桃李百韻 賦初何連歌「春されば」
桃李百韻 賦初何連歌 「春されば」 満尾 : 丹仙(103/3/30 21:28)
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なし
桃李百韻 賦初何連歌 「春されば」 満尾
初折表
発句 春されば弓なる浦やあらたしき 蘇生
脇 波の穂はしる曙の梅 丹仙
第三 磨る墨の香り長閑かに端座して 素蘭
四 名付親をば頼まれし幸 鞠
五 雄々しさを増して駆け行く秋の駒 晴雲
六 峡の細道草の絮飛ぶ 等人
七 ものの音のなべて鎮もり月明し 茶墨
八 手塗りの箱にしまふ能管 茉莉花
(裏移)
初句 たづね来し古き伝への陶の里 冬扇
二 何故か懐かし門々の顔 ぽぽな
三 不器用に注がれし酒の嬉しさに 真奈
四 空席ふたつ知らぬふりする 素蘭
五 シンデレラエキスプレスはまだ早い 素蘭
六 逃げてしまった手乗り文鳥 茉莉花
七 山際に塵ひとつなし秋のそら ぽぽな
八 露一点に凝りし芋の葉 馬客
九 群れ分けて時代祭の烏帽子行く 茶墨
十 名残の風炉に月を惜しみつ 真奈
十一 遥かなる異国の地より友迎ふ ぽぽな
十二 声掛け合つて揺らすブランコ 浮遊軒
十三 けはひなき苑に暮れなむ花の雨 蘇生
折端 にはたづみから亀の鳴くやら 千種
二折表
折立 朱に染むる泪もありし時鳥 丹仙
二 垣根によりて過ぐす短夜 茶墨
三 髪長きをさななじみの匂ひたち 明子
四 命の一字こめかみに見る 巴人
五 欄干の下の滾つ瀬はやるらむ 梵論
六 夕べは翼のかたき折鶴 彩
七 鐘冴えて大堂は影伸ばしたる 馬客
八 意思表示する枯野ダイ・イン 千種
九 にしひがし子らのまなこは澄みてをり 茉莉花
十 不思議の国の入り口はどこ 素蘭
十一 宇宙への旅を占ふトランプに 西風
十二 ひっくり返って笑ふ山々 茉莉花
十三 春の月長屋の衆に愛でられて 明子
十四 釣りの講釈聞く目借時 冬扇
(裏移)
初句 ワッペンのロゴカラフルにデイバッグ 茉莉花
二 マメを潰した新品の靴 百合
三 漱石の墓には猫も眠ってる 茉莉花
四 三味をつまびく門付けの瞽女 西風
五 味噌汁の香り漂ふ夕間暮れ ぽぽな
六 白手拭の揺るる芋畑 冬扇
七 望月の団子離さずいやいやと 馬客
八 酔ひも回らず語る夜長衆 百合
九 竿上げて波を枕に微睡まむ 蘇生
十 半時の間に栄え廃るる 茶墨
十一 歓声に応へスーパーサブ起用 千種
十二 星形クッキーつまむうららか 真奈
十三 何処にか木魂眠れる花の森 千種
折端 伏流はるか温むせせらぎ 蘇生
三折 表
折立 神の手の被ふがごとし初紅葉 茉莉花
二 清めし庭に立待の月 寂仙
三 つれづれに秋のあはれをしたためて ぽぽな
四 消印なきまま届きたる文 冬扇
五 今もなほやはらかき髪目のあたり 白馬
六 こだはり解る匂ひゆかしき 素人
七 緞帳の下りて舞台の転回し 茉莉花
八 焼け跡に聞く青年の歌 冬扇
九 朝堀りの筍どさと届けられ 明子
十 祭支度のレシピいろいろ 鞠
十一 俄雨さけて軒借る仁王門 馬客
十二 湖水をわたる入相の鐘 素蘭
十三 カザルスの鳥はピースと啼いてをり 茉莉花
十四 遠き国でも人は人なれ 白馬
(裏移)
初句 茣蓙一枚木太刀一振り携へて 茉莉花
二 古びたランプ吊す湯の小屋 浮遊軒
三 自転車のサドル覆ひてこぼれ萩 茶墨
四 指笛やうやう吹けし待宵 真奈
五 碁敵の新走りもて訪ね来し 茉莉花
六 フェアにいかうとげんまんをする 茶墨
七 式場を捜す約束交はすらむ 浮遊軒
八 妖精つひに知恵の実をもぐ 茉莉花
九 よろこびの島にピアノの音流れ ぽぽな
十 幼子乗せて天翔ける舟 冬扇
十一 鳥雲に遠き戦の便り聞き 浮遊軒
十二 柔東風吹きて転がりし桶 茉莉花
十三 主と従者遊ぶ水無瀬の花万朶 素蘭
(しうとずさ)
折端 蓑はいらぬと別れ霜ふむ 蘇生
名残表
折立 震災を悼むともしび雪地蔵 丹仙
二 六甲おろし遠汽笛鳴る 真奈
三 颯爽と応援の旗打ち振りて 浮遊軒
四 夢な忘れそ明日は旅立ち 庚申堂
五 年たけてまた相見むと交はす文 馬客
六 愛の連結ゆるやかに解き あずき
七 思ひきりショートカットで街を行く ぽぽな
八 二分で決める祝賀スピーチ 茉莉花
九 これがまあ満漢全席てふものよ 冬扇
十 右脳悩ます大魔方陣 茶墨
十一 どうしても心のうちはあかせぬと 浮遊軒
十二 残る蛍は海をめざして 真奈
十三 星屑をひき連れ昇る月の舟 真奈
十四 飛天の楽の響くさやけさ 千種
(裏移)
初 半世紀語るつれづれ去来の忌 茉莉花
二 やむことのなき戦乱に世は 蘇生
三 電音の見知らぬ友に励まされ 千種
四 力をも入れず活きる言の葉 真奈
五 踏みしめる土軟らかに春兆す 茉莉花
六 峠の茶屋の名代草餅 千種
七 高みへと誘ふ花のかがよひて 明子
挙句 百千の鳥ぞ永遠に囀る 丹仙
平成十五年立春に起首
同年三月三十日に満尾