桃李歌壇  かず作品集

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花瓶の花

既に静寂が伸びている
微かな西日は翳りの内にたゆたい
不安定な視線を虚ろにし
みはてた先は色彩が酷な 末端
欠けゆく 花びら
もはや未来は振り向きはしないと 知る

華やいだ明るみのもと
人々に自らを知らしめていた
可憐な 赤は 昔
過ぎる 去る 人の 背後で
幾千の眠りのはてに
滴る夢が涸れたのは  いまのこと

ときはうつろい
ながれてはしずもる