桃李歌壇  目次

連歌宇宙

連作和歌 百首歌集

4101

連歌てふ宇宙広がり果てしなく闇と光に身をまかせゆく

ぽぽな

2月15日 08時47分

4102

天地の森羅万象こきまぜて自由狼藉統ぶる式目 

素蘭

2月16日 00時23分

4103

天地の春の百韻初折の裏にかかれるこぬか雨かな

2月17日 07時50分

4104

梅が枝にすだく鳥をり光りなか天地なべて爛漫予兆 

蘇生

2月17日 10時22分

4105

晴れにけり五羽の雀は一列に屋根に飛びつき春の空見る

海斗

2月17日 19時40分

4106

何故に五羽?五羽は三羽にあらざればシンクロの美技愛でたかるらむ 

素蘭

2月17日 23時03分

4107

薄皮の如き水着の乙女らのまことあてなる立ち姿かな

冬扇

2月18日 15時25分

4108

氷の山の日に輝くははつかなり見えざる九割なべてこの世は 

素蘭

2月19日 00時54分

4109

反戦のプラカードをば一夜にて橇に変へたり米国の雪

ぽぽな

2月19日 05時17分

4110

手作りの橇をかっては凍てる日を友とくらべし古きをおもう 

蘇生

2月19日 06時53分

4111

白銀にスキー・スノボー乱るればリフト待つにも流儀は乱る 

素蘭

2月20日 01時20分

4112

乱るるは毛糸の帽子脱ぎしとき寒さ恨めしヘアースタイル

ぽぽな

2月20日 06時43分

4113

子の母がTPOも何のその話続ける携帯電話  

蘇生

2月20日 08時46分

4114

娘より携帯電話借りたれどおろおろ探す公衆電話

冬扇

2月20日 13時34分

4115

テレフォンカード使はずじまひ携帯も持たず不足もなき我が暮し

2月20日 20時17分

4116

気が付けば携帯電源消えてをり基本料金超ゆることなく 

素蘭

2月20日 21時29分

4117

手話語る子らが向かひてメール打つ広がる世界安堵するかな 

李花

2月20日 23時12分

4118

垣間見る君の姿にいつよりか甘哀しくも胸の高鳴る

冬扇

2月21日 12時05分

4119

うき人のうしとうき身を宇治川のうき舟にうくうき世のうき名 

素蘭

2月22日 01時41分

4120

しづむ日をしづまる森の静岡の宇治にあらぬが茶柱の浮く

海斗

2月22日 21時28分

4121

旅ゆけば茶の香りとは駿河なる遊侠伝に出版秘話あり 

素蘭

2月23日 01時12分

4122

鶏の鳴き声上手き食客に助けられたる遊侠の祖(おや)

海斗

2月23日 07時04分

4123

賀茂御祖(かもみおや)糺の森の春未だし参道ゆけば土の音せり

蘇生

2月23日 11時00分

4124

霞みたる伏見の杜の女坂こぞの春には君と歩きし

冬扇

2月23日 17時07分

4125

ポケットから手を出してごらん伸ばしてごらん春風ふわりてのひらなでる

海斗

2月23日 20時42分

4126

春曙抄たはむれてゆく春風に吹かれ吹かれて道の幾筋 

素蘭

2月23日 23時59分

4127

雪融けの駐車場には水たまり夜風のほかに乱す者なし

ぽぽな

2月24日 11時25分

4128

ひと冬を恋に疲れしこの身にもうらうらと吹く春の風かな

冬扇

2月24日 11時31分

4129

チョコレートわたせぬままにうすみどりリボン幾度も結びなほして

千種

2月24日 17時21分

4130

わが宿のぎやまんの猫まみどりのりぼん結はへるけけしき首に 

素蘭

2月24日 23時47分

4131

タマと呼ぶ人もみい子と呼ぶ人もありて看板猫のかわゆさ 

千種

2月25日 22時14分

4132

たらちねの里なる寺に猫をりてチー子チー子と従弟は呼びき 

素蘭

2月26日 01時39分

4133

南風幽かに囁いたよ、かるいきびんなこねこなんびきいるか

ぽぽな

2月26日 03時54分

4134

猫をねこ犬をいぬとぞ名付けたる我が幼き日遠き思ひ出

冬扇

2月26日 05時40分

4135

異端なる螺旋文書庫おちゆかむ〈薔薇の名前〉のうつくしき闇 

素蘭

2月27日 00時57分

4136

蝋涙の垂るる火影に羊皮紙をのべて写本に励む夜すがら

千種

2月27日 10時03分

4137

枕辺に連歌をたるる書物をば重ね火影に夢をばみんと 

蘇生

2月27日 20時24分

4138

春の夜の燭の火影のほのぼのとひひな照らせり細き雨降る 

素蘭

2月28日 00時31分

4139

キャンドルの灯のみ頼りの湯船には桃源郷の香り漂ふ

ぽぽな

2月28日 07時35分

4140

白梅が花のみ白く逆光にかすかに香る二月尽く朝  

蘇生

2月28日 08時08分

4141

春の日といふには寒く冬の日といふには温くき如月去りぬ

ぽぽな

3月1日 01時19分

4142

つばくらめまだ来ぬ弥生ついたちに染分縞の蝶は舞ふらし 

素蘭

3月1日 01時47分

4143

飾られず寄り添う雛の眼差しに今年こそはと祭り仕度を 

李花

3月1日 15時32分

4144

らふたけて沢口靖子の女雛にぞ上方漫才聞くは楽しも 

素蘭

3月2日 16時36分

4145

春服の映りたしかむまそ鏡まだいけてるとひとりごちつつ

千種

3月2日 19時12分

4146

この位の春の寒さが程よきか旅の始めの熱き駅蕎麦

やんま

3月2日 20時02分

4147

帰省して懐かしきかな車掌さん三本線の駅長の顔 

李花

3月2日 21時11分

4148

白川郷子の呉れし旅子と行きぬ黙して夫は三尺後を

3月2日 21時59分

4149

早春の空に伸びゆく飛行雲どこへも行かぬわれも旅人

たまこ

3月3日 00時08分

4150

こころをばなににたとへむ旅人の夜空を駈くる汽車にゆきあひ 

素蘭

3月3日 01時19分

4151

旅立ちといふはかはらぬことなれど人それぞれのけふの旅立ち 

蘇生

3月3日 06時26分

4152

青雲の心に燃えて汽車に乗りし四十年前夜の旅立ち

冬扇

3月3日 10時21分

4153

恋猫の後姿に魅せられて桃の花舞う雨の旅立ち 

李花

3月3日 22時48分

4154

桃の花あらぬ庭にて咲きそむる桜よ桜雛に添はせむ 

素蘭

3月4日 00時07分

4155

春疾風梅の花びら舞い踊り土触れるまで小旅行かな 

李花

3月5日 00時34分

4155

名園に梅見る宵の霞にも猶いとほしき吾妹なるかな

冬扇

3月4日 10時23分

4156

風のなかの羽にこころをたとふればリゴレットよりもフォレスト・ガンプ 

素蘭

3月5日 01時38分

4157

雪空を上る魂(たま)あり片羽の折れたる鳥のごとく見送る

たまこ

3月5日 22時37分

4158

地を覆ふ ま白き霜の しんしんと更けゆく夜に亡きひとぞ想ふ

3月6日 21時54分

4159

在りし日の想いを胸に歩けども小さき石に躓き続けむ 

李花

3月6日 22時41分

4160

夢のなかの廃墟のほとり沈黙の森ひろごれり無名なるため 

素蘭

3月7日 00時51分

4161

春の日のただ徒然の夕まぐれ終りし恋の忘れ得ずして

冬扇

3月7日 09時38分

4162

終ひに来しわが現しきは満ちたれど後世に叶うや由なることをぞ 

蘇生

3月7日 10時01分

4163

われの今に重ねて『ひたくれなゐ』を読み今年の春を始めむとする

たまこ

3月7日 17時03分

4164

さびしほり夾みて読みし『ささめごと』桃李のみちに歌ぞつらねむ  

丹仙

3月7日 22時58分

4165

桃李ものいはざる故事にあづさゆみ春の夜すがらささめごとする 

素蘭

3月8日 01時27分

4166

風邪重し遠くラジオは繰り返す国は戦の準備できたと

ぽぽな

3月9日 02時46分

4167

正義といい聖戦という殺戮に我らすべなき日の迫りきて 

蘇生

3月9日 06時32分

4168

暴力はかくもうつくし百粒の葡萄に蟻に雨霰打つ 

素蘭

3月9日 23時49分

4169

生き延びて無為に過せる六十年帰らぬ命いとほしみつつ

冬扇

3月10日 09時45分

4170

戦場にピアニストゐる戦場は六十年の前の現実 

素蘭

3月10日 23時46分

4171

戦争を知らない子供親となり平和の意味を如何に教えむ 

李花

3月11日 01時17分

4172

失ひてつらつら思ふものなれば水と安全ただとふ神話 

素蘭

3月11日 22時00分

4173

過ぎてこそ見ゆることごと多かりき夕日の赤に雁見る如くに 

蘇生

3月12日 09時17分

4174

夕光のベールに街は包まれて匂ふやうだよ独りではない

たまこ

3月12日 17時42分

4175

とび梅の香をかぐように朧にてしかしいつでも君を見ている 

蘇生

3月12日 19時52分

4176

公園の入口にそびえる樫の木のやさしい視線のやうな木漏れ日

たまこ

3月13日 09時34分

4177

校庭の西の端なるポプラの木六年間の我を見居りし

冬扇

3月13日 17時31分

4178

西陽さすグランドにボール蹴る少年 未来の三浦・中田・高原

たまこ

3月14日 09時25分

4179

たそがれは春かはたれは夏よしとほのぼのかたる空ぞあるらむ 

素蘭

3月15日 02時09分

4180

歳々の同じからずや老木のなにを映すや木漏れ日の影 

蘇生

3月15日 08時09分

4181

柊の大樹伐られぬ絶えだえの挽歌オンブラマイフふと聞き 

千種

3月15日 18時48分

4182

見えるもの見えぬものありそれぞれに見えることごと己が業なる 

蘇生

3月15日 19時47分

4183

花鋏がないわと時間を巻き戻しさせてわたしの仕業と気づく

たまこ

3月15日 23時28分

4184

ウイルスは目には見えねど吾が巨体弥生四半も家に囲へり

ぽぽな

3月15日 23時31分

4185

四半世紀慈しみたるものあれどいつでも独りいつだつて独り 

素蘭

3月16日 00時44分

4186

一首独立させつつ前後と照らし合ふそのやうな歌そのやうな生

たまこ

3月16日 08時03分

4187

たまゆらのゆらゆりゆるゆれ誰が胸に言葉は異刃立つ断つ畳む 

素蘭

3月17日 00時47分

4188

からみあふ言葉のやうに水草のしげりて身動きできない金魚

たまこ

3月17日 11時59分

4189

北の果て千尋の海の海草に包まるらつこ波のまにまに

千種

3月17日 12時51分

4190

旅をせむ旅をせむとぞ思ふのみ浪の沙(いさご)を忘るるなかれ 

素蘭

3月18日 01時38分

4191

出社して退社するまで空も見ずこれはまずいぞ心が腐る

ぽぽな

3月18日 07時41分

4192

出社して退社するまで一枚の書き物もなき日のありにけり

冬扇

3月18日 09時57分

4193

歯車が勝手に動く如くにて言葉ばかりが虚ろに響く 

蘇生

3月18日 18時30分

4194

甘つたれのヨハネになれぬわたくしは鬼飼ひ馴らす数へ歌もて 

素蘭

3月19日 00時13分

4195

屋上は甘い匂いの午後三時三角クッキーユダヤの祭り

ぽぽな

3月19日 05時50分

4196

屋上は廃れたる園たんぽぽの白きを踏みて園丁は顕つ 

素蘭

3月20日 01時19分

4197

老い初めし妻と訪ひたる外国(とつくに)の摩天楼にぞ驚かれぬる

冬扇

3月20日 15時39分

4198

風にそよぐ街路樹の緑が映りをりやがて戦禍を受けむバグダッド

たまこ

3月20日 18時26分

4199

瓦礫の下のひとりひとりはたれかの子神戸震災イラク砲撃 

素蘭

3月21日 00時10分

4200

Grand Central Station(グラセン)の近くの本屋閉店す銃持つ兵士アヴェニュー渡る

ぽぽな

3月21日 07時37分