迎へむ宵は
(冬扇)
(1214 1047)

3707 > 日曜は子らに誓った指切りも止むに止まれぬゴルフに変わる
(素人)
(1214 1347)

3708 > 契りたる約を違へし君なれどなほ恋しさのいや増さりける
(冬扇)
(1214 1627)

3709 > 立ち枯るる背高あわだち草の向かふには胸深々と夕焼けの空
(海斗)
(1214 1721)

3710 > カラカラと初氷塊を蹴りてゆく登校子らの高らかな声 
(蘇生)
(1214 1847)

3711 > 焼きあげしピザ切り分ける我の手に子らの六つのまなこが光る
(たまこ)
(1214 1945)

3712 > 食べ物の恨み恐ろし慎重に切り分く吾は判事のごとし 
(素人)
(1214 2149)

3713 > 恨めしと人は恐れし岩殿を恋ひしたひけり我が恋初めし
(海斗)
(1214 2249)

3714 > 師走にて今年最後の望月を待ち焦がれいるこころの走る
(ぽぽな)
(1215 0100)

3715 > 極まりの月はなかばに満ちゆかむ月に焦がるるこころ知らゆな 
(素蘭)
(1215 0142)

3716 > 酣の宴のなかばに吾()まからむ待つ君夜空も泣きやまぬゆえ
(ぽぽな)
(1215 0316)

3717 > 雨上がりの雲間より差す放射光 何度泣いても許してあげる
(たまこ)
(1215 0832)

3718 > 何故と分からぬながら泣き腫らす娘よ生の悲しさを泣け
(海斗)
(1215 0910)

3719 > きのふけふ師走にしかとめぐらせばよきことばかり思ふはやわが 
(蘇生)
(1215 0917)

3720 > 世の中は師走なりとてせはしなくあれど我が身はすることもなく
(冬扇)
(1215 1021)

3721 > 暦なる人の世の知恵区切りをばつけて人生意義深めんと 
(素人)
(1215 1256)

3722 > 生まれ来て巡り会うたる吾妹子のやさしき笑みの美しきかな
(冬扇)
(1215 1307)

3723 > 雪ふらば見つつ偲はな逢はざりし雲に隠るる生駒偲はな 
(素蘭)
(1215 1517)

3724 > みはるかす春野に咲ける花々に告げまほしきは吾が恋ひそめし
(冬扇)
(1215 1607)

3725 > 冬の旅恋の痛手を癒さんと野をさ迷えば風が背を押す 
(素人)
(1215 1718)

3726 > いづこへと云ふあてもなき冬の旅ただ辿り行く歌枕かな
(冬扇)
(1215 1733)

3727 > 歌枕めぐる旅して古の歌人の心想ふゆかしさ 
(素人)
(1215 1744)

3728 > 「咎無くて死す」との云ひを残したる人麻呂翁の伊呂波歌かな
(冬扇)
(1215 1814)

3729 > 大年にむかふ日かさねしどけなくおもふこと有りまた無くもあり 
(蘇生)
(1215 2024)

3730 > 年の暮れ大河ドラマの完結すいよよ気忙し悔い残すまじ 
(素人)
(1215 2110)

3731 > 五十年毎年聞きて見て来たる男女紅白歌の戦さよ
(冬扇)
(1215 2343)

3732 > 半世紀歌ひつがるる紅白の女王にとりのひばり在りし日 
(素蘭)
(1216 0032)

3733 > 風邪ひきて吾()は屋にしばし留まれど2002年は晦日へ進む
(ぽぽな)
(1216 0126)

3734 > 風邪気味にかまけて吾は所在無く師走は中の五の日を過ごす 
(蘇生)
(1216 0612)

3735 > 書きたくもなき相手にも賀状書くさう云ふ時季に早やなりにけり
(冬扇)
(1216 0837)

3736 > 年賀状功罪半ばのしきたりも時の流れに変化の兆し 
(素人)
(1216 0845)

3737 > 賀正てふ言葉の意味を知ったるは理(ことわり)知りし始めなりけり
(冬扇)
(1216 0931)

3738 > 冬晴れに歌の友らと駆りゆけり「年忘れには海賊料理!」
(たまこ)
(1216 1011)

3739 > 賀状先閲しをりたる名の中に黄泉へはふりし友ありにけり 
(蘇生)
(1216 1033)

3740 > 喪中とぞ女文字にて知らせある細君の名を初めて知りぬ
(冬扇)
(1216 1116)

3741 > 一枚の葉書にこもるその想い時には軽く時に重たし 
(素人)
(1216 1329)

3742 > 「私たち結婚しました。お近くへお出での節はお越しのほどを」
(冬扇)
(1216 1356)

3743 > 喜んで言祝ぎすべしカップルの前途に幸あれ節乗り越えて 
(素人)
(1216 1405)

3744 > 連れ添ひて共に歩みし三十年いまあらためて愛(いと)しと思ふ
(冬扇)
(1216 1552)

3745 > 宣えり偕老同穴その上に比翼の鳥と連理の枝と 
(素人)
(1216 1636)

3746 > 天空に日輪ありてその最中大鷹出で来影となりぬる
(やんま)
(1216 1656)

3747 > 君が文 はや杜絶えれば鶯の鳴く声さへも憂きものと聞く
(冬扇)
(1216 1656)

3748 > 鷹舞ひて鶯慄く営みは人間界の縮図にも似る 
(素人)
(1216 2157)

3749 > 縄張りを広く持たねば生きられぬ猛禽タカ目絶滅危惧種 
(素蘭)
(1217 0127)

3750 > 冬川にひようひようと一羽立つ鷺の眼鋭し魚影追ひつつ
(たまこ)
(1217 0708)

3751 > 幼子の手のポップコーン狙いつつ鋭く鳶は羽ばたきをりて 
(蘇生)
(1217 0819)

3752 > 盗りて来し白木瓜の花差し出せばわらべ心を解す君かな 
(丹仙)
(1217 0912)

3753 > 軋轢の解れゆくかな沈丁花香り鋭く心捉える 
(素人)
(1217 0929)

3754 > 母からの包みの紐を解いたときそこにノスタルジアがいたのだ
(ぽぽな)
(1217 1116)

3755 > 宅急便ふるさとからの贈り物父母元気郷愁いやます 
(素人)
(1217 1123)

3755 > 緑なき都にあればあぢきなく星見る宵は古里思ほゆ
(冬扇)
(1217 1128)

3757 > 明星の暁の空輝けり都を覆うしじまの一時 
(素人)
(1217 1219)

3758 > 霧深き武蔵野原にひとり居て哀しく聞ける虫時雨かな
(冬扇)
(1217 1407)

3759 > まぼろしの連合艦隊憩ひける猿島は嗚呼優しかりける
(海斗)
(1217 2235)

3760 > バルチック艦隊通過予想図に対馬はとほき神風の海 
(素蘭)
(1218 0109)

3761 > 艦砲に壊滅したる故郷はわがトラウマに折々の夢  
(蘇生)
(1218 0548)

3762 > 兵隊は命の焔はためかせ地平遥かに露西亜を見つむ
(ぽぽな)
(1218 0605)

3763 > 大君に召され戦ふ異郷にも月見草咲く夏の夕暮れ
(冬扇)
(1218 0944)

3764 > 戯れのファッションと言へど子供らに迷彩服を私は着せぬ
(たまこ)
(1218 1041)

3765 > 見識と評価すべきと思ひつつ戯れの妙捨て難きかな 
(素人)
(1218 1130)

3766 > 顧みれば誠に早き変化かな百四十年前は髷結ひをりし
(冬扇)
(1218 1144)

3767 > 瓜実の銀杏返しのをんなゐて漱石の恋今にせつなし 
(素蘭)
(1219 0112)

3768 > しんしんと積もるは淡き雪ならで消ゆるすべなき恋の塵なり
(ぽぽな)
(1219 0601)

3769 > 恋ひ初めし吾が想ひこそ積りける雪の深さの憂き夕まぐれ
(冬扇)
(1219 0836)

3770 > 降り止まぬ雪に暮れゆく城下町雪燈篭に灯を入れてゆく 
(素人)
(1219 0851)

3771 > 暮れかかる街道脇にそよ立ちて笠に隠れつ泣く枯尾花
(冬扇)
(1219 1602)

3772 > 蓑を着せ笠をかぶせて六地蔵村を守りてひっそりと立つ 
(素人)
(1219 2327)

3773 > 六地蔵一の地蔵はしづもれる大き公孫樹の傘借るやうに 
(素蘭)
(1220 0155)

3774 > 年の瀬に紅あざやかな六地蔵にぎわう街をいつものように 
(蘇生)
(1220 0542)

3775 > 異国にて子らが絵本の六地蔵「これはなあに?」と指さしている
(ぽぽな)
(1220 0658)

3776 > 古里の昔噺のなつかしく祖母の語りの今も聞こゆる
(冬扇)
(1220 0852)

3777 > 美しきかぐや姫様住むといふ月は寒かろ師走の空に
(ぽぽな)
(1220 1112)

3778 > 一寸法師浦島太郎かぐや姫これぞ日本の古きSF
(冬扇)
(1220 1120)

3779 > 穢れたる世なれど我を育みし翁をみなと 別れ惜しませ
(海斗)
(1220 2146)

3780 > かぐや姫いざ月の世へ帰りなむ育ての親より産みの親へと 
(素人)
(1220 2358)

3781 > 生みてすぐ行き別れたる命をばははそはの母いかに忘るる
(ぽぽな)
(1221 0135)

3782 > 親業といふ言葉あり業ならばなる程子育て苦痛なるべし 
(素蘭)
(1221 0154)

3783 > 子育ての娘のさまを見てをれば娘育てし頃の思ほゆ
(冬扇)
(1221 1059)

3784 > 慈しみ育み手塩にかけし娘の嫁ぐ日近く知らず目で追ふ 
(素人)
(1221 2055)

3785 > 出がけに必ず腹痛ありて友我を万年登校拒否児といひぬ 
(素蘭)
(1222 0055)

3786 > 臓腑(はらわた)のひだに染み入るたうたうとバッハのマタイ受難の嘆き
(ぽぽな)
(1222 0442)

3787 > 深き淵とよもし出づる苦しみの人の子知れり今も生くるを 
(丹仙)
(1222 1428)

3788 > 苦しみを背負って衆生を救わんとありがたき人西に生まれる 
(素人)
(1222 2021)

3789 > 星ひとつ樹上に飾りをへながらベツレヘムとは遠き国原 
(素蘭)
(1223 0053)

3790 > クリスマス祝うて除夜の鐘を聞き神社に詣で面白き哉
(冬扇)
(1223 0846)

3791 > クリスマス近づく夜の街の空光るクルスの飛行機のゆく
(ぽぽな)
(1223 1108)

3792 > モミ大樹飾り終えたる子らの顔待ち遠しきや聖しこの夜 
(素人)
(1223 1124)

3793 > 父親と知りたるになほ知らぬげに喜ぶ振りするけなげや幼
(冬扇)
(1223 1501)

3794 > 車窓から遠近に見ゆ点滅の聖樹に今日の幸せありて 
(蘇生)
(1223 1905)

3795 > マッチ売り少女の潜む気配して擦ってみるなりマッチの炎 
(素人)
(1223 2136)

3796 > 燐寸より手燭にうつす火(ほ)の色のうちにこもれるあをよりあかし 
(素蘭)
(1224 0139)

3797 > 蝋燭の炎たゆまず流れ立ち静寂といふ烈しさに酔ふ
(ぽぽな)
(1224 0828)

3798 > 蝋涙のこぼれ落つるをじっと見る聖しこの夜静かに更けて 
(素人)
(1224 0908)

3799 > 聖母子の愛の姿のピエタ像見る者全てこころ豊かに
(冬扇)
(1224 1025)

3800 > 井戸の底ふかく沈みし明星は聖母の乳の滴りを受く 
(丹仙)
(1224 1111)