6701 | ふと出づる馥郁たりし思ひ出は伏したる水の出づるごとくに | 蘇生 | 7月31日 05時13分 |
6702 | 長かりし旅の終りの夏の野に伏流の水いのち溢るる | 真奈 | 8月1日 19時43分 |
6703 | 母病んで君への電話気後れり真夏の恋は逃げ水のごと | 鮟鱇 | 8月1日 21時21分 |
6704 | 蜩の三部合唱佳境なり夕べの膳の整ふるころ | 雛菊 | 8月1日 21時21分 |
6705 | 蝉ひとつ病みし智恵子の掌に生れて青き空恋ふ折紙の色 | 真奈 | 8月3日 09時19分 |
6706 | あたたらの空を恋ひにき智恵子なりいたみし生涯 才を思へり | れん | 8月3日 17時52分 |
6707 | 名なぞなき市井のひとりひとりとて秘めた才あり艶な生あり | 蘇生 | 8月4日 19時11分 |
6708 | バクダンや米櫃掠めぽんあられ盗む才ありなにより甘味 | 海月 | 8月6日 09時59分 |
6709 | はっきりと原爆投下の年月日答ふる孫と蝉時雨聴く | 文枝 | 8月6日 17時58分 |
6710 | 決然と広島市長の声高くいまだ戦さの止まぬ世を衝く | 真奈 | 8月6日 20時36分 |
6711 | わが裡につね新しき悲しみの『わだつみの声』『とこしへの川』 | かわせみ | 8月7日 09時24分 |
6712 | グラマンの爆音うなる低空に兵士が見えた十歳の夏 | 蘇生 | 8月9日 06時04分 |
6713 | 被爆の手突きあげられし闇の中青き燐光したたらせつつ | 真奈 | 8月9日 12時39分 |
6714 | 黒き川ほたるのいたよ黒き空さくら橋などけして渡らぬ | 海月 | 8月10日 09時51分 |
6715 | 長崎の聖母の瞳失せしとかその業為せしキリストの国 | 白馬 | 8月10日 13時24分 |
6716 | 被害者としてのみ語る加害者よ吐き捨つるごと恨[はん]の友言ふ | 丹仙 | 8月13日 12時23分 |
6717 | 異議のありやぶさかでなし加害者は酒酌む朋はいかにとやせむ | 海月 | 8月14日 04時26分 |
6718 | いつの世も爆弾落とさる民に拠りのり超えゆかむ民族の壁 | 真奈 | 8月14日 16時59分 |
6719 | 地べた見ぃ裸電球オモニアリラン恨など云わず裳裾擦り切れ | 詠人知らず | 8月14日 17時26分 |
6720 | はるばるとわが世にも寄す土用波ここに砕けて白く果てなむ | 蘇生 | 8月14日 19時01分 |
6721 | 尹東柱の詩に聴き入る敗戦日六十年前我は小三 | 文枝 | 8月16日 18時30分 |
6722 | 吹き晒す風の痛みよ天の星見上げて汝[なれ]の誓ふ十字架 | 丹仙 | 8月16日 23時01分 |
6723 | 八月の星のまたたく延暦の歌舞に祈るや最澄入寂 | 蘇生 | 8月19日 05時12分 |
6724 | またたきを幾つしたるや歳月ぞすぎゆきかくも永らえきたり | れん | 8月21日 03時23分 |
6725 | プロメテの眼のうるみをり花うばら昭和の馬の冷やされぬまま | 真奈 | 8月22日 13時28分 |
6726 | 昭和にはあれこれあるも平成は平成りまどかに太る馬鈴薯 | 鮟鱇 | 8月25日 07時41分 |
6727 | 君去りて四年になりぬこの秋も馬鈴薯の花白く咲きけり | 弁慶 | 8月26日 22時58分 |
6728 | ジョッキ持つ腕絡ませて学生歌ジャーマンポテトの皿も踊るよ | 真奈 | 8月28日 05時55分 |
6729 | わが声も轟く歌声喫茶店カチューシャの歌懐かしきかな | 弁慶 | 8月28日 10時15分 |
6730 | 眼前のドンコサックの歌声に打ちのめされた半世紀前 | 蘇生 | 8月29日 05時25分 |
6731 | 「ともしび」のにぶき光に額[ぬか]あつめ夢みたること若かりしこと | かわせみ | 8月29日 08時18分 |
6732 | 「きーよ」でジャズを聴きました「ともしび」は学ラン脱いだ中学のこと | 海月 | 8月29日 08時43分 |
6733 | 歌あらば千代に八千代に集ひ来て星ら輝く銀河の岸辺 | 鮟鱇 | 8月29日 09時20分 |
6734 | 還暦をはるかに過ぎし男らのメンネルコールの響きよ夢よ | 蘇生 | 8月29日 10時53分 |
6735 | 還暦は瞬く間に過ぎにけり余命幾許神のみぞ知る | 弁慶 | 8月29日 23時27分 |
6736 | 瞬けば孫もひ孫も増へにけり種に起源あり爺[じい]に週末 | 鮟鱇 | 8月31日 21時43分 |
6737 | 一族の傘が干されて膨らんでいざ総選挙どこに追ひ風 | 真奈 | 9月1日 19時17分 |
6738 | もてなしは缶ビールだけと憤る人を見て純ちゃんに一票 | 海斗 | 9月3日 07時06分 |
6739 | ビール缶握り潰しの芝居打つ政人[まつりびと]には愛想尽きたり | 蘇生 | 9月8日 09時24分 |
6740 | 台風の猛威に晒さる被災地の明日こそ守れ期日前投票 | 文枝 | 9月10日 07時59分 |
6741 | 妻も子も選挙に行けぬ家長をりみんなに聴いて投ず一票 | 鮟鱇 | 9月11日 12時02分 |
6742 | 改革をすれば世の中上手くゆくもう聞き飽きた述べて作らず | 弁慶 | 9月14日 12時19分 |
6743 | 名月は相似し色に現われつ去年に相見し父は逝きたり | 蘇生 | 9月18日 19時26分 |
6744 | 風立ちて風色めきてけふの月遙かに照らせこの国の先 | 真奈 | 9月19日 00時09分 |
6745 | 紺碧の空にくっきり満月の強き光に打たれるもよし | 雛菊 | 9月19日 00時25分 |
6746 | 満月は天心辺り北見れば空の彼方に富士の山影 | 弁慶 | 9月19日 12時15分 |
6747 | 月こそは天の臍なり雲ながれ白き腹見ゆ眠れる天女 | 鮟鱇 | 9月21日 07時31分 |
6748 | 君去りて三年となりぬこの秋も白萩の花野の道に咲く | 弁慶 | 9月23日 00時26分 |
6749 | 新参の父に手向けん草の穂の黄泉にとどけよ初彼岸かな | 蘇生 | 9月23日 13時39分 |
6750 | 山裾に桔梗と野菊あかまんま花咲く果てに君が奥津城 | 弁慶 | 9月24日 11時22分 |
6751 | 夕暮れの山裾のむら彼岸花あいをもひつつ帰る途の辺 | れん | 9月28日 17時56分 |
6752 | 赤でなく咲いてゐるのは桃色の彼岸花ゆゑ望をつなぐ | たまこ | 9月30日 20時23分 |
6753 | 鉄路錆び風吹き抜ける廃駅の庭に咲きけたるあかまんまかな | 弁慶 | 10月1日 00時16分 |
6754 | ベッドより庭見る父の好みしは控えめの白銀水引なり | 雛菊 | 10月1日 12時34分 |
6755 | 長生きを悲しむ母の眼先に水引草の紅がさゆらぐ | たまこ | 10月2日 23時20分 |
6756 | 生きる日々が辛いと母はベッドにて可哀相ねと父の初七日 | 蘇生 | 10月3日 16時12分 |
6757 | 一方的にすねて怒つてゐし母が「いい人だつた」と亡き父を言ふ | たまこ | 10月4日 06時10分 |
6758 | 生きている微かな証ありがたし逝きて命の重みずっしり | 文枝 | 10月5日 08時06分 |
6759 | 日数へと盛りゆくなり花芒黄泉への父の道しるべかな | 蘇生 | 10月5日 08時12分 |
6760 | 野の道の奥に鎮まる我が父の奥津城訪えば蔦紅葉映ゆ | 弁慶 | 10月5日 16時50分 |
6761 | 激動の昭和を生きしわが父の雷なつかし抗ひの青春 | 真奈 | 10月5日 20時34分 |
6762 | 雷鳴の轟き渡るダムの里湖底に描く古のあり | 文枝 | 10月6日 07時45分 |
6763 | さらさらと生きてゆけよと諭すごと彼岸の空に雷が鳴る | たまこ | 10月7日 19時02分 |
6764 | 青北風に雁の列ゆく空の末来し方われも渡りに似なむ | 蘇生 | 10月8日 05時17分 |
6765 | 雁飛ぶや西行越えし白河の関路を燃やす夕焼けの色 | 弁慶 | 10月8日 06時45分 |
6766 | 曇天のままにひと日が暮れてゆく色づく前を楓が伐られ | たまこ | 10月8日 15時58分 |
6767 | 十月の三日つづきの秋雨に色に出でけりたわわの柿は | 蘇生 | 10月10日 06時33分 |
6768 | 柿の木を揺すれば数多実の落ちて老いた農夫の喜びの顔 | 弁慶 | 10月10日 08時51分 |
6769 | 明るさは何にも勝る柿の実が時雨にぬれてきらきら赤し | たまこ | 10月10日 20時48分 |
6770 | 秋雨が秋波に古りて月はなく老眼鏡に曇る豊頬 | 深海鮟鱇 | 10月12日 07時05分 |
6771 | 秋深む言えどかなしき空洞化この世ののぞみ何処につながむ | れん | 10月13日 08時03分 |
6772 | 悲しみの波の次々押し寄せり朝夕の24時間 | 文枝 | 10月13日 08時26分 |
6773 | いたわらむ私自身を休もうと決めても心がもはや痛まぬ | たまこ | 10月14日 07時16分 |
6774 | 君に飽き来たらば山の紅葉より赤き猿をり我に舌出す | 深海鮟鱇 | 10月16日 19時28分 |
6775 | 歩をゆるめ視線を上にめぐらして錆びに向いし木々を愛でなむ | 蘇生 | 10月17日 08時34分 |
6776 | 気づかずに撓めてきたる民の樹よ戦後六十年の黒き領絡 | 真奈 | 10月17日 12時01分 |
6777 | 浸みこんだ雨がぽたんと落ちてくるぽたんぽたんと胸いつぱいに | 海月 | 10月17日 17時06分 |
6778 | 雨音がフォルテにしげく早暁の浅き眠りを敲きをるなり | 蘇生 | 10月18日 11時39分 |
6779 | 降りつづく雨は頭蓋を穿つやらん遠き記憶に悲しぶ夜は | ぎを | 10月18日 13時01分 |
6780 | わが脳に蜘蛛が糸張る秋なれどあしたに晴れらば露は光らむ | 深海鮟鱇 | 10月18日 20時10分 |
6781 | 蜘蛛の巣が枯れ葉を止めて風のなか寂しいだけの人生のやう | たまこ | 10月19日 21時10分 |
6782 | 淋しさは最後のやすらぎつぎつぎに散りゆく秋にただ耐ふ我は | ぎを | 10月20日 00時02分 |
6783 | 光あり紅葉が埋む晩節は花の二月にまさらむとこそ | 深海鮟鱇 | 10月20日 07時40分 |
6784 | 飛鳥川紅葉散る散る淵のうえ恋の終わりのしるしなりけり | 弁慶 | 10月20日 09時17分 |
6785 | 純愛は「世界の終り」ただ過去の記憶をめくり読みふける日々 | ぎを | 10月20日 10時31分 |
6786 | カーテンを揺らすのは秋の風なれど今が最も良き時とせむ | たまこ | 10月20日 11時17分 |
6787 | カーテンを揺らす秋風身に沁みて寂びしかりけり君去りし後 | 弁慶 | 10月20日 22時16分 |
6788 | 日数へて形見の撥に遠き日の爪弾き思う秋の灯の下 | 蘇生 | 10月21日 05時53分 |
6789 | 金と銀いづれ択むや木犀のかをり姦しもの思ふ秋 | ぎを | 10月21日 11時00分 |
6790 | 金銀のいづれ劣らぬ木犀にときに迷うも自然なりけり | 蘇生 | 10月21日 18時59分 |
6791 | 地におりてなにをかかたる木犀の金と銀とを風が吹き寄す | 寂 | 10月21日 21時08分 |
6792 | 木犀に零犀想ふ秋の夜君が芳香吐きをる木精 | 深海鮟鱇 | 10月22日 07時00分 |
6793 | 木犀の香り纏いてペタル踏む胸に刻みし今日の言の葉 | 文枝 | 10月22日 07時52分 |
6794 | 自転車はまどろむ夏の遠駆けを偲びて待てり森に帰る日 | ぎを | 10月22日 16時02分 |
6795 | 山辺の道に咲きたる吾亦紅大和三山秋霞の中 | 弁慶 | 10月22日 22時51分 |
6796 | 言葉などいらぬときあり吾亦紅弁慶さんの写真のふたり | 深海鮟鱇 | 10月24日 21時50分 |
6797 | 占いを今日は真に受け出でてゆく「あなたは一人で立ち直れます」 | たまこ | 10月25日 06時47分 |
6798 | 惑へども潔さもて生くべしと秋天深く澄みわたりたり | ぎを | 10月25日 09時58分 |
6799 | 澄みわたる大空のもと初雪の富士を眺める心地よき朝 | 弁慶 | 10月25日 12時44分 |
6800 | 限りなきブルーに透ける秋空に心の筆で大と揮毫す | 蘇生 | 10月27日 04時57分 |