5501 | 鳶群れて渦を巻きては高空に春の疾風に昵む如くに | 蘇生 | 2月18日 08時50分 |
5502 | いくさ世の揺らぎの中に東風吹きて頬をやさしくねぶりゆくかな | 茉莉花 | 2月18日 10時19分 |
5503 | 願はくば踏みにじられしきさらぎのイラクの民に星よ光れと | 真奈 | 2月18日 11時17分 |
5504 | たんぽぽに人などいらぬ生きるものすべてに星が輝くならば | 海月 | 2月18日 22時41分 |
5505 | たんぽぽは千の眼でわれを撃ち不気味な一つ目はキュクロプス | 真奈 | 2月19日 00時43分 |
5506 | 晴れの日の花粉とびかう憂鬱に眼球だして洗いたきかな | 蘇生 | 2月19日 07時02分 |
5507 | わが友は杉の花粉を浴びながら咽ることなく一人木を切る | 弁慶 | 2月19日 19時18分 |
5508 | 餓鬼大将杉の大樹をゆさぶりて花粉を雪と遠き日のこと | 寂 | 2月20日 00時42分 |
5509 | たふたふと花粉滾らす杉の木のいつもは知らぬ並木道かな | 蘇生 | 2月20日 07時38分 |
5510 | 千年のいのちを生きる屋久杉の瘤に瘤つき哄笑のごとし | しゅう | 2月20日 11時15分 |
5511 | 鹹(しほはゆ)し人も荒れ野も億年の血を嘗めてみる春の終りに | 海月 | 2月20日 15時05分 |
5512 | 聖人は荒野を好み修行せし我の願いは暖衣飽食 | 弁慶 | 2月20日 17時16分 |
5513 | バブル期の酒池肉林を愛でて今糖尿病を友の友あり | 蘇生 | 2月21日 05時47分 |
5514 | 帰雁せず病む友のいてこの川をわが故里と定めおきたり | 海月 | 2月21日 20時58分 |
5515 | 療養所のほかの記憶は幼少の故里ばかりひたすらに恋う | しゅう | 2月22日 11時15分 |
5516 | 時流れイラク支援の輸送艦わが故郷の港出でゆく | 蘇生 | 2月22日 13時00分 |
5517 | 故里は遠にありてと思いしも故里守る人ありてこそ | 弁慶 | 2月22日 14時35分 |
5518 | いつの世も生きとし生きる同胞の褻の営みの重ね思ほゆ | 蘇生 | 2月22日 19時13分 |
5519 | 残り蚊がよたたた飛ぶや春暁に咳ひとつ出づこれも褻なるか | 海月 | 2月22日 21時13分 |
5520 | 美術館ゆく印象派からキュビズムへ春のかけらになってしまおう | ぽぽな | 2月23日 03時28分 |
5521 | シベリアを描きし香月泰男展涅槃の黒は心象風景 | 茉莉花 | 2月23日 09時43分 |
5522 | シベリヤの森林火災の危機を説くわが日本の若き科学者 | 蘇生 | 2月23日 19時12分 |
5523 | 溶け出す永久凍土マンモスに跨る兵士打て!吾を打て | 海月 | 2月23日 20時52分 |
5524 | キキキキキー鉄の軋みし跨線橋別離のあとに夜汽車見てゐし | しゅう | 2月24日 11時58分 |
5525 | 莖立の背伸びして聞く遠汽笛鉄路のさきに何見えしかと | 真奈 | 2月24日 12時43分 |
5526 | 背伸びして競うがごとき土筆たち辺りに春を告げるが如く | 弁慶 | 2月24日 17時07分 |
5527 | 大瀬崎田子柿田川人穴か胸突く地の名土筆生ふるも | 寂 | 2月25日 23時33分 |
5528 | 雪なんぞ降る気配なく東京の暖かきけふ2.26の日 | 茉莉花 | 2月26日 10時39分 |
5529 | 三寒も四温もあって花もあり雪もあろうさ戦争だもの | 海月 | 2月26日 23時21分 |
5530 | 生まれてより一度も平和を知らざると語りしベトナムの少女忘れず | 茉莉花 | 2月27日 00時14分 |
5531 | ジャスミンの香り豊かなひと時を戦の庭の子らに分けたし | 弁慶 | 2月27日 20時10分 |
5532 | 沈丁はせりあふやうに色なせりやがては宵の風になるらむ | 蘇生 | 2月28日 17時55分 |
5533 | 春の風片目のジャックさぶかろふ人を信じぬオイ猫よ来よ | 海月 | 3月1日 11時04分 |
5534 | 乱れたるサイレンらしき声がして寒さの猫にしかと春来ぬ | 蘇生 | 3月2日 07時09分 |
5535 | 乱れたる園にしあれど絵唐津の模様にしたき若草の芽よ | 弁慶 | 3月2日 13時59分 |
5536 | 火球の亡びの果ての水ありて下萌の声ぷつと止みたり | 海月 | 3月4日 11時30分 |
5537 | ゆるらかに修二会の春は二月堂明くや参籠春はまことと | 蘇生 | 3月5日 10時25分 |
5538 | 二月堂三月堂を廻り来て若草燃ゆる山を見るかな | 弁慶 | 3月6日 00時06分 |
5539 | まばたきに涙払ひて鹿の群見るふりしたる戒壇院脇 | 千種 | 3月6日 21時05分 |
5540 | このたびも幣を手向けぬ手向山三笠の山は草萌えにけり | 弁慶 | 3月6日 22時15分 |
5540 | 道の上に売らるるビーズの乱反射まばたきすれば別れの予感 | たまこ | 3月6日 22時15分 |
5541 | 川渡る名残雪かよけふもまた瞬きばかりばかやろといふ | 海月 | 3月7日 22時25分 |
5542 | 名残り雪君と別れし丸の内赤きレンガの駅舎なつかし | 弁慶 | 3月8日 00時17分 |
5543 | 経済紙片手に髪をなびかせて颯爽と行くキャリアウーマン | 冬扇 | 3月8日 11時25分 |
5544 | 家事仕事請負ふ妻の履歴書を代筆しつつ弥生迎へり | 丹仙 | 3月8日 16時13分 |
5545 | 主婦業と無職の差異を思ひつつ職業欄にはいつも悩めり | たまこ | 3月8日 18時05分 |
5546 | 旅先のネットカフェでリストラの情報交はすキャリア厳しき | 真奈 | 3月8日 20時04分 |
5547 | 自由業と名乗りつつも最初からフリータ−だよと思えば納得 | 弁慶 | 3月8日 21時55分 |
5548 | 春をよぶ修二会行法俗の名はお水取りともお松明とも | 蘇生 | 3月9日 10時54分 |
5549 | 火と水の儀式の前に一膳の飯にて鶏に懺悔まゐらす | 丹仙 | 3月9日 21時11分 |
5550 | オリーブの枝をくわえしかの鳩もウイルスにまみれる世も末なるか | 弁慶 | 3月10日 01時17分 |
5551 | 白飯をもりて供えし神の宮娘等中東へ赴く朝 | 寂 | 3月10日 01時36分 |
5552 | 山の手線電車の窓より神宮の木々の梢の膨らむを見る | 弁慶 | 3月11日 00時01分 |
5553 | 人情は紙風船さ膨らんで流れるだけと山中貞雄 | 海月 | 3月11日 20時50分 |
5554 | 帰る国無きが移民か帰る人無きが移民か風船流れ | ぽぽな | 3月13日 02時02分 |
5555 | お茶の水さくら花散る聖橋神田の流れ春のうららの | 弁慶 | 3月13日 02時50分 |
5556 | 夜勤明け朋を呼ぶかやけものごえ最後の春に父は帰れた | 海月 | 3月13日 21時22分 |
5557 | 朝が来て昼が来てまた夜が来る昨日と同じが我れの幸福 | 弁慶 | 3月15日 08時44分 |
5558 | 爽やかに目覚め夕べに瞑目し明日の健やか願う幸せ | 蘇生 | 3月15日 16時24分 |
5559 | ささやかな小さき幸すら得られずに闇に震える人々を思う | 茉莉花 | 3月15日 23時26分 |
5560 | 天城路や月ヶ瀬村の梅林の花の香に酔う我は幸せ | 弁慶 | 3月16日 00時58分 |
5561 | 金色の釦買ったよ三つだけ星が見てるよほら三つだけ | ぽぽな | 3月16日 10時09分 |
5562 | ふらここに雀が三羽遊びあく金色空がお家へ帰ろ | 海月 | 3月16日 14時05分 |
5563 | 足で漕ぐふらここ空に舞い上がり空だけが見え雲だけが見え | 弁慶 | 3月16日 21時47分 |
5564 | 赤道の直下の空に聳え建つツインタワーを雲がなでゆく | 蘇生 | 3月17日 08時44分 |
5565 | 幻のバベルの塔は崩れ落ち金鵄ふたたび騒ぐまほろば | 真奈 | 3月17日 11時36分 |
5566 | まほろばに若紫のスミレ咲きめぐる辺りの山笑いけり | 弁慶 | 3月17日 12時28分 |
5567 | 紫のにほへる妹と詠はれし紫野いまいづこにあらむ | 茉莉花 | 3月17日 13時49分 |
5568 | 紫野芋粥啜る男あり褥おぼろに現も夢よ | 海月 | 3月17日 16時59分 |
5569 | かの時の紫イモの美味しさよ今も忘れぬかの薩摩芋 | 弁慶 | 3月17日 21時08分 |
5570 | トゲトゲの実を割り開きおずおずと喰らわばなんと美味きドリアン | 蘇生 | 3月18日 06時49分 |
5571 | ドリアンは旨きものよと父の言ふ腹の足しにはならないけれど | 海月 | 3月19日 13時16分 |
5572 | 臭き物皆美味なりとひとの言うキムチ塩辛ご免被る | 弁慶 | 3月19日 15時20分 |
5573 | ビルマにてご免被る食い物は何一つなく飢えて死ねとか | 海月 | 3月19日 21時34分 |
5574 | 時の背を押す機械なら出力は臨界にせよ君に会いたい | ぽぽな | 3月20日 23時57分 |
5575 | 逢いたくば千里も一理益荒男よ松帆の浦の花を見に来よ | 弁慶 | 3月21日 05時24分 |
5576 | 背を押され松帆の浦を訊ねしがすでに虚しく花は散りたり | 蘇生 | 3月22日 10時31分 |
5577 | 見晴るかす明石の浦の夕霞逢はじと思ふ恋の悲しき | 冬扇 | 3月22日 16時08分 |
5578 | ともし火のかすかな明かり遠くみし海峡へだつ恋や悲しも | 蘇生 | 3月22日 19時05分 |
5579 | 峠より君住む家の中庭にかすかに見ゆる白き木蓮 | 弁慶 | 3月22日 22時57分 |
5580 | 久しきや玲瓏なりし波の間に伊豆大島を遠く望めり | 蘇生 | 3月27日 08時41分 |
5581 | はるかなる安房のやまやま波の間に見え隠れする春の朝かな | 弁慶 | 3月28日 18時19分 |
5582 | 春色の伊豆の山々見晴るかす鎌倉山に花咲き初むる | 蘇生 | 3月29日 07時32分 |
5583 | 極楽寺東慶寺にも春の風比企が谷戸にもすみれ花咲く | 弁慶 | 3月30日 08時54分 |
5584 | 母葬る路辺にすみれまたすみれたしかあの子の十二のあした | 寂 | 3月31日 09時02分 |
5585 | 母逝きて四十九日の我が庭に白き木蓮咲きにけるかも | 弁慶 | 4月1日 06時30分 |
5586 | いつの日か終は如何にと問わるれば花の下より春の海なり | 蘇生 | 4月1日 19時51分 |
5587 | ごつごつと枝張り伸びて幹黒し紆余曲折のごと花の道 | しゅう | 4月1日 21時57分 |
5588 | 奧入瀬の山毛欅の林の中に咲く蔦温泉の山桜かな | 弁慶 | 4月1日 22時48分 |
5589 | 熱き湯に身をやきて階の急勾配にまた汗噴きぬ(蔦温泉) | しゅう | 4月2日 07時10分 |
5590 | 八甲田見下ろす津軽野はるけくも海の彼方に蝦夷が島ぞ見ゆ | 弁慶 | 4月2日 07時27分 |
5591 | 四月とて蝦夷地の春の遅々として捨雪重く川原を埋めり | 蘇生 | 4月2日 07時54分 |
5592 | いにしえの三台丸山の高殿は蝦夷地に向きて航路見晴るかす | しゅう | 4月2日 09時49分 |
5593 | この春は鰊群来なる報ありてなんと久しき季語の現実 | 蘇生 | 4月2日 11時04分 |
5594 | ラジオから「はるばる来たぜ函館」の唄流れ来る歌人の墓 | 弁慶 | 4月2日 11時24分 |
5595 | エイの尾の渡島と称す半島に蝦夷開拓の嚆矢を偲ぶ | 蘇生 | 4月3日 11時26分 |
5596 | おそ咲きの然別湖の蝦夷さくら炉の炭赤く姫ますを焼く | 弁慶 | 4月4日 10時51分 |
5597 | 北辺の四方を知りたる君なれば蝦夷との縁は如何に有りなむ | 蘇生 | 4月4日 11時24分 |
5598 | 君子とは多能を恥じる事なりと無芸大食物見遊山す | 弁慶 | 4月4日 11時46分 |
5599 | 平かな全生園に「望郷の丘」盛り土の上の四方かも | しゅう | 4月4日 11時51分 |
5600 | 薄命の天才歌人啄木の歌碑は小さき望郷の丘 | 蘇生 | 4月5日 05時49分 |