4828 |
遠近の小磯に集く竿の人ひねもす憩ふ釣果などなく |
蘇生 |
7月11日
08時29分 |
4829 |
街中の子らは毛虫を見つけたと嵐のごとく木に走り寄る |
ぽぽな |
7月11日
08時33分 |
4830 |
この夏は何種の蝉を聴けるやら樹木まばらな新興住宅 |
人真似 |
7月11日
09時30分 |
4831 |
小鳥らは影絵のごとく生垣の小さき虫を啄ばみて去る |
蘇生 |
7月12日
06時48分 |
4832 |
街路樹の千羽の鳥のねぐらなる一本伐られて遠き雷の音 |
たまこ |
7月12日
07時25分 |
4833 |
くすのきの幹に頬あて気がつかば大樹の鼓動の中にひたれり |
海斗 |
7月12日
09時09分 |
4834 |
ルビー濃きワイングラスのボルドーが目覚めん今と語りかけたり |
蘇生 |
7月12日
18時45分 |
4835 |
西日さす高き小部屋に身を浸しとろりとろりと琥珀となりぬ |
ぽぽな |
7月12日
23時29分 |
4836 |
つぎつぎに女一人が来ては憩う舞台の如きスターバックス |
蘇生 |
7月13日
07時01分 |
4837 |
ネットカフェ窓辺に並びPCのモニター覗く都会の孤独 |
人真似 |
7月13日
16時47分 |
4838 |
億千の言葉の網ですくへない尾鰭ふるわす深淵の魚 |
ぽぽな |
7月14日
03時20分 |
4839 |
岩牡蠣にレモン添ひたる磯の香にワインが添はば言葉はいらぬ |
蘇生 |
7月14日
05時22分 |
4840 |
双眼の色の深さよ語らざれば憂いなきにも似たるそのひと |
人真似 |
7月14日
08時56分 |
4841 |
思ひなど測り知れなき心奥を憂へ煩ふ性のつたなき |
蘇生 |
7月14日
09時26分 |
4842 |
憂いとか愛がはぐくむやさしさは癒しの淡き翳りともみゆ |
人真似 |
7月14日
21時55分 |
4843 |
やはらかき眺めの空の明けのころ寒さの梅雨も癒しとなりぬ |
蘇生 |
7月15日
08時45分 |
4844 |
夏なれど秋も静かに隠れゐてそれはたとへば透き通る雲 |
ぽぽな |
7月15日
10時32分 |
4845 |
延々と時紡ぎ出す宙ありて蒼き焔の闇にゆらめく |
人真似 |
7月15日
16時26分 |
4846 |
淋しさの果てなむくにへ分け入りてただ鉄線花宙に咲く見ゆ |
やんま |
7月15日
16時41分 |
4847 |
就中序文の筆の冴えたるは風狂けだしおくの細道 |
蘇生 |
7月15日
20時01分 |
4848 |
恋の句を読むたびにまた恋をする不易流行説くその人に |
ぽぽな |
7月16日
06時19分 |
4849 |
若き日は才気縦横だて男 狂にも艶ある俳聖の旅
|
人真似 |
7月16日
08時29分 |
4850 |
長雨の今朝に久しき光あり朧々として色即是空 |
蘇生 |
7月17日
08時50分 |
4851 |
キジバトの鳴き声しきり誰を呼ぶ 万緑冴えて空即是色 |
人真似 |
7月17日
09時21分 |
4852 |
信号の柱の端にスズメの巣吾も此岸に仮の宿とり |
ぽぽな |
7月18日
05時59分 |
4853 |
明日もまた思いがけない事起る愉しみゆえに今日の吾あり |
人真似 |
7月18日
09時29分 |
4854 |
常しへに嬉々たる心育みて老いゆくわれは日々を見ばやと |
蘇生 |
7月18日
11時08分 |
4855 |
日日草(にちにちさう)の花を咲かせて駅裏の宿屋「おたみ」は静まりてをり |
たまこ |
7月18日
13時20分 |
4856 |
デカンタのピノノワールは芳醇に今目覚めんと静まりてをり |
蘇生 |
7月18日
14時57分 |
4857 |
人生は一歳ごとに濃く深く味わい増すとワインのごとく |
ぽぽな |
7月19日
09時58分 |
4858 |
秒刻む音の速まる感じあり時計は午後の二時を過ぎつつ |
たまこ |
7月19日
22時00分 |
4859 |
偶然が生む絵模様に見惚れつつふと気が付けば最早たそがれ |
人真似 |
7月19日
22時50分 |
4860 |
ゆく旅の土産物屋の万華鏡全て覗いてなほ満たされず |
たまこ |
7月20日
02時57分 |
4861 |
仮枕暫く居ては打やぶり馳せる心を如何に留めん |
ぽぽな |
7月20日
05時59分 |
4862 |
短夜に月も急がず冴えわたり窓より入る風の涼しき |
人真似 |
7月20日
09時29分 |
4863 |
北の地は日毎に寒き夏という冷夏となるや清かなる梅雨 |
蘇生 |
7月20日
16時16分 |
4864 |
梅雨雲の切れて清けき滝の音 長雨を憂う土地もあるよし |
人真似 |
7月20日
23時30分 |
4865 |
雲切れて朝日下りたる海面に鰯の群れが湧き上がりをり |
蘇生 |
7月21日
11時03分 |
4866 |
黄昏の沖より寄せる浪しろく網干す浜に船びとの声 |
人真似 |
7月21日
12時12分 |
4867 |
釜茹での白きしらすを干しのべて梅雨の晴れ間の浜に憩へり |
蘇生 |
7月21日
16時47分 |
4868 |
霧雨に暮れの鐘の音やや遠く人も車も道いそぐなり |
人真似 |
7月22日
22時34分 |
4869 |
遠近の寺の六時の鐘の音が消えいるような梅雨寒の朝 |
蘇生 |
7月23日
06時12分 |
4870 |
梅雨空へ登るガラスのエレベーター ラベンダーの香のほのかに匂ふ |
たまこ |
7月23日
09時23分 |
4871 |
紫に丘をうねりてラヴェンダー雪渓白き大雪山稜 |
蘇生 |
7月23日
10時52分 |
4872 |
残り香のうねるごとくに漂えば恋しうなじのしろき面かげ |
人真似 |
7月23日
22時17分 |
4873 |
本をめくる君のうなじの曲線に声掛けること忘らえにけり |
海斗 |
7月23日
22時49分 |
4874 |
若母の胸を吸いをる乳飲み子にその眼差しの誇らしげなる |
蘇生 |
7月24日
09時20分 |
4875 |
フェルメールの水差しを持つ早乙女の眼差し静か世紀を超えて |
ぽぽな |
7月24日
10時03分 |
4876 |
北欧の大気と光の謎めいてその生涯も謎おおき人 |
人真似 |
7月24日
22時29分 |
4877 |
オーロラに出合ってみたいいつの日か粒子またたく満天の下 |
蘇生 |
7月25日
11時49分 |
4878 |
夏の夜は涼みがてらに浜に寝て空の不思議を聴きし想い出 |
人真似 |
7月25日
22時49分 |
4879 |
細波の浜に寄せては泡となり白きが消ゆる音のかそけさ |
海斗 |
7月26日
12時46分 |
4880 |
大音の花火桟敷に脚線を持て余したる浴衣波打つ |
蘇生 |
7月26日
14時54分 |
4881 |
まだ青き乳房を持てる乙女らにセクスアリテを告げる点鐘 |
ぽぽな |
7月28日
08時11分 |
4882 |
カリヨンの奏でる曲のたどたどし街ゆく人はみんな旅人 |
人真似 |
7月29日
08時42分 |
4883 |
幾人の兵士が発ちし 廃駅に夾竹桃の花がまた咲く |
たまこ |
7月30日
00時06分 |
4884 |
今朝もまた改札通る戦士たち見えざる獲物探し求めて |
人真似 |
7月31日
08時43分 |
4885 |
無機質に自動化されし改札をリズム打ちつつ人は過ぎ行く |
蘇生 |
7月31日
18時46分 |
4886 |
白昼の雑踏にふと立ち止まり余剰といふ名の己に出会ふ |
ぽぽな |
8月2日
22時06分 |
4887 |
感情を忘れるまでにぼろぼろになって帰って倒れて眠る |
海斗 |
8月3日
21時56分 |
4888 |
若き日は買いかぶりし己ゐて老いては程良き線に留まる |
人真似 |
8月3日
22時36分 |
4889 |
自らを恃み過ぎたる若き日の友垣今は託ち顔なる |
蘇生 |
8月4日
05時02分 |
4890 |
むかしより嘆く歌びと多々あれど廻る時節は風まかせとは |
人真似 |
8月6日
09時20分 |
4891 |
自転車は潮風に乗り一湾の遥かなるかな夾竹桃咲く |
海斗 |
8月6日
12時00分 |
4892 |
在りし日の法王庁の城門に夾竹桃は今を誇りぬ |
蘇生 |
8月7日
09時53分 |
4893 |
時ははや秋の支度を始めしか紫と白桔梗咲く庭 |
人真似 |
8月7日
10時03分 |
4894 |
盛んなる夏の緑の目のあたり葉脈はすでに錆を兆せり |
蘇生 |
8月8日
09時05分 |
4895 |
乗換えを待つ間のベンチにご婦人のお裾分けなる秋扇かな |
海斗 |
8月8日
15時52分 |
4896 |
大風の来ぬ間の夜半の月眺めはるかに思う室戸の荒海 |
人真似 |
8月8日
22時10分 |
4897 |
台風の予報リングを串刺しにわが列島は秋に入りたり |
蘇生 |
8月9日
11時11分 |
4898 |
秋立つも緑陰に寄り昼寝して凌ぐ人あり庭園の午後 |
人真似 |
8月11日
08時27分 |
4899 |
午睡からはっと目覚めては夢うつつ何処にわれはなどと思いぬ |
蘇生 |
8月11日
18時10分 |
4900 |
海中に潜り潜りて手は背びれ足は尾びれとなりたる心地 |
ぽぽな |
8月12日
03時03分 |