桃李歌壇  目次

実朝の歌碑

連作和歌 百首歌集

 

7401  実朝の歌碑のあたりの夕間暮れ空には淡き月と星見ゆ  弁慶 61 1213
7402  月が蒼いことを理由に遠回りころころ蛙の鳴く畦道を たまこ 61 2133
7403  たちまちに風紋見ゆる一面の青田になりて梅雨を待つなり  蘇生 62 0611
7404  風紋のクッキリ残る砂山に君と座りしあの日懐し  弁慶 62 0949
7405  風紋を踏む愉しさに歩きたり春の海まで言葉もなしに たまこ 62 2158
7406  梅雨入まへ磯の香立ちし砂浜にゴミを集める重機走りぬ  蘇生 63 0529
7407  ほんのりと磯の香りの芳ばしく浅草海苔を焙るうれしさ  弁慶 63 0736
7408  射すやうな光線になれば穴子の旬たのしみたのしみ味も匂ひも たまこ 63 1328
7409  白焼きの穴子を美味しく戴いて庭を見やれば蛍飛び交う  弁慶 64 0133
7410  江戸前に獰猛果敢な肉食魚 穴子食ひをる紅唇皓歯 深海鮟鱇 64 0827
7411  甘えてゐるのかと思へば噛みついてこの性分は飼ひ主に似る たまこ 65 0458
7412  愛に憎楽に苦ありと先人の呻きに永久に陰と陽あり  蘇生 65 1914
7413  過ぎし日の君の笑顔を思い出す激しき雨音一人聞く夜  弁慶 66 0117
7414  雨晴れて身はひとりなり鳥の声呼びあふ樹蔭の眼に沁む緑 深海鮟鱇 66 1955
7415  片身なる貝は哀しやいつの日かひとりのうたの迫りてしみる  れん 67 0137
7416  「ケイタイ」と言ふ貝パタンと閉じて待つ着信音の「トロイメライ」を たまこ 67 1533
7417  ぱたぱたと煽ぐ扇に香あり秋扇夏にシャネルを送る 深海鮟鱇 67 2241
7418  磯の香の砂に杭打つ音続き海の家へと躯体くみ上ぐ  蘇生 68 1038
7419  海風に赤き氷菓の旗なびく片瀬江ノ島湘南の浜  弁慶 68 1142
7420  赤き陽に赤きイチゴのかき氷グラスに残る赤き口紅 深海鮟鱇 68 2337
7421  砂丘(すなおか)を下れば黒潮潮に乗せ小瓶を流しき手紙を入れて たまこ 68 2350
7422  椰子の実が昔着きたる海浜にポリの容器が山になる今   蘇生 69 0729
7423  椰子の実の着きし砂浜伊良湖崎沖を流るる黒き潮よ  弁慶 69 1229
7424  中田島砂丘に立ちしスナップのとおき日かへるみな若かりき  れん 69 2317
7425  ミュンヘンの若人集うFIFAの火蓋切らるる六月九日  蘇生 610 0921
7426  ベッカムの右足シュート絶好調スタジアムゆれ興奮の渦  くりおね 610 2256
7427  遠国の競技の庭に翻る日の丸の旗の多くあれかし  弁慶 611 0805
7428  天高くボールを蹴れば月となり見よゴールには朝日ころがる 深海鮟鱇 611 2126
7429  茶髪でもサムライブルーは日本らしトリニダード・トバゴは地図のどこなの 真奈 611 2328
7430  ナビゲーターにわが家への道を映しだせば旅ゆく気分そよぐ卯の花 たまこ 612 1121
7431  ナビゲーター狂いしボールは食われけりアリゲーターかかのキーパーは 深海鮟鱇 613 2040
7432  さむらいの八十余分の勝ちゲーム三太刀あびて血にまみれたり  蘇生 615 0541
7433  月代の青き武士負けにけり乾坤一擲クロアチア戦見よ  弁慶 615 0626
7434  ネクタイはクロアチアより広まれりフンドシ締めよ大和魂 深海鮟鱇 615 2141
7435  愛国心なんかじゃないさ若者の真剣勝負が楽しみなんだ 雛菊 618 1106
7436  美しい日本と思ふ一面の水田に早苗の緑がそよぎ たまこ 620 1533
7437  この景色美しいとは思うけど人心だけはわからぬものよ 中澤優希 621 1926
7438  風光に国籍はなく美しくモナリザの背にイタリアの空 深海鮟鱇 621 2045
7439  海外へ行かなき吾のをもひでよ京都でありにきルーブル展はも  れん 621 2330
7440  わが家の軒に育ちし燕の子のたちゆく国を思へばたのし たまこ 622 0536
7441  早起きの燕の声の破る夢 巫女は飛びゆく壷中の外へ 深海鮟鱇 622 0726
7442  四時起きの最後の聖戦敗れたり眼に鮮やかなロナウドとジーニョ 真奈 623 2200
7443  贔屓目を捨てて見えたるひ弱さに茨の道よ南アFIFA  蘇生 626 0747
7444  ドイツより悲報は届くあさぼらけ我は滂沱の涙、涙よ  弁慶 627 2215
7445  絶叫し涙を流す戦がワールドカップなるに安堵す たまこ 628 0608
7446  横雲の途絶えし空の彼方には多摩川越ゆる朝虹の影  弁慶 629 2104
7447  連綿と日々十年の増俳の夏越祓いは草田男の句に  蘇生 630 0504
7448  六月の別れ惜しみて一盞をボンボワイヤージュのエール贈らん 真奈 630 1910
7449  夏富士やあまねく高き朝の空今年も半ばを過ぎ行かんとす  弁慶 630 2356
7450  春待ちてたちまちすでに夏がきて母亡き日々の早も過ぎ行く  蘇生 71 0901
7451  流れ行く夏の小川の音さやか合歓の花咲く林間の道  弁慶 76 1609
7452  ながれゆくゆくすへしらにさだめなし宙(そら)とも海ともそのはたてはも  れん 77 0123
7453  青紫蘇も茗荷もふくふく育ってるそうめん流しの夏が来る来る 雛菊 79 1732
7454  稲庭のうどん食べつつ遥かなる小町の里の夏を思えり  弁慶 711 2144
7455  数日の涼しき風の梅雨晴れに明けて日盛る暑さを思う  蘇生 713 0824
7456  層雲のへりに残れる夕茜消えやらず暑き幾夜かがなべ かわせみ 714 0005
7457  十年のえにし嬉しき増俳につどう百余の見知らぬ笑顔(増俳記念会合に寄す )  蘇生 715 0521
7458  生きるとは楽しむこととされば鳴くこの現世の法師蝉かな やんま. 716 0908
7459  雲早し箱根の山の蝉時雨宗祇の墓も賑わいにけり  弁慶 716 1120
7460  箱根なる山たかきの薄曇りああ暑かりききのうの都会  れん 716 1155
7461  熱きもの賜わりて今血に肉に染みわたり行く音心地良き  716 2147
7462  ひたぶるに小さきことに摧くさへ安けき日々の礎ならん  蘇生 717 1028
7463  いと小さき声にこの耳傾けて無事に無心に過ごす夏安居  丹仙 719 2350
7464  滝水に打たれて一人経を読む夏安居の僧の白き衣よ  弁慶 720 0850
7465  しとしとと幾日も絶えぬ青梅雨に午前六時の鐘もくぐもる  蘇生 721 0735
7466  家族四人まくら並べて旅の宿瀬音に混じる雨音を聴く 雛菊 721 0910
7467  雨脚の遠離りゆく広き野の果てにありけり足柄の山  弁慶 721 2257
7468  このとしの蓮の花はおそかりき今ぞさかりを雨の降りつぐ  れん 722 0506
7469  少年の壁当てテニスきりもなや柵の昼顔人知れず咲く やんま. 722 0852
7470  日次にていよよ咲きつぐ凌霄花廃家の垣を越えて乱るる   蘇生 722 1120
7471  廃校の庭に昼顔咲きにけり文月の風穏やかに吹く  弁慶 722 2134
7472  級友に再会約し安房を発つ安房の潮騒胸奥に秘め  724 0936
7473  その昔読みし里見の八犬伝黒潮流るる安房の国かな  弁慶 724 0945
7474  三浦から指呼とも見ゆる房総の鋸山に懸かる梅雨雲  蘇生 724 1454
7475  その昔登りし安房の鋸山眼下に渦巻く走水の海  弁慶 724 1941
7476  日傘手に別れし人のまなざしに蓮のつぼみの揺れたもうなり  くりおね 726 0921
7477  イベリアの旅の栞に思い出の炎暑果て無き黒き向日葵  蘇生 728 1532
7478  戦争で引き裂かれたるひまわりよソフィアローレンの野生美し 雛菊 729 0756
7479  さかれたる絆もすでに遠くして帰すべきもののさらだにとおし  れん 729 1037
7480  朝鮮やドイツの過去を思うときわれらの幸をしみじみ思う  蘇生 729 1413
7481  神風や海の女神に守られて大海原に浮かぶ楽園  くりおね 731 0808
7482  わたつみの神より届くふみ束はすめらみくにの今や如何と 真奈 82 1250
7483  この國の未来は暗し八月の第三の火は天より堕つる  梅雪 85 2214
7484  かの八月防空壕を躍り出てひもじき日々も幸を知りけり  蘇生 87 1041
7485  ヒロシマで捕虜米兵も死んだこと知るすべもなきふるさとの母 真奈 87 1457
7486  都幾川の静けき辺ひろしま忌時を刻みし老鶯の音  文枝 87 2032
7487  立秋を過ぎしこの朝忽然とはたた神なり黒き雨ふる  梅雪 88 1029
7488  反旗とは無念至極に御座候暗渠に黒き翳深くして 真奈 89 1639
7489  明らかにあらざる翳のさらに奥はたてにありしそはなになるや れん 810 1003
7490  鳴く蝉は翳を慕ふか最奧の木々は緑の墓をめぐりて(折句) 深海鮟鱇 810 1726
7491  蜩の聲は路傍の石に沁む命の歌はかくも眞幸く   梅雪 812 1036
7492  蝉時雨降る足柄の峠道越ゆれば青き夏富士の見ゆ  弁慶 812 1129
7493  ありったけ生きておいでと蝉の殻風透きとほる空透きとほる 真奈 812 1311
7494  蝉しぐれ空はにじみて盆供養かそけき風のぬけゆく寺苑  れん 812 2050
7495  父恋し母ぞ恋しき盆のくる瓜の馬の背茄子の牛の背  813 0041
7496  父母の奥津城訪えば周りには白き山百合咲きにけるかも  弁慶 813 0700
7497  重なりし父母の忌挙げしこの秋はなにやら老いを覚ゆるやわが  蘇生 815 0545
7498  秋茄子の香りさやかな朝のめしちちははの笑み思い出すかな  弁慶 816 0953
7499  ちちをやるははと娘もなりゆきて抱く子はわれ似のリニューアルかと 深海鮟鱇 816 1738
7500  孫とわれよく似ているとひとはいう孫をしげしげそんなものかと  蘇生 819 0857