桃李歌壇  目次

あなめでた

連作和歌 百首歌集

 

7001  あなめでた千手観音七体のそろって歌ふときぞ輝く 深海鮟鱇 127 1810
7002  ももすもも百韻連ねしゆかりとて鶴の歩みのうるはしきかな 真奈 128 1452
7003  かうかうと頚打ち交わし丹頂の雌雄(めを)は舞ひ舞ふ北の原野に かわせみ 128 1904
7004  丹頂の声響きけり釧路なる湿原の上の朝焼けの雲  弁慶 128 2206
7005  わが脳は透かし彫りなり松があり鶴が飛びをる欄間の雲間 深海鮟鱇 128 2222
7006  わが記憶夜空にありき創世の光を浴びて今も尽きざる  丹仙 129 2035
7007  北の辺の凍てつく街は度ごとに遠い記憶をたどる門口  蘇生 1210 0528
7008  北の辺の冬コオロギの眼に映ゑて雪景色あり前世のデジャヴュ 深海鮟鱇 1210 0842
7009  氷河期のイイジマルリボシヤンマなほ釧路に生きて湿原に翔ぶ 真奈 1210 0913
7010  温暖化永久凍土とけ出だしユカギリマンモス現るる危機  れん 1210 1027
7011  乗客も思わず笑う駅員の声高らかや大楽毛(おたのしけ) 弁慶 1210 1027
7012  惚くるも楽しからずや老父(おいちち)と手をとりて往く大歩危、小歩危 かわせみ 1210 1158
7013  逝きて早や思うことごと多かりき父に手向けんせめて紅葉を  蘇生 1210 1334
7014  霜の朝の梢に百舌が鳴いてをり楓紅葉の葉を落としつつ たまこ 1210 1446
7015  紅楓の紅葉に隣る銀杏の黄葉見たりわれもまた白髪染めむ紫か茶か 深海鮟鱇 1210 1943
7016  姫沙羅の黄葉ゆかしき谷の奥水湧く音のこだま微かに  弁慶 1210 2305
7017  水音の静かに聞こゆ湖に白鳥旋回しまた舞いもどる  くりおね 1211 0946
7018  釣り人の絶えし堤に佇めば潮の音は冷え冷えとして  蘇生 1211 1032
7019  飽きもせでテトラポッドに当る潮ヨンコラセともソウデンガナとも 海月 1211 1736
7020  面白いこと言いますね海月さん あれはテトラがいやじゃいやじゃと  蘇生 1211 1858
7021  飽きもせで本日釣りたる十字の句百を超えなば投句せむとす 深海鮟鱇 1211 2005
7022  三分の集中力でひねりだす忙しい朝さて投稿す  くりおね 1212 0607
7023  朝なさなまずパソコンのキィを打つボケを防ぐに有効なりや  蘇生 1212 0736
7024  ボケ来たる脳に咲く花歌一首霜降る冬も春のごとくに 深海鮟鱇 1212 0807
7025  卓上に天鵞絨のごとき薔薇ありて愛に滾りし血潮を思ふ ぎを 1212 1003
7026  うふふふとくすすのあいだ冬薔薇珈琲の香にかすかにけもの 海月 1212 1808
7027  ひたすらに冬薔薇咲かす馬鹿でして天鵞絨の深き襞をまとへず 真奈 1212 1818
7028  赤と黒回すソレルのルーレット日向ぼこにはめくるめくなり  蘇生 1212 1838
7029  赤と黒ジュリアンソレルの面影の鶴田浩二の暗いあのうた  弁慶 1212 2131
7030  鶴頭は赤に黒なる丹頂の清姿舞ひをる田二浩き空 深海鮟鱇 1212 2341
7031  赤電車灯りのともる最後尾雪ふる夜明け遠ざかりゆく  くりおね 1213 0703
7032  夜行列車の窓に貼りつきどこまでも憑きて離れぬ私の顔 かわせみ 1213 0949
7033  てぃんてぃんと遮断機下りて乗れぬのだ おおゾーバの!雪降る列車に 海月 1213 1118
7034  殷殷(インイン)と星を散らして鳴る鐘か天より降るシベリアの風 深海鮟鱇 1214 0738
7035  ゴビ近き黄河のほとりの殷墟にも白き雪降る夕間暮れかな  弁慶 1214 0825
7036  有り得ない指値と知りつ買い漁る株屋はけだし陰虚にも似て  蘇生 1214 0850
7037  右左いづれの指も細りしかひとり指輪を空まはりさす ぎを 1214 0925
7038  この空に遊びをせんとや生れしをお願いする還してくれたまへ 海月 1214 1030
7039  仕手こそはみずからなすを言ふなめり乳首嘗めて世遊(すさ)び始む 深海鮟鱇 1214 2313
7040  故もなく掠めとるとは不浄なりしたり顔なる金の亡者よ  蘇生 1215 0457
7041  知るほどになにがよいのかわるいのかわからなくなる人というもの  くりおね 1215 0638
7042  君知るや南の国空青くゆたかなる森花溢るるを 真奈 1215 0800
7043  君知るや日向ぼこりの窓の辺に今も小さき大文字の花  蘇生 1215 0917
7044  君知るや右京一条戻り橋雪降る夜に佇む我を  弁慶 1215 1504
7045  雪降らば来ぬと君は言ひつれど橋のたもとに松あれば待つ 深海鮟鱇 1215 2224
7046  冬桜待っているなら駆けつける仕事を終えて一目散に  くりおね 1216 0714
7047  恋しくば五尺の雪を掻き分けて冬桜咲く雪の野に来よ  弁慶 1216 1144
7048  こともなき師走の日々はつごもりへいよよ迎へむ父亡き年を  蘇生 1217 0523
7049  師走には主なき池にも声あらむふくらむ梅の蕾ぞ聞こゆ 深海鮟鱇 1217 0850
7050  大つごもり真近きけふの愛鷹の尾根の白雪うすらぎにけり れん 1217 0901
7051  大富士に寄り添う妻の愛鷹は雪も積もらず冬を越すかな  弁慶 1217 1100
7052  雪肌の富士を染めたる夕茜 君の額に酒の功あり 深海鮟鱇 1217 1800
7053  西空の澄める朝は冬富士の彼方に顕ちぬ未来のごとくに ぎを 1217 2146
7054  赤々と沈む夕日に冬の富士白雪赤く染まり行くかな  弁慶 1218 0005
7055  夕日追ふ影は老ゐゆく人ならむ朱に染まりゆく天に降る霜 深海鮟鱇 1218 1113
7056  夕映えの海に沿いゆく江ノ電の上り下りの影が交差す  蘇生 1218 1554
7057  凩鉄路裸の大将往くぐんぐんぐんと下駄音高く 海月 1219 1224
7058  市振の浜沿ひ走る日本海波濤を砕く雪の烈しき 真奈 1219 1448
7059  吹き荒れよ夜の底なる雪女 声果てたらば唇(くち)に朝焼け 深海鮟鱇 1219 2230
7060  親知らず子知らず雪の細き道大波よせる越中の国  弁慶 1219 2332
7061  列島は師走の過去に例のなき雪に襲われ不気味なりけり  蘇生 1220 0615
7062  雪に舞う凍蝶の夢醒むるとき朝日に匂ひ庭に蝋梅 深海鮟鱇 1220 2018
7063  関東に今夜は雨と予報士は待ち人来たるごとく宣う  蘇生 1221 0529
7064  百代の過客なるかや眼前を待ち人来り流れ行きたり 海月 1221 0909
7065  三嶋暦携へ芭蕉は陸奥へ今宵は姉歯の松のあたりか  弁慶 1221 1856
7066  暦買ひ詩を祭らむと思へども李白百代読みて過ごせり 深海鮟鱇 1221 2334
7067  ユニークな七百五十六日の暦に暫し二年の計を  蘇生 1223 0525
7068  こんな日は雪女郎とて淋しかろ裏木戸開いたかへのへのもへや 海月 1223 1900
7069  舞い狂い逆巻く雪を通り抜け後ろ髪曳く冷たき女  くりおね 1223 2218
7070  にこやかな王昭君のかんばせに良く似た今夜の雪女かな  弁慶 1224 0126
7071  この冬の大雪襲う列島の異国にあるやわが住む街は  蘇生 1224 0509
7072  木枯らしの吹き過ぐ街に灯点ればビルごとクリスマス・ツリーかな 真奈 1224 1316
7073  木枯しの森に雪降る朝まだき藁科川の岸に釣り人  弁慶 1224 1725
7074  鎌倉や江戸を定めし昔人そのすぐるるを今年の雪に  蘇生 1225 0603
7075  箱根路や鎌倉往還古えの道しるべあり杉の木の下  弁慶 1225 0810
7076  北鎌倉学寮で鳥もつ鍋雪混じり風黒き山門 海月 1225 0845
7077  学園の銀杏並木は葉を落とし影黒くして祈るごとくに  れん 1225 1731
7078  学園へいたる坂にも男女ありゆるやかなるは女坂とか  蘇生 1225 1908
7079  ハチ公の左手かなた道玄坂恋文横丁ありし辺りよ  弁慶 1226 0112
7080  小さなる道玄坂のかの店のパジリコパスタ味のよろしく  れん 1226 0417
7081  道玄坂裏の名曲喫茶店恋と闘い交叉せし時代(とき) 茉莉花 1226 1304
7082  ライオンてふ迷宮回路足穂ゐて一千一秒セコンドやまず 海月 1226 1831
7083  ビャ-ホールライオン目指し足早に友と急ぎし銀座五丁目  弁慶 1226 2356
7084  ライオンの壁に描かるモザイクにビールを造る歓喜あふるる  蘇生 1227 0553
7085  新宿のモザイク通りの年末は回遊魚族が赤き眼をして 真奈 1227 1024
7086  釣り人に赤き夕陽の照る眼あり海の向こふの前世が映る 深海鮟鱇 1227 1840
7087  釣り人の絶えて久しき狩野川に冬の靄立つ極月の朝  弁慶 1227 2237
7088  迷ひしはいづくの淵か懐かしむ年の瀬といふ浅きに立ちて ぎを 1228 2220
7089  淵深き河童も住むと人の言う遠野の里も雪に埋もれて  弁慶 1229 2320
7090  初富士の写真アップを楽しみにそれでは皆様よいお年越しを 雛菊 1230 0832
7091  祭るにも無きに等しき六千の漢詩に注ぐ今宵のワイン 深海鮟鱇 1231 1148
7092  折々の思い認む六千の漢詩言祝ぐ杯をあげなむ  蘇生 1231 1449
7093  ひかりなき闇をぬければ明日のあり二千六年とびらひらかむ  れん 1231 2128
7094  新しき年巡りきて祈るらんいずこにありても良き年なれと 茉莉花 11 0018
7095  東雲に陽なる兆し未だなく心静かに初明り待つ  蘇生 11 0551
7096  二日にてもうやることのありません猫髭なんぞつまんでみよう 海月 12 1119
7097  若者が己をかけて駆ける今二日の雨の箱根駅伝  蘇生 12 1241
7098  たすきこそ若人つなぐ具体なり国を愁ふは老残の愚痴 深海鮟鱇 12 2258
7099  日の丸のやたらと目立つ銀座通り渋き顔して荷風散人 真奈 13 1016
7100  荷風とは蓮の花ふく風ならむ池のほとりの世を捨てし人  弁慶 14 0018