桃李歌壇  目次

葉っぱのフレデイ

連作和歌 百韻

1001 > 何故なぜと独りでさみしく迷ふとき読んでごらんよ『葉っぱのフレデイ』(たまこ) (1126 1551)

1002 > 老父母の昔語りのとつとつと吾懊悩の氷柱ゆるみて (重陽) (1126 1903)

1003 > この道はわれの選びし道なれば迷ひとまどひされど歩めり (素蘭) (1126 2217)

1004 > この道を照らせる光淡くてもデ・ジャ・ヴのしるべわれを導く (萌) (1126 2322)

1005 > 既視感ははるか塵劫あれかはり死にかはりたる回帰の証左  (堂島屋 (1127 1735)

1006 > 君恋し君は遙けき神の国小笠原なる海に消えたる (素蘭) (1127 1833)

1007 > やしの木の下で見つめし夕焼けを映す水面を帰るディンギー (萌) (1128 0033)

1008 > ベンツより小さき戦車椰子蔭に世紀を越える赤きキャタピラ (重陽) (1128 0554)

1009 > 弾痕に巣くふ小鳥のをやみなく囀る聞こゆつつがなけれや  (堂島屋) (1128 1241)

1010 > 天空に奏でられたるオーロラの幻想曲にしばし佇む (素蘭) (1129 0038)

1011 > オーロラの揺らぎの中にミレニアムと世紀末との境を思う (萌) (1129 2316)

1012 > 古きこと思ひ出させるはつ冬の雨に打たれて今日は帰らう (素蘭) (1130 0022)

1013 > 残りたる二十世紀の暦には水を湛へし黒部峡谷 (重陽) (1130 0504)

1014 > そこな君拾うてくれと霜月の落葉いちまい我に告ぐらし (堂島屋) (1130 1943)

1015 > 半ばまで緑を残したるままに落ち葉となれる並木の銀杏 (萌) (1130 2357)

1016 > 空襲の爪痕幹に宿しままあまた実こぼす公孫樹ひともと (素蘭) (121 1849)

1017 > ゆるやかに爪かくし持つ肉球の日だまりの中しずまりてあり (萌) (121 2331)

1018 > 肉月の偏もつ文字を羅列せり確かなるかや我肉体の (重陽) (123 0546)

1019 > 美辞麗句尽くせど心空疎なる文字の羅列と広報誌読む (素蘭) (123 1106)

1020 > 自信なき公的文字の百万字 依草附木か魍魎か是れ (堂島屋) (123 1904)

1021 > うら若き僧の眼の一点にゆらぐともしび砂の曼荼羅 (重陽) (123 2114)

1022 > ガラス戸のむかふに見ゆる日常を歌に詠みつぐ子規偲びつつ (素蘭) (123 2150)

1023 > ガラス戸の向こうにひと続きの現実気づかぬうちに風の通いて (萌) (124 0014)

1024 > おおどかに遊びはすべし篳篥はたゆたふ風となりて吹くべし (堂島屋) (124 1952)

1025 > 緩やかな遊びのありし抽斗の奥にしまいて忘れし団栗 (萌) (124 2315)

1026 > 抽出の奥から転がり出るやうに忘れたきこと甦りくる(素蘭) (125 0103)

1027 > 大脳の何処かにあるは確かでも錆びし回路の情けなきこと (重陽) (125 0600)

1028 > 蓮華蔵世界一周一即多多即一なり脳内火薬 (堂島屋) (125 2223)

1029 > 世紀末の一日ゆえに卓上の世界一周楽しんでみん (萌) (125 2336)

1030 > 世紀末のパリにあふるるデカダンス ランボーの詩に憧れしころ(素蘭) (126 0015)

1031 > 壁崩る1989年とフランスの1789年の嵐を思う (重陽) (126 1332)

1032 > CHINAなる GREAT WALL 天地の寄り合ふ極み越え続くかな (堂島屋) (126 1934)

1033 > 天地の寄り添ふところ切々ととユーカラ謡ふイヨマンテの夜(素蘭) (126 2343)

1034 > 熊祭りの夜は更けてゆき湖を包める岸の影濃くなりぬ (萌) (126 2354)

1035 > 漆黒にゆらぐ篝火白拍子二人静の舞やとけゆく (重陽) (127 0453)

1036 > 過ぎし日をうつつの夢に追ふごとくあえかに降れる吉野白雪(素蘭) (127 1429)

1037 > 百敷は八重の青垣へだてつつ蔵王権現移せこの山 (堂島屋) (127 1432)

1038 > 八重葎茂れる里となりてなほダムとなりゆく村を恋ふ人(素蘭) (127 2332)

1039 > ボタ山に幼き夢の一もんめ酔へばかの地をかたる友あり (重陽) (128 0532)

1040 > ポケモンの名前すらすら挙ぐれども絶えて聞かざる童歌なり(素蘭) (128 1947)

1041 > 木枯しが背に沁みる日は小さくていいから歌の翼がほしい(たまこ) (128 2347)

1042 > 誰でもね見えない翼があるんだよ皆んなそれに気づかないだけ (萌) (129 0059)

1043 > 何度でもトライしてみむわたくしの翼とならむ手紙届きぬ(たまこ) (129 1044)

1044 > イカロスの翼をもちて翔けゆけり美(は)しき神ゆゑ焦がるる空に(素蘭) (129 1326)

1045 > アトラスの膂力尽きなば太虚なる粟散辺土如何になりなむ (堂島屋) (129 1806)

1046 > 地図帳に見る世界事情火薬庫の国境国名ころころ変わる(素蘭) (129 2200)

1047 > 変わらないものは神代の昔より生命を抱く海のふところ (萌) (1210 0034)

1048 > 混迷は天誅なるか昏迷の二十日を余す二十世紀は (重陽) (1210 0542)

1049 > 蛮声に奇声嬌声唱和して世紀末なるカオスの世界(素蘭) (1210 1436)

1050 > 遠山に冬日かぎろふ楽しさよ鳴るものなべて天籟と聞く (堂島屋) (1210 2002)

1050 > 霜柱のごとしと高層ビル群を見つつ師走の日本に戻る(たまこ) (1210 1949)

1051 > 遠山にけふの冬日のかぎろひて鳴るものなべて天籟と聞く (堂島屋) (1210 2005)

1052 > 帰化し得ぬメタセコイアが日本の初冬に無韻の炎を上げる(たまこ) (1210 2344)

1053 > 秋の野は薄・刈萱あるものを泡立草の黄色目につく(素蘭) (1211 0031)

1054 > 泡立草それでも日本に順化して一歩退くこと身につけており (萌) (1211 0035)

1055 > 泡立草手向けむ花にあらねども淡き冬日の枯野に燃ゆる (重陽) (1211 0441)

1056 > かの人の久しき歌の消息に久しきなるは旅と知りなむ  (重陽) (1211 0548)

1057 > いつのまにか心を深く捕らへられ戻り来て先ず「歌壇」を開く(たまこ) (1211 0644)

1058 > たちまちに旅の余韻は霧散して子らへ公平にお土産わける(たまこ) (1211 0700)

1059 > かの地にて求めし香を焚きひとり記憶の海にしばし漂ふ(素蘭) (1211 1754)

1060 > 旅日記黄ばめるままに書架にあり我が人生に悔いあらめやも (堂島屋) (1211 1802)

1061 > 石ころや木の実や落ち葉や押し花や旅につながるわが宝物(たまこ) (1211 1907)

1062 > 宝物が石ころになる瞬間をおそれて自然につながりており (萌) (1211 2341)

1063 > 小石蹴り蹴りつつ帰る夕まぐれ幼心に秘めしことあり(素蘭) (1212 0027)

1064 > いい訳を思い巡らし窓の灯に心いためし幼なき頃の (重陽) (1212 0450)

1065 > 本を読み雲を見遠い国を想ひ少女のわれに縁側ありき(たまこ) (1212 0851)

1066 > グラマンを葉末に見やり桑の実の色に染まりて過ぎし日のこと(重陽) (1212 1112)

1067 > 幼子の両手はつばさ飛行機になって広場におおきな円を描く(たまこ) (1212 1802)

1068 > 楽しさの隣に寂しさのありて都会の広場と言える空間 (萌) (1212 2331)

1069 > 春色のパシュミナふわり肩にかけ街に駈けゆく若さともしき(素蘭) (1213 0050)

1070 > もつともつと子供のころを聞かせてよ草紅葉かがよふ河原に座り(たまこ) (1213 0621)

1071 > 神奈備やいてふ黄葉にうづもれて翁わらはの舞ふぞ楽しき (堂島屋) (1213 1211)

1072 > 白式の翁が舞へる能舞台たうたうたらりと鎮まりてゆく(素蘭) (1213 1942)

1073 > 葉の先の少し縮れて濃くなりし紅葉がそっとかかる能舞台 (萌) (1213 2329)

1074 > しはぶきのたへししじまに舞をまふ翁しづやか”島の千歳” (重陽) (1214 0842)

1075 > 冬枯れの雑木林をゆらゆらと舞いゆく蝶の履く「赤い靴」(たまこ) (1214 1636)

1076 > 降る雪と見紛ふばかりに乱れ飛ぶ蜉蝣のごと命果つるか(素蘭) (1214 1854)

1077 > 降る雪の中で見たしと思いけり東京ミレナリオの祝祭空間 (萌) (1214 2349)

1078 > 雪の降る日には一人で歩るきたいわたしの過去世はたぶん狼(たまこ) (1215 1841)

1079 > 煌煌と天狼星は輝きて昴・オリオン星の饗宴(素蘭) (1216 0114)

1080 > 研究室の窓に煌めくシリウスを深夜もどり来し夫が言へり(たまこ) (1216 0744)

1081 > 草原に蒼きシリウス煌めきて騎馬民族の末裔照らす(素蘭) (1216 0943)

1082 > 幾千の兵と馬との俑なるも等身大の生きるが如し (重陽) (1216 1401)

1083 > 幾千の兵馬俑つくりなほ足りぬ疑心暗鬼の孤独な魂に(たまこ) (1216 2315)

1084 > 暴かれて褐色砂岩の墓を出づミイラマスクの美(は)しき少年(素蘭) (1217 0034)

1085 > 変声期の少年もう出ぬソプラノを千曲川辺の岩に試せり (萌) (1217 0039)

1086 > 口ずさむ第九に添ひて年の瀬のテナーの声のすでに枯れしも (重陽) (1217 0539)

1087 > かまきりの骸に積もりゆく枯れ葉枯れたるものはみな温かい(たまこ) (1217 0714)

1088 > 枯葉ふむ音の楽しと登りゆくちろりちろりと軽く生きゆく(たまこ) (1217 2231)

1089 > 紅葉づればやがて散りぬる碧天に欅大樹の一糸纏わず(しゅう) (1217 2256)

1090 > 暮れなずむ街を彩る電飾に欅並木の痛ましくもあり(素蘭) (1218 0033)

1091 > いつの夜も吾を迎へし門灯の守宮はすでに冬篭るらむ (重陽) (1218 0623)

1092 > 赤ちやんをつれて春にはこの門に戻つておいで「おやすみやもり」(たまこ) (1218 1030)

1093 > 出す当ても無きまま手紙書き散らす夢朧なる春の余白に(素蘭) (1218 1906)

1094 > ほのぼのと雨の降る夜は『古今集』目に見ぬ人に心寄せつつ(たまこ) (1218 1931)

1095 > 雪解けの水満来たる我が心汝を慕ひつつ溢れゆくかも  (紀) (1218 2002)

1096 > 愛しさは言葉にもせよ雪解けの溢るるよふに言ふてみせてよ(しゅう) (1218 2207)

1097 > ワンザモールのお願いツリーに短冊の花咲けば虹の滝落ちきたる (萌) 東京ベイサイド有明のクリスマス風景 (1219 0019)

1098 > とりどりの絵馬の詞の愛らしき人の祈りの今も昔も (重陽) (1219 0521)

1099 > 山深く大きな椋に行き会ひし刹那一切われをゆだねぬ(たまこ) (1219 0909)

1100 > 一樹にて杜のやうなる大椋を神様としてわたくしの日々(たまこ) (1219 0921)